世界選手権23 女子シングルレビュー1

前回は感想ということで文章を並べましたが、今回からは数値編になります。

総合順位は感想のところで出しましたので飛ばして、それぞれの中身に最初から入ります。今回は女子のショートプログラムです。

 

ショートプログラム要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 19.65 5.20 12.44 5.52 36.43
2 Haein LEE KOR 19.23 3.91 11.94 4.43 34.11
3 Mai MIHARA JPN 19.71 2.16 11.97 5.24 34.38
4 Isabeau LEVITO USA 19.71 1.92 12.07 5.40 33.93
5 Loena HENDRICKX BEL 19.71 -0.07 12.61 5.63 35.06
6 Niina PETROKINA EST 19.29 2.04 11.22 4.15 31.30
7 Nicole SCHOTT GER 18.03 2.08 11.69 4.96 30.53
8 Bradie TENNELL USA 19.03 -1.87 11.95 5.13 32.21
9 Ekaterina KURAKOVA POL 17.35 0.61 11.52 5.18 31.03
10 Amber GLENN USA 18.19 0.40 11.10 5.01 30.82
11 Anastasiia GUBANOVA GEO 18.79 -2.01 10.81 4.90 32.91
12 Chaeyeon KIM KOR 18.73 -0.60 11.63 4.85 29.45
13 Kimmy REPOND SUI 19.23 0.81 9.88 4.57 28.26
14 Nina PINZARRONE BEL 18.79 -0.54 11.95 3.96 27.88
15 Rinka WATANABE JPN 16.41 -2.29 10.92 5.13 31.73
16 Madeline SCHIZAS CAN 17.93 -1.62 11.06 3.82 29.83
17 Yelim KIM KOR 15.28 -0.78 10.02 3.91 32.59
18 Sofja STEPCENKO LAT 19.23 2.09 9.61 3.91 24.03
19 Lindsay VAN ZUNDERT NED 15.89 1.15 10.44 3.72 26.36
20 Olga MIKUTINA AUT 18.39 -3.06 11.06 5.01 26.65
21 Janna JYRKINEN FIN 18.06 -2.06 10.42 3.91 25.73
22 Julia SAUTER ROU 16.60 -2.25 10.67 4.68 26.32
23 Lara Naki GUTMANN ITA 15.13 0.56 8.71 3.91 26.91
24 Alexandra FEIGIN BUL 16.93 -0.12 9.93 3.44 24.47
25 Lorine SCHILD FRA 18.63 -0.22 9.68 2.75 23.51
26 Jade HOVINE BEL 15.73 -0.48 11.05 4.57 23.23
27 Kristen SPOURS GBR 15.29 -0.06 10.12 4.57 23.46
28 Ema DOBOSZOVA SVK 16.57 0.16 10.19 3.72 22.37
29 Kristina ISAEV GER 16.49 -1.49 10.07 3.82 24.04
30 Anastasia GRACHEVA MDA 16.39 1.16 9.56 3.54 19.90
31 Marilena KITROMILIS CYP 14.56 -0.50 8.11 3.72 24.03
32 Eliska BREZINOVA CZE 14.19 -3.82 9.63 3.82 23.47
33 Dasa GRM SLO 14.10 -3.37 9.53 3.54 24.24
34 Julia LANG HUN 10.65 -2.34 9.42 3.87 22.66
35 Mia RISA GOMEZ NOR 13.70 -1.72 8.12 3.54 20.90

ショートプログラムトリプルアクセルを持っている選手が強いのですが、今大会では渡辺倫果選手のみが構成にいれて、これを転倒してしまっているので、トリプルアクセルで上に出たという選手はいませんでした。

ということでジャンプの基礎点は2A、3Fと単独で跳んで、1.1倍に3Lz+3Tを入れた三原、レビト、ヘンドリックス3選手が19.71でトップにいます。コンビネーションが3F+3Tな坂本選手が1.1倍が3Fな分0.06基礎点下がっての19.65です。3Lz+3Tを先に飛んで1.1倍に3Fが来ると19.23 これがイ・ヘイン選手。ペトロキナ選手は3F+3Tを先に飛んで1.1倍3Lzで19.29が出ます。結局、ショートで上位6人に入っていくには、ジャンプで基礎点から削られるようではだめです、という形になっていました。

ジャンプの加点は坂本選手がやはりトップでジャンプのスコアトップです。イ・ヘイン選手が加点2位でジャンプのスコアも2位。1.1倍にコンビネーションを入れるか単独で入れるかで基礎点は0.4~0.5変わってくるわけですが、それよりもGOE差の方が大きくなるのでショートはトリプルアクセル以外はみんな出来栄え勝負になります。渡辺倫果選手はルッツ零点で基礎点から削られ、転倒もあってGOEもマイナスとジャンプのスコアはショート通過24選手中最下位、全体35人中30位。よく15位でフリーに通過できたな、と思います。

スピンはヘンドリックス選手が1位。このあたりはさすがでした。今シーズンのショートのスピン最高スコアはヘンドリックス選手がヨーロッパ選手権の13.17で持っています。坂本選手が2番目。レビト選手が3番目にいます。12点台はこの3人です。三原選手、テネル選手、イ・ヘイン選手も11.9台まで出していて差がほとんど見られません。

ステップもヘンドリックス選手が1位でした。転倒があっても差の小さい5位に残ったのはPCSと含めてジャンプ以外の要素の強さによります。坂本選手が2位、レビト選手が3位です。ヘンドリックス選手の5.63 坂本選手の5.52は今シーズン全体のショートのステップ1位2位のスコアになります。

PCSは坂本選手がただ一人9点平均超えで1位のヘンドリックス選手2位。三原選手3位にイ・ヘイン選手4位までが8.5平均を超えました。下位の方ではキムイェリム選手と渡辺倫果選手のPCSは抜きんでています。この辺がなんだかんだでショートは通過できた所以です。

なお、坂本選手は昨シーズンの世界選手権は80.32でしたので1.08今回の方が低かったです。昨シーズンはジャンプの基礎点は19.65で同じ。ジャンプの加点は5.46で今回比+0.26 スピンは12.51で今回比+0.07 ステップは5.63で今回比+0.11 PCSは37.07で今回比+0.64 ということで全面的に実は昨年の方がわずかづつですがよかった、という評価でした。まあ、ルールも変わってますので、そういう言い方はあまりよくないかもしれませんけれど。

 

○総合上位6選手のショートプログラム構成

  Kaori SAKAMOTO Haein LEE Loena HENDRICKX Mai MIHARA Isabeau LEVITO Chaeyeon KIM
1 2A 2A 3F 2A 3F 3Lz
2 3Lz 3Lz+3T 2A 3F 2A 2A
3 FCSp4 FCSp4 CCoSp4 FSSp4 FSSp4 FCSp4
4 CCoSp4 3F 3Lz+3Tq 3Lz+3Tq 3Lz+3Tq 3F+3T<
5 3F+3T SSp4 StSq4 CCoSp4 CCoSp4 StSq4
6 StSq4 StSq3 FCSp4 StSq4 StSq4 CCoSp4
7 LSp4 CCoSp4 LSp4 LSp4 LSp4 LSp4
Base 32.95 31.73 33.01 32.81 32.81 32.03
GOE 9.86 7.78 4.87 6.27 6.29 2.58
PCS 36.43 34.11 35.06 34.38 33.93 29.45
Total 79.24 73.62 71.94 73.46 73.03 64.06

総合上位6位までに入った選手のショートプログラムの構成。スピンは全員すべてレベル4 ステップはイ・ヘイン選手以外レベル4です。キムチェヨン選手はコンビネーションのセカンドジャンプがアンダーローテーション。これが12位スタートになる痛手でした。基礎点が予定通り取れなかったのはそのあたりだけ。基礎点差は一番低いイ・ヘイン選手でも1.28なので、出来栄えとPCS勝負な部分が強いです。

コンビネーションのセカンドジャンプはヘンドリックス選手、三原選手、レビト選手もqが付きます。ヘンドリックス選手は転倒。やはり3回転付けるコンビネーションというのが負担になっていて、そこがショートの鍵、というのが見て取れます。1.1倍で基礎点稼ぎに行っていますが、このあたりの選手は冒頭ならクリーンに決められたのでしょうか? 冒頭に入れるか1.1倍に入れるか、それでどの程度成功率が変わるのか? 構成組むときの悩みどころかと思います。基礎点が0.4上がったとしても、GOEで1下がればスコア的には変わらないわけです。

PCSはキムチェヨン選手が30点に届かずはっきりと劣りました。この辺にスケート歴の浅さが出ているでしょうか。

 

○総合7~12位の選手のショートプログラム構成

  Nicole SCHOTT Kimmy REPOND Niina PETROKINA Rinka WATANABE Nina PINZARRONE Amber GLENN
1 3F+3T 3Lz+3T 2A 3A< 2A 3F+3T
2 3Lo 2A 3F+3Tq 1Lz* 3Lzq+3T 2A
3 FCSp4 FCSp4 FCSp4 CSp4 FCSp4 CCoSp4
4 2A 3F 3Lz 3Lo+3T 3Lo 3Lo
5 CCoSp4 LSp3 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp4
6 StSq4 StSq4 StSq3 StSq4 StSq3 LSp4
7 LSp4 CCoSp3 LSp4 FSSp4 LSp4 StSq4
Base 31.33 31.73 31.99 29.41 31.49 31.29
GOE 5.43 2.77 4.71 0.76 2.67 3.41
PCS 30.53 28.26 31.30 31.73 27.88 30.82
Total 67.29 62.75 68.00 60.90 62.04 65.52

レポンド選手はスピンが2つレベル3 他の5選手はスピンはすべてレベル4になっています。スピンはレベル4を取るもの、というのが女子の上位の常識になっています。

ステップはペトロキナ選手、ピンツァローネ選手はレベル3 スピンと比べるとレベル4率はやや下がります。

ジャンプはほとんどの選手が基礎点取れていましたが、渡辺倫果選手はトリプルアクセルアンダーローテーションにルッツが1回転と2ミス。トータル基礎点29.41と1人だけ30点にも届きませんでした。

ニコルショット選手は加点が5.43ありました。これは全体5位の加点。フリーも合わせて非常にいい出来の滑りでした。

このあたりの選手は1.1倍にコンビネーションは入れてきていません。渡辺選手はリカバリーなので狙ったものではありませんでした。また、PCSも上位5人と比べるとやや見劣りします。ショートはコンビネーションジャンプとPCS力で決まる、ただしトリプルアクセル別口です、という仕組みなんでしょうか。

 

ショートプログラム上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Kaori SAKAMOTO 27.39 27.00 26.75 28.00 26.75 28.00 27.50 28.25 27.25 27.25
Haein LEE 25.64 23.75 26.50 24.75 25.00 27.00 26.00 25.50 26.25 25.75
Mai MIHARA 25.85 24.75 25.25 25.75 25.50 26.50 27.75 25.25 26.00 26.25
Isabeau LEVITO 25.51 25.75 24.00 25.00 25.25 26.75 26.75 26.25 26.25 22.75
Loena HENDRICKX 26.36 25.75 25.75 26.75 26.75 27.50 26.75 26.50 26.25 25.25
Niina PETROKINA 23.54 23.00 24.50 23.50 24.00 24.25 22.25 24.00 22.25 23.50
Nicole SCHOTT 22.96 20.00 23.50 23.00 23.00 23.00 23.75 22.50 26.25 22.00
Bradie TENNELL 24.22 24.00 24.50 23.75 25.00 22.00 25.00 23.25 24.75 24.50
Ekaterina KURAKOVA 23.33 23.50 23.00 22.00 23.75 23.75 22.75 24.50 24.25 22.50
Amber GLENN 23.18 22.50 23.50 20.75 22.25 22.75 23.75 25.00 24.50 23.25
Anastasiia GUBANOVA 24.74 21.75 26.00 25.00 25.00 26.00 24.00 24.50 24.75 24.00
Chaeyeon KIM 22.14 21.75 21.75 20.75 22.00 22.75 22.50 23.00 20.75 23.75

3項目10点満点の合計で見たPCSスコアです。係数0.8は掛けていません。

やはりジャッジ毎にずいぶん差があります。坂本選手で言えば、7番ジャッジの28.25が最高ですが、2番ジャッジと4番ジャッジは26.75で1.50違います。0.8の係数掛けた後でも1.20スコアが変わって来る、ということになります。

割と上限近いところにいる坂本選手はジャッジ間差は小さい方です。ニコルショット選手は最高26.25から最低20.00まで6.25の差、0.8倍後で5.00の差が出ます。ちょっと大きすぎです。

なお、全体見ると、一番甘い(合計が高い)のは8番ジャッジ、一番厳しいのは3番ジャッジで、合計の差が43.75ありました。1人平均で1点以上差があることになります。

ジャッジでこれだけ差があるのですから、ファンの選手評価に差が出るのは当たり前なんだろうと思います。

 

ショートプログラム上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Kaori SAKAMOTO 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1
Haein LEE 4 6 2 6 5 3 6 4 2 3
Mai MIHARA 3 4 5 3 3 5 1 5 6 2
Isabeau LEVITO 5 2 10 4 4 4 3 3 2 11
Loena HENDRICKX 2 2 4 2 1 2 3 2 2 4
Niina PETROKINA 10 9 8 9 8 9 15 11 14 9
Nicole SCHOTT 13 19 11 10 12 11 10 15 2 16
Bradie TENNELL 8 5 8 8 5 16 7 13 7 6
Ekaterina KURAKOVA 11 7 13 12 9 10 12 8 11 13
Amber GLENN 12 11 11 14 13 12 10 6 9 10
Anastasiia GUBANOVA 6 12 3 4 5 6 8 8 7 7
Chaeyeon KIM 15 12 14 14 15 12 14 14 18 8

PCSのジャッジ毎の順位を見ています。坂本選手は6番ジャッジだけ2位評価。その6番ジャッジは三原選手に1位を付けていました。

評価が割れているのはニコルショット選手とブレイディテネル選手でしょうか。8番ジャッジは同率2位が多すぎですが、ニコルショット選手にも2位を付けていて、他のジャッジが二桁順位で付けているのとだいぶ違いがあります。1番ジャッジは19位付けています。いくらなんでも差がありすぎです。テネル選手には一桁順位が多い中で5番ジャッジだけ16位と厳しい評価。ショートの2位3位4位くらいの僅差は、この試合のジャッジで誰が入ったかで入れ替わってしまうくらいの差なんだな、というのがよくわかります。実際、2番ジャッジ、9番ジャッジが別の人入っていれば、レビト選手はショート2位でスモールメダルをもらえていた可能性がかなりあるわけです。

 

次回フリーへ続きます。