全日本選手権22 男子レビュー1

女子に引き続いて男子のレビューです。男子も初回は数字を追うのではなくて単なる感想になります。

男子は、世界で戦う選手たちと、世界最大のお稽古事発表会が同居している感じが前からですがしていました。なんとなく揶揄しているような表現に見えてしまって恐縮ですが、日本のフィギュアスケートの良さだと思っています、このお稽古事発表会な雰囲気というものが。競技人口の少なさもあって、どうしても上から下までの差が大きく出てしまうのが男子シングル。それでも一人一人の選手にそれぞれの立ち位置からそれぞれの目標がある。その姿を温かく見守る空気が会場にあるように感じます。

 

○男子シングル最終結

Pl Name Nation Total SP FS
1 宇  野  昌  磨 トヨタ自動車 291.73 100.45 191.28
2 島  田  高志郎 木下グループ 252.56 87.69 164.87
3 友  野  一  希 上野芝スケートクラブ 250.84 85.43 165.41
4 佐  藤      駿 明治大学 249.64 81.78 167.86
5 山  本  草  太 中京大学 245.41 86.89 158.52
6 三  浦  佳  生 オリエンタルバイオ目黒日大高 242.55 71.12 171.43
7 森  口  澄  士 木下アカデミー 241.63 76.31 165.32
8 鍵  山  優  真 オリエンタルバイオ/中京大学 237.83 81.39 156.44
9 壷  井  達  也 シスメックス 221.17 74.84 146.33
10 吉  岡      希 法政大学 220.43 80.85 139.58
11 中  村  俊  介 木下アカデミー 218.08 77.74 140.34
12 三  宅  星  南 関西大学 216.10 76.69 139.41
13 山  隈  太一朗 明治大学 206.25 74.41 131.84
14 大  島  光  翔 明治大学 202.44 66.44 136.00
15 佐々木  晴  也 京都大学 199.95 64.73 135.22
16 西  山  真  瑚 早稲田大学 197.81 66.43 131.38
17 周  藤      集 MFアカデミー 190.38 61.36 129.02
18 垣  内  珀  琉 ひょうご西宮FSC 187.97 61.42 126.55
19 片伊勢 武 アミン 関西大学 185.40 70.05 115.35
20 櫛  田  一  樹 倉敷FSC 181.81 59.98 121.83
21 本  田  ルーカス剛史 木下アカデミー 180.87 62.48 118.39
22 長谷川  一  輝 東京理科大学 179.61 64.94 114.67
23 田  内  誠  悟 名東FSC 173.60 66.76 106.84
24 須  本  光  希 関西大学 172.40 61.07 111.33
25 木  科  雄  登 関西大学 58.73 58.73  
26 中  田  璃  士 MFアカデミー 57.74 57.74  
27 杉  山  匠  海 岡山大学 54.28 54.28  
28 彦  阪  昇  吾 立命館大学 49.81 49.81  
29 小  林      隼 同志社大学 47.37 47.37  
30 三  島  悠  生 ひょうご西宮FSC 38.87 38.87  

宇野選手が3年ぶり5回目の優勝。オッズ1.1倍みたいな本命が本命らしく普通に勝ちました、という試合でありました。フリーはタイムオーバー。シークエンスは時間がかかる。大丈夫かなあ? と思っていたら案の定最後は無音でスピン。それはそれで、という感じでしたがルール的にはタイムオーバーの減点1でした。ジャンプ2つミス出た時は、あれ? 何かが起こる??? と心配した瞬間もありましたが、コンボ券3つ全部後半に使い切り。今回は4-3も入り、結局強かったです、という結末でした。ある種予想通りの四大陸スキップで次は世界選手権。ジャパンオープンに始まりグランプリを3戦、全日本とあとは世界選手権という年間5戦が基本スケジュールで、あればオリンピックあるいは4月にお祭り試合、というのが宇野選手の過ごし方なようです。

 

女子の中野組ワンツーはある程度予想の範囲内ですが、男子でランビエール門下生でワンツーは全く予想していませんでした。島田高志郎選手2位表彰台。21歳のチャップリンメドレー。うーん、グランプリシリーズの方がよかったような・・・。ちょっと固かった印象はありましたがシチュエーションがシチュエーションですから、ここまでプレシャー掛るのは初めてだったかと思いますが、それを乗り越えての2位で素晴らしかったと思います。世界選手権選ばれたかと思いましたが。3枠あって全日本2位で世界選手権出られないというのは、4年前の高橋大輔さんというちょっと意味が違うやつを除くと、女子で、2004年2005年の浅田真央さんというこれもまた意味の違うやつがあり、それら以外ではおそらく初です。まあ、実際、島田選手も今回のフリー、それほど良かったわけでもないですし、仕方なかったでしょうか・・・。四大陸でのご活躍をお祈り申し上げます。

 

友野一希選手が3位で初表彰台。冒頭4回転良かったのに2本目3本目でミス。中盤以降持ち直しましたが、際どい際どい勝負でPCS次第かあ、とスコア待ちで、何とか暫定首位に立ち、そのまま表彰台に残り世界選手権代表へ。脱代打を実現。じわじわと階段を上ってきているなあと感じます。今シーズン決して調子がいいわけではないのですけど何とか点を取って上位には残り、実績比較でも上回って代表選出。世界選手権に合わせられれば今度こその表彰台もあるのでしょうか。

 

佐藤駿選手は自己最高の4位。ルッツ転倒でああダメか、と思いましたが以降はいい演技で結果的にフリーは3位。後半のコンビネーションで1Tになった部分を2Aで決めていたら2位に入って世界選手権に選ばれていたように思います。レッドバイオリンは雰囲気が合いますね佐藤選手に。世界選手権が無いなら世界ジュニアを勝ちに行くというのも面白い選択としてあったはずなのですが、そちらはなし。ファイナルも全日本も三浦選手より上なので、四大陸と世界ジュニアの二本立ては佐藤選手でもよかったのですが、本人が希望しなかったのか、高校生を優先したのか。四大陸の前にワールドユニバーシティーゲームズがあります。それがあるから世界ジュニアは三浦選手に回したのかな。鍵山選手との再戦になりますが、勝てるかどうか。

 

本草太選手は5位でした。演技終わった時点では、この人もまた際どいなあ、みんなで際どい勝負して・・・、という感じなところからスコア足りずに結局5位でした。4回転ミスは2,3,4位の3人は1本なところ山本選手は2本出てしまったのでスコア的に少し離れました。ダメかなあ、と思いましたが結果的に代表選出。全日本2位で3枠ある世界選手権に選ばれなかった選手は基本的にいなかったわけですが、グランプリファイナル2位で世界選手権の代表になれなかった選手もいないわけで(けがで欠場はいます)。そういう見方をすれば順当な選出だったのかもしれません。

 

ショート13位からフリーは2位の演技で三浦佳生選手が6位にまで上がってきました。結果的にここまで来ましたけど、最初の2つのジャンプ見た時には、これは世界ジュニアも無くなるんじゃ・・、と思いましたよ。野獣にされて思い悩んだ序盤、ということにしておきましょうか。そこからまさかの1.1倍オールコンボで人間に戻ってハッピーエンド、とまではいかず、さすがに世界選手権には届きませんでしたが四大陸と世界ジュニアをゲット。四大陸で勝つチャンスもありますし、世界ジュニアは昨シーズンに枠を減らした実は戦犯なところがあるので、来期の3枠とジュニアグランプリ枠7×2を絶対確保で、できれば優勝をお願いしたいです。

 

7位に驚きの森口澄士選手。ジュニアグランプリシリーズに出ていた全日本チャンピオンの20歳。もはや何を言っているのかわかりませんが、ショートフリー通じてすばらしい演技でした。これまでトータル216.01 フリーは141.27がベストの選手が、フリー165.32を出してトータル241.63 直近のオリンピックメダリストに勝っての7位。こんなすごかったんだこの選手。ペアとの二刀流とか関係なくすごい演技でした。これ、将来的に、ペアとシングル、両方でグランプリシリーズというトンでもないことが起きる可能性がありそうです。まずは世界ジュニア前にB級大会にシングルで派遣されるでしょうか。来シーズンのチャレンジャーシリーズ、さらにはグランプリまでつながるなんてこともあり得ます。2種目出ないといい演技できないんです、なんてこともあったりして。パートナーに負けたくないとかそんな心理ってあったりするでしょうか。

 

鍵山優真選手は8位に終わりました。代表選出はなし。ただ、ワールドユニバーシティゲームズには内定しています。やはり、トゥつけませんのハンデ戦で勝てるレベルでは日本男子はありませんでした。紀平選手もそうでしたが、無理しなければよかったんじゃ、という今シーズンになってしまいました。ワールドユニバーシティーゲームズは、お祭りとして楽しんできていただければと思います。怪我さえ直せば、4回転フリップ、という声もありましたし、宇野選手と構成同等にまで行きますので、来シーズンまた世界の頂点を争う位置にいるのではないかと思います。

 

割と勝負強い印象だった壷井達也選手が今回は伸びずに9位に終わりました。ちょっと上位とは今回差がついてしまいました。ショートフリーで4回転3本飛んで成功が1本だとやはり苦しいです。今季はグランプリデビューで4位が1つ入ったことで先につながったというので満足して、来期にもう一段階段上がっていくというところですしょうか。ワールドユニバーシティゲームズの代表権はもらっているので、そこでもう一旗揚げてきていただければと思います。

 

10位にはジュニアから吉岡希選手が入りました。全日本ジュニアで際どいスコアながら優勝。ジュニアグランプリも混戦を抜け出して表彰台にのり、全日本もしっかりジュニア組のトップ。何か見ていて今回の全日本は自信を感じました。220.43はシニアルールだからではありますがパーソナルベスト相当のスコア。ショートフリー合わせて3本の4回転をすべて立ちました。これは世界ジュニアは3枠確保は固いかな。ジュニアはどんなメンバーが出てくるかわからなかったりしますが、表彰台目指して頑張っていただければと思います。

 

11位はジュニアからの中村俊介選手ですが、世界ジュニアには届きませんでした。三浦佳生選手がしっかり滑るとそれに勝つのはちょっと難しいです。4回転は今回もなんとか基礎点満額で立ちました。まだGOEプラスは全日本ジュニアのみですが、基礎点は割と満額取れているのでだいぶいいところまで来ています。おそらく来期もう一シーズンジュニアだと思うので、そこで全日本ジュニア勝つチャンス、つまり世界ジュニアチャンスが来るはずです。

 

今季不調なまま三宅星南選手が全日本も伸びずに12位で終わってしまいました。シーズンベスト低く世界ランクも高くなく過去実績も目立たないと、来期のグランプリシリーズ枠が回って来なさそうに感じます。長光先生と世界を回れるのは今は三宅選手だけですし、もう一花咲かせてほしいのですが。タイタニック、風貌とはあっているプログラムだと思うのですが、ちょっと精彩を欠いていたと言わざるを得ないです。

 

200点超えは14位まで。今シーズンで引退の山隈選手13位と、個性キャラ大島選手で14位、明治大学の2人までが200点超え。その下は京都大学記録の佐々木晴也選手にシングル引退の西山選手と大学生が続いた後にジュニア勢が来ます。

男子はジュニアとシニアで差がありますねやはり。

グランプリ組で本田ルーカス剛史選手が苦しんでいて21位。どうしてしまったんだろう。

ジュニアグランプリファイナルで表彰台経験のある須本光希選手が今シーズンで引退で最後の全日本は24位でした。

 

男子も非常に僅差の表彰台争いでした。250点前後の争い、というのはメンバー考えると実はレベル的にあまり高くないラインでしたが、グランプリファイナルを経由しての全日本、という経験のないメンバーばかりでしたので、その影響もあったでしょうか。2位から5位はグランプリシリーズの成績の逆順になってしまったことが、代表選考で物議をかもすことになってしまった要因でした。全日本は重いかもしれませんが、全日本一発勝負にすると日本勢がグランプリシリーズにそっぽを向くことになり、そんなことになったら今のフィギュア界はもう回りません。だからといってポイント制にするとそれはそれで興ざめな部分もあるし、四大陸とか世界ジュニアはそれもやりにくい。ある程度はっきり差をつけて勝てなかった場合は、運を天なのか選考委員なのかに任せるしかない、というのが現実なのかもしれません。