世界選手権23 男子シングルプレビュー

女子に続いて男子です。男子も女子同様35人がエントリー。女子と比べロシア不在の影響は少ないかとも思いましたが、昨シーズンまでとの様変わりぶりは男子も大きいです。羽生結弦・ネイサンチェン、2つのオリンピックの間、頂点を占め続けた2人の不在により、男子の構図は様変わり。さらに鍵山優真選手にヴィンセントジョウ選手といった2人のワールド・オリンピックメダリストも不在となり、これまでとは状況がだいぶ変わりました。

 

○今シーズンの戦績

Name   Season best 2nd best Worst National
Shoma UNO JPN 304.46 279.76 273.15 291.73
Ilia MALININ USA 280.37 278.39 257.28 287.74
Keegan MESSING CAN 275.57 250.72 205.02 257.78
Sota YAMAMOTO JPN 274.86 274.35 245.61 245.41
Adam SIAO HIM FA FRA 268.98 267.77 237.19 279.36
Daniel GRASSL ITA 264.35 257.76 230.83 220.69
Junhwan CHA KOR 264.05 254.76 226.32 271.21
Matteo RIZZO ITA 259.92 253.34 226.67 245.64
Kevin AYMOZ FRA 258.02 255.69 236.17 256.61
Deniss VASILJEVS LAT 254.56 240.58 197.45  
Lukas BRITSCHGI SUI 253.66 248.01 212.43  
Kazuki TOMONO JPN 251.83 248.77 210.77 250.84
Vladimir LITVINTSEV AZE 250.52 188.77 188.77  
Mikhail SHAIDOROV KAZ 237.14 231.08 201.52  
Burak DEMIRBOGA TUR 234.45 220.23 182.82 229.24
Nika EGADZE GEO 233.40 232.86 208.47  
Morisi KVITELASHVILI GEO 231.30 196.80 194.59  
Andreas NORDEBACK SWE 229.88 225.93 190.33 228.19
Boyang JIN CHN 227.47   227.47  
Conrad ORZEL CAN 226.10 202.69 193.15 237.46
Mihhail SELEVKO EST 220.33 218.30 183.09 231.43
Vladimir SAMOILOV POL 220.17 212.79 190.64 223.43
Mark GORODNITSKY ISR 219.83 218.83 202.30  
Nikita STAROSTIN GER 217.04 213.08 179.63 226.69
Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 216.05 209.34 178.57  
Andrew TORGASHEV USA 215.86   215.86 256.56
Maurizio ZANDRON AUT 213.74 212.94 197.32 234.93
Jari KESSLER CRO 212.19 209.27 182.83  
Graham NEWBERRY GBR 211.07 182.99 174.56 215.32
Adam HAGARA SVK 207.58 201.79 174.70 205.02
Alexander ZLATKOV BUL 200.13 188.07 169.44 159.62
Kyrylo MARSAK UKR 194.05 191.65 152.16  
Aleksandr VLASENKO HUN 193.65 182.07 164.85 177.66
Georgii RESHTENKO CZE 54.52   54.52 168.22
Jason BROWN USA       277.31

エントリーは35名。ジェイソンブラウン選手は今季ショートフリー揃った国際試合への出場無し。レシュテンコ選手はヨーロッパ選手権のみでショート落ちのため違和感のあるスコアが1試合あるのみとなります。

シーズンベストトップはただ一人300点を超えている宇野昌磨選手です。シーズンワーストでも273点あり、これを超えている選手は自身を含めて4人だけ。自身4回目の表彰台は固いでしょうが連覇はどうか。スコアだけで見るなら確率は高いわけですがスコアだけでは見えない怖さがあります

そんなスコアだけでは見えないシーズンベスト2位のマリニン選手。意外とまだ280点止まりです。ショートフリー2本そろわない。揃ったらすごいスコア出そうなのですがそれが世界選手権で出てくるかどうか

270点台に2人。4大陸選手権を勝ったメッシング選手にグランプリファイナル2位の山本草太選手。このあたりは表彰台を目指す戦い。メッシング選手は引退シーズンで表彰台が欲しい。山本選手は先日のチャレンジカップで今一つだったことは気になります。

その下の260点台の3人も表彰台チャンスが十分ある選手たちです。ここ2シーズンほどで評価を上げてきたアダムシャオイムファ選手やグラスル選手、まだベテランというほどの年齢でもないですが、前の前のオリンピックから活躍を続けるチャジュンファン選手。チャジュンファン選手が表彰台に乗れば韓国勢初、グラスル選手ならイタリア勢としては今世紀初、シャオイムファ選手はジュベールさん以来となります。

250点台には表現派が並んでいる印象です。このあたりの選手たちもノーミスなら表彰台チャンスもあるでしょうか。

あとは上位のリストにいませんが、今季まだ1戦のみのボーヤンジン選手や、ジャパンオープンしか国際大会に出ていないジェイソンブラウン選手。このあたりから上位に飛び込んでくる可能性もあるかと思われます。

 

ショートプログラム シーズンベスト上位20人

Name   Season best 2nd best Worst National
Sota YAMAMOTO JPN 101.32 96.49 84.72 86.89
Shoma UNO JPN 99.99 91.66 89.98 100.45
Adam SIAO HIM FA FRA 96.53 90.57 84.69 96.42
Junhwan CHA KOR 94.44 91.06 80.35 101.04
Kevin AYMOZ FRA 89.60 88.96 83.52 82.91
Kazuki TOMONO JPN 89.46 85.07 64.97 85.43
Daniel GRASSL ITA 88.43 86.85 73.69 90.85
Vladimir LITVINTSEV AZE 88.25 64.00 64.00  
Keegan MESSING CAN 86.70 80.12 74.85 94.40
Lukas BRITSCHGI SUI 86.51 79.26 64.35  
Matteo RIZZO ITA 86.46 83.13 68.79 87.64
Ilia MALININ USA 86.08 85.57 71.84 110.36
Boyang JIN CHN 85.32   85.32  
Deniss VASILJEVS LAT 84.81 83.01 69.01  
Nika EGADZE GEO 84.47 82.82 71.81  
Burak DEMIRBOGA TUR 81.80 74.03 64.33 83.78
Morisi KVITELASHVILI GEO 80.16 70.55 56.42  
Conrad ORZEL CAN 80.09 73.10 69.69 86.16
Nikita STAROSTIN GER 79.95 74.70 59.19 70.26
Mihhail SELEVKO EST 79.79 79.40 67.28 77.34

今季ショートプログラムで100点を超えているのは山本草太選手のみとなっていますが、これはワールドユニバーシティゲームズでのスコア。ISU公認では宇野選手の99.99が最高になります。山本草太選手は今季90点以上が4回。基本的にはショートで上位に来てフリー最終グループさあどうか、という勝負になりそうに見えます。

90点以上が4人しかいないというのが少し意外ですが世界選手権ではおそらくもう少し増えてくるかと思われます。

マリニン選手は国際大会のベストは86.08 全米選手権では110.36出していて、スコア自体はともかくノーミス出来たという実績は大きい。この選手がショートでどこに来るかで展開は大きく変わりそうです。

80点以上出しているのは18人。80点出せばフリーへ通過は出来るでしょうか。一方、上位の選手もシーズンワーストは60点台が散見しますので、まさかのショート落ちという選手が出てくる可能性がありそうです。

 

○フリー シーズンベスト上位15人

Name   Season best 2nd best Worst National
Shoma UNO JPN 204.47 193.80 183.17 191.28
Ilia MALININ USA 194.29 193.42 185.44 177.38
Keegan MESSING CAN 188.87 171.03 124.90 163.38
Daniel GRASSL ITA 181.32 177.50 153.80 129.84
Adam SIAO HIM FA FRA 180.98 171.24 147.86 182.94
Sota YAMAMOTO JPN 179.49 173.54 160.89 158.52
Junhwan CHA KOR 174.41 169.61 145.51 170.17
Matteo RIZZO ITA 173.46 170.21 146.14 158.00
Deniss VASILJEVS LAT 171.55 167.50 128.44  
Lukas BRITSCHGI SUI 168.75 167.15 148.08  
Kevin AYMOZ FRA 168.42 166.73 152.65 173.70
Kazuki TOMONO JPN 166.76 159.31 145.80 165.41
Mikhail SHAIDOROV KAZ 164.71 156.03 132.33  
Jason BROWN USA 163.57   163.57 177.06
Vladimir LITVINTSEV AZE 162.27 124.77 124.77  

フリーは宇野選手のみが200点を超えています。マリニン選手がそれに次ぐ190点台。この2人はシーズンワーストも180点台でそれを超える選手はメッシング選手だけ。2人の一騎打ち感が強いです。

180点台にメッシング選手、グラスル選手、シャオイムファ選手。179.49まである山本草太選手含め、このあたりの選手が表彰台争い有力となっています。やはりフリーで180点は超えないと表彰台は難しいでしょうか。

3枠争いは日本は当確として、アメリカはジェイソンブラウン選手がしっかり頑張らないと危ないかもしれません。イタリアとフランスも3枠欲しいですが2人そろって上位へ行けるかどうか。カナダ、韓国あたりは2枠入っていくかと思われます。スイス、ラトビアカザフスタン、このあたりもトップ10狙いで2枠チャンスは十分あるという雰囲気に見えます。

 

○上位6選手のフリーの技術点シーズンベスト時の構成

  Shoma UNO Ilia MALININ Keegan MESSING Sota YAMAMOTO Adam SIAO HIM FA Daniel GRASSL
1 4Lo 4A 4T+2T 4S 3Lz 4Lz+3T
2 4S 4F 4T 4T+3T 4T+2T 4F
3 4F 4T 3A 4T 3A 4Lo
4 3A 4S 3Lo 3A+1Eu+3S 4S 3A+1Eu+3S
5 ChSq1 CCSp3 FSSp3 FCSp4 4T+1Eu+3S CSSp4
6 FCSp4 StSq4 StSq4 StSq3 FCCoSp4 4Lz<
7 4T+2T 4T+1Eu+3Sq 3A+2T 3Aq 3Lz+3T 3Lz+3T
8 4T 3F+3T 3Lz+3T 3F+2A+SEQ 3F ChSq1
9 3A+2A+SEQ 3F+3A+SEQ 3F! 3Lz! CCoSp3 3F
10 StSq4 FSSp3 FCCoSp4 ChSq1 StSq3 FCCoSp3
11 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 CSSp4 ChSq1 StSq2
12 CSSp3 CCoSp3 CCoSp4 CCoSp4 CSSp3 CCoSp3
Base 90.16 98.81 76.87 86.45 82.47 91.66
GOE 21.43 16.07 19.12 14.42 12.57 7.08
PCS 92.88 76.96 92.88 78.62 85.94 83.58
Total 204.47 191.84 188.87 179.49 180.98 181.32

4回転は宇野選手5本、マリニン選手はアクセル込みで5本、グラスル選手4本、山本選手とシャオイムファ選手3本、メッシング選手2本です。

宇野選手は3連続が入っていません。どこに入れたいのかもよくわからないのですが全日本では9番目にアクセル3連続という入れ方をしていました。その上でどこかに3Tも入ればマリニン選手と基礎点は匹敵します。ノーミス勝負ならPCS差がまだあるので宇野選手の勝ちですが、宇野選手もノーミスはほとんど見られません。

マリニン選手はジャンプは決めていくのですがGOEは有力シニアのノーミス時と比べるとまだ少し負けて、PCSはだいぶ差があるという状態です。ただ、4Lzを組み込んだり余っている3Aをうまく入れて行ったりするとまだ手持ちのカードで基礎点を上げる手段があるという恐ろしい状態なので、基礎点爆発で勝っていく可能性もありそうに見えます。

メッシング選手は3連続の3つ目を2Loなり2Aなり足せればというくらいで基礎点は限界近い中、4大陸のような演技をもう一度してPCS差を生かして表彰台を掴めるかどうか。

本草太選手は4回転のフリップをシーズン序盤は試していましたが封印しました。もう少しPCSが伸びるといいですが、フリーの滑走順が後ろの方に来ればそこも伸びてチャンスはきそう。

アダムシャオイムファ選手はトリプルアクセルが1本余っています。これを入れられるといいのですがどうか。山本選手、メッシング選手と基礎点、PCSと間に来る形で中間型。

グラスル選手は高難度4回転が3種類入ります。基礎点は高いですが加点がなかなか得られない。これが入ってくると強いですがどうなるか。

 

○7-12番手の選手のフリーの技術点シーズンベスト時構成

  Junhwan CHA Matteo RIZZO Kevin AYMOZ Deniss VASILJEVS Lukas BRITSCHGI Kazuki TOMONO
1 4S 4T 3Lz+2T 4Sq 4T+2T 4T+3T
2 4T 4Lo 3A 3A+2T 4T 2S
3 3Lz+3Lo 3F+1Eu+3S 3F 3Lo 3A+2T 4T
4 3F 3Lz 3Lz ChSq1 3Lo 3Lo
5 FCSp4 CCoSp3 CCSp4 3A FCCoSp4 CSSp4
6 CCoSp4 ChSq1 StSq4 FSSp4 3A FCSp4
7 StSq4 3A+2A+SEQ 3T 3Lz+3T 3F!+1Eu+2S StSq4
8 3A<+1Eu+3S< 3T 3S+1Eu+3S 3F StSq4 3A+1Eu+3S
9 3A 3A+2T 2A+2A+SEQ 3Lz+1Eu+2S 3Lz 3F+2T
10 3Lz+2A+SEQ CCSp2 FSSp4 CCoSp4 ChSq1 3A
11 FCCoSp4 FSSp4 ChSq1 StSq4 CSSp4 ChSq1
12 ChSq1 StSq3 CCoSp4 FCCoSp4 CCoSp4 CCoSp4
Base 82.69 77.88 64.89 74.21 74.50 76.14
GOE 7.50 9.00 13.29 10.39 12.39 7.40
PCS 84.22 86.58 90.24 86.95 79.92 84.22
Total 174.41 173.46 168.42 171.55 166.81 166.76

表彰台を伺いたいくらいの位置の選手たち。

友野選手は基本は4回転3本です。リッツォ選手は2種類2本ですが本当はトーループをもう1本入れる意志がある。チャジュンファン選手は2種類2本。ブリッチギー選手は1種類2本。バシリエフス選手は1本入るかどうか。エイモズ選手はケガ回復試合でこの時は4回転無しですがヨーロッパ選手権では1本入れていました。

90点台のPCSが出せるエイモズ選手はフル構成入れてきてノーミスすればかなり上位まで見込まれます。チャジュンファン選手はセカンドループ持ちなのですが、セカンドトーループが入っていないのであまりその価値を生かしきれていません。

バシリエフス選手、ブリッチギー選手、友野選手は今シーズンから入ったシークエンス1.0倍ルールを生かせるともう少し良いのですが、それがいないので2Tがついてきています。あとは3連のサルコウを3回転にするなど、その辺まで入ってくるとさらに上位をうかがえる。友野選手は4回転3本入れれば基礎点80点台中盤まではきますので、その構成のノーミスで表彰台チャンスまであるかと思います。

 

2強対決、ではあるのですがそれ以下の選手含め、ノーミス率が低いのが男子のある種特徴。世界選手権はノーミスの演技を多く見られたらと思います。

男子はさすがに世界ジュニアの優勝スコアを世界選手権の優勝スコアが下回る、ということはないでしょうか。ISU公認のショート100点超えが出なかったシーズンというのはソチ以前にまで遡らないと無いわけですが、それはここで誰か出してほしいところ。優勝スコアも300点超えではお願いしたいです。

表彰台経験があるのも宇野選手一人だけですので、少なくとも複数の初表彰台選手が生まれます。10人くらいにはチャンスがあるはず。フリーでの差が大きくつきやすい男子ですので、フリー第2グループからの大逆転表彰台という可能性もありますし、こういう混戦も混戦でなかなか興味深いものです。

男子シングルは23日(木)にショートプログラム、25日(土)にフリーとなります。