全日本選手権23女子シングルプレビュー

前回、代表選考の条件を載せましたが、今回は試合そのもののプレビューです。

上位選手のシーズンベストなどは前回のエントリーに出てきますので、今回は上位の選手のショートフリーの構成を見て行こうと思います。

 

○シーズンベスト上位6名のショートプログラムの構成

 

Kaori

SAKAMOTO

Mao

SHIMADA

Hana

YOSHIDA

Rinka

WATANABE

Rino

MATSUIKE

Rion

SUMIYOSHI

1 2A 2A 3A< 2A 2A 2A
2 3Lz 3F+3T 3Lz+3T 3Lz 3F 3F+3T
3 FCSp4 LSp4 SSp4 CSp4 FCSp3 CCoSp4
4 3F+3T 3Lz 3Lo 3Loq+3Tq 3Lz!q+3T< 3Lz
5 LSp4 FSSp4 FCSp3 FSSp4 StSq4 LSp3
6 StSq4 StSq4 StSq3 CCoSp4 CCoSp4 StSq4
7 CCoSp3 CCoSp4 CCoSp4 StSq3 LSp4 FCSp4
Base 32.45 32.39 33.99 31.61 31.69 32.29
GOE 8.71 9.23 1.53 2.84 3.15 5.87
PCS 36.19 32.16 30.13 30.64 31.45 30.49
Total 77.35 73.78 64.65 65.09 66.29 68.65

今期の国際大会でのトータルスコアのベストが上位の6名から、国際大会の中からショートプログラムの技術点がシーズンベストの時の構成を持ってきています。基礎点はこれより高い試合があった選手もいますし、国内ではこれより良いスコアを出している選手もいます。

トリプルアクセルが入っているのは吉田選手ですが、回転不足になっていてレベルも3が2つあることで基礎点はそれほどリードがありません。坂本選手はこの中で2番目の基礎点となっていますが、スピンをレベル4にすればもう1段階上へ引き上げることができます。

持ち札としてもう1段階自然と上がりそうなのが島田麻央選手。トリプルアクセルを入れる宣言していますので、それが入ってくると技術点が40点台後半まで出ます。PCS差が坂本選手とありますが、それを差し引いてもノーミスすればショート首位で折り返す構図が普通に見えます。

トータルのシーズンベスト上位6名を載せていますが、吉田選手、渡辺選手、住吉選手の3選手はフリーが得意で逆転していくことが多いので、ショート終わってこの6人で最終グループという構図になる可能性は結構低そうです。

ショートのシーズンベストで70点を超えているのは坂本選手と島田選手のみ。シーズンベスト3位は住吉選手の68.65 その下は上薗選手の67.87が来て、中井亜美選手を挟んで松生選手の66.29が続きます。国内戦では樋口選手、河辺選手、江川選手も70点台を今シーズン出していますので、誰が上位に入って来るかは読めません。混戦なので、昨季と同様に吉田選手や渡辺選手がショートからトリプルアクセルを入れて行ってミスが重なると、フリー前半グループにとなってしまう可能性もあります。一方でノーミスすれば70点台半ばに近い点まで出ますので、非常に振れ幅が大きいです。

 

○シーズンベスト上位6名のフリーの構成

 

Kaori

SAKAMOTO

Mao

SHIMADA

Hana

YOSHIDA

Rinka

WATANABE

Rino

MATSUIKE

Rion

SUMIYOSHI

1 2A 3A 3Aq 2A 3Lo 2A+3T
2 3Lz 4T<< 2A+3T 3Lo+3T 3Lzq+3Tq 4T
3 3S 3Lz+3T 3Lo 3F! 2A FCCoSp3V
4 CCoSp4 FCCoSp4 FCCoSp4 3Lz+2T FCCoSp3 3Lzq
5 StSq4 3F+2A 3F FCSp4 2A 3Lo
6 3F+2T 3S+3T+2T 3Lz+3T ChSq1 StSq4 StSq3
7 FSSp3 3Lo ChSq1 3Lz 3Lz!q+3T<+2T 3F+3T
8 3F+3T ChSq1 3Lz 2A+1Eu+3S 3Fq+2T 2S+2T+2Lo
9 2A+3T+2T 3Lz 3S+2A+2T 3Lo 3S 3F
10 ChSq1 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 ChSq1 LSp4
11 3Lo LSp4 StSq3 StSq3 CCoSp4 ChSq1
12 FCCoSp4   SSp4 FSSp4 LSp4 CCoSp4
Base 62.12 66.26 68.89 61.69 61.31 63.56
GOE 15.75 10.07 9.25 10.91 4.47 9.22
PCS 73.13 64.75 64.37 65.53 66.55 63.26
Total 151.00 140.08 142.51 138.13 132.33 136.04

フリーも吉田選手が基礎点は1位ですが、島田選手がシニアルールでステップをレベル3以上でここに足せれば技術点1位になります。4回転がダウングレードだったわけですが、それ込みで2回飛ぶジャンプをルッツとトーループで入れられているため十分基礎点は高くなります。計算上9トリプルみたいな基礎点が入っているわけです。住吉選手は4回転ありますが、サルコウが2回転になったあたりで基礎点削られて3番手です。

渡辺倫果選手はトリプルアクセルの一発逆転のイメージが強いですが、この138.13はトリプルアクセル無しで出しました。これを全日本でもやってくれば今年はしっかり上位へ行けるのですが、全日本に合わせられるかどうか。ショートフリーでトリプルアクセル込みノーミスをすれば優勝もある持ち札ではあるのですが、ちょっとそこまで望むと大崩れする危険が強すぎるので、どこまで攻めるか、というのも問われます。

坂本選手と島田選手はPCSで8~9点差付くのが現状です。これを技術点で逆転しようとすると、トリプルアクセルと4回転、両方基礎点満額取って他ノーミスで基礎点部分でほぼ追いついて、あとは出来栄え勝負となります。4回転ダウングレード付きで総GOEが10.07を出していますので、4回転も含めてノーミスすれば総GOEも坂本選手を上回って勝つことが出来そうです。トリプルアクセルと4回転、片方だけだと届かなさそうな計算になります。

吉田陽菜選手もトリプルアクセル込みのノーミスすれば技術点は坂本選手を上回って80点台を出す力はあります。PCS差を埋めるには至らないのですが、坂本選手が大過失1つ入れば追いつけるくらいの差です。ショートフリーノーミスで通せば優勝チャンスもありますが、おそらく優勝という文字は頭になくて、表彰台、世界選手権代表、というのを見ているかと思います。

松生選手はシーズンベスト5位ですが、意外とこの試合でもミスはありました。ミスがあっても130点台を出す力がある、というのが国際舞台での評価です。後半に入ってのルッツとフリップのあたりでマークがつくことが多いのですが、ここをしっかり滑り切ればフリー140点台で表彰台のチャンスも見えてきます。実はPCS66.55は、今期の日本女子では坂本選手に次いで2番目です(ジャパンオープン宮原知子さんは除きます)。高難度無し勢ではノーミスした時に坂本選手に次ぐスコアを出せる力があります。

住吉選手は4回転込みでノーミスすれば高い基礎点になるのですが、まず、まだ4回転の確率は低いですし、それ以外の要素もミスなく滑る率が吉田選手あたりと比べて落ちます。その上で意外と伸びないPCSというのもあります。この辺はノーミスが出ると印象変わってPCSも伸ばしてもらえそうな構成と思えますので、それが全日本にあたるかどうか。

坂本選手は受けて立つ立場ですが、ノーミスしないと危ない相手が何人かいますので、結構プレッシャーはかかります。ショート2位になってしまう方が気分は楽かもしれません。

上二人は抜けているのですが、シーズンベスト3位以下はそれほど点差は離れていません。表彰台争いは混戦になりそうです。

 

○ジュニアから出場選手のフリーの構成

 

Rena

UEZONO

Yo

TAKAGI

Ayumi

SHIBAYAMA

Ikura

KUSHIDA

Haruna

MURAKAMI

横  井

きな結

1 3Lz+3T 3Lz+2T 2A 3Lz+3T 3Lzq+3T< 2A
2 3Lo 2A+3T 3Lz+3T 3S+3T 3F 3Lz+2T
3 3F!+2T 3F 3Lo FCCoSp4 2A 3Lo
4 3S FSSp4 CCoSp4 2A 3Lz< 3S
5 FSSp4 3S 3S 2A< LSp4 FSSp4
6 3Lz 3Lz FCCoSp4 CCoSp4 3S+3T LSp3
7 3F FCCoSp3 ChSq1 3Lo FSSp3 StSq2
8 2A+2A+2T 3Lo 3Lzq+3Tq 3Lz!q 3Lo 3T+3T
9 LSp3 ChSq1 3F+2T+2Loq 3F+2T+2Lo 2A< 3Lz
10 ChSq1 3T+2A 2Aq ChSq1 ChSq1 2A+2T+2Lo
11 CCoSp4 CCoSp4 LSp4 LSp4 CCoSp4 ChSq1
12           CCoSp4
Base 58.81 56.93 59.17 58.25 52.02 56.86
GOE 9.81 6.86 2.30 2.18 0.53 8.35
PCS 59.97 60.94 54.47 55.29 54.16 54.98
Total 128.59 124.73 114.94 113.72 105.71 120.19

ジュニアの選手も国際大会の結果から優先して持ってきていますが、横井きな結選手は国際大会の出場が今季ありませんので、国内のベストスコアを持ってきています。

基礎点で見ると柴山選手がこの中では高いです。ステップレベル4を足せれば63点台に乗ってきて坂本選手を超えるところまで出せます。ジャンプの技術は本来高い選手。マークが外れれば技術点70点台半ばまで出して上位に顔をのぞかせることも可能です。ただPCSが弱点で、上薗選手、髙木選手が5点以上差がついてしまっています。出来ればショート上位で滑走順を後ろにして何とかその差を埋めていきたいところです。

シーズンベストはやはり上薗選手が高く、ステップを単純に乗せれば130点台になりますし、トータル200点級です。トータルのシーズンベストは7位で3位とは7.51差。ジュニアシニアのルールの違いを考えれば非常に僅差で、いきなり表彰台の可能性も十分にあります。今期国内外で7試合フリーを滑ってワーストでも120.27と120点を超えるのが強み。大崩れしない強さがあるので世界ジュニア代表入りは固いと思われます。

髙木選手は3-3が無いのが痛いですが、フリーの構成はダブルアクセルからセカンド3回転を付けられれば大きな差は出てきません。木下トロフィーではルッツからの3-3を入れていたのですが、その構成をもう一度チャレンジしたりする可能性はあるか? ジュニア組ではPCSが伸びる選手なのでそこも武器に世界ジュニア代表を勝ち取りたいところ。

櫛田選手は国際大会では転倒が嵩んで点が出ていませんが、基礎点はしっかり出る構成です。世界ジュニアの代表争いとしては、最低限髙木選手に勝ちたい。出来れば松生選手にも勝ちたい。全日本ジュニアから好調で、12月頭の愛知県の大会でもジュニアシニア2つショートを滑ってどちらも60点台半ばから後半を出しています。国内戦では髙木選手より実績は上。全日本ではどう出るか。

横井きな結選手は西日本学生で120点に乗せました。シニアルールで基礎点56.86はあまり高い構成ではありません。フリップ無しの6トリプルなのが痛いところ。上位進出にはノーミス必須です。

村上遥奈選手は今期基礎点を伸ばせておらず、PCSも低めなのでこのままだと少し苦しいのですが、昨季終わりのトリグラフトロフィーでは3-3を2つ決めて57.77まで基礎点を出していました。それくらいのスコアを出して、昨季の17位を上回る成績を出していきたいところかと思われます。

髙木選手と櫛田選手の代表争い。シーズンベストは髙木選手が上ですが、基礎点は櫛田選手が上で、全日本ジュニアのようにミスなく滑れば櫛田選手が上へ行けます。後は意外と、ジュニアのフリーには入っていないステップのレベル・出来で勝負が分かれる、なんてことにもなるかもしれません。

 

○シニアのシーズンベスト上位選手のフリーの構成

 

Wakaba

HIGUCHI

Yuna

AOKI

Mone

CHIBA

Mai

MIHARA

Mana

KAWABE

山  下

真  瑚

1 2A 3Lz 3F+3Tq 2A+3T< 2A+3T 3Lz+3T
2 3Lz+3T< 3S 2A 3Lz<+2T+2Lo< 3F<+3T< 3F!q
3 3Lo 2A+1Eu+3F! 3S<< 3F!< 3Lo 3Lo
4 3S 3T CCoSp4 2S 2A FCSp4
5 CCoSp4 FCSp4 3Lo FSSp4 FCSp4 2A
6 2Lz+2T+2Lo 2A+2T ChSq1 CCoSp4 3Lz<+2T+2T ChSq1
7 3Lo+2A 3Lzq+2T 3F+2T+2Lo 3Lo 3S 3Lzq
8 3F 3F!< 3Lz< 3Lz<+2T 3F!< 2A+2T+2T
9 FCSp3 CCoSp4 FCCoSp2V 3S< CCoSp4 3S+3T<<
10 StSq4 ChSq1 3Lz!<+2A ChSq1 SSp3 SSp3
11 ChSq1 StSq4 StSq4 StSq4 StSq2 StSq2
12 LSp3 LSp4 LSp4 FCCoSp4 ChSq1 CCoSp3
Base 57.82 56.98 57.12 52.27 54.41 56.64
GOE 9.08 6.61 -1.28 -3.34 -0.01 0.61
PCS 62.83 62.59 59.71 61.89 56.48 60.53
Total 129.73 126.18 113.55 109.82 110.88 116.78

このあたりの選手はノーミス基礎点はもう少し高いのですが、今シーズン出せた基礎点としては60点に届いていません。

樋口選手は今期ルッツないしはルッツからのコンビネーションでことごとく回転不足が付いてきています。トリプルアクセル投入の前にショートもフリーもルッツが鍵です。ルッツの絡む3つのジャンプ要素がしっかり安定すれば、それだけでトータル10点以上スコアを上げていけます。

青木選手はセカンドループが入らないと6トリプルになってしまうので基礎点が意外とあがりません。セカンドループが冒頭で決まってくると全体の印象もよくなりますし上位にまで顔を出していけそうです。ただ、玉砕覚悟でセカンドループではなくて、危ない時には回避する冷静さもNHK杯で見せていたので、それ込みで、昨季の7位を上回れれば4大陸が見えてきます。

千葉選手は今季ジャンプに苦しんでいます。どのジャンプがということでもなくすべてのジャンプでうまく決まっていかない。最後の試合から1カ月半ありましたが、その間に調整が出来ているか? 構成的にはフリップ2本ルッツ2本でかなり高いものになっていますので、ジャンプの調整さえできれば表彰台争いに顔を出せるだけの地力はあります。

三原舞依選手は今季の実績は全く参考にならなくて、元気かどうか、というだけです。体調さえよければ表彰台どころか優勝もある選手ですが、どうなんでしょう?

河辺選手はグランプリシリーズで結果が残せませんでしたが、中部選手権では191点台を出しています。ショートプログラムでは国内なら70点台あり、他にも60点台後半2試合。印象ほど悪くないです。トリプルアクセル無しでショートノーミスして上位でフリーに入ってくると勝負になるかと思います。

大学3年生になった山下真瑚選手は大学生になってから国際大会出場がありません。ここでトップ10に入って国際大会復帰を狙いたいところですが、フリーは今季110点台が並んでいます。ショートは60点台後半まで出してくることもありますし、フリーで苦手のフリップを克服してくれば190点付近まで出してくる芽もあるかと思います。

 

 

全体通して、ショートは坂本選手島田選手の争いかと思われますが、国際大会で2人しか出せなかった70点台に何人乗ってこられるか? トリプルアクセル勢はどうするか、どうなるか。ジュニアと戦う坂本選手のプレッシャーと、ジュニアで全日本勝ってしまうかもしれないという島田選手のプレッシャーはどちらが大きいか? 

シーズン前半不調だった選手はどこまで全日本に合わせてこられているでしょう。表彰台争いは混戦です。坂本選手島田選手以外も10人くらいはチャンスがありそう。B級大会派遣枠? に入るのも大変ですがそこ狙いの選手もいる。

今年もハラハラする大会になりそうです。