世界選手権23 女子シングル

世界選手権が終わりました。はらはらしどうしのある種つかれる試合でしたが、今回はコロナ欠場もなく、エントリー全選手滑り切ることが出来てよかったと思います。

今回は女子シングル、試合展開を振り返っていきます。

 

○女子シングル 総合結果

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 224.61 79.24 145.37
2 Haein LEE KOR 220.94 73.62 147.32
3 Loena HENDRICKX BEL 210.42 71.94 138.48
4 Isabeau LEVITO USA 207.65 73.03 134.62
5 Mai MIHARA JPN 205.70 73.46 132.24
6 Chaeyeon KIM KOR 203.51 64.06 139.45
7 Nicole SCHOTT GER 197.76 67.29 130.47
8 Kimmy REPOND SUI 194.09 62.75 131.34
9 Niina PETROKINA EST 193.49 68.00 125.49
10 Rinka WATANABE JPN 192.81 60.90 131.91
11 Nina PINZARRONE BEL 191.78 62.04 129.74
12 Amber GLENN USA 188.33 65.52 122.81
13 Madeline SCHIZAS CAN 187.49 60.02 127.47
14 Anastasiia GUBANOVA GEO 184.92 65.40 119.52
15 Bradie TENNELL USA 184.14 66.45 117.69
16 Ekaterina KURAKOVA POL 181.43 65.69 115.74
17 Lara Naki GUTMANN ITA 178.43 55.22 123.21
18 Yelim KIM KOR 174.30 60.02 114.28
19 Olga MIKUTINA AUT 172.31 57.05 115.26
20 Julia SAUTER ROU 165.62 56.02 109.60
21 Janna JYRKINEN FIN 160.91 56.06 104.85
22 Lindsay VAN ZUNDERT NED 159.55 57.56 101.99
23 Sofja STEPCENKO LAT 158.38 58.87 99.51
24 Alexandra FEIGIN BUL 155.74 54.65 101.09
25 Lorine SCHILD FRA 54.35 54.35  
26 Jade HOVINE BEL 54.10 54.10  
27 Kristen SPOURS GBR 53.38 53.38  
28 Ema DOBOSZOVA SVK 53.01 53.01  
29 Kristina ISAEV GER 52.93 52.93  
30 Anastasia GRACHEVA MDA 50.55 50.55  
31 Marilena KITROMILIS CYP 48.92 48.92  
32 Eliska BREZINOVA CZE 47.29 47.29  
33 Dasa GRM SLO 47.04 47.04  
34 Julia LANG HUN 44.26 44.26  
35 Mia RISA GOMEZ NOR 43.54 43.54  

ショートプログラムではランキング上位の12人に入る前に4グループ23人が滑りました。その中では自力はありながら昨シーズンはけがで欠場などランクが低くなっていたテネル選手が涙の演技で首位。ただ、ジャンプのq3つは痛く、この辺の調整がしっかり出ていればもっと点が出ていました。66.45は本人の全盛期比だと少し物足りないのも事実です。PCSはもうちょっと出してあげてもよかったような気はしました。2位にはフリートリプルアクセル投入予定のアンバーグレン選手。アメリカ勢が1位2位で後半グループを待つ展開。3位にはジュニアグランプリ3位だったキムチェヨン選手がジャンプのミスがありながらも入ってきます。その下にスイスのレポンド選手、ベルギーのピンザローネ選手と今シーズンからシニアに上がった2人。この辺までは順当な展開だったでしょうか。

 

後半グループ、早い段階で渡辺倫果選手。トリプルアクセル転倒、ルッツ1回転・・・、まずい、ショート落ちの危機が・・・と頭をよぎりましたが何とかリカバリー3Tもついて60.90 60点台には乗せます。フリー進出は確定。悪いながらも60点に乗せる自力がこの1年でついた、ということなわけですけど、ノーミスなら75点くらい出るPCSをもらえるようになってきているのでもったいなかった、という思いもありました。

優勝争いしそうな選手で最初に出てきたのは28番滑走でレビト選手。パーソナルベストの73.03で首位に立ちます。順当、という感じでした。

驚いたのはその次、エストニアのペトロキナ選手。先月のタリンクホステルカップで200点超えしてますので、驚くことでもないのですが、先日の世界ジュニアは12位に終わっていて、B級スペシャルスコアかな、くらいに思っていたのですが、この世界選手権のショートで見事な滑り。68.00はパーソナルベストで2位に入って最終グループを待ちます。

 

最終グループはヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手がまずまずの演技。次いで、グランプリファイナルチャンピオンの三原選手。最後のコンビネーションでqが付きましたがいつもの力を見せて僅差ですが首位に立ちました。次は四大陸選手権チャンピオンと今期のチャンピオンが続いてのイ・ヘイン選手。全要素全ジャッジ+2以上という演技で73.62のパーソナルベスト、これも僅差ですがトップに出ます。

2人続く韓国勢、キムイェリム選手でしたが、こちらはジャンプが合わず。点が伸びずの60.02 表彰台争いから遠いスコアになってしまいました。ちょっとシーズン後半、合わない試合が多くなっていたでしょうか。

真打登場、ラス前に坂本花織選手。スピンステップオールレベル4の全要素全ジャッジ+2以上。ジャネットも納得の演技で79.24のシーズンベスト。混戦から1人抜けだし首位に立ちました。

ショートで坂本選手と対抗できるとしたらこの人、という最終滑走ヘンドリックス選手。残念ながら生命線の1.1倍コンビネーションで転倒。それでも他の要素は全ジャッジ+2以上で、全選手2位のPCSと合わせて71.94 表彰台争いに踏みとどまりました。

ショート終わって日本勢は坂本選手1位、三原選手3位でスモールメダル獲得。渡辺倫果選手は15位。全日本と似た展開からの逆転を狙います。表彰台圏は遠いですが、6位までは8点差なので手が届く位置ではあります。表彰台争いは5位まで、特に2位から5位の4人で2枠を争うという感じでしょうか。優勝争いは坂本選手のミス待ち模様。

3枠争いでは日本は当確。韓国は2位、12位、16位とピンチ。アメリカが4位9位10位とやはり際どいところ。ベルギーは5位と14位でチャンスはあるけど厳しいかな、という位置でした。

 

フリーは第1グループ終わってイタリアのララナキグットマン選手がトップで178.43 順当に進んで第2グループに入ったという印象でした。

早くも第2グループ2番目でキムイェリム選手。冒頭からジャンプ決まらず。ああ、立て直せないか・・・、といった流れのまま終わってしまいました。この時点で2位。韓国3枠危ないんじゃ・・・、という風にこの時には思っていました。

カナダのシーザス選手はトップ10狙い。130点台が欲しいな、という状況下でほぼノーミスと言えるいい演技でしたがPCS伸びずトータル187.49 トップに出ますがちょっと届かないかなあ、という印象でした。結果、最終的にカナダは1枠で終わります。

 

続いて渡辺倫果選手。日本人選手がこの位置で滑ると、テレビ局が構成難しくなるので後半に入ってあげてほしかったのですが第2グループの4番目。衣装変わった。これはこれで。トリプルアクセルはフリーも結局不発。ただ、不安だったルッツはなんとか決めました。ミスが出たのはフリップ。あとは何とか無難にまとめ、この位置で滑ると周りの選手と比べて目を惹く演技ではありPCSも高めに出てトータル192.81 この時点でトップに立ちます。1年前ならノーミス200点という力だったのが、今はミスがあれだけ出ても190点台まで出るようになったわけで、自力は上がったのだと思います。ペーペーだったのが1年半で部長くらいになっちゃって、と言っていましたが、逆に言うと社長級役員級ではないわけで、部長級として及第点くらいの出来、スコアだったように感じました。

 

渡辺選手から3人続けて、昨季世界ジュニアに出ていた選手が続きます。ベルギーのピンザローネ選手。回転不足が実際には1つありましたが見た目ノーミス演技で技術点を70点に乗せました。ただPCSは伸びずトータル191.78でわずかに渡辺選手の届かず。それでもベルギー3枠の芽は残します。さらにスイスのレポンド選手が第2グループ最終滑走で見事ノーミス。人生初130点台でトータル194.09でこの時点首位に立ちます。

 

後半グループは1人目のキムチェヨン選手。韓国3枠はこの選手に掛っていたのですが、ここですごい演技が出ました。16歳のポエタと言えば宮原知子さんのそれもありましたが、素晴らしい演技でした。スピンステップオールレベル4の全要素プラス評価。技術点76.78は最終的に全体トップ。トータル203.51まで出して首位に立ちます。これでまだ11人いますが、韓国3枠はかなり可能性が高くなりました。

残念だったのはそのあと。ヨーロッパチャンピオンのグバノワ選手、トリプルアクセルチャレンジのグレン選手と、スコアを伸ばせず上位に入ってこられません。続いてクラコワ姉さんの空飛ぶ家。今回はジャンプで詰まりが目立ち全体に勢いがなくなってスコア伸びず。

17番滑走でアメリカのテネル選手。ここで頑張らないとアメリカ3枠が厳しいという状況。しかしながら3回転のジャンプ6本のうち1本は抜けて1回転、アンダーローテーション2つ、qが3つとことごとく決まりません。スピンステップはさすがなものがあったのですが、スコア伸びず。7人を残してアメリカ勢は5位と8位。3枠争いでは追い込まれます。

ここまで第3グループが伸びないので、キムチェヨン選手が孤独に上位者席に1人ぽつんと待っている状況。ようやくそこに入ってきたのはニコルショット選手でした。ショートフリーでノーミス。人生初の130点台でトータル197.76で2位に入ってきました。残り6人ですのでドイツはここで来期も2枠を確定させます。

 

最終グループは驚きの6位スタートペトロキナ選手。さすがにちょっと固いかな、という雰囲気は感じましたが派手なミスは出ず何とか耐えきったという演技だったかと思います。ノーミスとはいきませんでしたがまずまずの演技でこの時点で4位に残ります。残り5人なので9位以内ということになり、エストニアも2枠確保確定。キーブス選手など強い選手もいますので、2枠取っておきたかったエストニアとしては非常に価値のある結果となったかと思います。

残り5人がショート70点台の優勝争い。グランプリファイナル、ヨーロッパ選手権とチャンスがありながら勝てずに来たヘンドリックス選手。逆転にはノーミスが欲しいところでしたがルッツで転倒。ヨーロッパ選手権と同じ展開でしたが今回は残りのジャンプは成功させてトータル210.42で首位に立ちます。ここにメダルの線が1本引かれましたが、優勝は苦しいかなという水準です。

続いてアメリカのレビト選手。他の2人が伸びなかったので3枠確保には優勝が求められる事態に。ところが冒頭で転倒。スケートアメリカの時もそうだったのですが、冒頭でセカンドループが入らないときのリカバリーが想定されていないのか、今回もそのままコンビネーションが1つ使われず、3Loが余る形になりました。結果的に以降はノーミスでしたので非常にもったいなかったです。トータル207.65で2位。冒頭決まっていれば10点ほどスコアは上積みされてますし、そうでなくてもどこかにコンビネーション入れられるのですから、それをうまく使ってリカバリー組んでいればヘンドリックス選手の上まで行けたはずなので、非常に残念な表彰台獲り逃しとなったと思います。そして、この時点で2位だと、事実上、アメリカ3枠は消えました。

このレビト選手までで、昨シーズン世界ジュニアに出ていた選手がすべて滑り終わったのですが、世界ジュニアで1位レビト選手、7位レポンド選手、9位ペトロキナ選手、10位渡辺倫果選手、11位ピンザローネ選手という序列でした。それが今回、4位レビト選手、8位レポンド選手、9位ペトロキナ選手、10位渡辺倫果選手、11位ピンザローネ選手と同じ序列で入りました。それぞれ前年より力は付けてきたのだと思いますが、序列ってなかなかかわらないものなんでしょうか。

 

残り3人。三原選手は滑り終わってトップに出れば表彰台確定。ターゲットスコアは136.97 今季4回超えたことのあるラインですが、国体、チャレンジカップに、アンリシャルパンティエ杯とここ3試合130点前後に終わっているという現実もあります。序盤は良かった。後半に入ってコンビネーションも何とか決めました。崩れたのがルッツ。これがアンダーローテーションのリピートの1.1倍というよくわからない計算ですが、点がほとんど入らない形となりました。リカバリーで最後3連続入れたいところでループが2回転に。はっきりしたミス2つ。さらにqも2つあったことでスコア伸びませんでした。フリー132.24だとトータル205.70でこの時点3位。表彰台はほとんどなし、という形になったことは本人もスコア見た瞬間に理解したようでした。2A+3Tを2回という点を取るのに合理的な選択だったのですが、その結果、後半のルッツでミスが出るとリピートになって点が出ないという形に。本人はグランプリファイナルでもミスがあった最後のループを残念に思っていたようですが、致命傷はルッツの方だったかと思います。なお、残り2人の時点で日本は3位と8位、1人日本人が残っていますので、この時点で来期3枠は確定しました。

 

残り2人。4大陸チャンピオンのイ・ヘイン選手。トップに立つには136.81 表彰台確定には134.04が必要。ちなみに韓国3枠確定には119.88 4大陸では141.71を出していますので、それを再現できれば2位以内確定できます。すごいなこのオペラ座。4大陸に続いてまたもノーミス。今回はqが1つ付いてはいましたが、完成度は明らかに上がっていました。こんなにすごい選手でしたっけ? と思ってしまいましたが、よく考えてみると、19年のジュニアグランプリの頃から200点は超えていたわけで。ユヨン選手が目立ちすぎて、他にキムイェリム選手も強かったりして、少し目立っていませんでしたが、普通に強い選手でしたね。フリー147.32は今季のシニアでトップのスコアとなりました。トータル220.94で220点超え。韓国勢ではキムヨナさんのバンクーバーオリンピック以来、史上2度目の220点到達となりました。

 

最終滑走坂本花織選手。優勝のターゲットスコアは141.71 今季それを超えるスコアは6回出してはいますが、ISU公認では4試合中スケータメリカでしか出せていなかったりします。楽勝ではない、少し危険なスコアです。序盤は良かった。問題は後半。というところで心配だったコンビネーション、フリップが1回転に。セカンドは3回転しっかり飛びましたがここで1ミス。もう1つ出ると危ない、というところで3連続ジャンプ、何とかクリアしました。1番最後のスピンがレベル3になりましたが何とか全要素プラス評価は確保。あの滑りで最終滑走だとやはりPCSは強い。フリー145.37は2位ですがトータル224.61で逃げ切り優勝となりました。今季、フリーで140点を超えられなかった試合は、すべて7つ目の要素の3F+3Tがしっかり入らなかったので、まずい、とフリップ抜けた瞬間は思いましたが、今回は総合力で勝ちました。224.61は世界ジュニアの優勝スコアをわずかながらですが上回り、なんとかシニアの貫禄を示すこともできました。

一方で、19年の世界選手権と同じミスを・・・、と言っていましたが、まさに同じフリップのところの抜けでしたし、スコアとしてもその時はトータル222.83と今回に近いですし、フリーのスコアは145.97で今回より上でした。本人の記憶の中では、あの時と変わっていない・・・、と思ってしまうのは自然なことだったような気はします。

 

見どころ多い試合でしたが、サプライズは韓国勢でしたでしょうか。キムイェリム選手の大崩れ含めサプライズでした。来期3枠確保は日本と韓国。2枠はベルギー、アメリカ、ドイツ、スイス。エストニア。ベルギーは3位と11位なので3枠まであと1つでした。スイス、エストニアはうれしい増枠です。ジョージアアゼルバイジャンが2枠持っていたのが1枠に。ただ、ジョージアは1人しか出ていませんでしたし、アゼルバイジャンに至ってはリャボワ選手引退に伴って出場者なし。特に問題はなさそうです。

今回、ニコルショット選手、キミ―レポンド選手、ニナペトロキナ選手が好スコアを出したことで、今シーズンのシーズンベストランクで紀平選手が25位に落ちてしまいました。グランプリシリーズはシーズンベスト24位までが優先的に回ってくるはずですが、これがどう出るか。

 

次回、男子シングルの全体を振り返って、数値編はそのあとから、となります。