世界選手権23 男子シングル

前回の女子シングルに続いて、今回は男子シングルです。なかなかすごい試合展開でした。

 

○男子シングル 総合結果

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shoma UNO JPN 301.14 104.63 196.51
2 Junhwan CHA KOR 296.03 99.64 196.39
3 Ilia MALININ USA 288.44 100.38 188.06
4 Kevin AYMOZ FRA 282.97 95.56 187.41
5 Jason BROWN USA 280.04 94.17 185.87
6 Kazuki TOMONO JPN 273.41 92.68 180.73
7 Keegan MESSING CAN 265.16 98.75 166.41
8 Lukas BRITSCHGI SUI 257.34 86.18 171.16
9 Matteo RIZZO ITA 256.04 79.28 176.76
10 Adam SIAO HIM FA FRA 253.11 79.78 173.33
11 Vladimir LITVINTSEV AZE 251.76 82.71 169.05
12 Daniel GRASSL ITA 244.43 86.50 157.93
13 Deniss VASILJEVS LAT 243.15 82.37 160.78
14 Mikhail SHAIDOROV KAZ 236.93 75.41 161.52
15 Sota YAMAMOTO JPN 232.39 75.48 156.91
16 Mark GORODNITSKY ISR 232.13 77.89 154.24
17 Mihhail SELEVKO EST 230.94 76.81 154.13
18 Andreas NORDEBACK SWE 223.52 73.45 150.07
19 Nikita STAROSTIN GER 217.87 75.53 142.34
20 Morisi KVITELASHVILI GEO 212.32 73.05 139.27
21 Andrew TORGASHEV USA 210.59 71.41 139.18
22 Boyang JIN CHN 204.22 75.04 129.18
23 Adam HAGARA SVK 203.26 70.29 132.97
24 Maurizio ZANDRON AUT 194.31 70.36 123.95
25 Kyrylo MARSAK UKR 68.60 68.60  
26 Conrad ORZEL CAN 67.65 67.65  
27 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 67.60 67.60  
28 Burak DEMIRBOGA TUR 65.73 65.73  
29 Nika EGADZE GEO 65.17 65.17  
30 Alexander ZLATKOV BUL 62.31 62.31  
31 Jari KESSLER CRO 61.94 61.94  
32 Graham NEWBERRY GBR 61.70 61.70  
33 Vladimir SAMOILOV POL 61.48 61.48  
34 Georgii RESHTENKO CZE 59.93 59.93  

男子はショートの序盤ではアゼルバイジャンのリトヴィンツェフ選手が82.71 全要素プラス評価の演技でしばらくトップを保ちます。怪我もあって今期あまり滑っていないボーヤンジン選手は冒頭にルッツを組み込むも2回転になって零点扱いになり75.04 この時点でショート通過は決めますが今一つな立ち上がりでした。

有力選手で最初に出てきたのは第4グループでケビンエイモズ選手。怪我もあってどうかというシーズンでしたが冒頭4-3も耐えてノーミス。PCSもここから44.45と9点平均近いところまで出して首位に立ちます。

第4グループ最後には今シーズンジャパンオープンと全米しか出ていないジェイソンブラウン選手。4回転無し構成で技術点47.83を叩きだし、94.17 エイモズ選手に次いで2位に付けます。表現系に振っている2人が90点台半ばまで出して、ランキングトップ12人待つ製氷へ。

今期ユーロ表彰台、のっているブリッチギー選手から後半へ。セカンドが2回転になりますが86.19とまずまずの演技。

そこから日本人選手が2人続きます。23歳にしてワールド初出場山本草太選手。今シーズン後半は結果的に苦しかったです。グランプリファイナルで躍進して表彰台に乗った選手はシーズン後半苦しむの法則。1シーズンいい結果を出し続けるのは難しい。4回転2つまでは耐えたのですが、トリプルアクセルで転倒、75.48は苦しいスタートになりました。

次の友野選手も4回転サルコウで転倒。しかしながら他の要素は全ジャッジ+2以上で技術点は50点に乗せてきて92.68 ここまでの3位に付けました。ノーミス100点を昨年出してますが、ノーミス100点実力はある、というのがこのスコアからも見えます。

そして今を時めくマリニン選手。ショート割と苦手感あるのですが今回は決めました。全要素全ジャッジ+1以上。ただ、難しい技発表会な色が強くPCSは40.89までで最終的に全体11位。スコアは100.38と100点には乗せましたが、人間にも手の届く範囲に収まりました。

ジョージアのクビテラシビリ選手、今期絶不調。その中ではまだいい方かな、という演技でしたが、キスアンドクライ、エテリ、エテリ、エテリ? エテリコーチ来日してたの?? ヨーロッパ選手権にもいなかったと思いますが・・・。日本なら特に怒られないと思ったのでしょうか? 普通に座っていて驚きました。

ラス前グループ最終滑走はバシリエフス選手、4回転サルコウをショートから入れてきて意外でしたが、どうしても飛べるようになりたいのでしょう。転倒にはならなかったものの決まらず。コンビネーションでも回転不足がありスコア伸びません。

 

最終グループは割と芸術色濃い面々が集まってチャジュンファン選手から。全要素全ジャッジプラス評価。これは100点行ったか、のマイケルジャクソンでしたが、99.64 もうちょっと、もうちょっと、とブライアン先生と話していたでしょうか。

そしてメッシング選手も続く。全要素全ジャッジ+2以上。PCSも9点台で98.75 スマホ忘れた?お子さん映像はなしです。 最終戦でパーソナルベスト更新。この時点で3位。スモールでもいいからワールドのメダルを上げたい。でもあと4人。そんな気分。

リッツォ選手も続くか、と思わせる冒頭コンビネーションから、4Lo転倒にアクセルは1回転・・・。イタリア3枠は厳しそう、とショートの1人目時点で思わざるを得ない展開になりました。

怪我の状態が心配な宇野選手は最終グループ4番滑走といういい位置。すごく普通の冷静な落ち着いた表情で終始いましたが、全要素全ジャッジ+2以上をサラッと演じて104.63 今シーズンの世界最高スコアで首位です。セカンドは今回もまた2回転ですが、この辺はケガの影響なのか平常運転なのか、もはやよくわからないです。

フランスからアダムシャオイムファ選手。ジャンプ全マイナスでコンビネーションはいらず。表彰台チャンスあると思っていたのですが、79.78は20点差あるのでちょっともう厳しいな、と思わざるを得ない。フランスも3枠チャンスある国でしたが、これで苦しくなりました。

最終滑走グラスル選手。最終グループの中では毛色の違うタイプ。4Lzは降りましたがqつきました。大きなミスはなく8位スタート。エテリコーチ座ってるし・・・。

 

ショート終わって日本勢は宇野選手首位で友野選手は7位。最終グループにはぎりぎり入れず。山本草太選手は17位。ショートでここまで落ち込むとは・・・。

優勝争いは宇野選手優位そうに見えてケガも抱えているし不安はある。マリニン選手はPCS伸びない。3位以下は構成やや弱い。90点台の7位友野選手くらいまでは展開次第で優勝のチャンスもありそうですし、表彰台チャンスもこの辺まで位に見えます。

 

 

フリーは第1グループからはそれほどスコア伸びず。ボーヤンジン選手は4回転2本回転不足の転倒。最終順位は22位でした。来シーズン復活できるか

 

第2グループに入ってカザフスタンのシャイドロフ選手が4回転3本降りて、技術点90点に乗せ首位に立ったところで山本草太選手へ。冒頭4回転サルコウ転倒から。トーループ2本は降りましたが、トリプルアクセルも決まらず。スコア伸びませんでした、グランプリファイナルでは技術点100点まで行ったのですが・・・。シーズン後半ふるいませんでした。

第2グループでは最後に出てきたリッツォ選手がいい演技でした。中盤までパーフェクトペース。後半に入れたトーループが3回転になり次のトリプルアクセルもすっきり決まりませんでしたが技術点は90点を超え、PCSも前半グループでは随一の85点台。トータル256.04でイタリア3枠への希望を繋げます。

 

後半グループはアダムシャオイムファ選手から。冒頭ジャンプ3つでこれはどうなっちゃうんだ、という感じでしたが、30,4,25? 日本の子供のカウントと共に安定感を取り戻して後半はなんとか立て直しました。キスアンドクライのブノワ先生怖いです、シンプルに見た目が。253.11でこの時点2位。フランス3枠にはここで首位には出ておきたかったところ。

バシリエフス選手はフリーも4回転チャレンジ。Qでもなんでも降りておけばスコア的にはダメージはないです、2Aの代替にあたる構成なので。それよりは最後のジャンプ2つがもったいなかったです。スピンはさすがの全体2位でした。

ショート10位のリトヴィンツェフ選手。4回転2本含めて全部降りました。全要素プラス評価。ただ、ロシア系でよくありがちな、ジャンプ発表会な感じでPCSは伸びませんでした。251.76は9人を残して3位。10位以内に入ればアゼルバイジャン2枠ありますが、今シーズン他に国際大会に出ている選手もいませんので、1枠も2枠もあまり関係ないです。

ヨーロッパ選手権3位表彰台のブリッチギー選手がここで登場。今季の躍進ぶりはすごい。ここでも全要素プラス評価をもらって171.16 初の170点台でトータル257.34は僅差ですがこの時点で首位。スイス来期2枠確定。世界ジュニア2位のナオキロッシ選手が出てくるものと思われます。

イタリア3枠のためにもここで最低でも首位に立ちたいグラスル選手登場。しかし、ジャンプが、転倒はしないまでもことごとくすっきり決まらない。生命線の技術点も80点に乗らないとつらいです。244.43はこの時点で5位。イタリア3枠は事実上消えました。イタリアはメモラ選手。フランジパーニ選手など3番手4番手も強いので、来期の自分のために3枠取っておきたいところでした。

 

ここから表彰台争い、という形で第3グループ最後は友野一希選手。4回転トーループが・・・。もったいなかったなあ・・・。そして、本当は冒頭のコンビネーションも3回転が欲しかった。そこまでできれば技術点100点出せます。ノーミス技術点は105点くらいまであります。フリー180.73はパーソナルベスト。トータルは273.41 ここがまずメダルラインの最初の関門になります。結果論ですが、ショートフリーで4回転1本づつ転倒しましたが、どちらもしっかり決めていれば4位まで、フリーでセカンド3回転までつけていれば3位表彰台までありました。惜しかった。

 

最終グループはフリーでも芸術系タイプが並びます。マリニン選手が異質。アメリカはジャンプに振り切ったマリニン選手と芸術系に振り切ったブラウン選手、両極端で面白い。

そのジェイソンブラウン選手。4回転レスで全要素全ジャッジプラス評価。生きる芸術。185.87はパーソナルベスト。おそらく4回転レスの史上最高スコアなはずです。トータルで280.04 280点までメダルラインを上げていきました。ワールドのメダルを上げたい。

2人目はケビンエイモズ選手。こちらは4回転が1本入ります。それも含めノーミス。完璧。全要素プラス評価。何点出るか? 187.41は当然のパーソナルベストでトータル282.97 ジェイソンブラウン選手の上に出て首位に立ちます。メダルラインが上がっていく。エイモズ選手にもメダルを上げたい。でもメダルは3つしかありません。

今シーズンで引退のメッシング選手がここで登場。3人目は4回転が2本になります。その2本が決まって、メッシング選手も続くか! と思った矢先、トリプルアクセル入りませんでした・・・。スピンもミスが出て中盤中だるみ。1.1倍ジャンプはeはありましたが立て直してコレオは圧巻。メダル上げたい。でもメダルは3つしかない。あと1試合、ワールドチームトロフィーでの来日もお待ちしております。後進に道を譲るとか言わないようにお願いします。カナダ・・・、大丈夫かなこの先

 

残り3人。チャジュンファン選手、この時点で首位に立てばメダル確定、ターゲットスコアは183.34 パーソナルベストはオリンピックの182.87がありますが今シーズンは174.41が最高です。4回転2本にセカンドループ付き、構成が徐々に上がってきての最終グループ4人目。フリー007で表彰台に乗ればキムヨナさんを思い出されるというシチュエーション。これがまた素晴らしい演技。最終グループ暑い暑い。フリップに!つきましたが全要素マイナスなし。冒頭の4回転サルコウは平均GOE+4.333つきました。歴代でも鍵山優真選手、羽生結弦さんについで3番目の高評価ジャンプです。200点! 200点!と200点コールをしたくなるような演技で、スコアは196.39 トータル296.03で首位に立ちます。韓国男子初のメダル確定。

残り2人で異次元構成マリニン選手登場。4回転5種類6本。首位に立つターゲットスコアは195.65 メダル確定ラインには182.60 パーソナルベストは194.29ですから、出せない点ではない。アクセル、今回も決めました。ただ、残りの4回転は今一つ。高基礎点を生かしきれず技術点は107.08でチャジュンファン選手と1.43しか差がありません。こうなるとPCS伸びないので厳しい。フリーは188.06でこの時点2位に入りメダルを確定させましたが栄冠はつかめませんでした。

 

最終滑走宇野昌磨。優勝するためのターゲットスコアは191.41 おおよそ転倒無しで技術点100点というのが目指すところでしょうか。予定構成からコンビネーション2つしか入ってませんが・・・。冒頭からループ決まった。サルコウ微妙だけど転倒は無し。フリップクリーンでトリプルアクセルも決めた。…コンビネーションまだないけど・・・。後半入って4回転トーループは微妙だけど降りた、けど単独。次の4回転トーループも降りた、けど・・、リピート、いや、1回転付けた! 最後は3連続・・・、じゃなくて3つめやめた。計算上はこれでqや<が予想外に増えなければ、というところ。そんな中ステップ満点来ました。±5ルール以降では史上3人目。フリーの満点は初です。

どこまでスコアをイメージしながら滑っていたのでしょう。全員のスコアは頭に入れていて自分の力がこれだけだからこう滑れば何位になる、と分かって滑っています、というようなことを以前言っていた記憶があります。怪我の状態など考えながら、コンビネーションの入れ方はこれくらいでもスコアはこれくらいになるからいける、みたいなことをどこまで考えていたのか。誰か聞いてほしかったのですが。今季結局フリーでコンビネーション3つ跳んだのは全日本だけでした。ショートフリー、セカンド3回転ゼロで勝ってしまう。どういうことなんだ・・・。2連覇を果たしました。

 

すごい試合展開でした。表彰台に近いくらいの選手たちがノーミスしてくると大会は盛り上がります。来期3枠確保は日本アメリカに韓国。2枠がフランス、カナダ、スイス、イタリア。ジョージアが今期の2枠から1枠失いました。スイスと韓国は増枠です。フランスイタリアは3枠欲しいところでしたが、フランスは4位と10位。惜しいところでした。

プレビューでは、ノーミス率が低いのが男子シングル、なんてことを述べましたが、ある意味ではあたりある意味では外れ。チャジュンファン様、ケビンエイモズ様、ジェイソンブラウン様、大変失礼申しまして申し訳ありませんでした。

 

次回から数値編です。