世界選手権24 女子シングル

今期も世界選手権が終わり、シーズンがほぼ終わってきました。いろいろと簡単にいかないものだなあ、と思わされた世界選手権。毎度のことですがハラハラさせられます。

今回は、全体の試合展開を振り返っていきます。まずは女子シングルから。数値編は振り返りやった後に別途行います。

 

○女子シングル 総合結果

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kaori SAKAMOTO JPN 222.96 73.29 149.67
2 Isabeau LEVITO USA 212.16 73.73 138.43
3 Chaeyeon KIM KOR 203.59 66.91 136.68
4 Loena HENDRICKX BEL 200.25 76.98 123.27
5 Kimmy REPOND SUI 196.02 62.64 133.38
6 Haein LEE KOR 195.48 73.55 121.93
7 Mone CHIBA JPN 195.46 62.64 132.82
8 Hana YOSHIDA JPN 194.93 64.56 130.37
9 Livia KAISER SUI 187.24 64.05 123.19
10 Amber GLENN USA 186.53 64.53 122.00
11 Ekaterina KURAKOVA POL 184.76 62.34 122.42
12 Young YOU KOR 183.35 67.37 115.98
13 Anastasiia GUBANOVA GEO 182.42 58.66 123.76
14 Olga MIKUTINA AUT 177.76 60.77 116.99
15 Nina PINZARRONE BEL 177.46 64.04 113.42
16 Niina PETROKINA EST 176.53 66.23 110.30
17 Lorine SCHILD FRA 172.90 59.41 113.49
18 Madeline SCHIZAS CAN 171.78 59.65 112.13
19 Josefin TALJEGARD SWE 167.47 61.55 105.92
20 Sarina JOOS ITA 167.04 59.39 107.65
21 Nataly LANGERBAUR EST 159.55 53.81 105.74
22 Tzu-Han TING TPE 157.83 56.32 101.51
23 Mia RISA GOMEZ NOR 147.13 55.09 92.04
24 Nella PELKONEN FIN 145.45 56.82 88.63
25 Nina POVEY GBR 53.50 53.50  
26 Alexandra FEIGIN BUL 53.33 53.33  
27 Julia SAUTER ROU 52.52 52.52  
28 Eliska BREZINOVA CZE 50.90 50.90  
29 Kristina ISAEV GER 50.07 50.07  
30 Vanesa SELMEKOVA SVK 48.94 48.94  
31 Sofja STEPCENKO LAT 46.74 46.74  
32 Mariia SENIUK ISR 46.57 46.57  
33 Anastasia GRACHEVA MDA 46.12 46.12  
34 Anastasia GOZHVA UKR 40.28 40.28  
35 Meda VARIAKOJYTE LTU 40.04 40.04  

序盤に登場してくる選手はシーズンベストほどの点はなかなか出てこずフリー進出ラインは下がっていっているなあという印象。11人滑った時点で56.82が首位。以降はこの点数を超えればフリー進出は最低出来ます。

次のグループでようやく60点台が出始めますがなかなかベストの滑りを出来ている選手が出てきません。スイスのカイザー選手は良かったかな。

その次、第4グループに入っても、これショート落ち?みたいな選手が続いてしまいますが、21番滑走、ユヨン選手。ようやくここで会心の演技が出てきました。かつての天才少女もはや19歳。オリンピック以降のベストの演技だったと思います。3-3クリーンに決めたのはオリンピック以来でしょうか。67.37で首位に立ちます

続いて全米チャンピオンのアンバーグレン選手も続いて、70点出るか、という序盤の演技だったのですが、最後のループでまさかの転倒。それでも64.53でこの時点で2位に付けます。続くレポンド選手もルッツ転倒ながら62.64 さすが第4グループの後半の選手はミスが出ても60点台を出してきます。

フリー進出ラインは53.50で第5グループへ。これくらいなら、多少ミスが出てもだいじょうぶかな、というところで25番滑走千葉百音選手。序盤良かったので、これは70点ペースと思ったのですが、最後のルッツが抜け1回転で0点に。グレン選手と似たような展開ですが、3回転して転倒よりも抜け1回転はダメージが重く62.64は10人残して6位。フリー進出は確定ですが第3グループに入れるかどうかといったところ。

日本からもう1人吉田陽菜選手は第5グループ最終滑走。アクセルどうするんだろう? と思ったらダブルにしました。安全策取ると普通の3回転でミスをする法則が心配でしたがまずまず無難な滑り。実際にはコンビネーションがダブルqで-5ではありましたが、スピンステップオールレベル4で64.56 6人残して3位に付けます。ショート落ちが1番心配な選手でしたが、問題なくフリーに進みました。

 

最終グループは好演技連発。イ・ヘイン選手は復活の演技。グバノワ選手が続けばよかったのですがフリップ転倒でコンボはいらず60点に届かないとフリー第1グループになりました。キムチェヨン選手はジャンプでアンダーローテーションとエッジ注意でますが遠目にはいい演技でちゃんと最終グループに残る点を出してくる。レビト選手も、なんか大人びたなあという雰囲気をまとってパーソナルベスト、73.73、僅差ながら首位に出ます。スモールメダル確定。

ヘンドリックス選手は基礎点で差が無いショートで坂本選手の上へ出ておきたいところ。今季ただ一人の全試合70点台は伊達ではなく、76.98のパーソナルベストを出してきました。そのスコアを聞きながら最終滑走坂本選手がリンクへ。余裕なのか緊張感足りないのか、笑顔の意味はどちらなのか? ダブルアクセルこそいつもの爆加点を引き出しますが、次のルッツは着地だけでなく踏切もエッジを取られ減点、コンビネーションもいつもほどの出来でもなく、ステップがレベル3も痛かった。それでも73.29と踏みとどまって4位。首位とは3.69差。射程圏内に付けてショートを折り返します。

 

ショート終わって1位と2位の点差は3.25 2位から4位までは0.44の僅差。一方4位と5位は5.92差付きました。上位4人は昨季の上位4人でもあり、優勝争いはこの4人に絞られたのでしょう。表彰台争いもこの4人かなあ、という展開。それにしても最終グループは昨季の上位6人から三原選手が外れユヨン選手が入っただけであとの5人は今年も強いですね、という展開になりました。

千葉選手は14位で第2グループからですが、5位までなら4.73差なので届く距離。吉田陽菜選手は8位で、やはり5位までは2.81差なので十分射程圏です。3位までは8.99差あるので、吉田選手の爆発力でも厳しいかなあ、という印象。

3枠確保は吉田選手が割とフリー得意ですし何とかなるでしょう、という展開になりました。ベルギーは昨季合計14でわずかに取れなかった3枠がショート終わって12と今年も際どい勝負、韓国は3位5位6位と最終グループ全員入ってますので3枠当確でしょう。2位9位のアメリカも十分チャンスがある。来期は4カ国3枠の可能性が出てきての折り返しです。

 

フリーの第1グループは、この中だとグバノワ選手だけ実績が抜けています。会心の、とまではいかないまでも、大過失はなく123.76まで出してトータル182.42 上位で枠取り争いする選手たちにとって気になる点までは出してきました。

第3グループでは2番滑走で千葉百音選手が出てきました。序盤はいい出来、このままノーミスで200点に乗せていきたいというところでループがしっかり着地できず。得意なわけではないけれど珍しい形の失敗。後半ジャンプが難しいのが来るので心配でしたが崩れず滑り切りました。終わった後も少し硬かったでしょうか、緊張感が抜けない姿が見て取れました。フリー132.82でトータル195.46 まだ16人残っていますので順位は全然わかりませんが、ショートの13位からは順位を大きく上げそう。でも、滑走順もう少し後ろならPCSもうちょっともらえたかなあ・・・。

今期国際大会8試合目、「地元」のワルシャワカップ以外は結果を残せず苦しんでいる印象のクラコワ選手。数少ない3連フリップ。今回も冒頭に持ってきてqながらもしっかり降りました。全体的にジャンプはなんとか、という感じがどうしても出ていますけど、存在感はさすが。そして、滑り終わってご機嫌に走り出す。ショート落ちのユーロからの復活が見られてよかったです。相変わらずの明るさ。フリー122.42でトータル184.76 シーズンベスト更新。

前半グループ終わって千葉選手1位、クラコワ選手2位、グバノワ選手3位。クラコワ選手がトップ10に残ってポーランド2枠取れるかどうか際どいところ。

 

後半グループはレポンド選手から。今期はあまりぱっとしない印象だったのですが、最後の最後のこの演技でノーミス。フリー133.38のパーソナルベストを出してトータル196.02も自己ベスト更新。千葉選手の上へ出て首位に立ちます。2年前の世界ジュニアからことごとく日本選手の少し上に出ていきます。

スイス勢が続いて次はカイザー選手。ノーミス続いた。けど、まだ、PCSがもらえる演技ではちょっとないかなあ・・・、ということで123.19 トータル187.24は10人残して3位。スイス2枠はきっちり確保。

ピンツァローネ選手は来期3枠へ順位を上げたいところが冒頭ルッツから転倒。以降もユーロではqで耐えていたジャンプが<まで行ってしまいスコア伸びず。トータル177.46で9人残して7位だと、ヘンドリックス選手が優勝しても3枠は回ってこなさそう。

続いてアンバーグレン選手。表彰台は厳しいけれど何とかトップ6へ。アメリカ3枠へ。夢を乗せてトリプルアクセル。これはクリーンに決まったのですが、意外とそのあとクリーンに続かないグレン選手。今回もまたそれが出てジャンプ抜け2つ。飛んでステップアウトや転倒より、抜けて入らないことが多いですね。トータル186.53 本人は満足いかなさそうですが、8人残して4位。アメリカ3枠の芽が残りました。

怪我から回復途上なのにショート7位で驚かせたペトロキナ選手。フリーは明らかな怪我対応構成で、今日の審判団だと結構きっちり回転取るのでその点でも苦しい。というところでスコア伸びず、176.53止まりで7人残して9位。エストニアは来期は1枠に戻ることがほぼここで決まります。

さて、第3グループ最後に吉田陽菜選手。グランプリファイナルの再現が出来れば210点近くまで出るので展開次第では表彰台も無くはない、という位置。難しい曲だと思うのですがフリーは得意とトリプルアクセルを決めてきます。回転足りたと思ったのだけどq これはノーミスコースと思ったのですが、フリップに!がつくのまでは織り込み済みですが、ルッツ転倒が痛かった。ついでに目立ってませんがセカンドで3T予定が2回転もあって印象ほどは点が伸びずの130.37 トータル194.93は僅差で3位。一桁順位は確定しましたが、もう少し欲しかった、というスコアでした。

 

最終グループ6人残して、1位レポンド選手、2位千葉選手、3位吉田選手に4位カイザー選手、5位はグレン選手。日本の来期3枠確定はまだお預けですが問題ないだろうという展開。アメリカも3枠の芽が結構出てきています。千葉選手、8番滑走からまだ2位に残っていて、いつまで上位組拘束されているんだろう、という状態です。以前は前半グループは拘束されていなかったような気がするのですが。

 

最終グループはキムチェヨン選手から。首位に立つには129.12が必要。今期はあと一歩が多いのですけど、今回はしっかり決めていきます。ただ、やはりちょっとできること発表会な雰囲気になっていてPCS稼げる滑りではない部分があります。今回もフリップで!取られつつもほぼノーミスと呼べる範疇。技術点は72.81まで出してフリー136.68 トータル203.59で首位に立ちます。ただ、このスコアだと表彰台争い的にはちょっと足りないかな、という印象。

韓国続いて2人目ユヨン選手。この時点で3枠確定させる6位以内には119.88で届き、首位に立つには136.23が必要。序盤は、これは復活来たか、と思えるような出だしだったのですがループで転倒。ここからおかしくなって以降立て直せませんでした。ジャンプだけでなく、スピンステップももう少し加点をもらえる選手なのですが、後半は全体的に元気がない。フリー115.98にとどまってトータル183.35だと4人残して8位。韓国3枠確定はお預け。逆に日本はここで坂本選手を待たずに3枠が決まります。あれ、スイスが3枠の芽が出てきてる? という意外な展開もついてきました。

 

今季ここまで全試合フリー最終滑走だった坂本選手が今回は3番滑走で登場。130.31で首位に立てますがターゲットはそこじゃない。今日のダブルアクセルはあまり高くなかったように感じましたが、加点はいつも通り大量ゲット。続いてルッツは・・・、これは今日の審判団はe取るよね…、という感じですが、ショートの失敗があったのでその対処の結果ですかね。以降は全要素全ジャッジ+2以上もらっていきます。ステップはレベル3 3人残しているからPCSどれだけくれるかなあ??? と心配でしたが74.59もらってフリー149.67 トータル222.96で問題なく首位に立ちます。ただ、後続にもチャンスが残るスコアでもありました。

 

続いて今期こそのレビト選手。自身の表彰台とアメリカの3枠が懸かるフリー。ノーミス、には見えるのだけど、飛ぶぞ感のあるジャンプなので、案外加点もらえないんですよね。そして、今日の審判団はこのルッツだとエッジを取る。PCSはどう見るんだろう、と思ったら初めて70点に乗せての70.39をもらいました。フリー138.43は国別除いてのベスト。トータル212.16で2位。残り2人を待ちます。

 

初優勝を狙うヘンドリックス選手がラス前で登場。首位に出るには145.99が必要。自己ベストは145.33 ワールドのこの滑走順ならノーミスすればPCSは自己ベスト時より出るので坂本選手を超えることは可能。しかし、1ミスでもう届かない。今日の審判団はエッジも回転も結構きっちりとる。さあ、どうなる? 冒頭のコンビネーション、セカンドが2回転。これ、狙って2回転にして後半3-3にする勝負に出た? どう? 微妙で判断付きませんでした。前半ジャンプは順当に決めて行ったのですが、後半、コンビネーションのルッツが2回転になったところで優勝はもう届かない。次のジャンプ転倒で2位も届かない。最後の3連続もq付けられてこれで表彰台も届かなくなってフリーは123.27 トータル200.25は1人に超して4位。レビト選手の表彰台とアメリカ来期3枠がここで決まり、韓国勢の2年連続メダルも決まります。

 

最終滑走イ・ヘイン選手。韓国3枠は112.99で確保。113.69以下ならスイスが3枠なので、この狭い範囲の中なら4カ国が3枠取るという珍しい可能性が。表彰台ラインには130.05で届き、優勝するには149.42が必要。自己ベストは国別対抗戦の148.57があり、昨季の世界選手権は147.32 十分チャンスのある領域。ところが、冒頭のコンビネーションから、これ、足りてないよね回転・・・。という始まりで次のルッツ抜けで優勝はなし。そのあとのループとサルコウもステップアウト。これ…、もしかして韓国3枠も危ないんじゃ・・・、という展開に。この流れでもスピンはすべてレベル4取り、後半ジャンプも踏みとどまって転倒は無し、ということでどうにか121.93は確保してトータル195.48で6位。このフリーは今期のイ・ヘイン選手が出てしまいましたが、何とか韓国3枠は確保して終わりました。

 

予想外の展開が次々に起こる試合でしたが、優勝は結局大本命坂本選手でした。2位3位はどちらも17歳。現行ルールならどちらもシニアに上がれていない年回りです。相変わらずティーンエージャーが強い女子シングル。来期も今シーズンに続いて、シニアに上がる有力ジュニアがいない、というシーズンになります。新ルール新シニアは2年後、オリンピックシーズンに上がってきます。来期はグランプリシリーズあたりは基本的に今期と同じメンバーで戦っていくことになるはずです。ワールドは日韓あたりは中の入れ替わりは普通に起こるとは思いますけれど。

来期3枠を日米韓が確保。この3国が3枠持ってしまうと、他国はトップ10に入るのが大変です。カナダ、ポーランドエストニア、このあたりの2枠欲しい国にとっては、アメリカか韓国かどちらかは2枠でいてほしかったところでしょう。スイスは躍進の5位と9位。あと1つで3枠取れました。ベルギーは逆に4位と15位で3枠から遠ざかった形です。

 

次回男子シングルを振り返った後、数値編へと進みます。