世界選手権23 男子シングルレビュー2

前回からの続き。世界選手権の振り返り、男子シングルの数値編2回目です。

○フリーの要素別スコア

Pl Name Nation J Base J GOE Spin Step PCS
1 Shoma UNO JPN 71.03 7.53 13.58 10.99 93.38
2 Junhwan CHA KOR 68.30 13.39 13.25 10.71 90.74
3 Ilia MALININ USA 90.46 -4.28 11.73 9.17 80.98
4 Kevin AYMOZ FRA 62.20 11.36 12.74 10.36 90.75
5 Jason BROWN USA 54.87 10.91 14.35 9.90 95.84
6 Kazuki TOMONO JPN 67.24 5.42 11.84 9.36 87.87
7 Matteo RIZZO ITA 63.15 6.13 11.87 10.23 85.38
8 Adam SIAO HIM FA FRA 68.03 -2.07 12.89 10.69 84.79
9 Lukas BRITSCHGI SUI 55.60 11.88 11.18 9.61 82.89
10 Vladimir LITVINTSEV AZE 63.80 9.73 11.39 6.48 77.65
11 Keegan MESSING CAN 55.67 9.28 7.73 8.12 85.61
12 Mikhail SHAIDOROV KAZ 71.35 3.27 10.46 5.67 70.77
13 Deniss VASILJEVS LAT 55.46 -1.34 13.85 8.86 83.95
14 Daniel GRASSL ITA 66.10 -5.86 11.73 7.48 78.48
15 Sota YAMAMOTO JPN 63.74 -3.71 11.05 7.98 78.85
16 Mark GORODNITSKY ISR 52.83 7.00 9.38 8.31 76.72
17 Mihhail SELEVKO EST 55.15 2.66 11.99 8.01 76.32
18 Andreas NORDEBACK SWE 52.35 2.54 10.79 8.36 76.03
19 Nikita STAROSTIN GER 54.15 -3.49 10.90 8.05 73.73
20 Morisi KVITELASHVILI GEO 51.76 -2.86 9.89 6.51 73.97
21 Andrew TORGASHEV USA 54.68 -1.60 9.22 7.68 70.20
22 Adam HAGARA SVK 51.92 2.12 9.99 5.53 63.41
23 Boyang JIN CHN 47.33 -8.52 10.77 7.51 74.09
24 Maurizio ZANDRON AUT 49.40 -6.82 9.94 7.20 66.23

フリーのジャンプの基礎点はさすがのマリニン選手が突出しています。2番目にカザフスタンのシャイドロフ選手。シャイドロフ選手もかなりジャンプに能力を振り切った選手です。マリニン選手とシャイドロフ選手の差は19.11 マリニン選手の突出度合いがよく見えます。宇野選手で3番目でした。

ジャンプの加点はチャジュンファン選手が1位です。ジャンプだけで13.39もの加点を得ました。今季躍進のブリッチギー選手が2位。基礎点はだいぶ低めですが出来栄えは素晴らしかったです。ケビンエイモズ選手、ジェイソンブラウン選手と続きます。マリニン選手はジャンプのGOEはマイナスでした。結果としてジャンプで得たポイントは86.18 ジャンプのポイント2位のチャジュンファン選手が81.69ですので4.49しか差が付きませんでした。

スピンはフリーもジェイソンブラウン選手が1位。2位にバシリエフス選手、3位に宇野昌磨選手とランビエール門下生が続くところもショートと同じです。この上位3人までは今季のフリーのスピンのスコア全体の上位3位までになっています。メッシング選手はスピン1つ零点で7.73となりスピンのスコアは最下位でした。もったいない。

ステップ系要素は宇野昌磨選手が1位でした。宇野選手の10.99は今季のステップ系要素として全体1位です。チャジュンファン選手が2位、アダムシャオイムファ選手が3位でした。ジェイソンブラウン選手や友野一希選手はステップのレベルが3になりスコアが意外とのびませんでした。

PCSはジェイソンブラウン選手が1位。驚異の95.84 当然今シーズン1位のスコアです。宇野選手の93.38も今シーズン2位のスコアでした。マリニン選手は80.98 宇野選手とは12.4の差があります。ここの差がまだ大きいので今回は3位に終わったところがありますが、ここが明らかに伸びしろとしてあるということでもあります。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Shoma UNO Junhwan CHA Ilia MALININ Kevin AYMOZ Jason BROWN Kazuki TOMONO
1 4Lo 4S 4A 4T 3A+2A+SEQ 4T+2T
2 4S< 4T 4Fq 3Lz+3T 3A 4Tq
3 4F 3Lz+3Lo 4Lzq 3A+2A+SEQ 3Lo 4S
4 3A 3F! 4S 3Lo FCCoSp4 3Lo
5 ChSq1 FCSp4 CCSp4 CCSp4 3Lz+3T CSSp4
6 FCSp4 StSq4 StSq4 StSq4 3F+1Eu+3S FCSp4
7 4Tq 3A+2A+SEQ 4Lz<+1Eu+3S 3F!+1Eu+3S CCoSp4 StSq3
8 4Tq+1T 3A 4T+3T 3A StSq3 3A+1Eu+3Sq
9 3A+2A+SEQ 3Lz+1Eu+3S 3Lz+3A+SEQ 3Lz 2A 3F+2A+SEQ
10 StSq4 CCoSp4 FSSp3 FSSp4 ChSq1 3A
11 CCoSp4 FCCoSp4 ChSq1 ChSq1 3F ChSq1
12 CSSp4 ChSq1 CCoSp4 CCoSp4 CCSp4 CCoSp3
Base 87.63 85.40 106.66 78.80 71.37 82.74
GOE 15.50 20.25 0.42 17.86 18.66 11.12
PCS 93.38 90.74 80.98 90.75 95.84 87.87
Total 196.51 196.39 188.06 187.41 185.87 180.73

マリニン選手は4回転5種類6本、宇野選手は4種類5本、友野選手が2種類3本、チャジュンファン選手は2種類2本、エイモズ選手は1種類1本、ジェイソンブラウン選手は無し。基礎点的には宇野選手は3連続無しでセカンド3回転も無しなので4回転2本のチャジュンファン選手と2.23しか変わらないことになっています。友野選手もセカンド3Tが入らなかったことで4回転の本数が少ないチャジュンファン選手と基礎点が逆転しています。4回転の本数だけでなく、コンビネーションをどう入れるかが基礎点に大きく影響します。

加点は上位はほとんど二桁取っていますがマリニン選手だけほとんど得られませんでした。

スピンは宇野選手、チャジュンファン選手、エイモズ選手、ブラウン選手はオールレベル4です。ステップは宇野選手、チャジュンファン選手、マリニン選手、エイモズ選手とレベル4でした。

全選手3つ目の要素まではジャンプです。4回転無しのブラウン選手以外は4つ目までジャンプを続けます。そのあとスピンが来るのが標準的ですが宇野選手はコレオが入ってきます。ステップとコレオでコレオが先に来るのは宇野選手だけです。スピンで締める選手が多い中チャジュンファン選手はコレオで締めます。出来のいいときのコレオの締めくくりは大変盛り上がるという印象です。

 

○総合7~12位の選手のフリーの構成

  Keegan MESSING Lukas BRITSCHGI Matteo RIZZO Adam SIAO HIM FA Vladimir LITVINTSEV Daniel GRASSL
1 4T+2T 4T+2T 4T+2T 4T 4T+3T 4Lzq
2 4T 3T 4Lo 4T+2T 4T 4Lo<
3 1A+1Eu+3S 3A+2T 3F+1Eu+3S 3A 3A+2T 3F+2A+SEQ
4 3Lo 3Lo 3Lz 4S 3Lo 3A<+1Eu+3Sq
5 FSSp FCCoSp4 CCoSp4 3A+2A+SEQ FCSp4 CSSp4
6 StSq2 3A ChSq1 FCCoSp4 ChSq1 3A
7 3A 3F+1Eu+3S 3A+2A+SEQ 3Lz+1Eu+3S 3A 3Lz+3T
8 3Lz+3T StSq4 3T 3F 3F+1Eu+3S ChSq1
9 3Fe 3Lz 3A CCoSp4 CSSp4 3Lz
10 FCCoSp4V ChSq1 CCSp4 StSq4 StSq2 FCCoSp4
11 ChSq1 CSSp4 FSSp4 ChSq1 3Lz StSq3
12 CCoSp4 CCoSp2 StSq4 CSSp4 CCoSp3 CCoSp3
Base 67.40 71.50 79.75 84.93 78.60 81.90
GOE 13.40 16.77 11.63 4.61 12.80 -2.45
PCS 85.61 82.89 85.38 84.79 77.65 78.48
Total 166.41 171.16 176.76 173.33 169.05 157.93

このあたりの選手は4回転2種類までです。アダムシャオイムファ選手が2種類3本、グラスル選手、リッツォ選手は2種類2本、メッシング選手、リトヴィンツェフ選手は1種類2本、ブリッチギー選手は1種類1本です。4回転は2種類持っていればトップ10くらいまでは十分に入ってこられるようです。

ノーミスのブリッチギー選手はGOEで16.77と大きく稼ぎました。メッシング選手はミスが加算で基礎点はだいぶ削られたのですが見た目には割といい演技でGOEは13.40と大きく稼いでいます。

リッツォ選手、アダムシャオイムファ選手の2人がスピンオールレベル4です。ステップはブリッチギー選手、リッツォ選手、アダムシャオイムファ選手とレベル4でした。

ここの6人は全員4つ目までジャンプを並べます。ここのメンバーはコレオよりステップを後にする選手も結構います。リッツォ選手はステップで締めるという構成でした。ステップとコレオをつなげるという滑りアピール構成でした。

 

○フリー上位12人のPCS

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9
Shoma UNO 28.04 28.00 28.50 28.75 27.50 28.25 27.00 28.00 28.50 27.50
Junhwan CHA 27.25 26.00 26.25 27.75 28.00 26.25 27.25 27.25 29.25 27.50
Ilia MALININ 24.32 25.75 24.50 25.00 23.25 24.50 23.25 23.75 26.50 22.75
Kevin AYMOZ 27.25 26.50 28.50 26.00 26.00 27.25 29.00 27.25 28.00 27.00
Jason BROWN 28.78 29.50 28.25 28.50 27.50 29.25 28.75 28.00 29.75 29.25
Kazuki TOMONO 26.39 26.25 26.50 26.75 25.50 26.00 26.00 27.00 26.25 28.00
Matteo RIZZO 25.64 25.75 24.75 25.75 26.00 27.00 25.00 26.00 25.25 26.00
Adam SIAO HIM FA 25.46 25.25 26.00 25.75 24.75 25.00 24.75 25.50 25.75 26.25
Lukas BRITSCHGI 24.89 26.25 24.00 24.75 24.75 25.00 25.25 24.75 24.50 25.50
Vladimir LITVINTSEV 23.32 24.25 22.75 23.75 23.25 22.50 24.25 23.25 22.75 23.00
Keegan MESSING 25.71 28.00 25.50 26.50 23.50 25.50 25.00 26.25 25.00 26.00
Mikhail SHAIDOROV 21.25 24.00 20.50 21.75 21.50 21.00 21.50 21.50 21.00 20.25

PCSはフリーも女子ほどはジャッジ間の差は見られないのかな、という印象でした。

スコア的にはジェイソンブラウン選手が8番ジャッジで29.75 1番ジャッジで29.50 満点近いところまで来ていて、プレゼンテーションでは5人満点というすごい評価でした。他にチャジュンファン選手も8番ジャッジからプレゼンテーション満点をもらっていました。8番ジャッジはコンポジションもブラウン選手には満点です。

1番甘かったのは1番ジャッジで全員に合計で590.50 1番厳しかったのは4番ジャッジで564.00 その差は26.50でやはり1人当たり1点程度係数掛ける前で差があることになります。

 

○フリー上位12人のジャッジ別PCS順位

Name Scores J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9 Ave
Shoma UNO 2 2 1 1 2 2 4 1 3 3 2
Junhwan CHA 3 7 5 3 1 5 3 3 2 3 3
Ilia MALININ 11 9 10 9 13 11 13 13 5 16 11
Kevin AYMOZ 3 4 1 6 4 3 1 3 4 5 3
Jason BROWN 1 1 3 2 2 1 2 1 1 1 1
Kazuki TOMONO 5 5 4 4 6 6 5 5 6 2 5
Matteo RIZZO 7 9 9 7 4 4 8 7 9 7 6
Adam SIAO HIM FA 8 11 6 7 7 8 10 9 7 6 8
Lukas BRITSCHGI 10 5 11 10 7 8 6 10 11 9 10
Vladimir LITVINTSEV 14 14 14 14 13 15 11 15 16 14 14
Keegan MESSING 6 2 8 5 11 7 8 6 10 7 7
Mikhail SHAIDOROV 21 16 22 22 20 21 18 21 23 21 21

PCSを順位で見るとこうなります。ジェイソンブラウン選手に1位を付けたのは5人、宇野昌磨園主が3人、エイモズ選手2人、チャジュンファン選手1人います。

評価が割れているのはメッシング選手でしょうか。1番ジャッジは2位を付けましたが4番ジャッジは11位。ジャンプのミスやスピンのミスはあったけれど転倒みたいな派手なミスがあったわけではない終盤の滑走者、というのをどう評価するのかは難しいんでしょうか。マリニン選手も8番ジャッジは5位ですが9番ジャッジは16位と割れています。シャイドロフ選手は序盤グループでいい演技という女子では評価が割れやすい結果を出したのですが、1番ジャッジが16位を付けたくらいであとは押しなべて低いです。あまりにもはっきりとPCSを出しにくい演技だったでしょうか。

 

 

もう一回続きます。