22-23 ルナヘンドリックス

1999年11月5日生まれ

シニア7シーズン目

シーズン獲得賞金:$92,000

世界ランキング:2位

シーズンランキング:3位

シーズンベストスコア 216.34 グランプリフランス

ショートプログラムシーズンベスト 76.19 ネーベルホルン杯

フリーシーズンベスト 143.59 グランプリフランス

ショートプログラム楽曲:Si Mama/Mi Gente

フリープログラム楽曲:Poeta

スピンレベル4率 43/45=95.6% (国際大会 37/39 = 94.9%)

ステップレベル4率 11/15=73.3%(国際大会 10/13 = 76.9%)

スピンオールレベル4 6/7 (国際大会5/6)

スピンステップオールレベル4  3/7 (国際大会3/6)

ジャンプ要素回転不足率 11/77=14.3% (国際大会11/67 = 16.4%)

ジャンプ回転不足なし 3/7 (国際大会 2/6)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/7

 

○22-23シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Nebelhorn Trophy 1 208.05 76.19 131.86
Others Japan Open 2 132.53   132.53
GP Grand Prix de France 1 216.34 72.75 143.59
NC Belgian Championships 1 223.50 77.95 145.55
GP Grand Prix Espoo 2 203.91 74.88 129.03
GPF Grand Prix Final 3 196.35 74.24 122.11
EC Europe Championships 2 193.48 67.85 125.63
WC World Championships 3 210.42 71.94 138.48

ヨーロッパチャンピオンの座が目の前にちらつきながらの今シーズン開幕になったのではないかと思われるヘンドリックス選手。初戦はチャレンジャーシリーズのネーベルホルン杯でした。208.05は初戦としてはいい出来だったかと思います。

ジャパンオープンは初登場。ネーベルホルン杯とはだいぶ構成を変えていましたが、1.1倍ジャンプでミスが出たのは変わらず。本格的シーズンイン前に少し課題を残します。

グランプリシリーズは3戦目のフランスで登場。キムイェリム選手、イ・ヘイン選手といった韓国勢が強い試合でしたが全く寄せ付けず216.34のスコアで完勝。グランプリシリーズ初優勝を果たします。結果的にこの試合がシーズンベストとなりました。

間1週でベルギーのナショナル選手権。これはピンツァローネ選手も欠場してましたし楽勝。ただ、ここで力を使ってしまったか、連戦となったグランプリエスポ―ではフリーでジャンプのミスが重なり三原選手に敗れての2位、連勝はなりませんでした。

それでも1位2位ですので初のファイナル進出。ショートは僅差の3位。フリーは首位に立てば表彰台確定という場面で冒頭コンビネーション決まらず、フリップ転倒、1.1倍でアンダーローテーション2つ。スコア伸びずトータル196.35 2年ぶりの200点割れがここで出てしまい2人残して2位。表彰台厳しいかという場面でしたが結果的に最終滑走坂本選手が大崩れして、グランプリファイナル初表彰台となりました。

年が明けるとヨーロッパ選手権。優勝候補大本命。圧倒的に強いかと思われたのですがショートプログラム、コンビネーション決まらず67.85 シーズン初の60点台が出てしまい2位発進。それでもフリーは普通に滑れば逆転できるだけの実績差がありましたが後半の崩れ癖がここではいつもに輪をかけて出てしまい2転倒。トータル193.48 僅差ながら1人残して首位には立ちましたが、フリー最終滑走がそのまま上に行き2位。ヨーロッパチャンピオンのタイトルは獲れませんでした。

ノーミスが見られないまま世界選手権まで来てしまいましたが、ここでもショートで転倒。それでも71.94で5位スタート。優勝は厳しいですが表彰台争いには踏みとどまります。逆転をかけたフリー。1つ1つの要素の出来は良かったのですが、ここでも後半のルッツで転倒。ノーミスとはいかず138.48 トータル210.41と210点に乗せて首位に立ち4人を待ちます。結果的に3位に残り2年連続のワールド表彰台となりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Nebelhorn Trophy 208.05 103.58 104.47 57.20 5.81 25.59 14.98
Japan Open 132.53 61.99 70.54 38.13 1.41 12.88 9.57
Grand Prix de France 216.34 109.75 106.59 62.48 8.60 24.74 13.93
Belgian Championships 223.50 111.60 111.90 63.49 8.42 25.16 14.53
Grand Prix Espoo 203.91 100.79 104.12 58.82 1.62 25.51 14.84
Grand Prix Final 196.35 94.85 102.50 58.34 -3.42 25.74 14.19
Europe Championships 193.48 94.59 100.89 51.83 1.44 26.21 15.11
World Championships 210.42 107.08 105.34 63.49 3.08 25.88 14.63

今シーズンジャパンオープンを除いて国際大会6試合に登場。200点台を国際大会で4回記録しました。

技術点は100点台が標準ですがファイナルとヨーロッパ選手権では90点台前半にとどまり、タイトルを取り逃がす要因となりました。

PCSはナショナルボーナスを除くと100点台で、タイトルチャンスだったヨーロッパ選手権が一番低い100.89というのが痛かったです。それ以外は1項目8.5平均を超えるところまで出しました。グランプリフランスは106.59は今シーズン3位の高評価です。

ジャンプの基礎点はベルギーナショナルと世界選手権で63.49 この2試合は基礎点満額取れたという形でした。63.49は平凡なスコアになります。

ジャンプの加点はフランス杯で8.60を出しましたが他は1桁中盤から前半。グランプリファイナルではマイナスになっています。8.60はシーズン全体で12位ですが、他の試合はあまり伸びていませんでした。

スピンは25点台が標準でヨーロッパ選手権では26.21まで出しています。この26.21がシーズン全体で1位のスコアになっています。

ステップ系要素は14点台が普通でヨーロッパ選手権で15.11があります。シーズン全体で6位タイのスコアです。

ヨーロッパ選手権でスピンステップでいいスコアを上げたのですがジャンプが決まらずタイトルが獲れないという残念な試合になっていました。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Nebelhorn Trophy 67.50 56.86 68.08 68.56 69.11 68.96
Grand Prix de France 70.24 62.01 73.80 65.72 64.38 70.50
Belgian Championships 72.61 62.99 73.43 67.13 67.09 74.36
Grand Prix Espoo 66.13 58.44 59.50 68.29 68.48 68.70
Grand Prix Final 63.64 57.97 49.19 69.06 65.55 67.52
Europe Championships 62.69 51.62 59.14 70.63 69.70 66.35
World Championships 68.29 62.99 62.49 69.53 67.54 69.59

偏差値で見ると、トータルスコアはフランス杯で70台に乗せました。

ジャンプの基礎点は一番いい試合でも偏差値62.99 トップ選手としては低めと言わざるを得ません。良くない試合では50台ですし、ヨーロッパ選手権では51.62と平均程度に落ち込みました。

ジャンプの加点はフランス杯で73.80と高偏差値でしたがシーズン中盤以降は50台、最後の世界選手権でやって60台に戻した程度でした。

スピンは1番悪くても65.72という得意分野。シーズン最高のヨーロッパ選手権で偏差値70に乗せています。

ステップ系要素は60台後半、これも得意分野です。

PCSはフランス杯で70に乗せました。

他の要素はいいのだけどジャンプがね・・・、というシーズンでした。

 

22-23シーズン ルナヘンドリックス選手の要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートで見ると、明らかに左寄りです。右上のジャンプ基礎点が伸びないまでも、右下のジャンプ加点が伸びないとつらいのですが、これがなかなか伸びませんでした。グランプリファイナル、ヨーロッパ選手権と大事な試合で右のへこみが目立ちます。世界選手権の青は比較的バランス型に近くなっています。

 

・シーズン最高の基礎点構成

ネーベルホルン杯 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   1.59 6.89 3.143
2 2A   3.30   0.86 4.16 2.429
3 CCoSp4   3.50   1.26 4.76 3.429
4 3Lz+3T   11.11 x 1.30 12.41 2.143
5 StSq4   3.90   1.40 5.30 3.571
6 FCSp4   3.20   0.83 4.03 2.571
7 LSp4   2.70   1.03 3.73 3.714
  TES   33.01   8.27 41.28  

ショートの最高基礎点は33.01 昨シーズンは32.53なので0.48上がりました。コンビネーションを1.1倍に持って行った効果です。この33.01という基礎点はネーベルホルン杯、グランプリエスポ―、グランプリファイナル、世界選手権と国際大会4試合で出しています。

スピンの組み合わせも基礎点が1番出る組み合わせになっていて、トリプルアクセル無しでこれ以上の基礎点にするには、セカンドループ導入しかありません。

実際、この33.01は今シーズン3位の高い構成になっていました。

 

○グランプリフランス フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz!+3T ! 10.10   0.34 10.44 0.333
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.778
3 3F   5.30   1.67 6.97 3.222
4 2A   3.30   1.04 4.34 3.111
5 CCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.667
6 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.444
7 3Lz!+2T ! 7.92 x 0.17 8.09 0.222
8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.21 10.34 2.222
9 3S   4.73 x 0.55 5.28 1.444
10 FCCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
11 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
12 LSp3   2.40   1.06 3.46 4.333
  TES   60.08   11.79 71.87  

フリーは最高基礎点で60.08 やっと60点に乗っただけという形になっています。

最後のレイバックスピンがレベル3なので、これを4に出来れば60.38に基礎点はなりますが、この構成のまま上げられるのはそこまでです。60.38でも基礎点としては平凡です。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップという高い組み合わせなのですが、トリプルループが構成になく6トリプルになっています。3回転が1つ少ないという形になるので、他の選手と比べて基礎点はやはり低くなります。この基礎点だとノーミスで高い加点を稼ぎ、PCSも伸ばしていかないと頂点には届きません。

この構成だと技術点は86.33満点でPCSの80点満点を加えて166.03満点になります。ヘンドリックス選手は、この満点を目指して一つ一つの要素の質を上げていくという戦略になっているのだろうと思われます。

 

○平均GOE3.800以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.444
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   1.23 3.93 4.444
Grand Prix de France FS 12 LSp3   2.40   1.06 3.46 4.333
Nebelhorn Trophy FS 12 LSp4   2.70   1.13 3.83 4.286
Grand Prix Espoo SP 7 LSp4   2.70   1.16 3.86 4.222
Japan Open FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.200
World Championships FS 5 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.000
Belgian Championships SP 7 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Grand Prix Final FS 12 LSp4   2.70   1.08 3.78 4.000
Europe Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
World Championships SP 3 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
Europe Championships FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
Belgian Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.800

ヘンドリックス選手は平均GOE+4.000以上の高い評価の要素が結構ありました。

得意なスピンからはレイバックスピンの評価が特に高いです。ヨーロッパ選手権の+4.444はシーズン全体で2位タイのレイバックスピンでした。

ステップも高い評価があり、世界選手権では+4.444 これは今シーズンの全ステップの中での最高評価となっていました。

こうやって並べるとジャンプは入ってきません。ジャンプの最高評価は世界選手権ショートのトリプルフリップで+3.556がありました。得意なジャンプはフリップ。フリップなら平均GOE+3.000以上の要素が国際大会で8回ありました。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Nebelhorn Trophy SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.30 12.41 2.143
Nebelhorn Trophy FS 8 3F+3T< 9.53 x -1.17 8.36 -2.143
Japan Open FS 7 3Lz!+3T< ! 10.19 X -0.79 9.40 -1.400
Grand Prix de France SP 4 3Lz!+3T ! 10.10   0.34 10.44 0.556
Grand Prix de France FS 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.34 10.44 0.333
Belgian Championships SP 4 3Lz+3T   11.11 x 0.98 12.09 1.600
Belgian Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.38 11.48 2.400
Grand Prix Espoo SP 4 3Lz!+3Tq ! 11.11 x -0.93 10.18 -1.333
Grand Prix Espoo FS 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.000
Grand Prix Final SP 4 3Lzq+3Tq q 11.11 x -1.52 9.59 -2.556
Grand Prix Final FS 1 3Lz+3T<< <<  7.20   -2.53 4.67 -4.111
Europe Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.444
World Championships SP 4 3Lz+3Tq q  F 11.11 X -2.95 8.16 -5.000
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.889

3回転-3回転はショートでは1.1倍に、フリーでは冒頭に、ルッツから入れています。

シーズン全体で15回のうち、ヨーロッパ選手権のショートでは2つ目が2回転になり3-3になりませんでした。それ以外では転倒が1、ダウングレード1、アンダーローテーション1 それ以外でGOEマイナスは3回なので、成功は8回。成功率は5割を少し超えるくらいです。ほとんどの場合でちゃんと3-3になるのは強さですが、全体の基礎点が低いので、こういう点が取れる要素では成功率高く入れたいところではありました。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Nebelhorn Trophy FS 1 2A+1Eu+3S   8.10   1.03 9.13 2.429
Japan Open FS 9 2A+2A*+2T+SEQ * 5.06 X 0.22 5.28 0.600
Grand Prix de France FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.21 10.34 2.222
Belgian Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.06 10.19 2.000
Grand Prix Espoo FS 8 3F<+2T+2Lo 7.96 x -0.97 6.99 -2.222
Grand Prix Final FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.83 9.96 1.667
Europe Championships FS 9 3S+2T+2Lo   8.03 x 0.49 8.52 1.111
World Championships FS 8 3F+2T+2Lo   9.13 X 0.98 10.11 1.889

3連続ジャンプはすべての試合でしっかり入りました。シーズン序盤は構成の試行錯誤があったようですが、グランプリシリーズ以降は8番目の要素に入れるが基本となりました。

8回あった3連続のうち、フリップがアンダーローテーションになった1回以外はGOEプラス。シークエンスでダブルアクセル跳びすぎてノーカウントになったものもありますが、ジャンプとしては成功していますので、3連続ジャンプは安定して飛べています。

 

今シーズンは全試合表彰台でしたが優勝はナショナルとチャレンジャーシリーズにグランプリシリーズで1つづつ。ファイナル、ヨーロッパ、ワールド、すべて表彰台に乗りながらタイトルは獲れませんでした。しぶとく表彰台に乗ると見るか、勝負弱いと見るか。いずれにしてももったいなかったなあ、というシーズンではありました。

来期こそは、どれか一つ、ビッグタイトルが欲しい、ということになるかと思います。