22-23 エカテリーナクラコワ

2002年6月24日生まれ

シニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$11,000

世界ランキング:10位

シーズンランキング:8位

シーズンベストスコア 190.44 MKジョンウィルソン杯

ショートプログラムシーズンベスト 65.69 世界選手権

フリーシーズンベスト 129.17 ロンバルディア

ショートプログラム楽曲:エルヴィス・プレスリーメドレー

フリープログラム楽曲:「カールじいさんの空飛ぶ家」より

スピンレベル4率 40/51 = 78.4%(国際大会:36/45 = 80.0%)

ステップレベル4率 10/17 = 58.8%(国際大会:8/15 = 53.3%)

スピンオールレベル4 3/8(国際大会:3/7)

スピンステップオールレベル4  1/8(国際大会:1/7)

ジャンプ要素回転不足率 12/87=13.8%(国際大会:11/77=14.3%)

ジャンプ回転不足なし 3/8(国際大会:2/7)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 0/8(国際大会0/7)

 

○22-23シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Lombardia Trophy 3 188.41 59.24 129.17
Others Japan Open 4 115.49   115.49
GP Skate America 5 178.68 63.65 115.03
GP MK John Wilson Trophy 5 190.44 63.46 126.98
CS Warsaw Cup 1 189.98 64.66 125.32
NC Four Nationals 1 185.14 63.01 122.13
Others World University Games 5 186.73 63.22 123.51
EC Europe Championships 4 186.90 61.81 125.09
WC World Championships 16 181.43 65.69 115.74

クラコワ選手はロシア出身ですがポーランドへ移籍して4シーズン目。シニアとしては3シーズン目になります。

今季初戦はロンバルディア杯から。この試合は渡辺倫果選手の出世試合でしたが、そんな中でクラコワ選手もしっかり188.41を出して3位表彰台となりました。

ジャパンオープンで初来日。あまりいい出来ではなかったですが、4位に入ります。

グランプリシリーズは昨シーズンから2戦出ていますが最高位は9位。まだ結果は出せていません。今季はスケートアメリカから入り、ショートはまずまずの出来で63.55 6位でフリー後半グループに入ります。3位まで4.77差、チャンスのあるフリーは最初のルッツ2つが決まらず115.03でトータル178.68 過去最高の5位には入りましたが表彰台には届きませんでした。

2戦目はMKジョンウィルソン杯。やはりショートはまずまずの出来で63.46は4位スタート。3位まで3.36差、表彰台チャンスが来ます。スケートアメリカでは回転不足も取られた最初の2つのジャンプを今回はqまでで耐え、以降もまずまずの滑り、126.98のトータル190.44まで出しますが結果は5位。グランプリ初表彰台とはなりませんでした。

 

翌週、世間一般ではただのチャレンジャーシリーズ、クラコワ選手にとっては大事なワルシャワカップポーランドで行われる一番グレードの高い試合です。このショートで今季唯一の回転不足を取られない3-3を決め64.66と首位に立つとフリーは今季うまくいっていない3連続を外して安全策を取りますがほぼミスなく滑り125.32でトータル189.98で優勝。昨季勝てなかった「母国」のワルシャワ杯を3年ぶりに制しました。

12月には4カ国合同のナショナル選手権、フォーナショナルズを4カ国まとめても圧勝で優勝します。この試合は5連覇です。

 

シーズン後半に入り1月はワールドユニバーシティゲームズから。上位の日韓強いけれど表彰台チャンスまではあるよ、という立ち位置です。ここもショートは63.22 これくらいの点数で安定しているのですが5位スタート。上4人が70点台と離れてしまっている状態ですが、フリーはしっかり滑って123.51 トータルで結局ここでも5位でした。

 

昨季ロシア込みで5位だったヨーロッパ選手権は表彰台を狙いたい立場です。ショートプログラムは珍しく単独のループで回転不足が出て61.81で5位スタート。3位までは2.02差で十分逆転可能な領域です。逆転を狙うフリーですが、2つ目のルッツが決まらずノーミスはならず。フリー125.09を出してトータル186.90 首位に立って残り4人を待ちますが最終順位は4位。ポーランド代表初のヨーロッパ選手権表彰台には届きませんでした。

 

シーズンラストは世界選手権になります。昨季13位のこの試合のターゲットは10位以内の2枠獲得あたりでしょうか。ランキング上位なこともあり29番、最終組の前の組の最後に出てきます。ここでルッツを外してフリップからの3-3にするという変更をしたのですが、セカンドジャンプはアンダーローテーション。それでも65.69まで出して9位スタート。フリー後半グループに入ってきます。フリーでいい滑りをすればトップ10は付いてくる、というところだったのですが、ここでアンダーローテーション3つと苦しんで115.74にとどまりトータル181.43 最終的には16位で終わりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Lombardia Trophy 188.41 98.26 90.15 61.56 1.85 22.20 12.65
Japan Open 115.49 55.84 59.65 41.11 -2.99 9.54 8.18
Skate America 178.68 90.69 88.99 56.38 -1.72 22.42 13.61
MK John Wilson Trophy 190.44 96.06 94.38 61.24 -0.30 22.66 12.46
Warsaw Cup 189.98 98.30 91.68 59.44 4.08 22.00 12.78
Four Nationals 185.14 93.17 91.97 53.49 4.26 21.10 14.32
World University Games 186.73 93.73 93.00 57.94 0.61 21.78 13.40
Europe Championships 186.90 93.92 92.98 56.38 0.46 22.98 14.10
World Championships 181.43 92.33 89.10 59.89 -3.09 22.48 13.05

トータルスコアはスケートアメリカの178.68が最低でMKジョンウィルソン杯の190.44が最高です。安定度は高いです。

技術点は90点台を維持していました。ワルシャワ杯の98.30が最高。PCSの方は90点前後でMKジョンウィルソン杯の94.38が最高でした。

ジャンプの基礎点はロンバルディア杯の61.56が最もよく、加点の方はフォーナショナルズの+4.26が1番良いですが、国際大会ではワルシャワ杯の+4.08が最高でした。

スピンはヨーロッパ選手権の22.98が最高、ステップ系要素は国際大会ではこれもヨーロッパ選手権の14.10が最高です。

PCS、ジャンプ、スピン・ステップのいい試合がばらばらという、安定しているんだかしていないんだかだけど、トータル取ると割と安定して似たようなスコアに収束しています。

全部いいとこどりの試合が作れれば200点に乗ってきてグランプリ表彰台、ヨーロッパ表彰台、あたりは見えます。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 61.01 61.11 59.98 57.25 58.62 58.55
Skate America 57.80 56.06 52.67 57.98 62.94 57.70
MK John Wilson Trophy 61.68 60.80 55.57 58.78 57.77 61.62
Warsaw Cup 61.53 59.04 64.54 56.58 59.21 59.66
Four Nationals 59.93 53.24 64.91 53.57 66.14 59.87
World University Games 60.46 57.58 57.44 55.84 62.00 60.62
Europe Championships 60.51 56.06 57.13 59.85 65.15 60.60
World Championships 58.71 59.48 49.86 58.18 60.42 57.78

偏差値に直すとトータルスコアは60前後でした。

ジャンプの基礎点も60前後。加点の方も60前後です。世界選手権の平均割れは残念。

スピンは50台後半までで60に乗ってきません。ステップ系要素の方は60台が標準で半ばくらいまで出ます。

PCSは60前後でした。

おおよそ偏差値60くらいの位置にいて、ステップ系要素が得意、スピンが苦手、という形になっています。

 

レーダーチャートは、トータルのばらつきが1番小さくて、他がばらばらという、珍しい散らばり方になります。どれかがいいとどれかが悪くて全部足すと同じくらいになる。

おもしろいプログラムなのでノーミスクリーンな演技で見たいのですが・・・。

 

22-23シーズン エカテリーナクラコワ選手の要素別偏差値レーダーチャート

 

・シーズン最高の基礎点構成

ワルシャワカップ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.59 9.51 -0.857
2 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.857
3 FCSp3   2.80   0.73 3.53 2.571
4 LSp4   2.70   0.54 3.24 1.857
5 2A   3.63 x 0.26 3.89 0.857
6 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.714
7 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.857
  TES   30.93   3.47 34.40  

ショートプログラムの最高基礎点はワルシャワカップの30.93でした。スピンステップでレベル3がありますが、これを4に出来れば1.0基礎点が上がって31.93になります。

ジャンプはルッツからの3-3に単独ループがあって1.1倍はダブルアクセルです。フリップ無し構成。

この構成はノーミスのGOE満点の場合技術点が45.93まで出てPCS加味して85.93満点です。

 

○MKジョンウィルソン杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lzq+1Eu+3Fq q 11.70   -2.19 9.51 -3.667
2 3Lzq q 5.90   -0.93 4.97 -1.444
3 3T   4.20   0.48 4.68 1.111
4 3Lo   4.90   0.63 5.53 1.111
5 FCCoSp4   3.50   0.55 4.05 1.333
6 3Lo+2A+SEQ   9.02 x 0.63 9.65 1.333
7 3S+2T   6.16 x 0.31 6.47 0.667
8 2A   3.63 x 0.28 3.91 0.778
9 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
10 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
11 StSq3   3.30   0.75 4.05 2.333
12 LSp4   2.70   0.35 3.05 1.222
  TES   61.51   2.53 64.04  

フリーの最高基礎点は61.51でした。2回飛ぶジャンプはルッツとループ。セカンド3回転はないけれど3連続で最後にフリップを入れてシークエンスアクセルも使って7トリプルは作っています。シークエンスアクセル1倍ルールはクラコワ選手のようにセカンド3回転が苦手な選手にとっては朗報でした。3連続の最後にフリップを入れると難易度は高くなりますが、それとは別のところで1つ目から飛ぶサルコウがあるので、全体としてはそれほど意味がある構成ではありません。むしろ7番目の要素が3F+2Tにした方が1.1倍分基礎点はあがりますし、GOEもプラス幅を出せます。ただ、3連続でGOEマイナスにどうせなるのだから苦手なフリップをここに入れてしまおう、みたいな戦略にもみえます。

ステップレベル3があるのでこれをレベル4に出来れば基礎点は62.11になります。この構成でノーミスのGOE満点のとき技術点88.11まで出てPCS加味して168.11満点になります。セカンド3回転無くても、高難度ジャンプがない選手の中では他と差のない基礎点構成を組むことができます。

 

○平均GOE2.600以上

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
World University Games SP 3 FCSp3   2.80   0.95 3.75 3.429
Europe Championships SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
World University Games SP 6 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.143
MK John Wilson Trophy SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.111
Europe Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
Four Nationals SP 6 StSq4   3.90   1.24 5.14 3.000
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.889
Four Nationals FS 11 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.875
Lombardia Trophy SP 6 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.857
World Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
Warsaw Cup SP 6 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.714
Lombardia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   0.90 4.10 2.714
World University Games SP 4 LSp3   2.40   0.67 3.07 2.714
Skate America SP 3 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.667
Four Nationals SP 3 FCSp2   2.30   0.61 2.91 2.625

評価の高い要素は2つ、フライングのコンビネーションスピンとステップです。ステップがこれだけ並ぶのにコレオが1つもいないという不思議もありますが、並ぶステップがほとんどショートのものという不思議さもあります。スピンもすべてショートのものです。体力的な問題でしょうか。あのカール爺さんの空飛ぶ家結構好きなのですが。また、ジャンプも1つもありませんでした。

フリーでもう少し加点が取れるとタイトル、表彰台に近づくのですが、体力・・、ですかねえ・・・。

 

トリプルアクセル

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Four Nationals FS 8 3A<< <<  3.63 x -1.65 1.98 -4.875

ちょっと驚いたのですが、クラコワ選手、トリプルアクセルの要素がありました。フォーナショナルズのフリー8番目の要素。これ、映像確認できてないんですが、何かの間違いじゃないですか? という感じで。トリプルアクセル挑戦するにしても冒頭とか早い位置でやりそうなものですが、なんでしょうこれ? 周りすぎたのを要素の表現としてトリプルアクセルのダウングレードにしたのでしょうか?

 

○3回転-3回転

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Lombardia Trophy SP 1 3Lzq+3T<< <<  7.20   -2.71 4.49 -4.571
Warsaw Cup SP 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.59 9.51 -0.857
World Championships SP 1 3F+3T< 8.66   -0.98 7.68 -1.889

クラコワ選手はセカンド3回転が苦手です。フリーにはそもそも要素として入れていません。ショートでは冒頭でルッツから入れようとしているのですがGOEプラスの成功ジャンプは1度もありませんでした。3-2にする試合も多く、3-3にしたのが3試合。基礎点満額入ったのが1試合だけです。世界選手権ではルッツを外してフリップにしていましたが、これもセカンドがアンダーローテーションでした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Lombardia Trophy FS 1 3Lzq+1Eu+3F q 11.70   -0.35 11.35 -0.429
Japan Open FS 1 3Lz+1Eu+3F!< ! 10.64   -1.57 9.07 -2.400
Skate America FS 1 3Lzq+1Eu<<+3F<< <<  7.70   -2.95 4.75 -5.000
MK John Wilson Trophy FS 1 3Lzq+1Eu+3Fq q 11.70   -2.19 9.51 -3.667
Four Nationals FS 7 2A+1Eu+2S   5.61 x 0.28 5.89 0.750
World University Games FS 1 3Lz+1Eu+3F   11.70   0.59 12.29 0.857
Europe Championships FS 1 3Lz+1Eu+3F   11.70   1.01 12.71 1.667
World Championships FS 1 3Lz<+1Eu+3F 10.52   -0.91 9.61 -1.556

3連続は冒頭で3Lz+1Eu+3Fという高基礎点要素です。フォーナショナルズでは後半にダブルアクセルからの簡単要素として入れましたがそれを除くと7試合で基礎点満額が4つ、GOEプラスの成功は2つでした。ヨーロッパ選手権くらいの出来がコンスタントに出るとよいのですが、コンビネーションが苦手でなかなか難しいようです。

 

クラコワ選手、今期は表彰台の近い4位5位の試合が非常に多くありました。あと一歩届かない。体力的な問題か、フリーで今一つ点が伸びてこないです。元ロシアンが移籍して他国の国籍で活躍するのは余り気軽にそれが起きるのは競技の衰退に通じるように懸念を感じたりはします。一方で、一人一人には人生があり、その中で最善と思われる選択をしていくことは誰かに文句を言われる筋合いのことでもない。少々複雑な気分はなくはないのですが、ポーランドに順応し、シン「地元」の大会にスケジュール的に厳しくても出続け、長くスケートを続けていきたい、という姿は応援したいと思う気持ちは結構あります。

コンビネーション飛べれば、グランプリ表彰台、ヨーロッパ選手権表彰台くらいまでは見えると思うのですが・・・。来期こそは、となっていくのだろうと思います。

 

今シーズンは全試合表彰台でしたが優勝はナショナルとチャレンジャーシリーズにグランプリシリーズで1つづつ。ファイナル、ヨーロッパ、ワールド、すべて表彰台に乗りながらタイトルは獲れませんでした。しぶとく表彰台に乗ると見るか、勝負弱いと見るか。いずれにしてももったいなかったなあ、というシーズンではありました。

来期こそは、どれか一つ、ビッグタイトルが欲しい、ということになるかと思います。