全日本選手権23前に代表選考展望:女子シングル

全日本選手権が近づいてきました。試合そのものも楽しみなわけですが、この試合はシーズン後半のチャンピオンシップへ向けての最終選考会でもあります。各代表選考には選考対象となる項目があり、全日本の順位というのも絡んできますがそれ以外の項目も多数あります。

今回は、それらの項目についてだれがどんな状態で載っているのかを記していきます。上位○名となっている項目でも、その人数に限らず、それより下のメンバーも何人か参考に記していきます。 / で区切られているところで、条項の人数の区切りになります。また、かっこ付で記されるところもありますが、これは、年齢などの理由で選考対象にならない選手を参考に入れている、というものになります。これをすべての条項に入れようとすると多すぎたので、一部に留めてあります。

今回は女子シングルです。

 

 

1.世界フィギュアスケート選手権大会

全日本選手権大会優勝者を選考する。 :未定

 

②以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して1名選考する。

A) 全日本選手権大会 2 位、3 位の選手  :未定

B) ISU グランプリファイナル出場者上位 2 名  坂本花織 吉田陽菜 / 住吉りをん

C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3 名

坂本花織 226.13 (島田麻央213.86) 吉田陽菜203.97 渡辺倫果203.22 / 松生理乃198.62 住吉りをん197.76 (上薗恋奈196.46) (中井亜美194.65) 樋口新葉190.02 (髙木謡188.15) 青木祐奈184.46 千葉百音177.79

 

③以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、上記①②で選考された選手を含め、 3 名に達するまで選考する。

A) ②の A)B)C)に該当し、②の選考から漏れた選手  :未定

B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 3 名

坂本花織1位 三原舞依6位 渡辺倫果8位 / 吉田陽菜12位 千葉百音22位 住吉りをん24位 (島田麻央25位) 河辺愛菜27位 樋口新葉32位

C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 3 名

坂本花織1位 吉田陽菜2位 渡辺倫果10位 / 住吉りをん12位 (島田麻央22位) (上薗恋奈26位) (中井亜美28位)  千葉百音47位 (髙木謡50位) (櫛田育良58位) (柴山歩64位) 松生理乃67位

D) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会*1における 総合得点の最も高い 2 試合*2の平均得点の上位 3 名

坂本花織225.92 吉田陽菜203.57 住吉りをん193.99 / 渡辺倫果192.65 青木祐奈181.93 樋口新葉177.86 千葉百音171.28 河辺愛菜164.99

 

現時点で代表選考ラインに名前が入っているのは、②まででは坂本花織選手、吉田陽菜選手、渡辺倫果選手の3人までです。優先する選考項目で選出済みの選手は除外して繰り上がる、という条項がありますが、仮に坂本選手が優勝した場合は住吉りをん選手と松生理乃選手が入ってきます。吉田陽菜選手の優勝でも同様です。

➂の条項の中には三原舞依選手も入ってきます。先に2人まで選考されたところで千葉百音選手、青木祐奈選手も名前が入ってきます。樋口選手、河辺選手は2人選考後でも入ってくる項目がありません。従って、樋口選手、河辺選手は全日本の表彰台が世界選手権代表になるための最低必要条件となってきます。

 

2つある②の条項はどちらも坂本選手が1番目です。もし島田麻央選手あるいは上薗恋奈選手あたりが優勝して①の選出が誰もいなかった場合、②は坂本選手でほぼ決まりかと思われます。優勝が坂本選手の場合は②の条項は吉田選手がどちらも1番手です。全日本の表彰台に吉田選手が載ってくれば確実に選ばれるでしょうし、そうでなくても4位5位あたりなら吉田選手が優位かと思われます。ただ、吉田選手が12位なんかに沈んでしまうと、流石に今シーズンは選びにくいです。住吉選手、渡辺選手、あるいは松生選手あたりが表彰台に乗っているとそちらが選出となる可能性が高くなると思われます。

 

3つめまで降りてきた時で見ても吉田選手は有利です。➂の条項でも世界ランキング以外はすべて条件を満たしつつ、坂本選手に次ぐ位置にいます。やはり全日本で上位に残っていれば代表には高確率で選ばれるかと思われます。坂本選手、吉田選手が選ばれた場合、残りの1人は住吉、渡辺、松生、三原、千葉、青木、6選手とそれ以外に全日本表彰台に乗った選手から選ぶことになります。住吉選手はこの時点で表彰台に乗っていれば②と➂のすべての条項に乗ってきますのでやはり選出されやすいように見えます。満たす条件数でいえば住吉選手に次ぐのが渡辺選手です。この辺までが有力ですが、三原選手は過去実績まで考えると表彰台に乗れば選ばれやすく感じますがそういう選び方をするかどうか。松生選手はシーズンベストが高いのですが、国際大会がその1試合のみで、西日本も免除で出ていないため、満たしている条項が1つしかない。表彰台に乗ったとしても昨季の島田高志郎選手のような扱いになる可能性も感じます。千葉選手、青木選手は選考に名前は入ってきそうですが、今期のこれまでを見ていると少し難しいように感じます。

条項を満たして名前のある選手でも住吉選手渡辺選手以外は表彰台に乗らないと難しいでしょうか。島田選手や上薗選手が表彰台に乗ってくると、昨季と同じように全日本でだいぶ沈んだけれど吉田選手や住吉選手が選ばれる、という流れもあるかもしれません。仮に、松生選手4位、渡辺選手6位、住吉選手9位みたいな並びになった時には非常に難しい選考になりそうです。

 

2.四大陸フィギュアスケート選手権大会

全日本選手権大会終了時に、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して選考する。

A) 全日本選手権大会 10 位以内 未定

B) 全日本選手権大会終了時点での ISU ワールドスタンディング上位 6 名

坂本花織1位 三原舞依6位 渡辺倫果8位 吉田陽菜12位 千葉百音22位 住吉りをん24位 /  (島田麻央25位) 河辺愛菜27位 樋口新葉32位

C) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンワールドランキング上位 6 名

坂本花織1位 吉田陽菜2位 渡辺倫果10位 住吉りをん12位 (島田麻央22位) (上薗恋奈26位) (中井亜美28位)  千葉百音47位 (髙木謡50位) (櫛田育良58位) (柴山歩64位) 松生理乃67位 / 青木祐奈77位 樋口新葉77位

D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 6 名

坂本花織 226.13 (島田麻央213.86) 吉田陽菜203.97 渡辺倫果203.22 松生理乃198.62 住吉りをん197.76 (上薗恋奈196.46) (中井亜美194.65) 樋口新葉190.02 / (髙木謡188.15) 青木祐奈184.46 千葉百音177.79

E) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会*1における 総合得点の最も高い 2 試合*2の平均得点の上位 6 名

坂本花織225.92 吉田陽菜203.57 住吉りをん193.99 渡辺倫果192.65 青木祐奈181.93 樋口新葉177.86 / 千葉百音171.28 河辺愛菜164.99

 

4大陸選手権の代表選考の1番のポイントは、世界選手権の代表が4大陸にも出るかどうか、というところかと思われます。昨季は世界選手権と4大陸で重なったのは渡辺倫果選手のみでした。今回はどうか? 自分の意志で決められるなら、すでに4大陸のタイトルを持っている選手以外は4大陸も出たいと考えるように感じます。そうなると、坂本選手が出ないとしても、2枠は世界選手権と重なる可能性が出てきます。協会側で分ける、という決定をするなら4大陸だけという選手が2枠ほどまわってくるでしょうか。どちらになるのかはわかりません。

国際大会に出場した選手は、ほとんど4大陸の選考基準はどこかで満たしています。河辺選手は入っていませんが、2名選出された時点で2試合平均の上位6名の中に入るでしょう。ミニマムスコアの関係で、国際大会未経験の選手にはチャンスがありません。江川マリア選手、山下真瑚選手あたりも全日本の出来で4大陸の候補になりそうな位置まで点は出る可能性はあるのですが、ミニマムスコアがないので選出不可能です。世界選手権や世界ジュニアと異なり4大陸選手権にはミニマムの取得が間に合いません。

というわけで、今期グランプリシリーズに出場した10名の中から選出されることになるはずです。グランプリシリーズで表彰台に乗った吉田選手、住吉選手、松生選手、渡辺選手、に印象の良かった青木選手あたりから、世界選手権との兼ね合いと、全日本の順位で選ばれてくる可能性が高そうですが、実績のある樋口選手、三原選手あたりも全日本の出来と本人の意思次第で代表の可能性はあり、ということで、よくわからないなあ、というのが現実でしょうか。吉田選手と住吉選手は世界選手権の代表選考に漏れたら高確率で4大陸はもらえそうに感じます。

 

3.世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会

①全日本ジュニア選手権大会優勝者を選考する。

 島田麻央

②ジュニア対象年齢で派遣希望のある選手の中で、以下のいずれかを満たす者から総合的に判断して、 上記①で選考された選手を含め 3 名に達するまで選考する。

A) 全日本ジュニア選手権大会 2 位、3 位の選手

 櫛田育良 上薗恋奈

B) ISU ジュニアグランプリファイナル出場者

(島田麻央) 上薗恋奈 中井亜美

C) 全日本選手権大会参加者のうち上位 3 名 未定

D) 全日本選手権大会終了時点での ISU シーズンベストスコア上位 3 名

(島田麻央213.86) (吉田陽菜203.97) (松生理乃198.62) 上薗恋奈196.46 中井亜美194.65 髙木謡188.15 / (千葉百音177.79) 柴山歩176.59 櫛田育良176.09

E) 全日本選手権大会までに派遣した国際競技会、および強化部が指定した国内競技会*1 におけるジュ ニアカテゴリーの総合得点の最も高い 2 試合*3の平均得点の上位 3 名

(島田麻央213.36) 上薗恋奈194.39 中井亜美192.65 髙木謡186.06 / 櫛田育良185.32 柴山歩180.89

 

世界ジュニアは島田麻央選手がまず代表として決まっています。後の2人が誰になるか。4項目で名前が入っている上薗恋奈選手が圧倒的に優位な状況です。なお、上薗選手は高確率で全日本の新人賞を取ることと想像されます。

中井亜美選手も3つ名前が入っていますが全日本に出場できません。ただし、世界ジュニア表彰台実績のある選手がケガなどの理由で全日本に出られない場合は考慮する、という添え書きがあるのですが、その考慮の中にケガで全日本ジュニアの成績が悪かったというのが入るのかどうか。入らなさそうですが、一方で、全日本に出られないからと言って、上位●名の枠からは外されないので、中井亜美選手の存在によって、リストに乗る候補者の枠が狭まる形になっています。中井選手は選考条件の要項からすると、補欠に選ばれて入ってきそうに感じます。

柴山選手が今期今一つ思い通りの演技が出来ていないようで、どの項目でも選考の土台に乗ってきていないということになっています。一発逆転を狙うにはかなり上位で滑る必要がありそうです。

世界ジュニアの代表選考が複雑なのは、年齢条件を満たしているシニアの選手がどこまで候補になって来るか、というのがあります。女子でこれにあたりそうなのは4人。吉田陽菜選手、松生理乃選手、千葉百音選手、河辺愛菜選手です。特に吉田選手松生選手は今季の成績から見ると代表候補になってきます。ジュニアの選手の側からすると、吉田選手と松生選手は世界選手権の代表に選ばれてジュニアの方の選考には乗ってこないことが理想です。現実的には河辺選手はオリンピック出場経験もありますので、そこから出戻りの世界ジュニアは可能性低いでしょうか。千葉選手は全日本で一発当てれば可能性あるかと思います。

順当にいくと上薗選手が2枠目に入って、3枠目を松生選手と櫛田選手に髙木選手の争い、といったところでしょうか。松生選手は全日本ジュニア優勝したのにコロナで世界ジュニア中止になった、という経歴があるので、ここで時を取り戻してほしいような気もしますが、世界選手権の代表に選ばれて、ジュニアとかもう別に昔の話です、ということになる可能性もあります。ただ、ジュニアにはショートプログラムでジュニア課題でもちゃんと点が取れることを示していること、という補足条項があります。吉田陽菜選手はご丁寧に愛知県の大会でジュニアのショート課題をこなしているのですが、松生選手は今期ジュニアの試合に出ていません。松生選手と櫛田選手で最後争う形になった場合、濱田先生あたりがこの点を強く突いてきそうにも感じます。

 

次回、男子シングルへ続きます。