23-24 アナスタシアグバノワ

2002年12月2日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$16,000

世界ランキング:6位

シーズンランキング:6位

シーズンベストスコア 206.52 (8位) ヨーロッパ選手権

ショートプログラムシーズンベスト 69.65 ロンバルディア

フリーシーズンベスト 137.56 ヨーロッパ選手権

スピンレベル4率 18/36 = 50.0%

ステップレベル4率 3/12 = 25.0%

スピンオールレベル4 0/6

スピンステップオールレベル4 0/6

ジャンプ回転不足率 5/60 = 8.33%

ジャンプ回転不足なし 3/6

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 0/6

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Lombardia Trophy 1 185.60 69.65 115.95
CS Finlandia Trophy 3 179.61 60.62 118.99
GP Grand Prix de France 6 187.66 66.73 120.93
GP NHK Trophy 6 184.32 55.80 128.52
EC European Championships 2 206.52 68.96 137.56
WC World Championships 13 182.42 58.66 123.76

グバノワ選手は20歳で今シーズンの開幕を迎えましたが、国籍変更などもあり実質的なシニアとしての活動は3シーズン目。グランプリシリーズは2シーズン目になります。昨季はヨーロッパチャンピオンになっていて、今期はグランプリファイナルや世界選手権での上位進出を目指したいところです。

 

初戦はチャレンジャーシリーズ開幕戦、実質的にはシニアの開幕戦の意味に近いロンバルディア杯です。キムチェヨン選手や吉田陽菜選手といったところがいます。ショートプログラムはいきなり全要素プラス評価の69.65を出してきます。フリーは伸びませんでしたがトータル185.60で優勝。幸先の良いスタートを切ります。

2戦目は1か月後、10月頭にフィンランディア杯にも出場しました。ここはキムイェリム選手、渡辺倫果選手あたりとの対戦。大きなミスは見られなかったのですが、ショートフリー合計で1が5つと回転に苦しんでトータル179.61の3位に終わります。

 

グランプリシリーズは当然2戦。3戦目のフランスから。ここにはレビト選手、イ・ヘイン選手、ピンツァローネ選手などがいます。ショートプログラムは全要素プラス評価で66.73の2位スタート。首位のレビト選手とは5.10差あるので少し追いつくのは大変。一方、4位のピンツァローネ選手とは0.99差、3位のイ・ヘイン選手とは0.43差。ほぼ差が無いですがファイナルへつなげるには最低でも表彰台、できれば2位に入っておきたいというフリー。最終の1人前で出てきて首位に立つには132.08が必要、表彰台確定にも131.04が必要。大きなミスは無いように見える滑りだったのですが、3-3が2本入るはずが1本になり、3連続が入れられなかったことなどが響きフリー120.93にとどまってトータル187.66 最終順位は6位となり、初戦の時点でファイナル進出はほぼなくなりました。

 

2戦目は最終戦NHK杯。混戦が予想される試合です。判定が???という試合でしたが、滑走順の遅かったグバノワ選手はそれをショートから意識した部分があったか? 冒頭のコンビネーションがセカンド1回転になってしまいます。後半ルッツもアンダーローテーション認定され55.80となり10位スタート。コンビネーションはともかく、ルッツの回転不足は厳しい。フリーはフランスの時と構成を変え、3-3を2本ではなく、ルッツフリップ2本構成にしてシークエンスのアクセルを入れた、ベースの基礎点が上がった構成。もう開き直って滑れるシチュエーションでしたが、ほぼミスのない滑り。アンダーローテーションとqを取られたりもしましたが、この構成で滑り切れる計算は立ちました。フリー128.52でトータル184.32 6位となります。

このNHK杯の直後に婚約発表した模様。ロシア系は結婚が早い。発表時まだ二十歳です。

 

年が明けてヨーロッパ選手権へ。ディフェンディングチャンピオンとして臨む試合です。

ショートプログラムはラス前で登場。またも全要素プラス評価。ショートは基本的に得意、ということで68.96で3位スタート。出そうで出ない70点台。スピンステップでレベル4 が揃えば70点に乗るのですが。フリーも最終滑走の1人前、先にショート1位のヘンドリックス選手が滑っていて、その上に出るためのターゲットスコアは144.29と極めて高いところになります。フリーはNHK杯と同じルッツフリップ2本構成。これをq2つで乗り切り137.56のパーソナルベスト更新。トータル206.52で2位につけ最終滑走を待ちます。最終順位はそのまま2位。2年連続表彰台を確保しました。

 

世界選手権は昨季14位。今期は出場者中シーズンベスト5位で乗り込む形ですので表彰台候補の一角を占めることになります。ショートは最終グループの2人目。おそらく勝負に出たのでしょう。ジャンプ構成変更。冒頭単独ルッツにして1.1倍にフリップからの3-3と入れ替えます。これが裏目。冒頭ルッツは良かったのですがフリップの方はコンビネーション付けられず。これは痛すぎるミスで58.66 まさかの20位スタートとなります。さすがに逆転表彰台は遠すぎるフリー。モチベーション面では難しいところもありそうでしたが、多少回転面で怪しく取られたところもありましたが、大きなミスは無く滑り切って123.76 順位はしっかり上げてトータル182.42の13位。結婚式は夏にするわ、と報告してシーズンを終えました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Lombardia Trophy 185.60 92.06 94.54 58.01 1.47 19.63 12.95
Finlandia Trophy 179.61 92.76 86.85 64.66 -1.39 18.93 10.56
Grand Prix de France 187.66 97.27 90.39 60.04 6.38 20.51 10.34
NHK Trophy 184.32 92.11 92.21 59.97 1.07 19.06 12.01
European Championships 206.52 108.30 98.22 66.33 6.24 22.21 13.52
World Championships 182.42 90.62 91.80 61.23 -1.58 20.26 10.71

トータルスコアは180点台が多いですがヨーロッパ選手権で206.52のパーソナルベストを出しています。今季8位、ISU公認スコアとしては7位にあたります。

技術点は90点台が多い中、ヨーロッパ選手権では108.30まで出しています。今期全選手中9位にあたります。PCSの方は90点台前半が多い中で、これもヨーロッパ選手権の98.22が最高。1項目平均8点を超えました。今期全選手中7位、ISU公認試合としては6位の位置です。

ジャンプの基礎点は60点前後が多いですが、ヨーロッパ選手権は66.33まで出ています。これは今期の全選手中13位、ISU公認で12位にあたります。加点の方はプラスマイナスゼロ前後が多いですが、6点台を2試合出しています。この6.38で全選手中15位。ISU公認で10位相当です。ジャンプは上位の結果を出しています。

スピンは20点前後で最高で22.21です。レベル4率が50%でオールレベル4の試合が無いこともあって、スピンのスコアは伸びていません。

ステップ系要素は10点台が多く、最高で13.52でした。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Lombardia Trophy 59.96 57.09 58.63 47.46 58.82 62.29
Finlandia Trophy 57.76 64.20 52.77 44.64 47.11 55.96
Grand Prix de France 60.72 59.26 68.69 51.01 46.03 58.87
NHK Trophy 59.49 59.19 57.81 45.16 54.22 60.37
European Championships 67.67 65.98 68.40 57.86 61.62 65.32
World Championships 58.79 60.53 52.38 50.00 47.84 60.03

トータルスコアは60前後の偏差値が多いですが、パーソナルベストのヨーロッパ選手権は60台後半まで出ました。

ジャンプの基礎点も60前後が多く、いい時に60台中盤です。加点の方は50台が多いですがいい時に60台後半まで出ます。

スピンは50を切る試合が多く、いい時で50台後半まで。ステップ系要素も50前後が多いですがいい時には60に乗せました。

PCSは60前後でいい時に60台中盤です。

ジャンプとPCSというちょっと意外な組み合わせで点が出ていて、スピンが明らかな苦手要素、ステップもそれほど得意ではない、ということなようです。

 

アナスタシアグバノワ選手の要素別偏差値レーダーチャート23-24

レーダーチャートは左下、下と少し凹む形になります。

ジャンプの加点はやはりばらつきますがスピンのへこみの方が大きいです。ジャンプで点を取りつつPCSももらえますという、少し珍しい形です。

 

●シーズン最高の基礎点構成

ロンバルディア杯 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.27 10.77 2.429
2 2A   3.30   0.53 3.83 1.571
3 FCSp4   3.20   1.02 4.22 3.143
4 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 1.857
5 CCoSp4   3.50   0.49 3.99 1.429
6 StSq4   3.90   0.86 4.76 2.286
7 LSp3   2.40   0.48 2.88 1.857
  TES   32.29   5.83 38.12  

ショートプログラム最高基礎点はロンバルディア杯で32.39となっています。フリップからのコンビネーションで単独ルッツが1.1倍です。スピンの中でレイバックスピンがレベル3でした。これをレベル4に出来れば32.59の基礎点になります。スピンステップでレベル4を揃えられれば70点に乗りそうなのですが、ちょっと足りなくて乗らないという試合が多いです。

世界選手権では単独ルッツを冒頭に持ってきて、コンビネーションを1.1倍にしようとしてコンビネーションが付かない、という形になりました。それをスピンステップオールレベル4で成功出来れば32.95の基礎点が組めました。来期はその構成でスピンステップオールレベル4でこなせることが目標になるのだろうと思われます。

 

ヨーロッパ選手権 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.444
2 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.111
3 3Lz   5.90   1.43 7.33 2.222
4 3Sq q 4.30   -0.74 3.56 -1.667
5 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
6 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
7 3Lzq+2A+SEQ q 10.12 x -0.76 9.36 -1.222
8 3F+2T+2T   8.69 x 0.23 8.92 0.444
9 2A   3.63 x 0.52 4.15 1.556
10 CCoSp4   3.50   0.55 4.05 1.556
11 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
12 LSp3   2.40   0.48 2.88 1.889
  TES   63.04   7.69 70.73  

フリーはヨーロッパ選手権で63.04の構成を組んでいます。これレイバックスピンのレベル3があるので、レベル4に出来れば0.30基礎点上がって63.34の構成になります。

2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。シーズン途中からこの基礎点高くなる構成に組み変わりました。トリプルアクセル以上のジャンプが無い選手の中で今季の最高基礎点は64.68ですので、比較的それに近いところまで持ってくることが出来ています。

ここから基礎点上げるには、スピンがあまり得意ではないですが、レベル4でも2.70のレイバックスピンではなく、3.50になるスピンを選べば0.80基礎点を上げてオールレベル4時に64点台までもっていくことは可能です。レイバックスピンはこの2シーズンレベル4が取れていない苦手のスピンですので、どうせレベル4取れないなら他のスピンに変えた方が優位なようにも感じます。

 

○平均GOE2.500以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.250
European Championships FS 6 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.222
Lombardia Trophy SP 3 FCSp4   3.20   1.02 4.22 3.143
Finlandia Trophy FS 6 ChSq1   3.00   1.58 4.58 3.125
European Championships FS 5 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.111
World Championships SP 3 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.111
NHK Trophy SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
Grand Prix de France SP 1 3F+3T   9.50   1.59 11.09 2.889
European Championships FS 11 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
World Championships FS 6 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
European Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.778
European Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.778
Finlandia Trophy FS 5 FCSp3   2.80   0.79 3.59 2.750
Lombardia Trophy FS 6 ChSq1   3.00   1.30 4.30 2.714
Grand Prix de France FS 5 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.667
NHK Trophy FS 5 FCSp3   2.80   0.72 3.52 2.556
World Championships FS 5 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.556

グバノワ選手はスピンの合計点数はそれほど伸びていないのですが、その中でフライングのキャメルスピンは得意で高評価が多いです。フィンランディア杯の+3.250は今期のフライングキャメルスピンを行った選手の中で4位という評価です。

フリップからのコンビネーションジャンプも高い評価を受けています。+2.889という評価は3F+3Tとして今期全選手中4位でした。

 

○セカンド3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Lombardia Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.27 10.77 2.429
Lombardia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.06 11.16 1.857
Finlandia Trophy SP 1 3F+3Tq q 9.50   -0.44 9.06 -0.875
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -1.08 9.02 -1.750
Finlandia Trophy FS 7 3F+3Tq q 10.45 x -1.06 9.39 -1.875
Grand Prix de France SP 1 3F+3T   9.50   1.59 11.09 2.889
Grand Prix de France FS 1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.67 9.43 -1.222
NHK Trophy FS 1 3F+3T   9.50   1.06 10.56 2.111
European Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.778
European Championships FS 1 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.444
World Championships FS 1 3F+3T< 8.66   -0.61 8.05 -1.111

シーズン序盤はフリーでルッツからのコンビネーションもありましたが、中盤以降、ショートもフリーもフリップからのコンビネーションに変えています。3-3として要素に入ったのは11回、そのうちGOEプラスの成功ジャンプは6回です。3-3にならなかったものまで考慮すると確率5割程度と言えるでしょう。

セカンドの回転が微妙、ということが多いです。それさえしっかり入れば+2以上がもらえるジャンプになっています。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Lombardia Trophy FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.00 8.69 0.143
Finlandia Trophy FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.09 8.78 0.250
NHK Trophy FS 8 3F+2T+2Tq q 8.69 X -0.68 8.01 -1.222
European Championships FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.23 8.92 0.444
World Championships FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.30 8.99 0.556

3連続ジャンプはフリップから1.1倍で跳びます。5回飛んでGOEプラスは4回です。1試合3連続が入っていませんが、セカンド3Tを2本入れようとして入らず2Tになってしまったので、3連続の最後の2Tを付けなかった、というものなので、そこは3連続としては失敗にカウントせず、最初から3連続を飛ぶ気が無かった、と見て、成功率は8割と言ってよいかと思われます。

 

グバノワ選手は今期、タイトルを掴むことは出来ませんでしたが、ヨーロッパ選手権の表彰台は確保しました。タイトルではなく配偶者という別なものは掴んだようですし、それなりによい1年にはなったのではないかと思われます。

パーソナルベストを206点台まで今期伸ばしてきました。フリーでルッツフリップ2本構成を問題なくこなせるようになったのは大きいです。スピン苦手で多少足引っ張っていますが、それを考慮しても210点くらいまでは届きそうな領域に入ってきました。

今期、転倒は1度だけ。回転不足で基礎点削られる率も低く、安定して滑ることは出来ているのですが、qがつくなどで今一つスコアが伸び切らないです。もう一声、加点をしっかり稼げると、グランプリファイナル、あるいは世界選手権で表彰台争いに絡んできそうにも見えます。