22-23 アナスタシアグバノワ

2002年12月2日生まれ

シニア5シーズン目

シーズン獲得賞金:$30,000

世界ランキング:8位

シーズンランキング:9位

シーズンベストスコア 199.91 (16位) ヨーロッパ選手権

ショートプログラムシーズンベスト 69.81 ヨーロッパ選手権

フリーシーズンベスト 130.10 ヨーロッパ選手権

ショートプログラム楽曲:Istanbul Wedding

フリープログラム楽曲:Latika’s Theme

スピンレベル4率 12/30 = 40.0%

ステップレベル4率 3/10 = 30.0%

スピンオールレベル4 0/5

スピンステップオールレベル4 0/5

ジャンプ要素回転不足率  3/50 = 6.00%

ジャンプ回転不足なし 3/5

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし0/5

 

○22-23シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
CS Finlandia Trophy 3 197.56 68.03 129.53
GP MK John Wilson Trophy 3 193.11 66.82 126.29
GP Grand Prix Espoo 7 166.57 56.03 110.54
EC Europe Championships 1 199.91 69.81 130.10
WC World Championships 14 184.92 65.40 119.52

昨シーズン国際舞台に復帰してきたグバノワ選手は世界選手権6位を持っているのでグランプリシリーズをシード選手として戦うという形になりました。

シーズン初戦はチャレンジャーシリーズのフィンランディア杯を選びました。なぜかやたら強い韓国勢がいた試合。ショートフリーともにスピンとステップは新ルールに対応しきれなかったかレベル4無しでしたが、全体的に大きなミスはなく197.56で3位とまずまずのスタートを切りました。

グランプリシリーズはMK ジョンウィルソン杯から。いろいろありまして19歳にしてグランプリデビューとなりました。この試合はレビト選手に三原選手というノーシードで強かった2人が210点台の勝負をしていましたが、グバノワ選手は他の選手は上回って3位表彰台を確保します。

2戦目のフィンランドは2位以内でファイナル進出が懸かる試合。ここでショートから冒頭コンビネーション入れられず、リカバリーしたいルッツで転倒して56.03の9位という大幅出遅れスタート。フリーも冒頭ルッツで転倒しスコア伸ばせず総合7位。ファイナルは夢と消えました。

ジョージア国籍なので他の有力シニアもおらず、ナショナル選手権は開催された形跡もないままシーズン後半のチャンピオンシップの代表となっていました。

グランプリシリーズの次の試合はヨーロッパ選手権。昨シーズン7位だったこの試合は表彰台チャンスが十分あるという立ち位置です。ここでショートから全要素プラス評価の69.81で1.96差の首位に立ちます。フリーは最終滑走、123.68出せば優勝です、という思いもよらぬチャンスが巡ってきました。このチャンスな状況を理解していたのかだいぶ固い滑りには感じましたがフリップのダウングレードが入り、3連続が無かったことくらいまでのミスに留め130.10をマーク。トータル199.91でヨーロッパチャンピオンのタイトルを手に入れました。

ヨーロッパチャンピオンだけどシーズンベストは200点を持っていないという微妙な立ち位置で迎えた世界選手権。ショート最終グループに組み入れられましたがコンビネーションがきれいに入らず65.40の11位スタートとなります。3位とは8.06差。ちょっと遠いかなというフリー、前半は良かったのですが後半に入ってのフリップからのコンビネーションで転倒、最後のアクセルは入らずで119.52だと逆に順位を落として総合14位で終わりました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Finlandia Trophy 197.56 102.93 94.63 64.66 7.98 18.48 11.81
MK John Wilson Trophy 193.11 99.33 93.78 64.66 5.21 17.30 12.16
Grand Prix Espoo 166.57 79.53 89.04 55.84 -7.27 19.42 11.54
Europe Championships 199.91 102.02 97.89 59.38 8.41 20.48 13.75
World Championships 184.92 91.12 94.80 59.61 -1.42 21.39 11.54

トータルスコアは190点台が3試合。200点に届かない水準で終わりました。

技術点は100点前後。昨シーズンは110点近いところまで取れた試合もありましたので昨シーズンの方が出ていました。

PCSは90点台。ヨーロッパ選手権では97.89で8点平均を超えるところまで出ました。今シーズン全体で12位という水準です。

ジャンプの基礎点は64.66が2試合あります。これはそれほど高いスコアでもないです。

ジャンプの加点はヨーロッパ選手権で8.41まで出しました。このスコアは今シーズン全体で14位にあたります。シニアの試合では7番目です。

スピンは伸びていません。1番いい試合でも21.39と21点台に留まっています。レベル4率40%というのは上位で戦う選手としては非常に低い水準です。

ステップ系要素も13.75までです。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Finlandia Trophy 64.04 64.14 72.53 44.83 54.84 61.80
MK John Wilson Trophy 62.57 64.14 66.86 40.89 56.42 61.18
Grand Prix Espoo 53.80 55.53 41.30 47.97 53.63 57.74
Europe Championships 64.81 58.99 73.41 51.50 63.57 64.17
World Championships 59.86 59.21 53.28 54.54 53.63 61.93

トータルスコアは偏差値60台前半まで出しています。200点前後でちょうど偏差値65あたりまで出ます。

ジャンプの基礎点もいい時は60台前半です。加点の方は70台まで出せます。いい試合でジャンプの加点を稼ぐと200点が見えるというくらいの位置です。

スピンは苦手分野で偏差値40台が並びます。世界選手権では54.54まで出ています。新ルールに少しずつ対応していった感じでしょうか。

ステップ系要素は50台が標準でヨーロッパ選手権では60台に乗せました。

PCSは60台前半。全体的に60を少し超えるくらいの偏差値にいますがスピンははっきり苦手、ジャンプは質のいいのを飛ぶこともできる、といったグバノワ選手です。

 

22-23シーズン アナスタシアグバノワ選手の要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこんな感じで、下のスピンが凹んでいます。ジャンプの加点が伸びるときは結構伸びるけどジャンプの基礎点と両立出来ていないようにも見えます。

 

・シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   -0.83 4.47 -1.667
2 2A   3.30   0.42 3.72 1.444
3 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.667
4 3Lz+3T< 10.19 X -1.60 8.59 -2.778
5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
6 CCoSp4   3.50   0.65 4.15 1.556
7 LSp3   2.40   0.24 2.64 1.000
  TES   31.79   0.70 32.49  

シーズン最高基礎点は31.79でした。昨シーズンは33.01というダブルアクセル組のほぼマックス値があったのですが今シーズンは基礎点が伸びていません。

通常は冒頭コンビネーションなのですがリカバリーで1.1倍にはいったことで基礎点がこの試合は伸びています。ただしアンダーローテーションは付きました。また、スピンのレベルが獲り切れておらずスピンオールレベル4の試合が今シーズンはありませんでした。それも基礎点伸びない理由になっています。

通常の冒頭コンビネーションの場合、レベル4を全て取れれば32.59の基礎点になります。本来この基礎点を出したかったはずです。その目論見構成の時のGOE満点で技術点は46.49になりPCS加味して86.49満点の構成となっています。

 

フィンランディア杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.57 11.67 2.625
2 2A   3.30   0.39 3.69 1.125
3 3Lo   4.90   1.23 6.13 2.500
4 3S   4.30   0.93 5.23 2.125
5 FCSp3   2.80   0.65 3.45 2.250
6 ChSq1   3.00   0.67 3.67 1.375
7 3F+3T   10.45 x -0.09 10.36 -0.250
8 3F+2T+2T   8.69 x 0.71 9.40 1.375
9 2A   3.63 x 0.17 3.80 0.500
10 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
11 CCoSp3   3.00   0.05 3.05 0.125
12 LSp2   1.90   0.13 2.03 0.500
  TES   59.37   7.07 66.44  

フリーの最高基礎点は59.37 60点に乗りませんでした。これも昨シーズン61.67があったところから下がっています。

この試合はジャンプは予定通りの基礎点が取れています。2回飛ぶジャンプはフリップとトーループ。1.1倍にフリップ2本でセカンド3Tもあり、ジャンプの基礎点はまずまずは取れています。

一方、スピンステップがレベル4無し。これで基礎点が2.30下がっています。本来はこの構成で61.67の基礎点を出したかったはずです。つまり、昨シーズンと同じところまで出せることになります。

スピンステップのレベル取りに苦しんだシーズンとなっていました。

この構成ですべてレベル4取れた場合、GOE満点で技術点は86.97まで出ます。PCS加味して166.97満点の構成です。

 

○平均GOE2.500以上

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Europe Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.59 11.09 3.000
Europe Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.889
Finlandia Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.50 11.00 2.875
Finlandia Trophy SP 3 FCSp3   2.80   0.79 3.59 2.875
MK John Wilson Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.778
Europe Championships FS 3 3Lo   4.90   1.40 6.30 2.778
Europe Championships SP 5 StSq4   3.90   1.11 5.01 2.778
MK John Wilson Trophy SP 5 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.778
Europe Championships FS 5 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.778
Grand Prix Espoo SP 3 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
World Championships FS 5 FCSp4   3.20   0.87 4.07 2.778
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.667
Europe Championships SP 4 3Lz   6.49 x 1.60 8.09 2.667
World Championships SP 5 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.667
World Championships SP 3 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.667
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.57 11.67 2.625
MK John Wilson Trophy SP 3 FCSp4   3.20   0.82 4.02 2.556
Finlandia Trophy FS 3 3Lo   4.90   1.23 6.13 2.500
Finlandia Trophy SP 5 StSq3   3.30   0.88 4.18 2.500

各要素でシーズン最高評価はヨーロッパ選手権のショート冒頭コンビネーション。ここで平均GOE+3.000を出していました。ショートの3F+3Tあるいはフリーの3Lz+3Tは高い評価が目立ちます。

スピンではFCSpが高評価。このスピンはグランプリシリーズあたりからレベル4を取れるようになっていました。他の選手で高GOEが多いレイバックスピンがグバノワ選手は苦手で、今シーズン通してレベル4を取れず、GOEも+1台が標準で+0台のことも多かったです。

ステップは+2台後半まで出せることもありました。コレオシークエンスはほぼ+1台です。

 

○セカンド3回転の要素

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.50 11.00 2.875
Finlandia Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.57 11.67 2.625
Finlandia Trophy FS 7 3F+3T   10.45 x -0.09 10.36 -0.250
MK John Wilson Trophy SP 1 3F+3T   9.50   1.44 10.94 2.778
MK John Wilson Trophy FS 1 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.222
MK John Wilson Trophy FS 7 3F+3T   10.45 x 0.83 11.28 1.556
Grand Prix Espoo FS 2 2Aq+3T q 7.50   -0.48 7.02 -1.000
Europe Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.59 11.09 3.000
Europe Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.10 11.20 1.889
Europe Championships FS 8 3F+3T   10.45 x 0.98 11.43 1.778
World Championships SP 4 3Lz+3T< 10.19 X -1.60 8.59 -2.778
World Championships FS 1 3Lz+3T   10.10   1.52 11.62 2.667
World Championships FS 7 3F+3T< <  F 9.53 X -2.65 6.88 -5.000

セカンド3回転は基本的にショートは冒頭で3F+3T、フリーは冒頭3Lz+3Tと1.1倍に3F+3Tを入れます。グランプリシリーズのフィンランドは全体の出来が悪すぎて入ってきませんでした、それ以外では3F+3Tは7回飛んでアンダーローテーションの転倒が1つありますが他は着氷、GOEプラスの成功が5回あります。世界選手権のショートが本来はコンビネーションのはずだったかと思うので、もう1つ失敗をカウントしてもいいかもしれません。

3Lz+3Tは5回飛んでアンダーローテーション1つありますが、GOEプラスの成功ジャンプとなりました。昨シーズンもそうでしたが、この2種のコンビネーションをしっかり決めるのが生命線でした。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements   Base   GOE Scores AvGOE
Finlandia Trophy FS 8 3F+2T+2T   8.69 x 0.71 9.40 1.375
MK John Wilson Trophy FS 8 3Fq+2T+2T q 8.69 x -0.91 7.78 -1.667
Grand Prix Espoo FS 8 3Fq+2T+2T q 8.69 x -0.91 7.78 -1.778
World Championships FS 8 3Fq+2T+2T q 8.69 X -0.76 7.93 -1.444

3連続ジャンプはヨーロッパ選手権で入りませんでしたが他の4試合では実施。フリップで3回qがついてGOEプラスの成功ジャンプは1つに留まりました。3F+3Tは高確率で成功しているので、ここは単独3Fにして最後の2Aに2Tを2つ付ける方が基礎点変わらないまま負荷を下げられてよいような気はしますが、おそらくフリップは得意なのでこういうことになるはずではなかったのだろうと思います。

 

元ロシアン代表格のグバノワ選手。今シーズンの途中で二十歳になりました。ヨーロッパ選手権のタイトルも獲得。ロシアジュニアのトップの方にいながらシニアに上がって伸びずの国籍変更。大きな挫折だったと思いますが、結果的に今は幸いしていると言わざるを得ない状況になっています。人生いろいろ。

ロシアのジュニアで結果を出してシニアで活躍できない選手は国籍替えれば長く現役を続けられるのか? この問いにグバノワ選手が答えてくれることになっていくのだと思いますが、この先のロシアジュニアの進路に大きく影響を与えそうで、そして、それはヨーロッパのフィギュア界、世界のフィギュア界への大きな影響が生じる事象かとも思います。そういう意味でもグバノワ選手の今後には目が離せないとも思っています。