日本相撲協会の収入源内訳

 前回日本相撲協会が、資産ため込んでるなー、ということを見てきました。

その資産は、どこから生み出されてきたのでしょう?

前回見てきた中では、資産の運用益、なんてのが意外とまとまってあったり、寄付金なんてのもかなり大きく、一方で補助金はほとんど受けていない、ということが見えました。

今回はそういうところではなくて、事業として、どこからどれくらいのものを得ているのか? というお話です。

 

相撲協会には会計部門が5つ+法人会計というのがあります。

5つの会計部門というのは次のものです

 

・相撲事業

・貸館事業

・広告・物品販売事業

・一般外来診療事業

・協会員福利厚生事業

 

相撲事業というのはそのままで説明の要はまったくないでしょう。これが、公益事業にあたります。

貸館事業とは、相撲協会が所有している国技館を、第三者に貸し出すことで収益を得る事業です。国技館本場所が行われるのは年3回、45日間だけですので、準備片付けを考えても、本場所で使われる稼働日数の比率は、年間考えると15%程度しかないことになります。この残りの空いている時期に貸し出すことで収益を得ようというものです。

広告・物品販売事業は、雑誌の販売やカレンダーの販売、また、相撲博物館の運営などと言ったものが含まれているようです。いわゆる放映権料がどう、とかそういったことは相撲事業の中に入っているように見えます。

一般外来診療事業は、相撲診療所、という国技館併設の、協会員向けを基本とした診療所を一般にも開放していて、一般の方が受診したものがここに含まれるようです。

この貸館事業、広告・物品販売事業、一般外来診療事業の三つが収益事業とされています。

協会員福利厚生事業は、上記の相撲診療所の本来の目的としての協会員(相撲取りや親方等)向けの診療がメインなようです。「日本相撲協会健康保険組合の被保険者および扶養家族の診療費は、福利厚生の一環として、徴収はしていない。」とあり、それが主にここの部分の費用になってきているようです

 

 

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さて、2017年度のそれら各会計部門の事業収益をまず見てみます。

まあ、この辺は普通で、収益のほとんどはやっぱり相撲事業で得ているのですね、という風になります。相撲事業の収益は107.68億円です。それに続くのは遠く離れて貸館事業の8.03億円、広告・物品販売事業は4.77億円となっています。

一般外来診療事業も一応収益はあって、471万円、協会員福利厚生事業も78万円あります。福利厚生事業の収益ってどこから湧いてるのかいまいちイメージできませんが、微小な額なので、これ以上考えないでおきます。

 

これだけだと、そりゃそうでしょ、こんなの見て何になるの? という感じなわけですが、次に費用の側を見てみます。

 

 

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当然ですけど、相撲事業会計の費用が大きくなっています。104.22億円。

また、全体を管理するための法人会計のところでどうしても費用が掛かって、5.40億円あります。貸館事業は3.74億円、広告・物品販売事業は1.33億円です。収益の小さいところは費用も小さいわけですね。それも当然と言えば当然ではあるのですが。なので、事業規模の大小は、そのまま利益の大小にはつながらない、というのも事業体の常。これは企業でも同じですが、相撲協会の各会計部門で、収支がどうなっているのかを次に見てみます。

 

 

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評価損益等調整前当期計上増減額、というのは、経常収益から経常費用を引いたものです。経常収益は、上記の事業収益の他に、資産の運用利益や寄付金などが足されています。おおざっぱに言えば、営業利益みたいなものだと思えばよいでしょうか。

これを見ると、相撲事業が一番大きな黒字ではありますが、貸館事業、広告・物品販売事業もまとまった額の黒字になっていて、この二部門を足すと、相撲事業よりも黒字が大きい、という計算になります。

つまり、興行としての相撲事業よりも、ある種の不動産業としての貸館事業であったり、物販部門であったりの稼ぎを合わせたものの方が大きいのですね。事業規模は当然相撲事業が大きいわけですが、稼ぎはそうでもないわけです。まあ、広告・物販事業は、相撲に付随する事業ではあるのですけど。貸館事業は、ほとんど不動産業ですね。一応、「国技館」というブランドがある種にプレミアムを生んでいる可能性はあるとは思いますけど。

 

 

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会計部門別に、4年間の収支の推移を追ってみました。ただし、2014年は1月分が入っていない計算のため、相撲事業は1月場所の売り上げがなく、極度の赤字計算となっています。

その点を差し引いたとしても、安定した黒字を稼いでいるのは貸館事業と広告・物品販売事業であって、相撲事業は、2017年こそ大きな黒字を稼いでいるものの、15年16年は貸館事業よりも黒字幅は小さい、といった状態でした。15年16年は相撲事業の黒字幅だけでは、協会員福利厚生事業の赤字分と、法人会計で生じるマイナス分をカバーしきれない、といった状態であり、貸館事業、広告・物品販売事業、この二つなしでは協会全体で赤字になっていた、という状態でした。

 

 

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また、相撲事業の中で目につく収入源として、資産運用益と寄付金というのがあったので、その推移を見てみます。そうすると、16年の黒字額はそれらの合計よりも小さい額でしかなく、17年の黒字額6.6億円も、そのおおよそ半分の3.15億円ほどが、資産運用益と寄付金で賄われていることが分かります。なお、寄付金は15年~17年は、相撲事業の収益にカウントされているものと、ほぼ同額が、法人会計の方にもカウントされています。

 

資産運用益は、前回、余剰資産として持っている国債などの債権から得られているもの、と書きました。では、寄付金はどこから出ているのでしょう?

 

相撲協会には、「維持員」という制度があります。おおざっぱに言ってしまうと、多額の寄付をするからいい席頂戴ね、みたいな制度です。もう少し真面目に書くと、相撲協会の記した文言から抜粋して、

 

相撲をこよなく愛し、造形深くご尽力いただく方が常に存在し、一体となって維持発展してまいりました。今日、その方々が「維持員」として日本相撲協会の維持と存立を確実にし、その事業全般を後援すると共に大相撲が未来永劫、親しまれますよう、制度として確立されております。

 

という前提のもとに、維持費として、6か年分を一括で、東京地区では414万円以上、大阪、名古屋、福岡地区では、138万円以上を収めていただく、というものです。

 

維持員の方には、力士の相撲競技を鑑賞し、力士の技量の実態を把握し、これを育成することで、相撲道の発展を計ることとします。「維持員席」にて当該維持員の属する地区の本場所相撲競技に立ち合う事となります。

 

ということで、土俵下の溜席を、東京、大阪、名古屋地区は300席、福岡地区は250席割り当てています。

 

というのが、寄付金の出どころです。

これ、年間チケットのVIP版、6年セット、を維持員という名前で売り上げではなく寄付金カウントしただけ、に見えます。相撲に限らず、スポーツ系団体がVIP向けにラグジュアリー席というものを設けて商売する、というのはある話で、それ自体は何の問題もないと思います。ただ、気になるのは、寄付金だと消費税が発生しないんですよね。この制度、制約が割と多いので、実際にはラグジュアリー席で観戦するVIP、というよりはある種のステータス的なものになっていて、「私、相撲協会のタニマチなんですよ」と言える権利、としての性質の方が強いようにも見えるので、「寄付」扱いでいいのかもしれません。実際のところは、どちらの性質が強いのかははっきりしないので、ここでは、寄付金扱いだけどVIP席のような割り当てがあって、でも寄付金だから消費税は発生しないはず、と指摘するにとどめておきます。

 

こういう見方をすると、この寄付金は、半ば売り上げみたいなもの、と捉えることもできて、これは相撲事業の事業としての実力で得ている収益、と見なせるかもしれません。ただ、見なせるならば、消費税は? と問いかけたくなります。そうではなくて寄付です、というのならば、相撲事業の実力値としての収益とはちょっと違う、と捉えることになります。

 

この寄付金は、相撲事業と法人会計合わせて、4億円台半ばの金額であり、重要な資金源となっています

 

それら以外の、各事業での収益の中心がなんなのかについては決算書に記載はありません。相撲事業収益がいくらいくら、とまとまった金額が記載されているだけです。その中身がわかると面白いのですが、残念ながら分かりません。

常識的には、入場料収入というのが大きく、ついで放映権料があるでしょう。相撲の場合は本場所以外に地方巡業というのがあり、これもまた一つの収入源となっているものと思われます。また、グッズなどの販売、と続きそうなのですが、これは、相撲事業ではなく、広告・物品販売事業に含まれるでしょうか。相撲で広告と言えば懸賞ですが、これが相撲事業に入っているか、広告・物品販売事業に入っているか、いまいち区別がついていません。

 

これらの中で、個別の金額がわかるものを載せてみます

 

入場料は以下のようになっています。ただし、一月の東京場所について、です

 

溜り席

14,800円

マスA席(1~4人用)

11,700円/人

マスB席(1~6人用)

10,600円/人

マスC席(1~4人用・6人用)

9,500円/人

特別2人マスC席

9,500円/人

6人ファミリー/シニア桝B席

37,200円/マス

6人ファミリー/シニア桝C席

31,200円/マス

4人ファミリー/シニア桝B席

24,800円/マス

4人ファミリー/シニア桝C席

20,800円/マス

イスA席

8,500円

イスB席

5,100円

イスC席

3,800円

4人ファミリー/シニア椅子B席

15,600円/組

自由席大人

2,200円

自由席子供(4~15歳)

200円

(すべて内税表示)

 

イスA席以下が2階です

ファミリー/シニアの桝席は、一人当たりにするとイスA席より安かったりするんですね。

土俵に近い席ほど少なくなりますので、平均単価は7,000円くらいになるでしょうか。収容人数は11,098人とされています。満員御礼なら7~8,000万円くらいの入場料収入になるんでしょうか。15日間で10~12億円ほど。もう少し大きくなるのかな。

 

もう一つ、懸賞金も上げておきます。

 

1本

62,000円

1場所15本

930,000円

申込本数は1日1本以上、1場所15本以上から、とのことなので、最低93万円スタートです(税込み)

 

価値力士獲得額

56,700円

手数料(取組表掲載料・場内放送料)

5,300円

 

これは、力士の収入としては重要そうですが、協会の取り分としてはそれほどは大きくないでしょうか。今年9月場所に懸賞本数が2,160本で過去最高になった、という報道がありました。年間6場所すべて2,160本付いたとして、年間で12,960本。5,300円を掛けると、6,869万円になります。

 

 

やはり、なんだかんだで入場料収入というのは大きいんだな、というのはわかります。

 

 

もう一回続きます。

 

 

日本相撲協会の財務状況

さて、スケート連盟の財務状況を見たのを引き金に、ここまで、冬競技の財務状況との比較なんかをしてきました

この辺で、冬競技を離れて、別の競技の財務状況を見てみたいと思います

冬競技の中ではスケート連盟というのはかなりの金持ち団体である、ということが見えましたが、じゃあ各スポーツ団体の中で見たらどうなのか? という話です

 

ここで、オリンピック競技ではないですが、日本相撲協会というのを持ってきたいと思います

これを持ってきた理由は、稀勢の里大変そうだなあ、というのと、それなりにお金持ってそうだから、という二つの理由です

ようは、理由はあってないようなもので、見てみたかったから、というのに近いですが、スケート連盟より大きな資産規模なのではないか? という推測はありました

 

まず前提

相撲協会は12月決算です

最新の決算は2017年12月

また、2014年1月30日から公益財団法人に移行したこともあって13年以前の決算記録は表に出ていません。また、2014年は1月30日から12月31日までの決算となっています。大相撲は1,3,5,7,9,11月に本場所がありますので、2014年は1月場所については決算に含まれていない、ということになります

 

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さて、最初に、どれくらいの事業規模なのかを見るために、経常収益の推移を見ます。

経常収益は、2014年は100億円に欠ける数字でしたが、この年は2月から12月の11か月分の決算なので、1月場所の売り上げが入っていません。それ以降の3年間は120億円前後で継続しつつ、右肩上がりになっています。

スケート連盟は、オリンピックシーズンに補助金込みで30億円台前半の経常収益ですから、それと比べても4倍程度、オリンピックシーズン以外の年で、補助金抜きで考えると6倍程度の規模が相撲協会の事業規模としてある、と言えそうです。

 

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続いて正味財産期末残高の推移

2017年末段階で380億円ほどあります。かなりの資産規模です。スケート連盟が18年6月末時点で26.6億円でしたから、おおよそ15倍の規模になります。上には上がいる、という感じです。さすが「国技」とされるだけのことはあります。スケート連盟は冬競技の中では図抜けた金持ちでしたが、こういうところと比較してしまうと、たいしたことないようにも見えてしまいますね。

 

こんな財産どこに抱えてるの? というところなんですが、相撲協会は資産リストを公表していません。なので、貸借対照表や事業計画書などから読み取れることで推測していくしかありません

 

貸借対照表を見ると流動資産は47億円ほどです。そのうち現金預金で45億円ほど。流動負債が13億円ほどなので、運転資金というにはちょっと大きいですが、年間の経常費用が110~120億円ほどありますので、流動資産はまあ、運転資金としておいてよいでしょうか

 

貸借対照表で、負債で大きな部分を占めているのは退職給付金です。これに相当するものが固定資産として充当されていますので、その分を差し引いた資産を見ると、350億円近い固定資産を抱えています。スケート連盟やその他の冬競技の資産を見ていると、わかりやすい固定資産はあまりなく、積立引当金のような形でしかなかったのですが、相撲協会はわかりやすいものが結構あります

 

土地が94億円あるとされています。建物としても35.5億円ほどあります。このへんはおそらく国技館がメインなのだろうと思います。両国のあのあたりって、地価どれくらいなんでしょう?

ちょっと調べてみたら、両国付近の路線価でおおよそ68万円/m2という数字が出てきました。国技館の面積ってどれくらい? 延べ床面積35,700m2とあるけど、土地の面積はもっと小さいですかね。ただ、外部も占有しているということを考えると、やはりほぼほぼ94億円というのが国技館の土地の価格ということなのでしょう。建物35.5億円は国技館以外の部分もあるかもしれませんが、結構多くの金額が国技館関連でしょう

この辺は、資産と言っても簡単に売ることは出来ないものですし、むしろ維持費がかかってくるので、資産が大きいは大きいですが、余剰資産、というのとはちょっと違いますね。むしろ、これを原資に事業を行っている、というものです。

また、国技館の老朽化による建て替えに備えるため、という理由で減価償却引当資産、というものが計上されているのですが、これが135.4億円ほどすでにあります。さらには国技館改修基金というそのものずばりな名前で17.5億円が確保されています。

 

現在ある両国国技館、というものを建てるのにはいくら掛かっていたのでしょう? Wikipediaによれば1984年竣工で150億円で建った、とされています。別の建設関係のサイトでも、150億円と言っていますから、そういう金額だったのでしょう。そちらのサイトでは、土地代94億円とありますので、上記で述べた固定資産の土地94億円は、やはり国技館そのものと思ってよさそうですね。前回の建設時は、その前に国技館のあった蔵前の土地を売り、補助金として5億円をもらったうえで、自前で貯めていた96億円を使って、土地及び建物を手に入れたようです。その当時と比べて、かなり手持ちの資産も増えていますし、減価償却引当資産と、国技館改修基金と合わせると、前回の総工費150億円を超える152.9億円が確保されている、という状態です。

それだけの準備金をすでに持っているわけですから、そういう観点からすれば、金持ってるなー、とはっきり言えるでしょう。

また、そのほかにも公益目的事業用資産30億円、管理目的用資産20億円、という、わかるようなわからないような科目の資産がまとまった金額入っています。

この辺だけで200億円を超える資産があるわけで、事業規模を考えると、非常に裕福であると言えるでしょう。

 

さて、その金の持ち方ですが、決算書を見ると、各種金融商品を所持している記載がありました。

 

国債50.7億円

地方債20億円

みずほ銀行社債2億円

三井住友フィナンシャルグループ社債10億円

 

締めて82.7億円ほど(すべて帳簿価格)

 

これがどの科目に相当するのかはわかりませんが、これらは流動資産ではなく固定資産側へ記載されているものになるはずです。いわゆる固定資産のイメージには合わないのですが、貸借対照表上では固定資産側へ入れていますこの場合。この場合というのは、相撲協会の決算書ではこれらの有価証券は「満期保有目的」と記してあることと、上記に相当する金額が流動資産の科目内に存在しないこと(流動資産のほとんどが「現金預金」である)により、固定資産として所持されていることがわかります。

 

流動資産ではない有価証券というのは、運転資金ではありませんので、ある種の余剰となっているものと言えます。それがこれだけの金額になるのですから、かなり大きいですね。そしてこれが何を生み出すかというと、次のようなものが生み出されているわけです

 

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上記の有価証券、と限ったわけではないですが、正味財産増減計算書の中で、特定資産運用益という科目があり、それを見ると、毎年1億円以上の運用益が得られています。スケート協会も相撲協会の十分の一規模の資産はあったのですが、運用益は毎年数十万円、という規模でした。それと比べると、莫大ともいえる運用益を得ていると言えます。

80億円台の金融資産の運用益が1~2億円というのは、1~3%程度の利回りであり、それほど高いわけではないですが、定期預金に預けておいただけ、というのとは異なり、明確に、運用して収益を得よう、という意思がないと得られない利率、金額です。余剰の資産をうまく生かしていると言えます。

 

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 相撲協会は寄付金もそれなりに得ていて、3億円台から4億円台ほど毎年あります。最新の2017年は4.75億円ほど。経常収益全体が120億円台であるのと比べれば小さく感じられますが、多くの収益源にはコストがかかるのに対し、寄付は寄付でこれに呼応したコストはほぼ発生していないはずです。そういった意味で、これだけの寄付が得られるというのは大きいと言えるでしょう。

 

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じゃあ補助金なんかはどれくらいあるの? というのを見てみると、こんなものです。このグラフ、縦軸は万円単位です。つまり、100万円台しかありません。寄付金や資産の運用益と比べると、微々たるものしかありません。補助金いらずの健全経営ってことでいいんでしょうか。まあ、国債を50億円以上持っている団体に、寄付金を交付する意味、ほとんどないですからねえ。

 

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そのあたりをひっくるめた、正味財産の増減額の推移。これは一般的な企業でいえば、純利益の推移みたいなものですが、15年以降は黒字推移です。2015年、なにかありましたっけ? 日本人久しぶりの優勝、というのは2016年、日本人久しぶりの横綱昇進は2017年です。2015年、なにかあったっけ?

2014年は結構大きな赤字ですが、この年は1月分が除外されている計算で、どうも1月分を合わせると、だいぶ赤字幅が圧縮されているようです。

それ以前、13年以前はしばらく赤字が続いていたようでした。

2017年の正味財産の増加額は8.32億円。これを純利益として読むと、この年度の純利益率は6.58%ということになります。立派な優良企業ですね。さて、立派な優良企業は、営業利益率が高くて、そこから税金取られての純利益になるので、結構な額を納税しているはずなわけですが、相撲協会はどうなんでしょう?

 

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というわけで、法人税等、という科目を見てみたらこんな感じでした。縦軸の単位は1円なので、金額は見たままの数字です。つまり、2017年度は15万円ちょっとでした、ということになります。利益に相当するものがだいぶ出ているのですけどね、税金はほとんど納めていない、という状態なわけです。

 

相撲協会は「公益財団法人」となっています。公益財団法人は「公益目的事業」として認められる部分は課税対象になりません。法人税法上の収益事業から生じた所得は課税対象となるのですが、「公益目的事業」は収益事業ではない、ということとされ、課税対象になっていないわけです。

スケート連盟は、17-18シーズンは、法人税、住民税及び事業税として1.14億円ほど納税していました。このオリンピックシーズンは、結構な金額の黒字があったので、それに伴って税金を納めていた形です。これは、スケート連盟のすべての活動が「公益目的事業」ではなく、収益事業として区分されるものがあるため、そうなっています。それに対して、相撲協会でも、収益事業に区分されるものはありますが、結果として税金はほとんど納めていない形となりました。このあたりが、相撲協会にかなりの資産が貯まっている、一つの要因と言えると思われます。

収益事業であっても、損失の繰越というのができますので、13年以前に莫大な赤字があった、というのなら、法人税がほぼ掛かっていない、というのも妥当ではあるのですが、その辺どうなってるんでしょうね。少なくとも、ここ数年、法人税はほぼ支払われていない、という事実はあります。

 

スケート連盟の財務状況を見ていたときは、アイスホッケーとかカーリングなんかと比べて、だいぶ金持ちだなあ、という感じでしたが、相撲協会のそれを見ると、スケート連盟とはけた違いで、上には上がある、というのはこういうのを言うんだなあ、という感じでした

 

今年も一年盛り上がった、というか、話題に事欠かなかった相撲界。事業規模が100億円台、資産は数百億円抱えている、という事業体です。一部上場企業の中でも売り上げ100億円に満たない企業はいくらもありますので、事業規模でいえば一部上場企業並みの組織体なわけです。

横綱がみんな休んでたり、日本人がなかなか勝てなかったり、暴力沙汰はしょっちゅうだし、この先どうなるんだ?? と雲行き怪しい部分もあるように見えますが、財務面では、非常に裕福で、ゆとりがある状態です。

多少ごたごたが続いても、多少客席が埋まらなくなったとしても、しばらくはお金の面では安泰だろう、ということが見て取れます。

 

相撲協会の話は次回へ続きます

 

 

 

スケート連盟の屋台骨は別に背負わない

スポーツ紙(芸能誌?)の記事にいちいち反応しても仕方ないのだろうとも思うのですが、最近ここで書いた話と一部かぶりつつ、見解が全然違うものが出てきたので、少しコメントします

 

日刊ゲンダイの記事にこんなものがありました

逆転Vの紀平梨花 ポスト真央が背負うスケート連盟の屋台骨

ヤフーニュースの方へのリンクも貼っておきます。こちらは10日もすれば消えるんでしょうけれど

 

ポスト真央、の方に食いつきたい方もいるかと思いますが、それはここでは横に置いておきます。ここで食いついたのは、スケート連盟の屋台骨、の方です

文中、次の記載があります。

以下引用

 

 浅田真央が14―15年に休養、そして、17年に引退して以降、日本の女子フィギュアは地盤沈下日本スケート連盟の収益も直撃した。浅田が絶頂期だった13年度の決算で47億円超あった事業収益はどんどん減り、17年度(7月1日から18年6月30日まで)は五輪イヤーにもかかわらず27億7975万円にとどまった。

 

引用ここまで

 

13年度の事業収益と比べて17年度の事業収益が激減していて、その理由は浅田真央の存在の有無である、ということを言いたいようです。

 

これ、数字の部分に間違いはありません。「13年度の決算で47億円超あった事業収益」との記載がありますが、実際の数値は4,720,616,063円。すなわち47.21億円で、47億円超というのに合致します。17年が27億7975万円というのは、実際の数値が2,779,756,899円ですので、普通こういう時切り捨てじゃなくて四捨五入じゃない?というところ以外は、まあ27億7976万円という数値でほぼ合います。

 

数字はあってますので、次はこれが「スケート連盟の収益も直撃した」という話と合うかどうか、なのですが、そこが全然合ってません。

 

13年度と17年度で事業収益に大きな差があるのはどこか? というのを探してみます。

13-14 ソチシーズン、何があったでしょうか?

さいたまスーパーアリーナで世界選手権がありました。

17-18 平昌シーズン、日本で世界選手権を開いたでしょうか?

そのシーズンの世界選手権はミラノで行われました

 

ソチシーズンの世界選手権の収益は試合とエキシビジョン合わせて1,876,746,065円、すなわち18.77億円でした。13年度と17年度の事業収益の差はほとんどこれで説明が付きます。

さらに言えば、13-14シーズンは、スピードスケートでも世界スプリントや、世界選手権のアジア予選などを開催して、その分の収益が66,536,766円ありました。

この辺の、17-18シーズンになくて、13-14シーズンにあった大会の収益を13-14シーズンの事業収益から引くと、

4,720,616,063 - 1,876,746,065 - 66,536,766 = 2,777,333,232円

となります。

これは、17-18シーズンの事業収益、2,779,756,899円とほとんど一緒です。

 

というわけで、13-14シーズンと17-18シーズンの事業収益の差は、浅田真央さんの存在の違い、ではなく、主催した大会の違い、とくに世界フィギュアの有り無しの違いでした、ということになります。

 

なお、17-18シーズンは、毎年あるわけではないグランプリファイナルを日本でやったよね? という指摘もあるかもしれませんが、13-14シーズンもグランプリファイナルを日本でやってますので、そこは同条件です。

 

 

というわけで、紀平梨花選手は、別にスケート連盟の屋台骨なんて背負いませんよ、というお話でした

 

フィギュアスケートとクラウドファンディング

 白岩優奈選手が、クラウドファンディングで資金を集めています

これを聞いたときには、正直なところ、哀しいなあ、と思いました

 

彼女はジュニア時代にはグランプリシリーズで2勝してファイナルにも出場し、世界ジュニアは二回出て4位と5位。全日本にも出て最終グループに入り、5位、6位と活躍していた選手です。

シニア上がり同期に、オリンピックに出場した坂本花織選手と、世界ジュニアで優勝と二位、とにかく目立っていた本田真凛選手がいたため、少し地味な扱いではありましたが、それでも強化指定A選手として、日本の中では上から十番目までには入る選手でした。国籍が日本、ロシア以外なら、平昌オリンピックにも出場出来ていたでしょう。

 

そんな選手が、活動資金が足りない、と言っているのです。

彼女はトップ選手として、特別お金がかかるような活動をしているようには見えません。海外のコーチの下で、とかそういうことをしているわけでもなく、自宅から学校へ通い、自宅からリンクへ通う、という生活です。プログラムも多少いじりながらも二シーズン続けるようなことも多いです。今シーズンのフリー、展覧会の絵もそうですし、ジュニア一年目のフリー、彼女の出世作とも言えたナイトワルツも、翌シーズンまた使いました。また、振付師としての実績がない段階でのキャシーリード先生に着けてもらうようなこともしていました。

無尽蔵にお金をかけるような活動の仕方をしているわけではないです

 

でも、資金が足りない

 

マイナー競技なら、日本で上位五番までに入るのはちょっと苦しいかな、十番目までには入るけど、というような選手で、資金が足りない、アルバイトして稼ぎながらなんとかしよう、という人もいるでしょう

でも、彼女は、フィギュアスケーターなわけですよ

競技の性質としてお金が割とかかる、という部分はありますが、一方で、それなりに人気がある競技なんだから、上位十番までに入るような選手が、お金の問題で苦しむ、なんて現実があるのが哀しいわけです

 

たぶん、日本のフィギュア界の構造的な問題にその辺がなってしまっているので、この辺のクラスの選手たちに活動資金が回っていくような環境を整えないといけない

 

クラウドファンディング、というのはその一つのやり方ではあると思います

ただ、どうしても引っ掛かる部分があります

 

フィギュアスケートに限らず、各種のスポーツ競技において、連盟、協会に属する選手は、その活動において、いくらかの制限を受ける形になることが多いです。

スケート連盟もその例に漏れず、選手はこうあるべき、というような規定が定められています。

日本スケート連盟は、クラウドファンディングに関して、2017年7月4日付で、ウェブサイト上にて以下のようなことを布告しています

(以下、〇に続く文章は、連盟の規定の文章からの抜粋です)

 

日本スケート連盟では、クラウドファンディングを利用し金品を募集する行為は競技資格規定第3条(1)(4)に抵触する行為と理解しております。したがって、同規定第5条に基づきあらかじめ当連盟に届書を提出し、理事会の承認を得る必要があります。

 

さて、競技資格規定第3条(1)や(4)あるいは、第5条というのはなんでしょう?

第3条は(登録無資格者) という条項で、以下のようにあります

 

 

〇本連盟は、次の者を競技者として登録することは出来ない。また、すでに登録した競技者が次の条項に該当した場合は、その登録を取り消さなければならない。

 

とあって、(1)と(4)は以下です

 

(1)スケートで得た名声を本連盟の承認を得ることなしに、商業宣伝のために自らの肖像権を利用し、あるいはその利用を認めたもの。

(4)スケートを行うことによって、ISU及び本連盟が認めていない金品を受け取った者。

 

ようは、スケートで個人で金儲けしちゃだめよ、と言っているわけです

そして、クラウドファンディングはその金儲けにあたる、と理解している、と言っているわけです

 

では、第5条はなにかというと,(申告義務)という条項になっていて、以下の記述があります。

 

〇競技者が報道関係者からスケートに関するニュース報道以外の特別取材を受ける場合、あるいは放送、座談会、映画、演劇等に出る場合または、競技者本人の肖像を使用する場合はあらかじめ連盟に届出書を提出し、理事会の承認を得なければならない。

 

ニュース報道以外の特別取材、というのがどこからがニュース報道以外なのか、区分けはよく分かりませんが、少なくとも羽生選手が、利息でござる! とか言われてたものは、事前に連盟に届けていたわけです。こういう規定があるから、クラウドファンディングをしたいならば届け出てください、と連盟は言っています

 

さて、届け出たらどうなるか?

クラウドファンディングに関しての布告の中には以下のようにあります。

 

〇当連盟理事会で協議いたしました結果、賞金等の取扱規程第5条の「個人スポンサー契約料」の取り扱いについては、収入額が1年度で500万円までは同条の規定を適用しないこととなりましたが、500万円を超える額については、その10パーセントを当連盟に支払う必要があります。

 

クラウドファンディングで得られた金銭に関して、500万円を超えた部分は10%を連盟が徴収する、とあります。超えた部分、ということですので、例えば1,000万円集まった場合は、(1000-500)×10% =50万円  が、単純計算では連盟の収入になりますが、実際には集まった1,000万円から先にいろいろな形で引かれるので、それを引いた後の金額から500万円を引いた額の10%が連盟に渡る金額となるはずです。

なお、クラウドファンディングに限らず、賞金も、個人スポンサー契約料も、スケート連盟が10%控除します。

 

このあたりはどうなんでしょう、妥当性として。クラウドファンディングに伴う、事務的な様々な事柄を連盟がやってくれる、お礼の選定、タオルやクリアファイルの作成にともなう付属的な仕事を連盟がやってくれる、そういったことであるならば、それらの手数料として、受益者負担ということでそれ相応の取り分があるのは妥当かと思います。賞金なんかは、派遣費用を連盟が出しているのだから見返があった選手は連盟にも取り分入れてくださいね、というのは論理的には成り立つでしょう。ただ、そうではなくて、申請書受け取って許可するので、沢山(500万円を超える)入金があったら、連盟にも取り分ください、というだけのことなのだとしたら、それはちょっと違うのではないかな、という印象です。実際のところ、いくらかの事務的な支援をしてくれているのかどうか、というのはわかりません。

 

 

クラウドファンディングで金銭を得る場合にも税金が絡んできます。税金については、白岩選手のケースは、購入型か寄付型か微妙なところです。購入型は出資のお礼としてなんらかの見返があるもの、寄付型は見返がないものですが、見返が金額に対して小さい場合は寄付型としてみなされることもあるようです。トップ選手のサイン入りポストカードやバナー用タオル、などは、原価と比べて大分高くても、立派な見返なような気がするので購入型な気がしますが、そこは専門の会計士に判断してもらっているでしょう。

購入型の場合は、税金としては所得税、寄付型の場合は贈与税、がそれぞれ課せられます。また、購入型の場合は売上扱いになるので、消費税がかかることがあります。ようは、商売と同じで物品ないしはサービスを販売して収益を得た、というのと同じ扱いなわけです。

消費税は、白岩選手が払う、というのではなく、仕組みを提供しているプラットフォーマーが預かって納税する形になるはずです。

 

また、当然と言えば当然なのですが、クラウドファンディングの仕組みを提供するプラットフォーマーが手数料を取ります。この設定はさまざまあるのでしょうが、白岩選手が採用したプラットフォーマーでは、達成金額10%を手数料とする、とありました。

 

こうやって書いていくと、集まった金額と比べて、選手に残る金額はだいぶ少なくなることが想像されます。

 

ちょっと計算してみましょうか

 

仮に、1,500万円あつまったとします

最初に消費税を考えます。消費税は年間の売り上げが1,000万円を超えない事業者にはかからないであるとか、その「年間」の基準とは当該年度の前々年であるとか、いろいろあるのですが、ここではクラウドファンディングのプラットフォームを提供する企業が消費税の納税義務の除外規定を満たしていない、という前提とします。

そうすると、消費税が内税で含まれた額が1,500万円、ということになるので、その分を外すと、

 

15,000,000÷1.08 = 13,888,889円になります

 

次にプラットフォーマーの手数料が引かれるのですが、この達成金額の10%というのが、消費税を引く前の見た目金額を指すのか、消費税を引いた後の実態金額を指すのか不明です。ここでは良心的に、消費税差引後とします

 

13,888,889 ×0.9 = 12,500,000円

 

この1,250万円がまず一旦選手に渡ります。

すでにこの時点で、見た目金額の六分の五に減っています。

 

次に、連盟が、500万円を超える部分の10%を取得する、ということになるので、

 

12,500,000 - (12,500,000-5,000,000)×0.1 =11,750,000円

 

つまり、75万円を連盟が持っていきました。

 

残った1,175万円から、「お礼」にかかる費用を差し引きます。

これは実際には不明です。物品としてはポストカード、バナー用タオル、オリジナルクリアファイル、とあります。ポストカードは二千枚レベル、タオルは千数百枚には及びそうです。タオルもクリアファイルもオリジナルのものですから、誰かがデザインをしています。白岩家ないしは友人、なんてのがデザインしていれば別ですが、どこかに発注してデザインしてもらっていれば、それはそれでそれなりに費用となっています。

また、これだけの人数に送るとなると、「配送料」もそれなりにかかってきます。また、最上位金額提供者には特別メッセージ動画も提供されるようですが、これの作成費ももしかしたらかかるかもしれません。家族で撮影しただけ、とかだと実質無料で出来るのかもしれませんけれど。

正直なところ、これらの費用というのがどの程度かはわからないのですが、少なくとも何万円、という単位では全然足りずに、何十万円という単位にはなります。百万円までは行かなさそうな印象ですけど。実際のところはわからないですが、ここではざっと50万円としてみましょうか。

 

そうなると、手元に残るのは1,125万円となります。最初の1,500万円からは25%ほど減っていますこの段階で。

 

そして、この受け取った1,125万円に税金がかかります。所得税というやつです。

ここで難しいのは、所得って何? という話です。所得は収入とイコールではありません。このクラウドファンディングで得た収入は、今回の仮定でいえば1,250万円のところにあります。ここから連盟が持って行った分や、「お礼」のためにかかった費用、というのは間違いなく、「経費」の区分に入れることができて、所得を考える場合には、収入である1,250万円からひくことができる、と考えました。

さて、他に経費はないのか? ということが考えられます。このクラウドファンディングは、フィギュアスケーターが、ある意味で、「フィギュアスケーターであること」を理由として、いくつかの「お礼」という商品を販売している、という風に読み解くことができます(選手はそういう意識でやってるとは思えませんが、税金を考える場合にはそう考えるのがやりやすい)。そうなると、「フィギュアスケーターであること」にかかるいろいろな費用は、このクラウドファンディングで収入を得るための、すべて経費であった、と考えることができます。そう考えれば、「所得」を計算する場合には、その分は収入から差し引いて計算することができます。

 

彼女は、一年間のスケートにかかる費用は600万円ほどである、とのべています。この600万円を経費である、とみなすことができれば、課税所得は1,125-600=525万円での計算となります。一方、スケートにかかる費用は関係なく、今回のクラウドファンディングに直接的にかかった費用だけを経費と考えるならば、課税所得が1,125万円ということになります。

課税所得が525万円である、と考えた場合は所得税は622,500円になります。課税所得が1,125万円と考えた場合は、所得税は2,176,500円となります。なお、彼女のレベルの選手だと、実際にはこのクラウドファンディングとは別のところで収入を得ることができます。わかりやすいのは賞金。グランプリシリーズで5位以内の選手には賞金が出ます。白岩選手は今シーズンは4位と5位ですから賞金があります。また、エキシビジョン出場料であるとか、そういった、スケート由来の収入源というのがいくらかあります。これらの収入は所得に加算されます。今回のクラウドファンディングで得られる金額が確定するのは来年1月なため、所得の計算は来年分ですから、先のグランプリシリーズの賞金は無関係で、来年どれだけ得られるか? ということにかかってくるわけですが、それらが税金の額に影響しますので、実際の税額ははっきりしたことは言えず、上記の計算は不確かなものではある、というのは認めざるを得ません。

 

所得税までは割と意識されるのですが、忘れられがちなものとして住民税があります。これは前年度の所得を元に計算されますので、支払いはだいぶ先になりますが、まとまった所得があれば16歳でも支払うことになります。また、住民税の金額は、同じ所得でも市町村ごとに異なるので、どこに住民登録しているかがわからない限り正しい計算は出来ません。

ここでは、得られている情報から、まあ、この辺ってことにしておこう、という居住地を選んで、課税所得525万円で計算すると、住民税は495,100円となりました。課税所得1,125万円として計算すると、1,095,100円となりました。

 

これら税金を納めるタイミングはそれぞれ異なってきますが、いずれにしてもスケートに使うことのできないやがて失われるもの、として差し引くと、

課税所得525万円で計算した場合は、11,250,000-622,500-495,100=10,132,400円

課税所得1,125万円で計算した場合、11,250,000-2,176,000-1,095,000=7,979,000円

となります

 

いろいろな仮定の上での計算ではありますが、クラウドファンディングとして、1,500万円ほど、さまざまなひとがお金を出したとしても、白岩選手がスケートに使えるお金は1,000万円くらい、ということになりそう、という推定になっています。見た目集めた金額の三分の二くらいになる、ということですね

 

11月23日の時点で、1,263万円ほどあつまっています。募集期間は2019年1月15日ということですので、まだまだ金額は伸びていくでしょう。1,500万円ほどになるか、さらに伸びて2000万円近くまでいくかは、終わってみないとわかりません。分かりませんが、2,000万円集まったとしても、上記のような計算をすると、1,300万円程度しか手元に残らない計算になります。年間600万円かかるとすると2年ちょっとの分しか賄えない計算です。得られる金額が大きくなればなるほど、税金の率も上がっていくので、見た目額面と比べて手元に残る金額の比率は小さくなっていきます。

 

というわけで、結構な金額が集まりはしそうなので、白岩家のご家族の金銭的な負担は割と低減されそうではありますが、それでもすべてを解決する、というところまでは行けなさそうな印象です。

 

税金他、さまざまなルールを考えると、理想的には一回のクラウドファンディングで多額の金銭を得るよりは、毎年500万円程度づつ入ってくる形になるのが理想でした。スケートにかかる費用分が毎年手元に入ってくる、という形になると、「所得」はゼロと考えることができて、所得税住民税の対象から外れることができるので、余計なキャッシュアウトを抑えて、支援者から選手に支援金が渡る形にできました。ただ、目標金額400万円、ということでしたので、おそらくこんな、1,000万円を超える支援が集まるとは思っていなかったのでしょう。そういう意味ではうれしい誤算なのかもしれませんが、このあたり、もう少しうまい仕組みを作ることができていればもっとよかったのにな、と少しもったいなく思う部分はあります。

 

 

繰り返しますが、彼女は、フィギュアスケートという日本の人気スポーツで、世界的にも上位にある日本の女子の中で、どう数えても上から10人までには入ってくる水準にいる選手です。

ジュニアからの推薦選手として初めて出た全日本選手権では、最後の世界選手権の代表になることになる浅田真央選手を、フリーの技術点では上回り総合5位に入った選手です。翌年、シーズン開幕前に怪我をして出遅れたにもかかわらず、全日本ジュニアでは2位に入り全日本選手権に出場し、世界選手権に出場した樋口新葉選手よりも、四大陸選手権を制し大躍進を遂げた三原舞依選手よりも、グランプリファイナル2位の勢いを繋げ全日本三連覇となった宮原知子選手よりも、フリーの技術点では高い得点を出した選手です。

 

そんな選手が、なぜ、競技を続けるのに問題が出るレベルで、お金のことに悩まなくてはいけないのでしょう?

 

これはやはり、哀しい状況と言わざるを得ません。

 

他の競技でも起こりがちなことではあるのだろうと思いますが、このあたりの、上位にいるけど最上位ではない、という選手たちが、金銭的な困難に追い込まれることなく、競技でのレベルアップを追及していく環境、というものが、いろいろな面で整備されていって欲しいと思います。

 

 

最後に、白岩選手のクラウドファンディングの内容についてまとめておきます

 

目標金額:400万円

募集開始時日:2018/11/15 0:00

募集終了日時:2019/1/15 0:00終了

 

支援金額とリターン

1,000円 :お礼のメール  お届け予定2019年1月

3,000円 :お礼のメール+サイン入りポストカード1枚 お届け予定2019年1月

5,000円 :3,000円コースのお礼+手持ちバナー用タオル1枚 お届け予定2019年1月

10,000円:5,000円コースのお礼+オリジナルクリアファイル(A4)1枚 お届け予定2019年2月

30,000円:10,000円コースのお礼+メールマガジン配信(今シーズン中) お届け予定2019年1月

50,000円:30,000円コースのお礼+特別メッセージ動画 お届け予定:2019年2月

 

11/23時点で一番多いのは、5,000円コースで、1,216口集まっています。みんな結構、バナータオル欲しいんでしょうか。50,000円コースも38口入っています。50,000円コースのお礼の特別メッセージ動画は、「支援者様への」と接頭語がついていたので、もしかしたら、支援者別に38口なら38バージョン撮影するんでしょうか(名前とか呼びかける映像だとそうなってくるわけですけど)。おそらく、こんなに集まるとは思ってなかったんだろうなあ、とは思います。変に選手に負担にならなければよいのですけど。

 

ここでもらったYUNA バナータオルが全日本選手権の会場で乱れ舞う、ということは、お届け予定が2019年2月になっているので、今シーズンはないですが、来シーズン、そんな光景も見られるかもしれません。

 

 

 

関連エントリー

白岩選手のクラウドファンディング受付終了

 

 

グランプリファイナル進出条件 男子シングル(5戦終了時)

グランプリシリーズも5戦が終了して残り1戦となりました
男子シングルではファイナル進出確定者が四名出ました。
二戦二勝の羽生結弦選手、宇野昌磨選手に、二位二回でミヒャルブレジナ、二位と三位でセルゲイボロノフ、の四名です
ブレジナ選手がまさかここにきて二戦二位に入ってくるとは全く思っていませんでした

 

残りの二枠は、現在ポイント5位6位の二名と、6位のポイントを上回る可能性のある選手に限られました。
現在の6位は、二戦して2位と5位のキーガンメッシング選手。
したがって、理論上、初戦6位以内で最終フランスの出場権を持っている選手、までが可能性があります

 

ファイナル進出の可能性が理論上あるのは以下の選手です

チャ・ジュナン(KOR) 3位、3位 合計点497.96
キーガンメッシング(CAN) 2位 5位 合計点485.92
ネイサンチェン(USA) 優勝 280.57
アレクサンドル・サマリン(RUS) 4位 248.78
ボーヤンジン(CHN) 5位 227.28
ドミトリーアリエフ(RUS) 5位 219.52
ジェイソンブラウン(USA) 6位 234.97

以上7選手が残り2枠を争っている形になります

 

では、この7選手がファイナルに進出する条件を検討していきます

まず、二試合終わっている選手の側から見ます

 

チャ・ジュナン選手は3位二回で、初のファイナル進出の可能性を残します
現在ポイント5番目ですので、二人以上が彼を上回らなければファイナル進出です
条件は以下になります

① ネイサンチェンが5位以内
② サマリンが2位以内
③ ボーヤンジンが優勝
④ ドミトリーアリエフが優勝

以上①~④のうち、二つ以上が満たされた場合、ファイナルに進出できません
条件のうち、➂と④が同時に満たされることはありません。①は、まず確実に満たされるでしょう。したがって②がまず一つポイントで、サマリンが2位以内に入ってこないこと、というのが重要です。また、チャ・ジュナンから見ると、ネイサンチェンが順当に優勝してくれることが望ましくて、ここにきてボーヤンジン復活優勝、なんてされると、ファイナル進出できなくなる可能性が極めて高くなる、という情勢なことがわかります。
サマリン次第でファイナル進出できるかも、というのがチャ・ジュナンの置かれた立場です


なお、補欠の一番手には、上記のうち二つが満たしても残ります。つまり①と②だけが満たされた場合は、補欠の一番手になる、ということになります。現在、羽生結弦選手のファイナル出場は不透明な情勢ですので補欠の一番手に残ればファイナルに出場できる可能性を割と高く残す、という風にも見て取れます。そのためには、ネイサンチェン選手が二位以内に入ってくれれば、②から④のうち、最大でも一つしか満たせませんので、補欠の一番手に残れる、という風にも見ることができます。
チャ・ジュナン選手としては、ネイサンチェン選手にしっかり頑張ってもらうこと、がファイナル進出のカギになります

 

ポイント6位のキーガンメッシングは非常に苦しくなりました
条件は以下になります

① ネイサンチェンが6位以内
② サマリンが3位位以内
③ ボーヤンジンが優勝か、二位で258.64以上
④ ドミトリーアリエフが優勝か、二位で266.40以上
⑤ ジェイソンブラウンが優勝

以上①~⑤のうち、どれか一つが満たされたらファイナル進出できません

欠場、以外で①が満たされないはまずありえないので、実質的にはキーガンメッシングのファイナル進出はないでしょう。
また、万が一ネイサンチェンが欠場したとしても、サマリンもボーヤンジンもアリエフもジェイソンブラウンも優勝してはいけない、というのはあまりにも厳しすぎる条件な気がしますので、まあ、ないでしょう。
一応、ダニエルサモーヒンやデニスバシリエスフといって、いくらか実績のある選手はいるので、可能性はゼロではないですけど
というわけで、ネイサンチェンが欠場したうえで、よほどのことが起こらないと、キーガンメッシングのファイナル進出はない、という情勢です
ただ、補欠1番手までなら可能性があります。羽生選手がファイナルを欠場する、他の誰かでもいいわけですが、ファイナル欠場者が一人出れば、補欠1番手に出場権は回ってきます。グランプリファイナルではよくある状況です。そこまで考えると、上記①~⑤のうち一つだけなら満たしても大丈夫、ということになります。すなわち、①が満たされるのは仕方ないけれど、②~⑤がどれも満たされなければ補欠1番手で残れます。キーガンメッシングとしては、それを祈るしかないでしょう

 

あとは、最終戦に出場する選手のファイナル進出条件を考えます

まずは、初戦優勝のネイサンチェン選手
5位以内に入れば、他の選手の結果に寄らず、ファイナル進出は確定です
6位の場合は、以下の条件が必要です

① サマリンが3位以内
② ボーヤンジンが優勝する
③ ドミトリーアリエフが優勝する
④ ジェイソンブラウンが優勝する

以上の①から④のどれかが満たされるとファイナル進出できません
まあ、順当にいけばネイサンチェンが優勝しなかったらこの四人の誰かが優勝するんじゃない? という感じなので、さすがにこの条件は苦しそうです
ただ、出れば5位には入るでしょう、普通に考えて。

 

では次。
終戦に出場する選手の中で、初戦の成績がネイサンチェンに次いで良いのは、初戦四位のアレクサンドルサマリン選手です
サマリンは優勝すれば、他の選手の結果に寄らずファイナル進出確定できます
二位の場合は、多少条件が出てきます

① ネイサンチェンが5位以内
② ボーヤンジンが優勝
③ ドミトリーアリエフが優勝

以上①から➂のうち二つが満たされるとファイナル進出できなくなります
つまり、自分が二位の場合、ボーヤンジンかドミトリーアリエフが優勝者の場合は、ファイナルに進出できなくなる可能性が高い、ということです
ネイサンチェン一位の自分二位、というのがサマリンにとって、ファイナル進出という観点では望まれることです
ただ、補欠の1番手までなら②か➂まで満たされても入ってくることができます。2位に入れば、少なくとも補欠の1番手にまでならなることができる、ということになります

サマリンは三位になった場合は、ファイナル進出は出来ません
ネイサンチェンが7 位以下など、無茶な条件をいくつか満たせば補欠の1番手にはなりますが、考えても仕方ない、というレベルです
最低限二位に入ることが必要です


次は初戦5位のボーヤンジン選手が可能性を残しています
優勝した場合、他の選手の結果によらずファイナル進出出来ます
二位の場合は、かなり厳しいですが、可能性がゼロではない、ということで、ここに一つ並べてみます。二位の場合は順位点でキーガンメッシング選手と並びます。まず、合計得点でキーガンメッシング選手の上に行かないとファイナルには入れませんが、そのために必要な点数は258.64です。これに届かない場合、2位ではファイナル進出できません
これを上回った場合

① ネイサンチェンが6位以内
② サマリンが優勝
③ ドミトリーアリエフが優勝
④ ジェイソンブラウンが優勝

以上のうちどれかを満たすとファイナル進出がなくなります

まあ、①はどう考えても満たされるでしょうから、ボーヤンジン選手は2位ではファイナルに基本的には進めません。ただし、②から④が成り立たなければ、258.64を上回っていれば補欠の一番手にはなれます。羽生選手の欠場の可能性を考えると、258.64を上回っての2位、というのがボーヤンジン選手にとって、一つ、ファイナルへの可能性を残すポイントになってきます

同じ初戦5位のドミトリーアリエフ選手も、ボーヤンジン選手とほぼ同条件です。違ってくるのは、初戦の得点が低いせいで、2位の場合の基準点266.00に上がるというところにあります。そのうえで、上記のボーヤンジン選手のところで上げた条件のうち、アリエフ→ボーヤンジン、と書き換えたうえで、どれも満たされなければファイナル進出、一つだけ満たした場合補欠の1番手です
ボーヤンジン選手と比べると、実績でやや劣りますし、基準点も上がってますので、2位で補欠の1番手に入る、というのもなかなか苦しい情勢に見えます


最後に、ジェイソンブラウン選手も可能性を残しています
必須条件は優勝です
そのうえで、以下が条件となってきます

① ネイサンチェンが5位以内か6位で45.60以内の点差
② サマリンが二位

以上の①と②のどちらかを満たすと、ファイナル進出出来ません。
実質的には①は、ほぼ確実に満たされるので、ジェイソンブラウン選手のファイナル進出は実質的には厳しいです。ただ、補欠の一番手までなら、①を満たしても②さえ満たさなければ入れますので、可能性はなくはない、という感じです
ただ、これまでの流れを見ていると、優勝すること自体がかなり厳しいなあ、というのは感じざるを得ないところではあります


終戦のポイントは、サマリンがどこに入ってくるか、というのが結構大きそうです
また、ファイナル出場権という観点では、羽生選手がどうするか、というのが一つのポイントで、そう考えた場合、補欠の一番手に残っておくことも大事だったりします。

 

 

グランプリファイナル進出条件 女子シングル(5戦終了時)

グランプリシリーズも5戦が終了して残り1戦となりました

 

ファイナル進出確定はここまでで三名です
アリーナ・ザギトワ宮原知子エリザベータ・トゥクタミシェワの三人
二戦終わった中で可能性を残す、上位6番手までの選手は、坂本花織、ソフィア・サムドゥロワ、山下真瑚の三名ですが、二戦して2位、7位の山下選手は、実質的には可能性はほとんどありません

最終フランス戦を残す選手の中で、ファイナル進出の可能性があるのは、初戦で5位以内だった選手です。これがまた、今回、多数います

初戦の結果を併記して列挙します

 

紀平梨花 優勝 224.31
スタニスラバ・コンスタンティノワ 2位 197.57
エフゲニア・メドベージェワ 3位 197.91
三原舞依 4位 204.20
ブラッディ・テネル 4位 192.89
アレクシア・パガニーニ 4位 182.50
ロリーヌ・ルカヴァリエ 5位 172.41

あくまで数値上のものですが、7選手がファイナルに進む可能性を持って最終戦に出場する、ということになります
ここから、各選手の、ファイナル進出の条件を見ていきます


まず、待つ立場の坂本花織選手
5戦目の結果を受けて、かな希望が見える状況になってきました
彼女がファイナルに進出する条件は以下のようなものになります

紀平梨花が四位以内
② コンスタンティノワが二位以内か三位で213.75以上
③ メドベージェワが優勝か二位で213.41以上
三原舞依が優勝
⑤ テネルが優勝
パガニーニが優勝

 

以上①~⑥のうち、三つ以上が満たされた場合、ファイナル進出がなくなります
ぱっとみて、①は高確率で満たされてしまうのは仕方ないですが、②から⑥のうち二つ、というのは結構難しい条件です。そういうことが起きる可能性が高まるのは、紀平選手が失敗して三位か四位あたりになった場合、というのが考えられます。坂本選手の立場からすると、紀平選手にはきちんと滑って、優勝するか、悪くても二位に入ってもらうこと、というのが望ましいです。
紀平選手とメドベージェワ選手が、二人でハイレベルな優勝争いしている限りにおいては、コンスタンティノワが高得点の三位にならないと、坂本選手の上には来ないので、ファイナル進出は問題なく出来る。
逆に、優勝スコアが210点を下回るところまで下りてきて、三原選手やテネル選手が勝ちました、という状況になった場合は、コンスタンティノワが二位に入ってこない限り、①~⑥を三つ満たす、という状況にならないので、やはりファイナルに進出できます
坂本選手として困るのは、紀平選手が四位以内に残りつつ、コンスタンティノワが二位に入って、➂から⑥の誰かが優勝する、という絵柄です。それ以外は、なんだかんだでファイナルに進めそう、という展開になってきました


待つ立場ではサムドゥロワ選手の方は、坂本選手と比べて、苦しい状況になってきています
彼女のファイナル進出条件は次のようになります

 

紀平梨花が四位以内
② コンスタンティノワが二位以内か三位で199.14以上
③ メドベージェワが優勝か二位で198.80以上
三原舞依が優勝
⑤ テネルが優勝
パガニーニが優勝

 

以上①~⑥のうち、二つ以上が満たされた場合、ファイナル進出出来なくなります
坂本選手より、一つ序列が下なので、条件が一つ少なくなるという苦しさもありますが、合計点数の低さがそれに拍車をかける形です
紀平選手が優勝してくれれば、④~⑥が一気に消えるので、あと②と➂さえ満たさなければよいのですが、基準点が200点以下なので、メドベージェワ二位とかコンスタンティノワ三位の場合に、必要な点数を満たす可能性がかなり高くなっています。
そのあたりがかなり苦しいです
さらに言えば、紀平選手が優勝しなかった場合、かなりの高確率で②から⑥の誰かが優勝しますので、その場合も紀平選手が四位以内に残っていたらファイナルに進めないわけです
状況は厳しい、と言えるでしょう

 

二戦終わった選手の中では山下選手が六番目ですので、ファイナル進出の可能性を残しはするのですが、紀平選手が9位以下とか、かなり無茶苦茶な条件をすべて満たしたとき、しかあり得ないという形になっているので省略します


さて、次に、六戦目に出場する各選手について考察します

まずは初戦優勝の紀平選手
当然ですが、一番有利な立場にいます
4位以内に入ればその時点で自力でファイナル進出確定します
5位の場合はちょっと大変です

① コンスタンティノワが3位以内
② メドベージェワが2位以内
三原舞依が優勝
④ テネルが優勝
パガニーニが優勝
⑥ ルカヴァリエが優勝して、点差が51.90以上

以上の①から⑥のいずれかが満たされた時点で、ファイナル進出がなくなります
ようするに、優勝してもよい、という選手がほとんどいなくて、しいて言えば、ソツコワか本田真凛くらいしか選択肢がなくなる、ということになります
まあ、5位じゃダメってことですね
紀平選手は、4位までに入りましょう、というシンプルなお話でした

 

次いで初戦2位のコンスタンティノワがいます
初戦2位なら結構チャンスがありそうなのですが、案外大変です
2位以内に入れば他の選手の結果によらずファイナル進出が決まります
3位の場合は二試合して2位と3位、という選手が三人出ることになるので、それらの選手の上に行くか下に行くかでだいぶ状況が変わってきます
つまり、3位の場合は点数が大事です
基準点としては、一つ目は213.74、二つ目は199.14です
さらに、他の選手の結果が影響してきます

紀平梨花が4位以内
② メドベージェワが2位以内
三原舞依が優勝
④ テネルが優勝
パガニーニが優勝

以上①から⑤のうち、213.74以上取っていれば三つ、199.14から213.74の間なら二つ、199.14より低ければ一つが成り立ったところで、ファイナル進出がなくなります
こうしてみると、199.14より低い点なら3位になってもほとんど可能性がない、という状況に陥ります。紀平選手の五位の時の条件と同じで、優勝してもよい、という選手がほとんどいなくなってしまう、という形になりますので
逆に、213.74を超えていれば、3位でもかなりの確率でファイナル進出です。213.74を超えてファイナルに進出できない、という条件を満たすには、紀平梨花4位、自分3位、メドベージェワ2位で、三原/テネル/パガニーニの誰かが優勝、という、四連単が当たらないといけないわけで、極めて可能性が低くなります
199.14から213.74の間の時は厳しいですかね。紀平梨花が優勝したらメドベージェワが表彰台から落ちないといけない。メドベージェワが優勝なら、紀平梨花が5位以下まで落ちないといけない。他の誰かが優勝なら、その両方を満たさないといけない。そんなのむり! という感じです
コンスタンティノワは紀平/メドベージェワのどちらかには勝って2位に入るか、213.74という高スコアでの3位を目指さないといけない、というなかなか難しい状況になっています

 

続いて、初戦三位のメドベージェワ
彼女がどこまで調子を戻してきているのか? というのが他の選手のファイナル進出条件にもかなり影響してきます
優勝すればファイナル進出確定です。問題は二位の場合です
二戦終わって二位と三位、という選手がすでにいますので、やはりそことの比較がまず出てきます。基準点は、一つ目が213.41、二つ目は198.80です
そのうえで、他の選手の結果に左右されます

紀平梨花が四位以内
② コンスタンティノワが優勝
三原舞依が優勝
④ テネルが優勝
パガニーニが優勝

以上①から⑤のうち、198.80から213.41の場合は二つ、198.80に届かない場合は一つが成立した場合、ファイナルに進出できません
メドベージェワが二位の場合、コンスタンティノワが三位になると、二戦の結果が二位と三位で並ぶのですが、初戦の点数がメドベージェワの方が良いため、二戦目にメドベージェワの方が順位が上ならば、必ず合計得点はメドベージェワの方が良くなります
そういったこともあって、メドベージェワは二位でも213.41を超える点数を出すことができれば、他の選手の結果に寄らずファイナル進出です
問題は198.80から213.41の間の場合です。この場合、優勝が紀平梨花ならばファイナルへ進めますが、それ以外の②から⑤の誰かが優勝した場合、紀平梨花が四位以内に残るとファイナルに進出できなくなります。上にいるのが紀平梨花かそれ以外か、というのが彼女にとっては重要、ということになります


初戦四位の選手が三人います。
日本の三原舞依アメリカのブラッディ・テネル、スイスのアレクシア・パガニーニです
先日、五戦目が始まる前に、残り二戦を残してる選手に、スイスのパガニーニがいるけれど、実績から考えるとファイナル進出はないので検討から外します、などということを書き記しました。ところが、五戦目ロシアで四位に入り、最終戦でファイナル進出の可能性を残しました。
ファイナル進出の可能性は現段階でも低いは低いですが、それでも、最終戦に可能性を残したわけですから、五戦目前の筆者の記述は、失礼であったと言わざるを得ません。
パガニーニ選手には大変失礼なことを申しました。申し訳ありません。

さて、この三選手のファイナル進出条件はシンプルです。
優勝する事。これが、必要にして十分な条件です。
二位でも可能性は計算上のこりますが、優勝していい選手がほとんどいないとか、めちゃくちゃな条件をたくさん満たさないといけませんので、考える必要性が感じられない水準になります。

後もう一人、初戦五位のルカヴァリエ選手も優勝すれば可能性を残します
優勝したうえで、下記の条件が必要です

紀平梨花が4位以内か、5位で点差が51.90以内
② コンスタンティノワが3位以内
③ メドベージェワが2位以内

以上①から➂のどれも満たさないことがファイナル進出条件です
まあ②と➂は回避できる可能性はありますが、①がなかなか厳しいですね。一応、紀平選手の不安定さというのはあるので、6位以下まで沈んでいく可能性はありますけど


というわけで、順当にいくと残り3枠は、紀平選手が有力、坂本選手もかなり有利でメドベージェワ選手は実力を出せば入ってきそう、というこの三人になる可能性が高いです。

ただ、コンスタンティノワが頑張れば残れますし、サムドゥロワも展開次第では残ることもあり得ます。三原、テネルの二選手は、実績から考えると優勝する可能性がそれなりにあるので、チャンスはありそうです

実力者がそろう最終第六戦
単純な、その試合の勝負だけでなく、いろいろな条件でファイナル進出選手が変わってくる、というなかなか面白いことになってきています

冬競技の財政状況比較

さて、いくらか時間が経ってしまっていますが、前回、日本スケート連盟の過去から現在までの財政状況の変化を見てきました

次は、他の競技との比較をしてみます

スポーツ競技はさまざまありますが、ここでは冬の競技の中で比べてみることにします

冬の競技というのもいろいろあるわけですが、今回はオリンピック競技で選んでみました

 

スケート連盟

カーリング協会

ボブスレーリュージュ・スケルトン連盟

スキー連盟

アイスホッケー連盟

バイアスロン連盟

 

以上の六つです

スノーボードはスキー連盟の一部になっています

フリースタイル系もすべてスキー連盟の範疇です

すべて国内の連盟・協会についてです

国際的にはボブスレー・スケルトンとリュージュは別の連盟ですが、日本国内では一つになっています

 

比較の前提として、決算月がそれぞれ異なっていることはまず把握しておく必要があります

バイアスロン連盟は3月決算(4月~3月までの一年間)

カーリング協会は4月決算(5月~4月までの一年間)

ボブスレーリュージュ・スケルトン連盟は5月決算(6月~5月までの一年間)

スケート連盟とアイスホッケー連盟は6月決算(7月~6月までの一年間)

スキー連盟は7月決算(8月~7月までの一年間)

こうなっています

見事に決算月ばらばらですね

大会のスケジューリングの関係とか、おそらくそういう理由で決算月を決めているのだろうと思いますが、冬競技の中で、ここまでバラバラとは思いませんでした

 

なお、以下では、ボブスレーリュージュ・スケルトンは、長いのでそり競技、と略します

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まずは正味財産の残高。ようは、どれだけ財産がありますか? というものですが、冬競技の中ではスケート連盟はお化けレベルで財産もってますね。26.5億円というのは巨大です。

スキー連盟も10億円に近い財産があり、割と余裕があります。それでもスケートの36%程度の水準です。

他の四競技は、もはや数字が読み取れないレベルになってしまっています。

一応三番目がアイスホッケーで、2.0億円ほどの財産があります。これでもスケート連盟の13分の1の水準です。

毎回オリンピックでの露出が多く、平昌では女子がメダルを取るという結果を残したカーリングですが、正味財産は5,500万円ほどしかありません。スケート連盟と比べるとその資産規模は49分の1 すなわち2%程度しかありません。だいぶ小所帯ですね

5番目がバイアスロンで2,270万円ほど、スケート連盟の116分の1、ゼロが二つ違う、という規模です

一番小さいのはそり競技、2018年5月末の決算時点で、正味財産残高は345万円。スケート連盟と比較すると769分の1です。ゼロ三つ違うという水準に近くなっています。

そり競技は、スケート連盟との比較云々以前に、団体として大丈夫なのか? という財産規模になっていてちょっと心配ですこれ。一応、流動資産>流動負債になっていて、いきなりキャッシュが枯渇する、という状態にはなっていませんが、1億円台の事業を回していることを考えると、何かのはずみで破綻してしまうのではないか、というのが感じられてかなり心配です

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経常収益は、企業でいえば売り上げに近い概念、ということでよいでしょうか。補助金なんかがたくさん含まれるのに「売上」というのは違和感もありますが、まあ、イメージとしてはそういうあたりになります

これもスケートが圧倒的で32.3億円あります。2013-14シーズンは50億円超えてましたから、冬競技の中で見れば破格です

二番目のスキーで11.81億円。これでもスケートの三分の一余り程度でしかないですけど。それでも多様な収益源があって、それなりの規模になっています。

三番目がアイスホッケー。6.7億円ほど。オリンピックでは、それほど大きなプレゼンスを示すことは出来ませんでしたが、それでも女子は初勝利を挙げるなど善戦はしました。スケート連盟と比べると2割の規模です

四番目以下は2億円を下回る水準です。カーリングは1.8億円、そり競技が1.7億円、バイアスロンが1.6億円と続きます。いずれもスケート協会の20分の1程度の規模なわけです。オリンピックなんかで感じる、競技としての存在感を考えると、カーリングはそり競技やバイアスロンとはけた違いなはずなのですが、経常収益の規模で見ると、ほとんど変わらないという状態になっています

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選手の登録料などが計上される受取会費。科目分けは連盟によって異なるのですが、そり競技は別枠になっていた選手などの登録料も含めました。スキーも別枠になっていた資格者、競技者、競技施設の登録料も加えてあります。

この項目はスケート連盟は特別多いわけではなさそうです。突出して大きかったのはスキー連盟。ここでの計算では2.40億円という規模になっています。会計上「受取会費」とされていたものだけで見ても1.37億円あり、冬競技の比較で見ると圧倒的です。

アイスホッケーが遠く離れて2番目で3,800万円台、スケートは三番目で3,600万円台でした。

四番目はカーリングで1,500万円弱。そり競技は五番目で560万円ほど、バイアスロンが一番小さく300万円ほどでした

この項目は、ほとんど競技人口依存なので、スキーが圧倒的ですね。スケートは見る方では人気でも、実際に行う人は少ない、競技人口が多いわけではないので、この形での収入は特に多いわけではない、という形になっています。また、登録料も競技によって異なるのでその影響もありそうです。わかる範囲では、スケートは成年選手でも2,000円、少年区分なら1,000円ですが、カーリングは大人6,000円、大学高校専門生でも3,000円かかりますから、その辺の差は大きいです。選手からの資金に頼る必要のないスケートと、そこからの収入もかなり大事なカーリングの違い、というのもあるのでしょう。

ちなみに、アイスホッケーは18歳以上2,000円、15~18歳1,000円、15歳未満500円です

そり競技も成年2,000円、少年1,000円

バイアスロンは小学生1,000円、中高生1,500円、大学生5,000円、一般競技者は10,000円

スキーは見つけられませんでした

スキーは都道府県連盟や学生連盟が個別に対応しているようで、いまいちわかりません。ただ、そのあたりからも、競技人口がほかの団体と比べてけた違いなのは感じ取れます

こうやって見ると、銃を使うバイアスロンが一番金額が高いんですね。バイアスロンの小学生の競技登録者なんてのがいるのか、というのはちょっと驚きだったりします

カーリングがそれに次いで高い。競技者に厳しいカーリングなんでしょうか。でも、全日本選手権で出場者からフィギュアスケートは15,000円徴収してましたが、カーリングは無料でしたけどね。

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寄付金もスキーがトップ。2,850万円ほど。ここでの寄付金は、協賛金などは除いたものとしています。

スケートは二番目で1,950万円。ただ、この金額はここ数年固定で入っているので、もしかしたら実質的には協賛金的なものかもしれません。

アイスホッケーが121万円、カーリングが105万円の寄付がありました。そり競技は受取免税寄付金0となっていました。バイアスロンは寄付金、という科目がなかったので本当にゼロであるか、もしくは別の科目に紛れ込んでいる可能性があります

 

スキーの寄付金は、だれから集まっているんですかね。科目としては「一般寄付金」という表現になってましたけど、一般とは一般人の意味でしょうか? 普通の人からの寄付なんですかね。

スキーのほかに、カーリング、アイスホッケーは、ウェブサイト上に寄付を募るコーナーがあります。スケートにはありません。

スケートは、一般人からの寄付を必要とはしない、という財政状態ではあります。だとしたら、この1,950万円という寄付金はどこからきたんでしょう? その辺はちょっとわかりません。

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放映権料はスケートが圧倒的です。ここでは、包括的に「放映権料」とされている科目の他に、特別事業収益の中の各主催大会で得られた放映権料も加えています。重複はないのか? という疑問も出るかもしれませんが、特別事業収益の中で全日本選手権NHK杯での放映権料はゼロですので、包括的な契約で得られている放映権料が「放映権料」の科目の中にあり、それ以外で個別に契約できたものが特別事業収益の中に入っていると想定できます。と書いてきてなんですが、当該年度はそれに該当するものがゼロでしたので、包括的に「放映権料」とされているものだけでの計算と実質的に同じになっています。

さて、スケートの放映権料は2.23億円ほど。このなかで1.94億円ほどがフィギュアスケートによるものです。ほとんどがフィギュアスケートによるものですね。ただ、スピードスケートも2,860万円ほどの放映権料を得ています。これはフィギュアと比べると段違いに小さい額ですが、他の冬競技と比べるとかなり大きな金額です。

スキー連盟は三番目になっていて680万円というのが入ってきます。ジャンプ競技なんかは時折テレビ放映があるような印象ですが、いまいち金額は伸びていませんね。国内で主催出来ている大会が少ない、という部分が効いているのかもしれません

カーリングが2番手でスキーより大きめな864万円ありました。前年度がゼロでしたから、オリンピック効果でしょう。四年に一度、カーリングは盛り上がって、またすぐに消えて行ってしまう印象なので、今後は継続的に人気を保てるかどうか。選手たちにとって良いのかわかりませんが、競技以外の部分でも注目が集まったりしているので、この先全日本選手権などで、毎年毎年、放映権を得られる状態になっていってくれるとよいと思います

そり競技とバイアスロンはゼロ。残念ながらテレビ放映されるようなコンテンツではない、という現状によると思われます

アイスホッケーも、「放映権料」という科目がないので、数値が入っていません。ただ、アイスホッケーは各主催大会の、特にアジアリーグの事業収益の中に、放映権料も入れ込まれてしまっていると思われます。

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協賛金収入も様々です。一番多いのはスキーの2.12億円でした。これはオフィシャルスポンサーの協賛金の他、公式用品プール協賛金、という名称で入ってきています。なんでしょうこれ。スケートは3番目で7,560万円ほどですが、これは主催大会で協賛金としてカウントされたものだけの金額です。この外数で、マーケティング事業収益、というものが巨大にあるので、その中に入れこまれている協賛金が多額にある可能性はあります。

スケートより金額が大きく入ったのはアイスホッケーで9,100万円ほどありました。前年が3,000万円台でしたので、3倍増になっています。オリンピックシーズン、頑張って協賛金集めたのでしょうか?

四番目にカーリングがいて4,800万円ほど。カーリング協会としては、この協賛金が、補助金に次ぐ二本目の収入の柱になっています。そり競技も5番目で2,700万円ほど得ています。正味財産残高が300万円台になってしまっているそり競技団体としては、この2,700万円は虎の子ともいえるものですね。

バイアスロンはゼロ。協賛金に類する科目が決算書に存在しません。雑収益など、他の科目に入れこまれている可能性もありますが、他の団体よりも小さい額であることは確実です

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さて、スポーツ競技団体の収入の柱、補助金。ここでは、科目上「補助金」や「交付金」として入っているものだけを計算に入れています。個別に大会運営に対する補助金、のようなものが出ていたりしますが、それらは除外しています。

 

これもスキー競技が一番多く、4.45億円ほどありました。二番目はスケートで3.73億円ほど。ただ、他の各収入項目と違って、補助金はこの二つの連盟が圧倒的に多いというわけでもないです。

三番目にアイスホッケーがいて2.92億円ほどうけとっています。4番目のそり競技、5番目のバイアスロンはほとんど並んで1.2億円ほど。このへんの競技でも、スケート連盟の三分の一程度の補助金は受けているわけです。

一番補助金が小さいのがカーリングで8,000万円ほど。この水準でスケート連盟の22%程度です。カーリング協会が得ている補助金が、そり競技やバイアスロンのそれより小さく、三分の二しかない、というのは意外な事実でした

 

こうやって見ると、そり競技やバイアスロン補助金依存度は極めて高いわけですね

そして、何を見てもスケート連盟がお金持ってるのはよくわかりますが、意外とスキー連盟もそれなりにお金持ってます

案外苦しいのがカーリングでしょうか。オリンピックではあれだけ目立って、メダルも取って、露出もかなりあった割に、収入は少なく、選手の強化・国際試合への派遣へ使える金額も小さいです。カーリングの強化は協会主導ではなく、各チーム、個人主導で行われる部分が多いんでしょうか

 

本当は強化費・派遣費の比較も出したいのですが、スキー連盟とそり競技の連盟では、それにあたる金額がはじき出せなかったので見合わせています。見えている範囲で数値を並べると、スケート連盟は7.25億円で、内訳としてスピード3.20億円、フィギュア2.86億円、ショート1.20億円。 アイスホッケーは2.56億円。アイスホッケーのそれは、強化費として計上されている1.35億円のほかに、派遣費として計上されている1.21億円を加味しました。

バイアスロンが1.22億円。カーリング8,100万円。カーリングも、強化費の他に派遣費まで含めます。どこまでを強化費に含むのかは難しいのですが、ざっと主観で切り分けるとそんなところでした。この辺は競技人口や、国際大会の出場選手枠数の影響もあるとは思いますが、ぱっと見の印象としては、スケート連盟、特にスピードスケートの手厚さが感じられる一方で、カーリングの貧弱さも見えてきます。

 

バイアスロンは、全然お金のない連盟なわけですが、懐に入ってきたそれはきっちり強化費として使っているわけです。上記のように、得られた補助金が1.21億円に対して、強化費が1.22億円ですからね。カーリング補助金≒強化費になっています。良くも悪くも補助金依存ですが、補助金をちゃんと強化費に使えているのだから、正しい姿ではあるんだと思います。

スケート連盟のように、補助金以外の収入が多岐にわたるところでは、強化費>補助金という構図を作ることができているわけです。ただ、お金があればこそ、その使い方は難しいという部分もあって、持っているお金を強化費にそのまま使う、というのではなく、お金を稼げているのだから来年もまたきっちり稼げるように、という方向にお金が向かいがちな部分はどうしても出てくると思われます。ある種の拡大再生産の思想なわけで、それはそれでよいと思うのですが、その辺のバランスをどうとるべきか、というのが、お金を持っている連盟の難しいところかな、という印象です

 

ここまで読んできた感覚としては、カーリング、これでよくメダルとれたな、男子も出場圏とって、終盤までチャンス残すところまでよくいけたな、というものです。補助金は少なく、協賛金収入もそれほど多くなく、マーケティング収益などがあるかというとそうでもない中、選手の強化に充てられる金額は冬競技内で最低ランク。選手の、あるいはチーム自体の、活動資金確保段階からの頑張り、というのが極めて大きいんだな、と感じさせられます。

カーリングは、もうちょっとマーケティングうまくやれば、収益を増やせて、その分を強化に充てられるようになるような気がするんですけどね。ついでに言えば、補助金も、オリンピックで結果出したのだから、そり競技やバイアスロンの三分の二、ってのはちょっとひどいと思うので、もう少し回してあげて欲しいと思います。

 

一方で、その他の冬競技と比べてスケート連盟の資金の豊富さは群を抜いていて、それに伴って強化費用も他の競技と比べて多めです。ただ、資金の豊富さと比例した額までは行っていないように見えます。特に、フィギュアへの配分はそれほど高いわけでもなさそうです。

 

お金の生かし方、というのも、それほど上手ではない、という風に見えなくもない。

ストックとして20億円をはるかに超える金額のものがある。じゃあ、これをどう使うか? その絵がないから、何かにはっきり大きく使う、ということもできず、4年サイクルで、少しづつ赤字を出しながらオリンピックシーズンに大きく稼いでトータルプラス、みたいな繰り返しになっていく。プラスだから資金面で心配はない。心配はないのはいいのだけど、その20億円くらいの存在が、ただ存在しているだけで死んでるよね? という風に見えたりもするわけです。なんというか、ROA(総資産利益率)が低い、という感じでしょうか

 

資産を増やしていくならいくでいいと思うんですよ。資産を増やして、先々何十億円かけてこういったものを作って強化の拠点にするとか、普及を行うためにどうするとか、そのために今は資産を増やすべき時期である、みたいな考え方で進めることがあってもいい。また、ストックとしてこれだけ持っておいて、この資産を元に収益を生み出して、その収益を強化に充てる。すなわち、たんまりある資産は強化資金を生み出す元手である、という考え方もあっていい。

ただ、成り行きで、安心のために資産を持っている、というのだともったいないな、と思います。

 

フィギュアスケートはお金がかかるスポーツです。また、お金がかかるスポーツであってもなくても、何かを強化するには資金が重要だったりします。そういう意味で、連盟がお金を稼ぐのは全然悪いことではないし、資産をたくさん持っていること自体は何も悪いことではないです。なので、その資産を使って、選手たちの力になる何か、というのをしていってもらえたらなと思います。