ジュニアグランプリシリーズ18前半戦

フィギュアスケートは8月から新シーズンがすでに始まっています

まずはジュニアから

ジュニアのグランプリシリーズは全7戦中4戦までが終わりました

 

今シーズンは、女子の日本勢はかなり苦戦していますね

紀平、山下の二選手がシニアに抜けたことで、確かにやや苦しい陣容になるのはわかっていましたが、ここまで苦戦するとは思いませんでした

どの大会でも、ロシア勢に次ぐ三番手は確保できるかな、ほとんどみんな四位には入って二戦目の権利は取るんだろうな、と思っていましたが、全然甘い・・・、という結果になってきています

 

四戦目までで表彰台に乗ったのは二戦目の吉岡詩果と四戦目の住吉りをんの二人だけ

それも、二人とも三位での表彰台でした

 

 

まず初戦、スロバキアのブラティスラバで開催

現ジュニア勢ではエース格の横井ゆは菜がまさかの6位

何がダメってショートが悪すぎました

単独フリップの出来が悪くて減点、だけならまだしも、コンビネーションの一つ目が2回転になって上に、二つ目は3回転の回転不足、さらに転倒

技術点24.37 合計51.65の9位スタートでは、さすがに苦しすぎました

フリーはルッツが一つ回転不足になったくらいで、ミスの少ない演技で技術点66.41の合計121.50とフリーだけなら2位の点数を出しますが、総合では6位どまり

 

彼女は、ショートが悪くてフリーで挽回、というパターンが多すぎます

昨年の全日本ジュニアもこのパターンでなんとか全日本進出

世界ジュニアもこのパターンで6位入賞でした

ショートフリー両方そろった、と満足して言えるのは昨シーズンの全日本くらいでしょうか

 

彼女だけでなく、この近い世代にはショートがダメでフリーで挽回、というのが定番になっている選手が結構いるような印象です

一つ年上の三原舞依選手なんかも、割とその傾向があって、昨年の世界選手権はフリー大挽回の5位でした

二本そろわない、というのはなんとなくわかるんですが、このショートが苦手、というのは今一つわからないですね、どういう感覚なのか

現代のフリーは、どの辺が自由なんだ? というくらいにフリー感はなくて、ロングプログラム、という呼び方の方が確かにしっくりくる、という感じがします

なので、自由に演じる方がうまく滑れる、という理由でフリーの方が得意、みたいなことは基本あり得ないと思うのですね

ショートとフリーでは、ジャンプの数が倍以上違いますし、時間もだいぶフリーの方が長くなります

したがって、ごまかしがきかないのがフリー、ということに論理的にはなりそうなのですが、ショートでミスがぽろぽろ出るのに、時間が伸びてジャンプの数も増えるフリーの方がミスが少なくなる、というのはなんなのでしょうか

緊張感と開き直り、という関係なのですかね

だとすると、場数とかでどうにかなるものなのでしょうか

 

まあ、ジュニアに限定すれば、ショートプログラムは単独の三回転ジャンプの種類が決まっているので、そのジャンプが苦手な場合、またコンビネーションジャンプのリカバリーが効かないというプレッシャー、また、コンビネーションジャンプに難しいルッツを持ってこないといけない構成になる、などの理由で、ショートの方がやりにくい、ということが論理的にありえるはありえるのですが

それにしても、もうちょっと何とかしてほしいところ

 

やろうとしていることの難しさは、ここまで出場した日本人選手の中ではやはり群を抜きます

ショートで1.1倍になる最終ジャンプにコンビネーションを持ってきたのは彼女だけです

フリーでも1.1倍の最後の三つに3-3-2とダブルアクセル-トリプルトーループ さらに、単独ジャンプでも一番基礎点の高いルッツを入れ込んできています

フリーのプログラムコンポーネント55.09もここまでの8選手の中で最高です

 

強い個性があって、近い世代に強い選手も多いです

同い年で、樋口、坂本、横井、と三人並び立つ、くらいの選手になってほしい、というかなれるはず、と思って見ているのですが、もう一押し結果が出てきてくれないですね

今シーズンはジュニアグランプリファイナル! と期待していたのですが、この一戦目6位で、ファイナルどころか、二戦目に派遣してもらうことも出来なくなってしまいそうです

 

もう一人出場した川畑和愛は、ショート58.89の5位スタートで、フリーが114.95の6位、総合5位でした

フリーは最初のコンビネーションジャンプがしっかり決まったのは良かったのですが、次のダブルアクセルが前向き着地になってしまうなど、いくつかミスが見られました

力的には60-120の180点くらいは出せそうですね

四位が177.22でしたので、横井さんも川畑さんも、あと一つ、何かがうまくいっていれば、グランプリ二戦目がもらえるところだったのですが残念でした

 

 

二戦目はオーストリアのリンツ開催

吉岡詩果がショート56.11フリー113.71トータル169.82で3位表彰台です

ショートもフリーも小さなミスはあったのですが無難にまとめたという感じだったでしょうか

Kiss&Cryで、得点が発表された後の、大げさにはしゃぐでもないのだけどうれしさが抑えきれない表情、というのがとても印象的でした

もう少し加点要素が入ると点が伸びるのですが、GOEで+4以上をつけたジャッジがショートもフリーも一人もいませんでした

そのあたりが次の課題なんだろうなと思います

もう一人出場の滝野莉子はショート50.00フリー97.07のトータル147.07で7位でした

一昨年は全日本に出場したりしてますし、こういうレベルの選手ではないんですけどね

見た目の子供っぽさが抜けてきているので、たぶん身長が伸びたり、体形が変化していっている途中なのでしょう

ショートではダブルアクセル以外の三つのジャンプで回転が不足して一つ転倒

フリーも回転不足三つとフリップが二回転にダブルアクセルがシングルになったのと転倒一つ

転倒以外は飛べているように見えるんですけどね

よく見ると回りきっていない

とにかくジャンプに苦しんでいるようですが、時が解決してくれるんじゃないかと思います

ショート最後のレイバックスピンは美しかったです

 

 

三戦目はリトアニアのカウナスで行われました

岩野桃亜がショート53.49フリー100.45で総合153.94の5位

ショートはコンビネーションが入らず単独ジャンプのフリップも回転不足

これでよく点が残ったな、という感じなのですが、スピンステップはすべてレベル4でした

GOEが平均+3ついたステップや、+5を二人がつけた最後のレイバックスピンなどは、再生もう一度、としたくなるような出来でした

フリーもジャンプのダウングレードが2つに回転不足一つ、転倒付き

こうなるとやはり点は伸ばせないんですけど、最後のレイバックスピンはGOE +5をつけたジャッジが4人いたり、随所に良さは見せてくれました

 

もう一人の出場は横井きな結

横井ゆは菜の妹が今シーズンからジュニアに上がってきました

ショート45.68フリー81.30 合計126.98の14位

この年でロクサーヌのタンゴかぁ、と思ったりもしますが、横井家ならば許される気もします

3-3が入らず、スピンはフライングの着地で失敗し、単独フリップは回転不足

なかなか苦しいジュニアデビュー戦

3-3がサルコウからの入り、というあたりも、まだまだ感がありますが、ロクサーヌの雰囲気は感じさせてくれました

フリーはトリプルアクセルチャレンジも不発

後半のジャンプは最後は1回転が二つ続きスピンもレベル1など散々な出来でした

ショートがこの点数だと、全日本ジュニアではフリーにも進めない水準なので、この先立て直しが必要そうです

もはや失うものが何もない、というこの局面でトリプルアクセルに挑んだのは良かったと思います

 

四戦目は北米のカナダへ飛んでリッチモンドで開催

住吉りおんがショート55.07フリー119.89のトータル174.96で3位表彰台に乗りました

ショートは3-3の二つ目のジャンプで回転が足りず転倒。もう一つ、スピンのあとの何でもないつなぎの部分で転倒したり、もったいない部分もありましたが、他の要素はすべてGOEで+2以上つく出来で踏みとどまりました

フリーは出だしでフリップ-ループの3-3を決めるなど、いい出来でした

一昨年ノービスAで優勝したにもかかわらず、昨シーズンは全日本ジュニアにも出られず悔しい思いをしたりしていましたが、ここにきて結果を出しました

ショートもフリーも割と定番曲を使っていて、今シーズンは勝負、という意識もあるのでしょうか

これで最終7戦目の出場権も回ってきました

 

 

もう一人の出場は青木祐奈

ショート54.91フリー99.43 トータル154.24の7位に終わりました

ショートはとにかく、不発に終わったトルプルルッツ-トリプルループのコンビネーション

これにつきます

これさえ決まっていれば60点を大きく超えるスタートになったのですが、ループが1回転になると必須要素不足でGOEも-5

他の要素は悪くなかっただけに、非常に残念でした

フリーは2回転になるジャンプが3つ出るなど、全体的にうまくいかず、100点に届かず沈んでしまいました

ただ、出だしのトリプルルッツ-トリプルループのコンビネーションは成功させ、会場を沸かせました

観客が少ない日本以外の国でのジュニアの試合で、会場が沸くというのは珍しいことです

 

彼女もノービスAでは優勝した逸材なのですが、その後長く低迷してしまっています

彼女の学年ではジュニアに上がるころは本田真凛と青木祐奈で双璧、という感じだったのですが、その後彼女に代わって白岩優奈がその位置にいる感じです

今回、結果としてはいまいちでしたが、久しぶりにルッツループも決まり、少しづつ戻ってきているな、という感じはあります

 

 

ジュニアグランプリの前半戦、女子は全体的に苦しんでいますね

ショートでは60点を超える点数を出した選手がここまでいません

川畑和愛の58.89が最高

彼女にしてもコンビネーションの二つ目が回転不足ですし、ノーミスの演技、というのがここまで8人誰もできませんでした

フリーは横井ゆは菜の121.50が最高

さすがにその辺は今のジュニアのエース格という感じではあります

 

全体的にショートプログラムの出来が悪いです

出場8人中、ショートプログラムで3回転-3回転のコンビネーションジャンプをしっかり決めた人は一人もいません

 

最初から3回転-2回転になったのが一人

コンボが入らず単独ジャンプになってGOE-5が一人

3回転-1回転になってGOE-5が一人

2回転-3回転になって、かつ、3回転が回転不足なのが一人

3回転-3回転の一つ目も二つ目も回転不足なのが一人

3回転-3回転の二つ目がダウングレードなのが一人

3回転-3回転の二つ目が回転不足なのが二人

 

状態として一番ましだった、3回転-3回転の二つ目が回転不足、というので済んでいた二人が、結果的に表彰台に乗っている、というのは偶然というものではないのでしょうおそらく

 

フリーの3回転-3回転は決めている選手が多いのですけどね

最高難度のルッツループ加点付きで飛んだ青木祐奈のほか、後半に3-3-2で決めた横井ゆは菜、ルッツ-トーループでジャッジの全員がGOE+3以上を付けた川畑和愛、また表彰台に乗った吉岡、住吉両選手も当然のように加点付きの三回転-三回転を決めています

ショートと違って、フリップからのコンビネーションにも出来る、という楽さはありますが、青木、吉岡、川畑の三選手はルッツからのコンビネーションでフリー冒頭のジャンプとして決めています

これがショートからしっかり決められるようになれば、試合展開はずいぶん違ったものになってくるのですけどね

 

 

全日本ジュニア、全日本、世界ジュニア

この先どうなっていくでしょう

全日本ジュニアは全体の平均レベルが高いので、ショートであまり失敗すると、フリーで挽回の前にフリーに進めず消えてしまう可能性があるんですね

一方で、今年は昨年までのように突出した上位もおらず混戦模様でしょうか

ここ二シーズン優勝スコアは190点台なのですが、今シーズンは170点台まで下がってくるかもしれません

そうなると、まさかのノービス勢優勝、なんていう展開もあったりなかったり

ただ、慣れない海外での試合と違い、馴染みのある顔だけで集まる国内の試合なら、ノーミス演技で180点を超えてくる選手の一人や二人はいてくれるでしょう

 

全日本へ進める7位までの争い

そして世界ジュニアの3枠を目指す戦いも、この先熾烈そうです