チャレンジャーシリーズ18一区切り3

2までがだいぶ長くなって、3部構成になりました

日本女子シングルの3話目

おさらいとして、もう一度、出場した日本人選手の得点を並べます

 

紀平梨花 218.16(70.79(40.67+31.12) 147.37(81.05+66.32) 優勝 オンドレイネペラ杯

三原舞依 209.22(70.94(39.06+31.88) 138.28(72.92+65.36) 2位 ネーベルホルン杯

宮原知子 201.13(67.53(32.53+35.00) 133.70(66.54+68.16) 優勝 USインターナショナル

山下真瑚 182.22(55.33(27.73+28.60) 126.89(65.93+60.96) 3位 ロンバルディア

坂本花織 180.85(49.91(20.63+30.28) 130.94(66.70+64.24) 4位 ロンバルディア

本田真凛 178.89(56.66(27.38+30.28) 122.23(58.79+63.44) 6位 ネーベルホルン杯

白岩優奈 173.01(55.35(28.79+27.56) 118.54(59.30+60.24) 2位 アジアンオープン

白岩優奈 170.74(54.47(28.91+26.56) 115.39(55.39+60.00) 5位 USインターナショナル

樋口新葉 167.01(57.54(28.22+29.32) 109.47(48.23+62.24) 5位 オータムクラシック

山下真瑚 163.45(50.97(24.53+27.44) 112.48(55.44+57.04) 3位 アジアンオープン

松田悠良 143.02(47.75(24.23+24.52) 95.27(45.59+49.68) 9位 オータムクラシック

新田谷凛 133.86(45.57(20.41+26.16) 88.29(39.05+50.42) 9位 オンドレイネペラ杯

本郷理華 133.66(46.54(19.69+26.85) 87.12(39.91+49.21) 16位 フィンランディア杯

 

前回までの話で残っているのは、200点を超えた3選手です

今回は実績順に触れていきたいと思います。

 

 

宮原選手は昨年はケガに苦しんで出遅れましたが、今シーズンはチャレンジャーシリーズからの登場となりました

USインターナショナルでショート、フリー、それなりにまとめて手堅く優勝。まずタイトル一つ、今シーズンも取りました

点数的にも200点を超えているので、及第点と言えば及第点なのかもしれませんが、宮原選手の水準からすると、決していい点数なわけでもない、とも言えます

実際、ショートではダブルアクセル以外の三つのジャンプはすべて回転不足扱いにされていますし、フリーは回転不足は取られなかったものの、冒頭のサルコウが二回転に、二つ目のルッツで転倒、二回目のルッツでコンビネーションが付かずリピート扱いとされています

ただ、さすがだなと思わされるのが、ショートフリー通じて、合計6つのスピン、2つのステップ、すべてがレベル4でGOEも平均+3以上がついています。プログラムコンポーネントもショートで35点、フリーで68点

これだけ入ると、ジャンプで散々ミスが出ても200点取れるんですよ、という一つの手本のような形になっています

 

ジャンプは矯正中、というような話も聞きますし、今年はもしかしたら日本人選手に負ける場面というのも頻繁に出てくるかもしれません。それでも、ジャンプでこれだけミスが出てもほかで稼いで200点までは少なくとも出せる、という力を持っていると、世界選手権の切符を取るところまでは問題なくいくのかな、という印象です

 

グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカと4戦目のNHK杯にエントリーです。

メンバー的には二連勝もあり得るのですが、最大のライバルは日本人、というシチュエーションになっていて、足元をすくわれる可能性もあります

 

 

 

三原選手はショートフリーとも素晴らしい出来でした。残念ながらフリーの最後のジャンプ、サルコウが2回転になってしまって、ノーミスオール加点、とはいきませんでしたが、それ以外はミスなくまとめました。

結果として209.22

フリーの曲は昨年から持ち越し、ということもあってか仕上がりが早いのでしょうか

曲を持ち越すというのは割とよく聞くのですが、オリンピックシーズンで使った曲を次のシーズンも使う、というのはあまり聞かない気がします。世界大会で見せるつもりが、一番大きくて四大陸選手権になってしまったから、今シーズン世界大会でちゃんと見せる、というつもりなんでしょうか。彼女に合っていると思うので、また今シーズンも見られるというのは有り難いことではあるのですが、珍しいパターンだなとも思いました

 

シニアに上がってからの二シーズンの印象として、ショートでいまいちなのをフリーで取り戻す、というのがありました。今回はそれがなく、ショートでしっかり滑ってフリーもしっかり滑った。チャレンジャーシリーズという、彼女からしたら少し格下というか、小手調べ程度の大会でありプレッシャーが薄かったからという可能性もありますが、とにかくショートがしっかり滑れたのはたぶん収穫です

 

一方で、考え込んでしまうのが、これ、ここからさきどうやって点数を伸ばすんだろう? というところ。

フリーでサルコウが2回転になった、というのはあるので、それをちゃんと3回転にすること、というのが上乗せ要素としてあるのですが、あとは、わかりやすい問題点が見当たりません。その状態で209.22  世界で表彰台に乗るにはちょっと足りないですし、宮原選手はもちろん、坂本選手樋口選手あたりがミス一つくらいで抑えて来たら上に行かれてしまうくらいの点数です

どうしたらいいのだろう?

 

スピンステップでレベルが3になる、というのがショートフリー合わせてたいてい2つ3つあるので、その辺をレベル4しっかりとる、というのは一つあるのですけど、それくらい

あとは、細かい加点をどうとっていくか、という水準になってきています

今回はショートフリーすべての要素で、GOEに+5をつけたジャッジが一人もいませんでした。この辺の加点要素を一つ一つ加えていくしかない

あと、プレゼンテーションスコアもトップ選手の方ではあまり高くなく、今回もショートで31点台、フリーも65点台にとどまってました

そういう、細かい積み上げしかあと残っていない、というのがある種この先の困難な道のりを感じさせます

 

グランプリシリーズは4戦目のNHK杯と、最終6戦目のフランスにエントリーしています。NHK杯で日本人決戦に勝てれば、グランプリシリーズ初優勝が見えてくる、というメンバー構成です

 

 

紀平梨花選手はこのチャレンジャーシリーズがシニアデビュー戦でした

ショートプログラム冒頭のトリプルアクセルで転倒してしまい、素晴らしい立ち上がり、とはいかなかったのですが、他はしっかりまとめて70点に乗せました。転倒しているのに技術点が40点に乗っているわけですから驚異的です。フリーは大きなミスがなく、トリプルアクセルも二本決め技術点は80点オーバーのトータル147.37をデビュー戦でたたき出しました

彼女の恐ろしいところは、これがノーミスパーフェクト演技ではなく、ほどほどにミスがあり改善点、伸びしろを残した中での点数、というところです

ショートでトリプルアクセルを転倒した、というのがその一番のものですが、こっそり最後のジャンプが時間的に後半にならずに1.1倍にしてもらえなかった、というミスがありました。これは本人のというより振り付け上の失敗のような気がしますが。フリーは最後のサルコウはふらついていてGOEがマイナスです。また、シニアデビュー戦でフリーのプログラムコンポーネントが66.32ついた、というのは驚異的ではあるのですが、これは何戦かするうちにまだ伸びるはずです。単純計算すると、全部ノーミスで滑れば230点くらいはすぐに到達します。もう一押しでノーミスのザキトワ選手と五分に勝負できる、という領域です

そういえば、ザキトワ選手が先の世界選手権のフリーで大失敗して負ける以前、ロシア人選手以外にはしばらく負けなしでいたわけですが、一番近いところでザキトワ選手に勝ったのは紀平選手でした。2016年のジュニアグランプリシリーズ、リュブリャナ大会。ショート2位からフリーで逆転、ザキトワ選手を下して優勝していました。

 

採点表見ていて不思議だったのは、彼女のフリー演技はジャッジ毎のGOEのばらつきが大きいんですね。コレオシークエンスではGOE+5とつけたジャッジが二人+4が一人いるのにもかかわらず、+1のジャッジも一人いる。ステップシークエンスも+5+4が一人づついるのに、+2も3人いる。3Lz-2T-2Loも+3が2人いるのに+0が2人いる。2段階くらいまでならまだしも、こんな風に3段階以上GOEがばらつく要素が多数ならぶ、というのはちょっとよくわかりません。プログラムコンポーネントも一番いい点をつけたジャッジと一番悪い点をつけたジャッジで1.00あるいは1.25の差があったりします。5要素でそれなので、5点、掛ける係数0.8分の差がジャッジ間である、ということになります

これがもし、ジュニア上がり選手に対する先入観、というものに由来するのだとすると、やがて加点の大きい側にそろっていく、ということになるのですが、実際のところどうでしょう。

 

彼女はトリプルアクセルを飛ぶこともありジュニア時代から、あるいはノービスの時代から騒がれる選手でした。ただ、大きな国際大会での大きな実績、というのはまだありません。

ジュニアグランプリファイナルには二シーズン続けて出場したものの二回とも4位で表彰台に届かず。

世界ジュニアはジュニア一シーズン目は代表になれず、二シーズン目はフリーで崩れて8位どまり。

国内ではノービスAも全日本ジュニアも、卒業年には優勝していますし、ご存じ昨年の全日本は、オリンピック代表候補たちに交じって三位表彰台。

国内ではそれなりに実績を上げてますし、海外でもグレードの少し低い試合では成果が上がっているのですが、さて、グレードの高い試合で結果が出せるか、というのがこの先問われることになります。

 

グランプリシリーズは4戦目のNHK杯と6戦目のフランスにエントリーです。NHK杯には日本からはチャレンジャーシリーズで200点を上回った3人が出る、というシーズン序盤の日本人頂上決戦になります。そのほかに、ラジオノワ、ソツコワ、トゥクタミシェワとカナダのデールマンあたりに勝つことが、デビュー戦優勝を果たすための条件となります。

 

 

考えてみれば、チャレンジャーシリーズに11人、グランプリシリーズにも10人出場する、というのはなかなかすごいことです。

今シーズンのグランプリシリーズはついにすべての試合に3人がエントリーされました。

これだけいると、全員が全員うまくいく、結果を出す、というのはありえないのでしょう

 

それでも、一人一人、思い通りの滑りを見せてくれたらな、と願います