全日本選手権19 女子シングル感想

今年も全日本選手権が終わりました。

いつもは数字やグラフを並べる形になってますが、たまには、ただの感想を述べてみたいと思います。

 

優勝は大方の予想通りなんでしたかね。

自分の予想ではもう少し競るかと思っていたのですが、昨シーズンからの三強のうちの二人が崩れてしまったので、楽勝、という展開になってしまいました。

あの展開なら余計に四回転飛びに行ってもよかったと思うのですけれど、あまり直前の他の選手の結果というのは構成に反映しないものなような気はします。ショートプログラム終わった時点での他の選手の結果(自分との点差)は反映されるのでしょうけれど。

でもまあ、最後にちゃんと締まってよかった。あのまま紀平選手までトリプルアクセルで転倒、なんてなってしまうと、近年まれにみる締まりのない全日本になってしまうところでしたから。個人的にはショートプログラムの衣装は、スケートカナダまでの青系のものの方が好きなんですが、少数派なんですかね。青の方がバグダッド感を感じるのですけれど。

 

 

宮原選手は回転不足8つ、ショートと合わせると10個。ジャンプはコンビネーションまで含めて全部で15回なので、三分の二が回転不足。今のルールでは、全日本レベルの大会なら回転不足は実は致命傷にならないと思っているのですが、さすがにここまで並ぶと厳しいですね。クリーンに飛べた三回転はショートの単独ループと、フリーのコンビネーションの一つ目のルッツという二つだけ。逆に、それでよく4位に残ったなあ、と思いました。

宮原選手の結果が出て、うわあ、世界選手権なしか、と思ったら、まさかの坂本選手はそれより点が出ずに宮原選手が世界選手権に残るという展開。ジャンプ以外のベースになる部分のレベルが高いのであの出来でもぎりぎり190点台に残るんですね。大崩れしない強み、というよりは大崩れしても190点台に残る強み、というのが世界選手権の枠取りという点では重要なものな感じはします。ロシア3、紀平梨花、米国2にユヨン選手あたりまでは200点を普通に出してきたとしても190点台に残っておけば8位には残る。カナダやヨーロッパ勢で一人くらい神懸かり演技をして190点台で上に出る選手がいても9位。そうなると、紀平選手がロシア3に勝てなくても順当に4番に入っておけば来シーズン3枠がきっちり残る。これが、大崩れしたら170点台になります、が二人+紀平選手だと、紀平選手が表彰台に乗っていかないと危ない、ということになるので、大崩れしても190点台出せるというのは重要です。

 

坂本選手はショートフリー合わせて回転不足5つとダウングレード1つ ジャンプもよくなかったのですけれど、スピンがショートフリーでレベル4が1つだけということでスピンで全然点が取れませんでした。結果的にフリーは基礎点から宮原選手より下。ということで6位にまで落ちてしまいました。

よくよく考えてみると坂本選手にとって今シーズンは、初めて挑戦者ではない立場になったんだな、と思いました。オリンピックシーズンは、序列としては5~6番手でシーズンインして、スケートアメリカで有力候補に名乗りを上げて全日本で逆転代表入り、なので完全に挑戦者の立場でした。

オリンピックに出たから翌年は受ける立場か、というとそうでもなくて、まだ世界選手権にも出てないし、全日本で勝ったわけでもないし、明らかに宮原選手の方が格上で、かつ、紀平選手が注目も浴びて強い、という中での二番手三番手の立場なので、ほとんどの試合で挑戦者側。ただ、四大陸は前の年に勝っていたこともあり受け身な立場でしたかね。その辺がフリーで崩れたところにつながった感じがしました。

今シーズンは全日本チャンピオンとして入ったシーズンですし、グランプリシリーズも前年にファイナルに進んだという立場です。ロシアが圧倒的に強い、と言われても、立場的には挑戦者感がない感じでシーズン進んできて、全日本はこんな感じに。勝ち続ける難しさ? 次へ向けて、挑戦者感を取り戻すことがカギな気がします。

マトリックス、好きなんだけどなあ。ノーミスマトリックス、お願いだから見せてください。挑戦者感をもって向かっていけば、四大陸選手権でそれが見られるのではないかと期待しております。

 

宮原選手も坂本選手も、次へ立て直すには世界選手権や四大陸の代表にならず、長いオフシーズンにしてしまった方がむしろ良かったんじゃないか、という気がしたりもしました。ポイント稼いでランキング保たなきゃいけないような位置でもないですし。坂本選手はトリプルアクセル導入、宮原選手は全面的なジャンプの立て直し。それをするには1月から来シーズンへの準備に入って9カ月の時間を取った方がよかった気がするのですけど、世界選手権はどちらかはいてくれないと来シーズン3枠が怖いは怖いから、宮原選手が入るのは仕方ないのかなあ。

 

横井選手は表彰台まであと3.04ポイント。表彰台乗ってたら世界選手権代表入ったんでしょうか? でも、僅差なら宮原選手入れましたかね。それでも四大陸は取れていたと思われます。今シーズンはグランプリシリーズの成績もそれほど遜色ないですし、全日本で上に出た横井選手を、枠取りという概念のない四大陸になら選んでもよかったんじゃないかという気はするのですけどね。樋口選手はともかく、紀平選手、四大陸いらなかったんじゃ・・・、という気もしました。

こういう、大学に入るタイミングでシニアに上がる選手、というのがその先大成するような世界がフィギュアスケートの世界、特に、女子シングルの世界にあってほしい、と思うし、そう思わせてくれる選手でもある。もうちょっとPCS出してあげてもいいんじゃないの? 特にフリー、と思ったりもしました。

 

川畑選手は実力のある選手だと思っていたし、180点台で一桁順位にまでは来て、世界ジュニアを吉岡選手と争うんだろうな、と思っていましたが、表彰台に乗るのはさすがに驚きです。ジャンプの回転不足が、三連続の最後の2Loのみ、というのは上位の中では一番回転不足ダメージが少ない出来でした。大人体形化しているうえでジャンプが安定しているのはいいですね。世界ジュニア頑張れば、来シーズンのグランプリ2枠もあるのかもしれません。

 

樋口新葉選手の復活表彰台。ただ、復活ではあるのですけど、200点台一桁は、宮原選手坂本選手が順当に滑れば超えていく点数ではありました。復活度合いはまだほどほどだと思います。完全復活したら、宮原選手や坂本選手がノーミスでも、どっちに転ぶかわからない、という水準までの点数が出せるはずですし。真に復活と言えるのは210点台後半まで出してからな感じがします。ショートフリーでトリプルアクセル入ってノーミスなら230点まで届く資質がある、というのは全日本で見せてくれましたので、シーズン後半のトリプルアクセル投入をお待ちしております。

 

真に復活した、と言えるのは新田谷凛選手だったのではないかと思います。過去最高位の7位。いまいち信じてなかったんですけど、この結果が出ても今シーズンで引退、というのはかわらないようで。同世代でもう少し実績的に落ちる選手も、結構グランプリシリーズに出ていたりしたんですけどね。新田谷選手も一試合くらい回ってきてもよかったと思うのですが、いろいろなめぐりあわせでチャレンジャーシリーズ止まりでした。この7位という結果があると、シーズン後半に国際試合に送ってもらえるし、来シーズンチャレンジャーシリーズには出してもらえると思うんですが、それでも引退なのかなあ。このレベルの選手が大学卒業とともに引退しないといけない、という競技であるというのがフィギュアスケートの現実でもある。今回、たぶん初めてだと思うのですけど、同い年の宮原選手に、ショートフリー共に技術点では勝ちました。フリーでは総合点でも勝ってます。ショートはフリップトーの三回転-三回転も決まって全要素全ジャッジプラス評価。まだまだいけると思うんですけどねえ・・・。

 

復活途上と言えばもう一人、永井優香選手。9位まで戻ってきました。永井選手もショートで全要素全ジャッジプラス評価で技術点は全体3位。グランプリシリーズで表彰台に乗ったのはもう4年前なんですねえ。その時の雰囲気に近いところまで戻ってきたなあ、と思いました。ルッツ好きだなあ。

現在大学3年生。来シーズンで終わりなんでしょうか。ユニバーシアードが来シーズンはあるので、そこが現実的な目標になるのかと思いますけれど、来シーズン大学一年生に上がる世代が、ちょうどユニバーシアードレベルな選手が多いので代表争いは苦しいかなあ。もう一度国際舞台にチャレンジしてほしいのですけれど。9位はチャレンジャーシリーズ送ってもらえるのかどうか。

 

復活途上で来シーズン大学一年生に上がるユニバーシアードレベル、に当てはまるが本田真凛選手かと思います。久しぶりに最終グループ。ノーミス演技、ということでもないのですけれど、ショートで実は回転不足が二つもありながら、それでも60点台後半までは出してくる、というレベルにまで戻ってきた、という風にみています。フリーは回転不足4つ、2回転になったのが一つ。ショートフリーでクリーンに飛んだジャンプが半分しかないのに180点台に乗ってきているのは、ベースになるスピンステップで点が取れているから。

コレオシークエンスのGOEは全体5番目。レベル4のスピンで平均GOE+3以上を出したのは、紀平選手宮原選手と本田真凛選手の三人だけ(全員二つづつ)。ステップもレベル3ではありましたが、ショートは平均GOE+3超え。今回はルッツが決まらないだけでなく、フリップも結局4回挑んで2回転になった一つと後の三つは!付きで回転不足、ということでジャンプが散々だったのですが、それでも180点には乗っている。後一二年、ジャンプの調整が済めば200点くらいまでは出せるようになってくるんじゃないかなあ、と思っています。一方で本田真凛選手を見ていると、ジャンプなんてループ以下の三種類+ダブルアクセルでいいから、安定した演技を黙ってみていたい、という気分になったりもします。

問題は、来シーズングランプリシリーズの枠があるか? なんですよね・・・。来シーズンはチャレンジャーシリーズ~国内地方大会二つ~全日本~インカレを経てユニバーシアード、というコースかなあ。海外在住だとやりにくいのですけど。ラ・ラ・ランドは今シーズンで終わりなのかなあ。だとすると、放映されるような大会はもうないんでしょうか。三シーズン目持ち越しでもいいんで完成形が見たいです

 

 

山下真瑚選手、ショート5位なのに放映無し・・・。羽生選手が出ることで男子優先になってましたね今シーズン。そういえば全日本ジュニアも男子中心でしたし、ちょっと女子不遇時代になってきたんでしょうか。

ショートの構成は雰囲気に合っていていいなあと思います。フリーはジャンプいまいち決まらず。ケガの状態はどうなんでしょう。ちょっと今回は厳しかったですかねえ。

ただ、シーズンベストは190点近く持ってますし、ランキングもまだ割と上位にいます。2月3月にB級大会に送ってもらえればランキング24位に入って来シーズンのグランプリ枠がほぼ確保されると思うのですけど、11位という結果はどうかなあ。

 

 

今回は全体的にジャッジの判定が厳しかったように感じました。ジャンプの回転不足は今シーズン全体の傾向なところもあるんでしょうけれど、スピンのレベル判定が常になく厳しかった印象です。ショートフリーで6つすべてレベル4だったのは、ジュニアの吉岡詩果選手、明治大学の佐藤伊吹選手、同じく明治大学の松原星選手の三人だけ。上位選手で6つレベル4だった選手がいないんですね。昨年は上位は軒並み全部レベル4だったのですけれど。まあ、ネームバリューに左右されず、きっちり公平にレベル判定した結果、なのかもしれませんけれど、意外感はだいぶありました。

 

 

以上、たまには表でもグラフでもなく、文章並べた、全日本選手権女子シングルの感想でした