ハンガリーのブダペストで行われた国際B級大会。ここにロシアからグランプリシリーズ出場予定の3選手が顔を連ねたことで、そこらのチャレンジャーシリーズよりも豪華な顔ぶれとなりました。そして、その一人が、現世界チャンピオンであるシェルバコワ選手でした。
○女子シングル シニア(上位10人)
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Maia KHROMYKH | RUS | 224.91 | 72.82 | 152.09 |
2 | Anna SHCHERBAKOVA | RUS | 222.73 | 74.76 | 147.97 |
3 | Sofia SAMODUROVA | RUS | 190.91 | 67.15 | 123.76 |
4 | Ekaterina RYABOVA | AZE | 184.93 | 64.32 | 120.61 |
5 | Alina URUSHADZE | GEO | 179.14 | 60.32 | 118.82 |
6 | Regina SCHERMANN | HUN | 155.97 | 52.98 | 102.99 |
7 | Yasmine Kimiko YAMADA | SUI | 155.32 | 55.69 | 99.63 |
8 | Kristen SPOURS | GBR | 152.36 | 52.13 | 100.23 |
9 | Bernadett SZIGETI | HUN | 143.42 | 48.64 | 94.78 |
10 | Anita ÖSTLUND | SWE | 142.37 | 56.19 | 86.18 |
現世界チャンピオンのシェルバコワ選手が2位と敗れました。優勝はシニアの国際大会デビュー戦となったロシアのフロミフ選手。フリーで150点を超えるスコアを出して逆転優勝です。
3位には19年にヨーロッパチャンピオンであるサムドゥロワ選手。210点台まで出す実績はある選手ではあるのですが、ここのところ200点に届かない試合が続いています。
4位はアゼルバイジャンのリャボワ選手、5位にはジョージアのウルシャゼ選手といったロシア周辺国の代表でモスクワで練習している選手が続いています。
○アンナシェルバコワ選手のショートプログラムの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 2A | 3.30 | 1.32 | 4.62 | 3.857 | ||
2 | 3F | 5.30 | 1.59 | 6.89 | 3.000 | ||
3 | CCoSp4 | 3.50 | 1.40 | 4.90 | 3.857 | ||
4 | 3Lzq+3Lo< | < | 10.80 | x | -1.30 | 9.50 | -2.286 |
5 | FCSp4 | 3.20 | 0.90 | 4.10 | 2.714 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.48 | 5.38 | 3.571 | ||
7 | LSp4 | 2.70 | 1.03 | 3.73 | 3.857 | ||
TES | 32.70 | 6.42 | 39.12 |
シェルバコワ選手はトリプルアクセルがありません。後半ルッツループというトリプルアクセル無し選手の最高構成。ザギトワさんのそれと同じです。
今回はそのルッツループで回転不足。セカンドループの回転不足はパッと見るとよくわからなかったりしますが、リプレイ見ると、ああ確かに足りてない、みたいなことがよくあってこれもそんな感じがしました。
そのループの回転不足により技術点は40点に届かず、ショートプログラムで74.76にとどまっています。これくらいだとジュニアも混ざったロシア選手権では下手するとフリー最終グループに残れないという危険がある。ルッツループをミスすると、世界チャンピオンといえどもそんな危険があります。
シェルバコワ選手のルッツループの成功率は、昨シーズンこそ国際大会で100%(3/3)でしたが、2シーズン前は回転が足りて着氷したを成功とみなして5/9でした。シェルバコワ選手のショートの生命線。この出来が代表争いを左右することもあるかもしれません
○アンナシェルバコワ選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 4F!q | ! | 11.00 | -5.50 | 5.50 | -5.000 | |
2 | 3F!+3T | ! | 9.50 | 0.42 | 9.92 | 1.000 | |
3 | 2A | 3.30 | 0.79 | 4.09 | 2.571 | ||
4 | ChSq1 | 3.00 | 1.60 | 4.60 | 3.286 | ||
5 | 2A | 3.30 | 0.92 | 4.22 | 2.857 | ||
6 | FCSp4 | 3.20 | 0.96 | 4.16 | 2.857 | ||
7 | 3Lz+3Loq | q | 11.88 | x | -0.24 | 11.64 | -0.429 |
8 | 3Lz+1Eu+3Sq | q | 11.77 | x | 0.12 | 11.89 | 0.143 |
9 | 3F! | ! | 5.83 | x | 0.21 | 6.04 | 0.286 |
10 | StSq4 | 3.90 | 1.25 | 5.15 | 3.143 | ||
11 | FCCoSp4 | 3.50 | 0.98 | 4.48 | 2.857 | ||
12 | CCoSp4 | 3.50 | 0.98 | 4.48 | 2.714 | ||
TES | 73.68 | 2.49 | 76.17 |
四回転フリップは不発で転倒。それも含め3回飛んだすべてのフリップで!マークがついています。1.1倍のコンビネーションはqマーク付きで加点が伸ばせず。全体的に今一つな出来でした。
シェルバコワ選手は四回転のルッツあるいはフリップのイメージがあるのですが、最近は四回転が少なくとも国際大会では決まってきていません。昨シーズンの世界選手権の優勝の時も4回転のフリップはqマーク付きの転倒で今回と同じです。ワールドチームトロフィーでは着氷はしましたがGOEははっきりマイナス。2シーズン前もヨーロッパ選手権でルッツはコンビネーションにしていいジャンプを1つ決めたのですがフリップは回転不足で転倒、2度目のルッツはダウングレード。グランプリファイナルでも似たようなもので3回飛んだ四回転で決まったのは一本だけです。
ロシア勢の中で明らかに四回転で勝負しているというのは、本当はトゥルソワ選手くらいというのが現実でした。そこにすべてを揃えたワリエワ選手というのがシニアに上がってきたので、また話は少し変わって来るのですが、シェルバコワ選手も結局、四回転が取り上げられがちだけど四回転で勝負しているわけではない、という位置にいる選手に見えます。
ロシアの代表争いは激烈。四回転無しの安定構成で勝負するのか? 確率上がってこないけれど四回転を入れて勝負するのか? グランプリシリーズは四回転を入れる構成で来るとは思いますが、ロシア選手権でどうするか?
シェルバコワ選手はグランプリ第3戦、11月1週目のトリノと、第5戦のフランスへエントリーです。
○マイアフロミフ選手のショートプログラムの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 2A | 3.30 | 0.99 | 4.29 | 3.000 | ||
2 | 3Lz | 5.90 | 1.18 | 7.08 | 2.000 | ||
3 | CCoSp4 | 3.50 | 0.98 | 4.48 | 2.571 | ||
4 | 3F!+3T | ! | 10.45 | x | 0.32 | 10.77 | 0.571 |
5 | FCSp4 | 3.20 | 0.90 | 4.10 | 2.857 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.17 | 5.07 | 2.714 | ||
7 | LSp4 | 2.70 | 0.81 | 3.51 | 3.000 | ||
TES | 32.95 | 6.35 | 39.30 |
フロミフ選手はほぼミスのない演技でまとめ、基礎点32.95の満額をもらいシェルバコワ選手よりこの時点で高く、技術点39.30もシェルバコワ選手の上へ出ました。
ただ、72.82というスコアはロシア勢の中ではそれほど強いインパクトにはならないスコアではあります。
スピンステップ、当然のようにすべてレベル4ですが、GOEは+2~3であり、対ロシア勢比較でみるとそれほどもらえていないかな、という印象です。もちろん、シニアデビュー戦で72.82というショートプログラムスコアは普通に考えればものすごいのですけどね。
○マイアフロミフ選手のフリーの構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | ||||
1 | 4T | 9.50 | -3.23 | 6.27 | -3.429 | ||
2 | 4T+3T | 13.70 | 2.85 | 16.55 | 3.000 | ||
3 | CCoSp4 | 3.50 | 1.05 | 4.55 | 3.000 | ||
4 | 3Lo | 4.90 | 1.47 | 6.37 | 2.857 | ||
5 | 2A | 3.30 | 0.99 | 4.29 | 3.000 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.40 | 5.30 | 3.429 | ||
7 | 3Lz+3T | 11.11 | x | 1.77 | 12.88 | 2.857 | |
8 | 3F!+1Eu+3S | ! | 11.11 | x | 0.32 | 11.43 | 0.714 |
9 | 3Lz* | * | 0.00 | x | 0.00 | 0.00 | |
10 | FCSp4 | 3.20 | 1.09 | 4.29 | 3.286 | ||
11 | ChSq1 | 3.00 | 1.90 | 4.90 | 3.714 | ||
12 | FCCoSp4 | 3.50 | 1.12 | 4.62 | 3.286 | ||
TES | 70.72 | 10.73 | 81.45 |
逆転優勝したフロミフ選手のフリーの構成。ミスは結構あります。冒頭の四回転ループはステップアウトで大きな減点。3連続は!マークがついて加点が伸びず。それになによりジャンプ跳びすぎでルッツ零点。それでも技術点が80点を超え、フリーのスコアは150点を超えました。
ジャンプは4回転トーループを2回、コンビネーションのセカンドトリプルトーループを2回飛んだうえで、トリプルルッツを2回飛んでしまったため、2回飛べる3回転以上のジャンプは2種類まで、というのに引っ掛かってのルッツ零点です。最後のジャンプなに飛ぶんだろう? ここにダブルアクセル入れるの? と思ってみていたらトリプルルッツを飛んで、あーあ、飛んじゃった、という感じでした。おそらく2つ目の四回転トーループがあまりにうまく飛べたので、思わずコンビネーションで付ける2つ目を3回転にしてしまい、それを忘れて1.1倍のコンビネーションに普通にセカンド3回転を付け、そのまますべて忘れて予定通り最後にトリプルルッツを入れたために起きた事故、ということかと思われます。ルッツのところをちゃんとダブルアクセルに出来ていればもう4.5~5点くらい高いスコアに出来ます。
スピンステップはショートより加点を稼ぐことが出来ていました。全体をノーミスで滑ることができれば160点に乗せることができる構成です。
フロミフ選手のグランプリシリーズは11月1週目の第3戦トリノと、第6戦のロステレコムにエントリーです。
○男子シングル シニア
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Matteo RIZZO | ITA | 234.40 | 72.94 | 161.46 |
2 | Dmitri ALIEV | RUS | 230.63 | 69.70 | 160.93 |
3 | Alexander SAMARIN | RUS | 226.81 | 74.46 | 152.35 |
4 | Ivan SHMURATKO | UKR | 223.29 | 73.22 | 150.07 |
5 | Graham NEWBERRY | GBR | 202.34 | 70.14 | 132.20 |
6 | Davidé LEWTON-BRAIN | MON | 186.24 | 69.09 | 117.15 |
7 | Jari KESSLER | CRO | 173.76 | 64.48 | 109.28 |
8 | Andrii KOKURA | UKR | 166.22 | 54.46 | 111.76 |
9 | Adam HAGARA | SVK | 163.61 | 60.26 | 103.35 |
10 | András CSERNOCH | HUN | 159.11 | 56.42 | 102.69 |
11 | Samuel MCALLISTER | IRL | 153.21 | 51.63 | 101.58 |
イタリアのマッテオリッツォ選手が優勝。先週のフィンランディア杯ではフリーで1位。今週はトータルで1位でした。世界選手権7位の実績のあるリッツォ選手にとって、本人比で230点台は大したスコアではないですが、この先オリンピックへ向けて調子を上げて行ってくれるでしょうか? グランプリシリーズでは4戦目と6戦目という羽生選手と同じエントリー。4戦目はNHK杯ですので来日予定となります。
2位3位にはロシア勢。アリエフ選手、サマリン選手と続きました。3枠あるロシアの代表を目指す二人です。グランプリシリーズではアリエフ選手は3戦目のイタリアと5戦目のフランスという近場の2戦、サマリン選手は2戦目のカナダと4戦目のNHK杯という遠方でのエントリーになります。
いよいよ次週はスケートアメリカ、グランプリシリーズが始まります。現地時間22日夕刻のペアからで男子シングルも22日スタート。女子シングルは23日24日、現地はラスベガスですので、いずれも日本時間では翌朝相当の時間となります。