フランス杯 ミスしても勝てます

グランプリ第5戦はフランス杯でした。

男女ともショートプログラムで本命が首位に立ち、フリーではそれぞれミスも見られましたがそれでも問題なく逃げ切り勝ち。男女シングル、それぞれ2戦連勝でのファイナル進出となりました。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yuma KAGIYAMA JPN 286.41 100.64 185.77
2 Shun SATO JPN 264.99 87.82 177.17
3 Jason BROWN USA 264.20 89.39 174.81
4 Deniss VASILJEVS LAT 254.48 89.76 164.72
5 Dmitri ALIEV RUS 253.56 85.05 168.51
6 Keegan MESSING CAN 253.06 85.03 168.03
7 Andrei MOZALEV RUS 248.54 68.77 179.77
8 Adam SIAO HIM FA FRA 243.29 84.47 158.82
9 Kevin AYMOZ FRA 228.08 63.98 164.10
10 Artur DANIELIAN RUS 221.50 76.81 144.69
11 Romain PONSART FRA 212.27 66.38 145.89
12 Gabriele FRANGIPANI ITA 184.27 66.33 117.94

ショート100点からのフリーもトップで逃げ切り。鍵弥優真選手2連勝でファイナル進出です。ショートで10点以上差がついていて、メンバー的にも四回転爆発追い上げ型が佐藤駿選手くらいしかいない状況でしたので、勝ち負けという点では非常に余裕のあるフリーだったかと思います。後半はミス連発感がありましたが、点差的には圧勝でした。

2位には佐藤駿選手。グランプリシリーズ初表彰台。これで2試合で2位4位なのでファイナルの芽が残りはしましたが、現時点ですでにポイント6番手で、最終戦のメンバーをみると、ほぼ可能性はないと思います(棄権以外)。ただ、とにもかくにもこの264.99で今シーズンの日本人選手のシーズンベスト3位になりました。オリンピックは羽生選手次第(そもそも間に合うのか自体よくわからない)で厳しい部分はありますが、オリンピックシーズンの世界選手権は慣例的には一人はオリンピックとメンバー替えますので、今の位置でもかなり可能性が高いところにいる、と言えます。

3位にジェイソンブラウン選手が入りました。4回転サルコウをGOEはわずかにマイナスですがqもつかずに着氷。ついにジェイソンブラウン選手に4回転が入りました。ループとサルコウがもったいなかったですが、ノーミスで技術点90点越えがこれで見えました。

グランプリ2戦が2位と3位で現在ポイント5位。最終戦でリッツォ選手の優勝、セメネンコ選手が優勝か2位で267.74以上、コリヤダ選手が2位以内か3位で250.21以上、のうち2つ以上を満たすとファイナルに届かない、ということになります。セメネンコ選手が鍵ですが、ファイナル有力、くらいの位置にいます。また、今シーズン3回滑って一番悪いスコアで259.22なのですが、これはアメリカ4番目の選手の245.35をはるかに上回ります。しかもこの4番手はジュニアのスコア。平昌では代表を外れたジェイソンブラウン選手ですが、今シーズンは順調に来ています。

 

○鍵山優真選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4S   9.70   3.19 12.89 3.333
2 3Lz   5.90   1.77 7.67 3.000
3 4T+3T   13.70   3.66 17.36 3.889
4 3A+1Eu+3S   12.80   2.51 15.31 3.222
5 CSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
6 StSq2   2.60   0.89 3.49 3.333
7 4T   10.45 x -0.95 9.50 -0.778
8 3F+3Lo   11.22 x -0.30 10.92 -0.556
9 1A   1.21 x 0.02 1.23 0.222
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.889
11 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
12 FCCoSp4   3.50   1.10 4.60 3.222
  TES   80.58   14.99 95.57  

鍵山優真選手は四回転2種類3本の構成。四回転ループは今回も入れませんでした。前半素晴らしい出来、後半は、だいぶ崩れました。それでもフリップループまでは持ちこたえていたのですが、最後にアクセルが1回転に。このトリプルアクセルが決まっていれば、2試合連続の技術点100点突破となっていたのですが残念でした。鍵山選手はセカンドループがあるのでショートフリー通じて構成の中に2回転ジャンプを入れない、ということができます。そこが4回転が2種類でもトップで戦える一つの所以かなと思われます。ここで四回転ループが入れば、3Lzが置き換わって基礎点が上がります。その上の四種類目が難しい。四種類目を入れると一つ目のジャンプにトリプルアクセル未満のジャンプがなくなり、セカンドLoをトリプルアクセル以上のジャンプに付けないといけなくなる。そんなことができるか? できない場合、四回転を一つ増やしても3Loが2回転になるので基礎点があまり上がらない、なんてことが起きます。まだ四回転ループを入れる入れないの段階なので、来シーズン以降のことかと思いますが、少し気になる点です。

 

○佐藤駿選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz   11.50   3.78 15.28 3.222
2 4F! ! 11.00   0.47 11.47 0.444
3 4T+1T   9.90   -0.27 9.63 -0.222
4 FCCoSp3   3.00   0.39 3.39 1.222
5 4T   9.50   -2.04 7.46 -2.111
6 3A   8.80 x 0.57 9.37 0.667
7 FSSp4   3.00   0.69 3.69 2.333
8 3F!+1Eu+3S ! 11.11 x -0.15 10.96 -0.333
9 3A+2T   10.23 x 1.03 11.26 1.333
10 StSq3   3.30   0.80 4.10 2.444
11 ChSq1   3.00   1.14 4.14 2.333
12 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.111
  TES   87.84   7.11 94.95  

4回転3種類4本、基礎点満額入るまで来ました。トーループ2本はGOEマイナス。これは飛べないジャンプではないので体力的につらくなってくるという方の問題が残っている、ということかと思います。トリプルアクセル2本も加点付きで成功。後はセカンド三回転が入ればよかったのですが、そこまでは行けませんでした。セカンド3回転が入りトーループをしっかり決めるところまで行けば技術点100点にたどり着けます。後気になるのは3回転も含めてフリップで二つ!がついているところ。この先の課題になっていくのだろうな、と思います

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 229.69 77.94 151.75
2 Alena KOSTORNAIA RUS 221.85 76.44 145.41
3 Wakaba HIGUCHI JPN 204.91 63.87 141.04
4 Kseniia SINITSYNA RUS 198.76 69.89 128.87
5 Karen CHEN USA 194.00 64.67 129.33
6 Mariah BELL USA 190.79 60.81 129.98
7 Ekaterina RYABOVA AZE 186.65 63.34 123.31
8 Yeonjeong PARK KOR 186.11 67.00 119.11
9 Yuhana YOKOI JPN 176.93 52.32 124.61
10 Haein LEE KOR 171.32 63.18 108.14
11 Lea SERNA FRA 170.33 62.75 107.58

女子はシェルバコワ選手が優勝。四回転がすっぽ抜けてどうなるかと思いましたが、すぐ次の要素で四回転を飛びなおして問題なく優勝しました。スコアは229.69 さすがにジャンプ1本消えたのは痛く230点には届かず。強いは強いのですが、230点台後半まで出すには、やはりほぼノーミスでかつ四回転が1本は必要なんだな、というのが見えます。四回転がない場合、トリプルアクセル3本のトゥクタミシェワ選手にスコアで届かない、というのが今の立ち位置。結局4回転が生命線になるわけですね。

コストルナヤ選手が2位。こちらはトリプルアクセルが入らず。このスコアだとロシアの中ではちょっと苦しくなります。最低でもショートフリーで1本づつのトリプルアクセルが入ってこないと230点台半ばの勝負はできない、という状況。今のロシアの中ではフロミフ選手と並ぶ5~6番手の位置、というスコアになっています。ファイナル進出は理論上まだ確定はしていませんが、コストルナヤ選手が押し出されるには、次戦でワリエワ選手が4位になる(4位以下ではなく4位)というのが必須条件でありますので、ほぼ間違いなくファイナルの出場権は得られたと思います。ファイナルでどこまで調子を戻してくるでしょう?

 

樋口新葉選手が3位表彰台でした。今回のメンバーならチャンスがある、という中でそのチャンスを生かしましたがスコアは204.91で前回のスケートカナダに届きませんでした。グランプリシリーズの表彰台は今シーズンは日本人三人目ですが、シーズンベストは更新できずに5番目のままです。ただ、この3位で宮原知子選手を抜いて世界ランキングは日本人3番手まで上昇しました。連戦になるのを承知で場所の近いオーストリアのチャレンジャーシリーズに出たことが効いています。ショートフリー両方揃えば220点台が見えているのですが、そんな日が来るでしょうか? もともと強かった全日本。そんな日がそこでくれば代表が見えてきます。

 

アメリカからはカレンチェン選手が5位でマライアベル選手が6位。両選手とも調子がいまいち上がってきません。アメリカは3枠ありながら、全体的にあまり調子が上がってこず、アリサリュウ選手は当確に近そうですが、他はロシアとは違って悪い意味での混戦になっている感じがします。

 

横井ゆは菜選手は9位。グランプリシリーズに2戦出て、どちらもポイントを取れませんでした。代表争いとしてはかなり苦しくなっています。元々国内番長感のある選手なので、全日本では会心の演技で表彰台に乗ってくる可能性も全くないわけでもないのですが、そうなった場合でも国際大会の結果を並べるとちょっと選びにくい、という印象になってしまっています。ただ、それよりも何よりも、最近のいろいろなコメントが、引退しそうな雰囲気を醸し出していて心配だったりします。

 

○女子の今大会のトリプルアクセル以上のジャンプ要素

  Name Nation   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS Anna SHCHERBAKOVA RUS 2 4F   11.00   1.89 12.89 1.667
FS Wakaba HIGUCHI JPN 1 3Aq q 8.00   -0.23 7.77 -0.333
FS Alena KOSTORNAIA RUS 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.000
FS Haein LEE KOR 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000

今大会で高難度ジャンプが要素として入ったのは4選手。シェルバコワ選手は冒頭の四回転ルッツがすっぽ抜けた直後でしたが四回転フリップを見事に決めました。

トリプルアクセルは3人が要素として入ってきましたが着氷したのは樋口新葉選手のみでした。Qでも基礎点満額入るので、とりあえずqでもいいと思います。

コストルナヤ選手がなかなかトリプルアクセルが決まってきません。スケートカナダのショートではqながらも着氷はしたのですが今回はそれもならず。あと一か月でどこまで調整できるか? ロシアで18歳でオリンピックに出るのは厳しいのか?

 

○女子シングル 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 229.69 108.23 72.99 10.26 24.42 14.79
2 Alena KOSTORNAIA RUS 221.85 105.32 71.23 8.56 24.88 12.86
3 Wakaba HIGUCHI JPN 204.91 99.58 65.65 2.48 23.43 13.77
4 Kseniia SINITSYNA RUS 198.76 94.46 66.65 2.85 22.67 12.13
5 Karen CHEN USA 194.00 99.67 59.70 -1.17 23.98 12.82
6 Mariah BELL USA 190.79 95.34 59.31 2.21 22.25 12.68
7 Ekaterina RYABOVA AZE 186.65 87.84 65.06 1.44 21.17 11.14
8 Yeonjeong PARK KOR 186.11 91.72 60.25 0.28 24.15 11.71
9 Yuhana YOKOI JPN 176.93 86.85 61.28 -1.69 21.55 9.94
10 Haein LEE KOR 171.32 89.95 57.36 -6.72 18.36 13.37
11 Lea SERNA FRA 170.33 84.83 54.65 -0.81 21.46 12.20

ショートフリー合わせて要素別で見たスコアです

PCSはシェルバコワ選手がトップ。108.23は今シーズン全体で3番目です。コストルナヤ選手は105.32でこれは坂本花織選手に次いで今シーズン5番目です。樋口新葉選手が99.58 スケートカナダでは100.68だったのですが、いずれにせよ100点前後で、ここで坂本花織選手や宮原知子選手と数点差を付けられてしまっています。

ジャンプの基礎点は一つすっぽ抜けて零点があったにもかかわらずシェルバコワ選手がトップ。コストルナヤ選手も転倒しましたがトリプルアクセルで基礎点満額はもらえたのでそれに匹敵する数字があります。トリプルアクセルを決めた樋口選手は4番目。これはショートのアクセル零点がかなり影響しています。

ジャンプのGOEもシェルバコワ選手がトップで、トリプルアクセルの-4があるにもかかわらずコストルナヤ選手がそれに続きます。コストルナヤ選手の跳べたジャンプの質の良さが感じ取れます。樋口選手は逆にここが弱い。ショートのアクセル零点はGOE的には0なので特に影響はなく、全体のジャンプの質が表れていることになります。

スピンはコストルナヤ選手がトップ。ただ、シェルバコワ選手も含め24点台はそれほど高いスコアではないです。

ステップ系要素はシェルバコワ選手がトップ。樋口選手がいつもは強いのですが、ショートでレベル3が響いています。コストルナヤ選手はショートフリー共にレベル3 トリプルアクセルが決まらない以上、こういったほかの要素の取りこぼしは許されないのですが、ここでレベル3が二つ並ぶとちょっと厳しいです。

 

次週はグランプリ最終戦のロシア、ロステレコム杯です。男子は日本から友野一希選手と田中刑事選手がエントリー。ロシアのコリヤダ選手、セメネンコ選手、イタリアのリッツォ選手などがエントリーしています。女子はロシアのワリエワ選手、トゥクタミシェワ選手、フロミフ選手と強い3人が並び、日本からは松生理乃選手がエントリーです。アメリカからマライアベル選手、ベルギーのルナヘンドリックス選手もエントリーしています。