シスメックス

全日本フィギュアで坂本花織選手が初優勝しました

坂本選手は高校三年生ですが、通学先の高校の名前で試合に出ることは、インターハイ以外ありません

また、中野先生のチームで練習していますので、神戸FSCのチームの一員ですが、神戸FSCの名前で試合に出ることもここ一年以上なくなっています

 

坂本選手は2017年10月にシスメックス株式会社と所属契約を結びました。これは、三原舞依選手も同じで、二人同時にそのタイミングでシスメックスの所属となり、スポンサードされることとなりました

 

今回は、坂本選手のスポンサーというか、所属契約を結んだ、シスメックス株式会社、というのはどんな会社なのか、というお話です

 

 

シスメックス株式会社

設立 1968年2月20日

資本金 12,276百万円

本社所在地 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号

 

本社が神戸市の会社です

坂本選手、三原選手と所属契約を結んだのは、神戸で活動するフィギュアスケーターということで、神戸の企業として支援したい、という形のようです

 

 

従業員数 連結:8,445名 単体:2,537名(2018年3月31日現在)

※嘱託・パートタイマーなどを含む

 

資本金も100億円を超えてますし、1万人近い従業員を抱えていて、結構な規模の企業であることもこの段階でわかります

 

事業内容:臨床検査機器、検査用試薬ならびに関連ソフトウェアなどの開発・製造・販売・輸出入

主な販売先:国公立病院、一般病院、大学、研究所、その他医療機関 ほか

 

というわけで、医療系の検査回りで使われるものを製造販売する会社です。臨床検査技師なんかをされている方にはなじみのある会社でしょうか。BtoCではなくBtoB 企業向けの商売をしています。なので、一般消費者が普通に購入する物品は売っていません。スポーツ選手のスポンサーというと、基本的にはBtoCの企業が一般消費者向けのイメージ向上や、社名・ブランド名の浸透を狙って行う、ということが多いような印象を受けますが、シスメックスはそうではなく、BtoBの企業でありながら、坂本選手たちと所属契約を結び、支援することにした、ということになります。

 

 

単位:百万円

2016年3月期

2017年3月期

2018年3月期

売上高

252,622

249,899

281,935

営業利益

60,729

51,701

59,078

当期利益

39,278

40,453

39,076

営業利益率

24.0%

20.7%

21.0%

当期利益率

15.5%

16.2%

13.9%

 

近年の実績を見てみると、売上高は2,000億円台ですので、トヨタみたいな本当の巨大な会社と比べると100分の1の規模であり、日本国内では1兆円規模の企業がいくつもあることから考えると、極めて大きな会社というわけではありません。ただ、もちろん、これだけの売り上げがあれば十分大きな会社ではあります

ここには乗せませんが、2013年3月期に売上が1,400億円台でしたので、5年で売り上げが2倍になった計算です。その前は2005年3月期の売り上げが700億円台ですので8年で2倍、2001年3月期の売上300億円台からして4年で2倍、という形で、ハイペースで売り上げを伸ばしてきています

また、営業利益が600億円前後ですが、営業利益率が20%台と驚異的な数値です。営業利益率20%台に乗ったのは2015年3月期から。4期連続で営業利益率20%台を続けており、業績は好調です。

 

 

売上高(百万円)

比率(%)

国内

45,019

16.0

米州

66,359

23.5

EMEA

73,924

26.2

中国

72,089

25.6

アジアパシフィック

24,540

8.8

合計

281,935

100.0

EMEA:Europe Middle East Africa

売り上げの84%は海外で稼いでいる、という企業です。一番比率が大きいEMEAというのは、ヨーロッパ(E)、中東(ME)、アフリカ(A)を合わせたものですが、おそらくはヨーロッパが多くを占めているでしょう。EMEAは多数の国が含まれますので、国単位で見れば中国が25.6%と圧倒的です。

 

 

売上高(百万円)

比率(%)

血球計数検査

174,840

62.0

尿検査

20,621

7.3

免疫検査

11,191

4.0

生化学検査

3,268

1.2

血液凝固検査

45,003

16.0

FCM事業

1,611

0.6

LS事業

8,955

3.2

その他

16,441

5.8

合計

281,935

100.0

 

事業別の売り上げを見ると、検査装置が並んでいます。検査装置の会社なんだなあ、というのがよく分かります。売り上げの6割以上を占めるのが血球計数検査、ついで血液凝固検査が16%で、この二つで全体の四分の三を超えます。検査の中でも血液回りが事業の中核なようです。こうやって見ると、スポーツと相性はいいのかもしれません。

 

シスメックス東証1部上場企業です

株価を見てみると、2018年末時点で5,276円で終えたようですが、2018年6月25日上場来高値11,110円を記録してから、半年で半値以下まで下がってしまっています。直近の業績が悪い、というわけではないのですが、期待ほどの伸びがない、ということで下げてしまったようです。

実際、高値の時点ではPERが45倍程度、下がった状態でも20倍台前半ということで、単純に見ると下がってきたのは妥当かな、という印象はあります。ただ、右肩上がりに増益が続いていくようなら、下がってきた今が買い場? という可能性もあります。

まあ、高値水準からだいぶ下がってきてしまってはいますが、壊滅的に悪い、というような状態ではないということは言えると思います

 

 

シスメックス社の製品は、基本的にBtoBのものばかりなのですが、かろうじて一般消費者向けかな、と思えるものが一つあります

ASTRIM FIT という製品です

採血なしで、わずか40秒の間にヘモグロビンのチェックができる健康モニタリング装置です。指を入れるだけの簡単操作でコンディションチェックが可能。重量も450gで持ち運びも容易な優れものです。

一般消費者、というか、一般よりレベルが上なアスリート向けな製品かと思われます。「アスリート」と呼ぶレベルまでは達していない、学校の部活や、スポーツクラブくらいに常備するのもいいかもしれません。

Amazonでも販売中。449,650円

日体大陸上部や、ゴールドジム、栄養士を養成している和洋女子大学などなど、多数の導入実績のあるこの装置、皆さんもご利用いかがでしょうか?

というかこれ、坂本選手たちがリンクサイドで使っていたりするんですかね? なんかおもちゃのようにみんなで測って笑っている姿がなんとなく目に浮かびます

 

 

シスメックスフィギュアスケーターの二人よりも前に、スポーツ支援を一つ行っていました。

2005年12月、シスメックス陸上部が創設されています。実際には創設というか、グローバリー陸上部の活動を引き継いだ、という形です。当時はまだ売上高は800億円台、営業利益も100億円にようやく達したという時期で、今と比べると数分の一の企業規模でしたが、そんなころからスポーツ支援を行っていて、それが現在まで継続して続いています。

 

この時の陸上部には、アテネオリンピック金メダリストである野口みずきさんが所属していました。野口みずきさんは2008年の北京オリンピックの代表に選出されたものの、直前でケガにより辞退。シスメックス所属選手としては、それ以来10年ぶりに坂本花織選手がオリンピックの代表になり、そして、今度こそ棄権することなくオリンピック出場を果たしてくれた、という歴史がシスメックス視点ではあります。

野口みずきさんは2016年4月に引退を発表し、5月末付でシスメックスを退社。長年コーチをしていた広瀬監督も同時に退社され、シスメックス陸上部は新体制になっています。また、野口選手というビッグネームが退社しても、陸上部の活動をやめることなく支援を続けており、昨年も全日本実業団女子駅伝(クイーンズ駅伝)に出場しています。

ただ、チームとしての成績はあまりよくなく、強いチームとは言えない現実はあります。

所属選手は、スケートと異なり、地元の選手ばかり、ということはありません。神戸なので、もう少し須磨学園西脇工業出身の選手が多いのかな? と思いましたが、数人だけでした。

 

 

全日本選手権で優勝した坂本花織を支援しているシスメックスはこんな会社です

坂本選手のファンの方は、支援に感謝してこの会社の製品を買ってください、と言いたいところですが、基本的にBtoCの会社ではないので、ちょっと難しいですね・・・

ヘモグロビンチェックの装置なんてのはありますが、個人で気軽に買うような代物でもないですし・・・

なんなら株買ってください、くらいでしょうかね

まあ、株買うのもまとまった金額が必要にはなるんですけど

医療関係の方がいましたら、ぜひ、ごひいきにしていただけたらと思います

 

いい会社に支援してもらっているなあ、と思います

利益率の高い優良企業ですし、扱っている製品もアスリートに親和性のあるものです。野口みずきさんの退団後も、陸上部の活動は変わらず続いていますし、結果が出ないならすぐに支援を取りやめる、というようなことはなさそうです

2017年10月の契約開始から、オリンピック出場というビッグイベントもありましたが、広告塔として使い倒される、ということもなく今日まで来ています

2017年10月から契約、ということは、17-18シーズンの始まる前くらいから話が進んでいたかと思います。その時期ですと、三原選手は日本のトップで、オリンピックの二枠を争う有力選手の一人ではありましたが、坂本選手は世界ジュニアで3位表彰台にはなったものの、一つ上の2位に、あの目立つ本田真凛選手がいましたし、前年の全日本選手権では7位。17-18シーズンが始まる段階では、5番手ないしは6番手くらいの位置付で、オリンピック有力という選手ではありませんでした。シニアとしての実績はまだありません。スケートアメリカで210点を超えるスコアで2位に入って私もいるぞ! と出てきたのは11月の終わり、契約よりだいぶ後でした。そんな段階で、三原選手だけでなく、坂本選手も契約してもらえたのですから、有り難いことだったと思います

 

坂本選手は現在高校三年生

北京オリンピックのシーズンは大学三年生で迎えます。三原選手は大学四年生です。

特に三原選手は、次回のオリンピックのシーズンまでで引退、と言いやすいタイミングになってますが、こうやって企業所属になっていると、大学卒業後の競技の継続もスムーズになり、長く現役生活を送ることが出来るのではないかと思います

中野先生のチームに、次に力のある選手が伸びてきたら、例えば籠谷選手がもっと上位で滑れるようになってきたら、シスメックスの所属に移行していく、というような、そんな流れがある程度できているんですかね。できているといいな

 

 

今後のシスメックス社の発展と、フィギュアスケートへの変わらぬ支援を願います