オリンピック選手のインターハイ

坂本花織選手がインターハイに出場し、優勝しました

オリンピック出場経験のある選手がインターハイに出場する。

フィギュアスケートではいまだかつて記憶にない事態です

そもそも、高校生でオリンピックの代表になる、というケースが意外と少ない。ピーク年齢が若いとされ、特に女子では金メダリストは10代なことが標準的なフィギュアスケートですが、日本の代表には意外と高校生はなれていないんですね。

浅田真央さんなんかは初めてのオリンピックは19歳、その前は若すぎで出場権なし、ということになっていました。村上佳菜子さんも19歳で出場。

安藤美姫さんは18歳の高校三年生でオリンピックに出ていますが、オリンピックシーズンにインターハイに出る、というのはスケジュール的にあり得ず出ていません。

遠く遡って荒川静香さんの長野オリンピック出場は16歳高校一年生の時でした。当時は世界的にはそれほど強い選手でもなかったですし、もしかしたら翌シーズンにはインターハイに出る、なんてことをしていたかもしれません。記録は確認できないのですが。

 

オリンピックの代表にもなった選手が、さらには今シーズンもこの先四大陸選手権、世界選手権を控えた選手が、なんでインターハイなんかに? という言われ方もされている部分もあるようです

 

さて、他の競技ではどうなんでしょう? オリンピック選手がインターハイにでる、というのはどの程度あるのでしょう?

これ、案外普通にあったりするんですよね、競技によっては

高校生年代でオリンピックの代表になることができるような競技というのは割と限られます。代表的なものとしては、競泳なんていうのがあるでしょうか。

高校生のオリンピアンと言えば、池江璃花子選手。彼女はリオデジャネイロオリンピックに出場し、帰国した直後のインターハイに出場し優勝しています。競泳は、スケジュールさえ合えば、オリンピック選手も普通にインターハイに出ていますね。18年は、アジア大会と被ったので出られない、ということになってまして、さすがにスケジュール被ると出ませんが、スケジュールさえ合えば普通に出るようです

他にも体操競技なんかも高校生のオリンピック代表が普通にいますが、これもやはりインターハイにはスケジュール合えば出ています。杉原愛子選手なんかがそうでした。当然ながらスケジュール上の優先度は高くないので、三年生の時に一度出られただけ、という形ですが、個人総合と種目別二種目で優勝という、半分以上一人で持って行ってしまいました。

 

一方、中高生の活躍が目立つ競技でもインターハイには出てこない競技もあります。卓球なんかがそうです。伊藤美誠選手、平野美宇選手、インターハイに出ているか? 出てきませんね。石川佳純選手はインターハイに出て三連覇を果たしていますが、オリンピックに出たのはそのあと、19歳になってからです。

卓球ではかつて、福原愛さんが、高校1年生でアテネオリンピックに出た2年後、高校3年生でインターハイに出場した、ということがありました。この時はシングルスでまさかの準優勝。そんなこともあるのか、と驚かされる事柄でもありました

 

 

こうやって見てみると、オリンピックに出る高校生というのが少ないので、オリンピックに出た高校生がその後インターハイに出る、という事象はなかなか生じづらくはあるものの、実際にオリンピックに出た高校生は、1年や2年のうちに出場していれば、結構な高確率でその後インターハイに出ているようです。ようは、優先順位が極めて高いわけではないのでスケジュールが合わなければ回避されるけれど、そうでもなければ普通に出場する、というところでしょうか。

 

 

さて、今回の坂本選手はこれらのケースとは多少異なる部分もあります。まず、スケジュール的に余裕があったと言えるか? インターハイが1/26-27にあって、四大陸選手権が2/7スタート。実質的にはほぼ二週間で、グランプリシリーズ2戦が、割と高確率でこの間一週置いて、というスケジュールになります。これは、それほど余裕があるとは言いにくいスケジュールなのですが、そのうえで、インターハイはジュニアルールであり、四大陸選手権はシニアルールである、という決定的な違いがあります。

特に違いが大きいのがフリーで、時間がシニアは四分なところジュニアは三分半でコレオシークエンスがない、ということでプログラム構成が大きく変わります。また、ショートプログラムでも、ジュニアは今シーズンはフリップジャンプを単独で飛ばなくてはいけないというルールであり、坂本選手は通常時はフリップ-トーループのコンビネーションを入れていますので、これを変えなくてはいけませんでした。

 

そんなわけで、今回坂本選手がインターハイに出場したのは、結構な苦労を強いられていたはずです。はっきり言えば、四大陸~世界選手権へ向けての準備期間に、しないでもいい苦労をしていた、と言えます。当然ながら周囲からは、インターハイへの出場は反対されたと言います。

 

この辺は確かに、そういった大人の声も分かる気がします。世界のトップ選手が、インターハイはないだろと。スケジュールに余裕があるならともかく、すぐに次の試合がある中で、違うプログラムを滑る価値がどれだけあるか? そういう価値観で見れば、インターハイに出る意味はなかったんだろうと思います。

 

一方で、感情面では出たい気持ちはわかる部分がある。様々な映像を見ていると、坂本選手が高校生活を楽しんでいる感じは伝わってくるんですよね。そういったあたりから、最後に、高校の名前で試合に出たい、という気持ちはわかる。少し飛躍してしまいますが、アスリートについての学校生活、というものについて少し考えさせられる部分があります。

紀平梨花選手は、高校を通信制のN高東京を選びました。すべてにおいてスケートを優先する、という考え方下、その決断をしたと聞いています。世界ジュニアの代表になった川畑選手もN高東京ですが、おそらく同様な理由なのではないかと思います。

また、本田真凛選手は拠点を米国に移しました。彼女の場合はもしかしたら、とにかく日本を離れることが重要、というような意味合いになるのかもしれませんが、ともかく、学校生活はその時点でほぼなくなったということになるでしょう。

 

すべてにおいて競技を優先するという選択を取るのがいいのか、学校生活も楽しむという選択をするのは甘いのか? その辺は人それぞれだと思うんですよね。ありきたりな結論ですけど

練習時間を十分に確保するには、すべてにおいて競技を優先するというやり方にした方がおそらく良いのでしょう。一方で、すべてにおいて競技を優先するという選択を突き詰めすぎると、世界が狭くなる可能性がどうしても出てくる。

アスリートにとって、競技の外にある学校というのはある種の異世界かと思います。その異世界の中に身を置くことで得られるもの、というのがおそらくある。それを坂本選手は確実に得ているのではないか、そういったものを大きく得てきた3年間だったのではないか。そういう風にここ数日の坂本選手と、これまでのいくつかの報道というか学校風景のような映像を見ていると思えます。

 

 

それにしても豪華なインターハイでした

グランプリシリーズのメダリストが表彰台にも乗れず・・・

これでもフルメンバーではなく、紀平選手始め、出場していない有力高校生が何人かいるわけで

全員本気のインターハイ、というのを見てみたかった気はします