世界ジュニアはグランプリシリーズの予選

フィギュアスケートの世界ジュニア選手権が間もなく始まります。

女子シングルではロシアが圧倒的に強い、とされてまして、まあ、確かに、優勝するのはロシアの中の誰かしかありえないんだろうな、とは思うのですが、表彰台くらいならロシア以外の選手でもかろうじてチャンスはあるのかな、と思うのですよね。ロシア勢が表彰台を目標に安全に演技をしたら勝ち目はないですが、ロシアの三人は三人が互いにライバルでそれぞれ優勝を目指すことになるので、誰か一人くらいは大きな失敗をして、そこに付け込んでどこか別の国の誰かが表彰台に上る、というシナリオはあり得るのかと思います

 

さて、それはさておき、世界ジュニアの出場する多くの選手は、次シーズンではシニアの舞台に上がっていくことになります。そうなると、グランプリシリーズに出場できるかどうか? というのが一つ大きなポイントになるわけです

 

今シーズンシニアに上がって女子選手として、日本からは山下真瑚選手と紀平梨花選手選手がいました。今シーズンの紀平選手の活躍があるので忘れられがちですが、紀平選手は元々は今シーズンのグランプリシリーズの出場権は1試合分しかありませんでした。NHK杯は「地元枠」での出場であって、最初から出場権があったわけではありません。一方で山下真瑚選手は最初から二試合分の出場権を持っていました。

昨シーズン、山下選手と紀平選手では、ほとんどの試合で紀平選手の方が成績は上でした。ジュニアグランプリシリーズは二位と三位でファイナルに進み四位になった紀平選手に対し、山下選手は三位と二位、順位点は同じながらスコアで劣ってファイナルへは進めず。直接対決した全日本ジュニアは紀平選手優勝の山下選手が二位。全日本は紀平選手3位で山下選手10位でした

唯一山下選手が上に出たのが世界ジュニアで、3位表彰台に乗ったのに対し、紀平選手は8位に終わっています

 

結局、これが効いて、山下選手はシニアに上がった今シーズン、グランプリシリーズの出場権が2戦もらえ、紀平選手は当初は1戦しかもらえませんでした。

グランプリシリーズの出場枠の配分というのは、なかなかわかりにくい仕組みで、かつ、すべてが明文化されているわけでもないのではっきりしないところもあるのですが、少なくとも、世界ジュニアで表彰台に乗った選手が翌シーズンにシニアに上がった場合、優先的に出場権が回ってくる、というようなことは明文化されています。

また、もう一つ、世界ジュニアの前の段階ではベストスコアが紀平選手は192点台であり、山下選手は181点台しか持っていませんでした。これが世界ジュニアで195点台を出して山下選手が逆転します。シーズンベストスコアが24番目以内、というのも翌シーズンのグランプリシリーズの出場枠をもらう際の優先度が高くなるので、その点でも山下選手が優位でした

 

今回世界ジュニアに出場する横井選手、白岩選手、という二人は来シーズンシニアの舞台で戦うことになります。そして、この二人はグランプリシリーズの出場枠をいくつもらえるか微妙な位置にいます。川畑選手は高校二年生なので、来シーズンシニアに上がるかはわかりませんが、グランプリシリーズの枠がもらえそう、となればシニアに上がる決定を下すかもしれません。その枠を争ううえで、この世界ジュニアというのは非常に重要な大会になります。

 

グランプリシリーズの枠は、普通は、世界の中での序列を考えればよいのですが、日本の場合は(ロシアの場合も)特殊で、国の枠の上限に引っかかってしまうので、国内の選手同士の争い、という側面が強くなります。

グランプリシリーズは全六戦。一つの大会で一つの国が出場できるのは三人までです。六戦あるので延べ18人、と言いたいところですが、NHK杯は「地元枠」という別枠が残されるのでそれを除いた延べ17人分が最初に枠としてあります。なので、二戦の枠をもらえる人が最大8人、となります。今シーズンは、宮原、坂本、樋口、三原、山下、本田、松田、以上七選手が二枠をもらい、本郷、白岩、紀平、三選手が一枠でした。そこにNHK杯の地元枠を紀平選手が取り、樋口選手が二戦目をけがで欠場したために代役で白岩選手が入りました。日本国内でこの17枠を争う形になります

 

来シーズンも、最初から二枠もらえるのは七人、と考えるのが妥当そうです。

宮原、坂本、紀平、三原、四選手までは今シーズンの成績を考えると2戦もらえるのは間違いないと言えます。樋口選手が今シーズンふるわなかった形ですが、昨シーズンの世界選手権2位とう実績と、高い世界ランキングがあるので、2枠入ってくる可能性は高いです。

 

そうすると、2戦もらえそうなのはあと二人、それ以外にあと3人、1戦もらえそう、ということになります

現在優位なのは、シーズンベストが200点を超えている山下選手が六番目の位置にいます。世界ランキングも今は28位ですが、今シーズンが終わった段階で失効になる二シーズン前のポイントが少ないのでもう少し上まで出る可能性がたかく有利なところにいます

逆に、今シーズングランプリシリーズに出ていた中では、松田選手はランキングも77位でベストスコアも79位なので、来シーズンの枠はなさそうです。ベストスコアは75位まで、というのが一つ閾値になっていますが、本郷理華選手も83位なので来シーズンは苦しそう。

このあたりとの入れ替わりを横井選手、あるいは川畑選手は目指すことになります

 

白岩選手、横井選手は、そういった情勢なので、出来ればお互い相手に勝ちたく、さらに欲を言えば、山下選手よりも高いシーズンベストスコアを出したいわけです

 

白岩選手は現在世界ランキングが24位です。世界ランキング24位以内、というのはグランプリシリーズで優先度が高いので、今シーズン終わった段階でこれを維持したい。二シーズン前のポイント、というのがそこそこあるので、少なくともその失効分に相当するものは確保したいわけです。二シーズン前の世界ジュニアは5位でした

 

一方、横井選手は世界ランキング82位。ランキング勝負ではシニア勢に全く歯が立ちません。シーズンベストは184.09で32位。すぐ上30位には本田真凛選手が188.61でいて、27位に白岩選手が191.46でいます。

 

理想は表彰台に乗ること。ロシア三天才の誰かに勝てれば、グランプリシリーズ2枠はまわってくるでしょう。

それが出来なくても、ベストスコアを24位以内までもっていって、今大会日本人最高位になること。これが具体的な目標になります。

シーズンベストスコアは現在のところ24位で196.31です

世界ジュニアの後に世界選手権があるので、何選手かは新たにこれを上回ってくる可能性があります。195-200点のあたりが団子状態でいて、17位でも199.79点です。200点を出せば、シーズンベストスコアは24位以内で今シーズン終わることができると見込まれます。日本人選手間の比較でいえば、現在15位の山下選手の203.06まで出せるとさらにチャンスが広がります

 

逆に、本田真凛選手の188.61を下回ると、横井選手、川畑選手は来シーズン苦しくなります。白岩選手はベストスコアが現時点で本田選手より上ですので、本田選手より優先順位が上なのは変わりません。横井選手も川畑選手も本田選手を下回るスコアで終わった場合は、本田選手まで8人が2枠で、横井選手と川畑選手のどちらかが1枠、どちらかがゼロ、という割り振りになる可能性もあります。最低限188.61を超えていかないと2枠もらえる可能性はほぼありません

 

基準としてみたいスコアは、まず188.61、その上に白岩選手の191.46があり、現在24位の196.31があって、200点まで出せればだいぶ好ましく、山下選手の203.06を超えれば理想、というあたりまでがあります

その辺のどの間に各選手が入ってくるか

そのあたりが来シーズンのグランプリシリーズの枠にかかってきます

 

 

日本人選手のことばかり書いてきましたが、ロシアはもっと恐ろしいことになってます

現在ジュニアの三天才含め、今シーズン200点を超えるスコアを出した選手が8名います。

ヨーロッパ選手権に出て、世界選手権の代表候補にもなったコンスタンティノワは197.57で世界の22番目ながらロシアで12番目。来シーズンのグランプリシリーズの枠、ないかも、という状態です

メドベージェワの204.89は世界で13番目ながらロシアで7番目。もし、コンスタンティノワが世界選手権の代表になり、メドベージェワの点を上回る、なんてことになってたら、シーズンベストが8番目に落ちて、メドベージェワは来シーズン1枠かな、なんてシナリオさえあり得ました

NHK杯で194.15を出して大喜びしていたレオノワはロシアの中では13番目。来シーズンはグランプリシリーズで見ることは出来なさそう・・・。ソツコワもツルスカヤもいないかな。

 

なんとも恐ろしい世の中です