グランプリトリノ 立て直し逆転優勝

グランプリトリノ 立て直し逆転優勝

 

グランプリ第三戦は開催を中止した中国の代わりにイタリアトリノで行われました。

展開的にはショートでまさかの展開があった後フリーで逆転優勝という男女ともに同じようなものでした。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 236.78 71.73 165.05
2 Maiia KHROMYKH RUS 226.35 72.04 154.31
3 Loena HENDRICKX BEL 219.05 73.52 145.53
4 Mai MIHARA JPN 214.95 70.46 144.49
5 Satoko MIYAHARA JPN 209.57 70.85 138.72
6 Yelim KIM KOR 193.50 62.78 130.72
7 Sofia SAMODUROVA RUS 180.59 58.68 121.91
8 Eunsoo LIM KOR 179.58 67.03 112.55
9 Yi ZHU CHN 171.25 60.00 111.25
10 Nicole SCHOTT GER 167.20 58.33 108.87
11 Lara Naki GUTMANN ITA 158.57 54.83 103.74
12 Lucrezia BECCARI ITA 148.29 53.35 94.94

ショートでは、おや? という展開で、ブダペストでの敗戦もあり心配されたシェルバコワ選手でしたが、フリーでは約2年ぶりの国際大会での四回転成功もあり236.78のスコアで優勝しました。これは今シーズンの国際大会で2位のスコアです。

フロミフ選手が2位。四回転を2本決めましたがその他の要素の差が大きく、シェルバコワ選手とは10点の差がついています。226.35は国際大会のシニアとしては今シーズン5番目。上4人とは実績で差もあるのでロシア選手権より前にスコアだけでも追いついておきたいのですがなかなか難しいでしょうか。

ベルギーのルナヘンドリックス選手がうれしい初表彰台。ショートが終わった時点ではトップで、そうそう、これが国際大会のあるべき姿ですよ、上位にいろいろな国籍がいるという、みたいな光景を作ってくれました。トリプルアクセル以上のジャンプ無しでも220点近いところまでは問題なく出せます。

三原舞依選手が2戦連続の4位。やっぱりツキがないと見るか、安定して210点を超えていて素晴らしいと見るか。今シーズンの日本勢では2位のスコアを確保しています。代表争いにいい流れです。

宮原知子選手は5位。グランプリ2戦を7位5位で終わった、という順位だけ取り出すと過去最低です。ただ、実績のあるベテラン。今シーズン試合に出ている中では平昌オリンピックの最高成績の選手。180点とかしか出せてないとかなるとまずいですが、210点近い点を出してきて徐々に調子が上がっている、という流れですので、全日本選手権に合わせればいい実績のある選手、という側面からは、これもやはりいい流れに見えます。

 

○女子シングル 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Anna SHCHERBAKOVA RUS 236.78 107.61 73.10 15.37 25.96 14.74
2 Maiia KHROMYKH RUS 226.35 101.03 75.88 12.68 25.14 11.62
3 Loena HENDRICKX BEL 219.05 103.79 63.01 12.60 24.98 14.67
4 Mai MIHARA JPN 214.95 98.65 65.66 12.33 24.26 14.05
5 Satoko MIYAHARA JPN 209.57 104.17 63.32 2.47 24.65 14.96
6 Yelim KIM KOR 193.50 95.31 58.01 4.58 22.97 13.63
7 Sofia SAMODUROVA RUS 180.59 87.23 55.54 4.79 21.58 11.45
8 Eunsoo LIM KOR 179.58 91.85 57.90 -2.54 21.44 12.93
9 Yi ZHU CHN 171.25 84.87 50.46 1.76 22.88 12.28
10 Nicole SCHOTT GER 167.20 83.10 54.34 -1.20 20.39 10.57
11 Lara Naki GUTMANN ITA 158.57 82.72 50.30 -5.36 20.52 11.39
12 Lucrezia BECCARI ITA 148.29 80.66 47.76 -7.60 20.53 9.94

要素別で見てみるとジャンプの基礎点は四回転二本飛んだフロミフ選手がトップでした。四回転一本のシェルバコワ選手が2番目。そこから7.44離れて三原舞依選手がいます。四回転一本二本くらいまでなら、驚くほどの基礎点差にはなっていませんが、この基礎点差の上でしっかり滑られると逆転のすべはない程度の差でもあります。意外なのがヘンドリックス選手より宮原知子選手の方が基礎点が上なあたり。宮原知子選手は今回も回転不足を3つ取られていますがそれでこの基礎点があるわけで、回転が足りた場合の基礎点は三原舞依選手より上へ行きます。構成が弱いわけではなく、難しい構成で回転を十分に出来ていない、という構図です。

ジャンプのGOEで10点以上稼いだ選手が4人もいます。これが今大会のイメージの良さにもつながったと思います。この4人のフリーは4人全体でフロミフ選手の3LoしかGOEマイナスの要素がありませんでした。宮原知子選手も回転不足による減点なので遠目には分からない。そういったフリーのラスト5人の滑りの良さが今大会の女子のイメージの良さにつながります。

スピンはシェルバコワ選手がトップ。フロミフ選手が二番目で続きます。日本勢は、なかなかスピンで25点台まで出せずに、24点台が多いです。宮原知子選手あたりはきれいなスピンをするのですがレイバックスピンは基礎点が低い。レイバックスピンが得意すぎて外しにくいというのがあるのではないかと思ったりしますが、別のスピンにした方が基礎点から高くなり点が出やすくなる。難しいものです。

ステップ系要素は宮原知子選手がトップでした。ただ、本人比では14点台というのは平凡なスコアで、いい時は15点台後半まで出ます。ヘンドリックス選手も15点台後半まで出せる選手なので今回は今一つ伸びなかったという形です。フロミフ選手は全体でも下位になってしまう11.62 今回はステップでレベル3と2 ブダペストトロフィーではレベル4が取れていましたので、レベル4が取れない選手ではないはずです。ここが一つの伸び代で、ループの失敗分とこのステップで稼げれば230点までは見えています。

PCSは世界チャンピオンのシェルバコワ選手がトップで、宮原選手が2番目。世界選手権の失敗がありましたが、国際的に極端に評価が下がるということはなく、100点台半ばを維持することが出来ました。ここが弱いのが三原舞依選手。宮原知子選手と5.52の差がついています。ここが伸ばせると220点に手が届く、ということになります。

 

○シェルバコワ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4F   11.00   2.99 13.99 2.778
2 3F+3T   9.50   1.74 11.24 3.222
3 2A   3.30   1.13 4.43 3.444
4 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
5 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
6 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.889
7 3Lz+3Lo   11.88 x 2.11 13.99 3.556
8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.51 12.62 2.778
9 3Lz   6.49 x 1.94 8.43 3.333
10 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.444
11 FCCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
12 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.889
  TES   73.68   18.58 92.26  

シェルバコワ選手のフリーは全要素全ジャッジでGOEが+2以上という素晴らしい出来でした。

久しぶりの四回転成功。ルッツではなくフリップでの成功です。スピンステップオールレベル4 セカンドサードジャンプに2回転のない構成。ショートで失敗したルッツループも平均GOE3.556という驚異的な評価で成功させました。これ以上出すのはなかなか難しいと思われます。あとはもう四回転増やすしかありません。

 

○マイアフロミフ選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T+2T   10.80   2.44 13.24 2.556
2 4T   9.50   2.71 12.21 2.889
3 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.889
4 3Lo< 3.92   -1.51 2.41 -3.778
5 2A   3.30   1.08 4.38 3.333
6 StSq2   2.60   0.71 3.31 2.667
7 3Lz+3T   11.11 x 1.52 12.63 2.667
8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.667
9 3Lz   6.49 x 0.93 7.42 1.556
10 FCSp4   3.20   1.01 4.21 3.111
11 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.444
12 FCCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
  TES   72.03   13.74 85.77  

四回転二本を決めたフロミフ選手の構成。四回転一本のシェルバコワ選手よりも基礎点合計が低くなっています。ループが回転不足で引かれたというのはありますがそこの0.98を足してもまだシェルバコワ選手の基礎点に足りません。トーループとフリップの基礎点差、ステップがレベル2なこと、セカンドループを使えないのでセカンドにダブルトーループが入ること、といったあたりで四回転一本分の差を埋められて、その上でGOEとPCSで差を付けられた、という形になっています。四回転以外の要素やっぱり大事、というのを感じさせられます。

しかし、この構成持っていても代表になれる確率がかなり低い状態であるって、どんな世界なんでしょうね…。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yuma KAGIYAMA JPN 278.02 80.53 197.49
2 Mikhail KOLYADA RUS 273.55 92.30 181.25
3 Daniel GRASSL ITA 269.00 95.67 173.33
4 Deniss VASILJEVS LAT 248.44 85.09 163.35
5 Junhwan CHA KOR 247.74 95.56 152.18
6 Kazuki TOMONO JPN 245.11 83.91 161.20
7 Boyang JIN CHN 242.27 97.89 144.38
8 Petr GUMENNIK RUS 226.76 76.81 149.95
9 Dmitri ALIEV RUS 217.67 71.07 146.60
10 Yudong CHEN CHN 200.96 78.79 122.17
11 Gabriele FRANGIPANI ITA 167.60 55.09 112.51
  Paul FENTZ GER 57.17 57.17  

鍵山優真選手大逆転優勝。

大会前は、楽勝でしょ、と思ってましたが、ショート終わって、世の中そんなに甘くないのか、表彰台までは来るだろうけど、と思い、フリー終わって結局大逆転優勝。予想外予想外予想外の展開でした。

コリヤダ選手が二位。フリーで四回転三本降りました。ロシア勢の中ではやはり頭一つ抜けているんでしょうか。273.55は今シーズンのロシア勢トップのスコアです

グラスル選手が三位で初表彰台。フリーでルッツフリップループと3種類の四回転を決めました。四回転五種類を一つのプログラムで最初に決めるのはこの人なのではないか、と思っていたりするのですが、サルコウトーループ、飛ばないんでしょうか。

ショート1位で、これは復活してきたのか? と一瞬思ったボーヤンジン選手はフリーで崩れて7位。大丈夫なんでしょうか北京オリンピック

日本からもう一人、友野一希選手は6位でした。スピンミスなくちゃんとできれば4位までは行けたのですが・・。もったいなかったです。ジャンプも四回転三本という難しいところは抜けたのですが、後半のトリプルアクセルが壊滅。難しいところは出来ているので先の大会でのノーミスも期待できるのですが、せっかくだから今回揃えてほしかったなあ、という気もします。

 

○男子シングル 要素別スコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Yuma KAGIYAMA JPN 278.02 131.54 95.27 12.36 25.58 13.27
2 Mikhail KOLYADA RUS 273.55 131.23 100.82 2.52 26.12 13.86
3 Daniel GRASSL ITA 269.00 123.09 105.02 6.65 22.26 11.98
4 Deniss VASILJEVS LAT 248.44 123.77 84.60 3.31 24.79 13.97
5 Junhwan CHA KOR 247.74 125.68 85.11 -1.26 23.82 15.39
6 Kazuki TOMONO JPN 245.11 123.90 83.27 8.11 16.18 13.65
7 Boyang JIN CHN 242.27 119.81 97.00 -6.25 21.13 12.58
8 Petr GUMENNIK RUS 226.76 112.35 88.55 -5.70 22.12 11.44
9 Dmitri ALIEV RUS 217.67 114.19 79.04 -4.35 18.85 11.94
10 Yudong CHEN CHN 200.96 104.28 79.93 -12.17 22.76 11.16
11 Gabriele FRANGIPANI ITA 167.60 96.56 66.66 -12.92 15.18 6.12

要素別でみるとジャンプの基礎点はルッツフリップループと3種類の四回転を決めたグラスル選手がトップ。鍵山優真選手はショートで崩れましたしフリーも四回転は3本で今の男子の標準構成なので基礎点はそれほど高くなく4番目です。友野選手は8番目。コンビネーションが一つしか入らなかったのが痛すぎました。

一方、ジャンプのGOEで稼いだのは鍵山選手。フリーの出来の良さが見えます。グラスル選手が3番目でジャンプのトータルスコアはトップになります。友野選手が二番目。フリーの四回転三本非常に良かったのでこういう結果になっているわけで、本当に後半が残念でした。

スピントップはコリヤダ選手。スピンに定評ある選手ですし力通りでしょうか。鍵山選手が二番目でバシリエフス選手がそれに続きます。スピンがひどかったのが友野一希選手。フリーで一つ零点やっていてそれが大きいわけですが、それ以外でもレベルがしっかり取れていない。スピンのスコアだけでコリヤダ選手と9.96差があります。掛け値なしに4回転一本分の差をスピンで付けられました。

ステップ系要素はチャジュンファン選手がトップ。他は14点台もおらず13.97のバシリエフス選手が続きます。鍵山優真選手はショートもフリーもレベル3だったことでステップ系要素のスコアは今一つ伸びませんでした。

 

○鍵山優真選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4S   9.70   0.83 10.53 0.889
2 3Lz   5.90   1.94 7.84 3.222
3 4T+3T   13.70   3.26 16.96 3.444
4 3A+1Eu+3S   12.80   2.51 15.31 3.222
5 CSSp4   3.00   0.77 3.77 2.556
6 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.667
7 4T   10.45 x 1.09 11.54 1.222
8 3F+3Lo   11.22 x 1.97 13.19 3.778
9 3A   8.80 x 2.63 11.43 3.333
10 ChSq1   3.00   1.64 4.64 3.333
11 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
12 FCCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.556
  TES   88.87   19.84 108.71  

大逆転のフリーの構成がこれ。二つ目に四回転ループを入れる構成から一つ落としてトリプルルッツにしてあります。基礎点で4.60の減。四回転三本でも技術点108.71まで出せた、というのは大きいと思います。今シーズンこれより上の技術点はスケートアメリカでヴィンセントジョウ選手が110.19を出していますが、四回転5本構成のものです。

全要素プラス評価。ステップレベル3はちょっと惜しいです。四回転も二つは本人比ではクリーンではなかったでしょうか。滑走順が終盤ならおそらくPCSがもう少し伸びて200点に乗ってますがそれはこの先どこかの本番にお預け、といったところでしょうか。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T+3T   13.70   2.71 16.41 2.889
2 4S   9.70   2.49 12.19 2.556
3 4T   9.50   2.71 12.21 2.778
4 3Lo   4.90   1.40 6.30 3.000
5 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
6 FSSp   0.00   0.00 0.00  
7 3A   8.80 x -2.74 6.06 -3.444
8 1A   1.21 x 0.08 1.29 0.667
9 3A+REP   6.16 x -0.69 5.47 -0.778
10 FCCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
11 CCoSp4V   2.63   0.57 3.20 2.111
12 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.667
  TES   66.40   10.50 76.90  

前半完璧、後半ボロボロ、といった友野選手の今回のフリーでした。

一番難しい四回転3本を完璧とも言ってよい出来で通過したのに、スピンで零点だしてそのあとのアクセルは3回チャレンジして一つもうまく決まらず・・・。せめて最後のトリプルアクセルに1回転でもいいからセカンドジャンプ付けてれば4位にまで行けたのですが・・。

四回転の確率はだいぶ上がってきているのですが後半がしっかりそろわない。コンビネーションをどうつけようと考えているのか今一つはっきりしない部分もあるのですが、後半は3A+1Eu+3S 3A 3Lz+2T がやりたい構成でしょうか。この構成だとするとジャンプの基礎点が71.79 零点になったスピンがレベル2を取れるとして基礎点合計が86.52にまでなります。ノーミスなら単純に20点くらい基礎点が上げられる。フリー180点のトータル260点台までは見えている。でも後半までそろわない、というのが今の状態なようです。

 

次週はNHK杯です。羽生選手紀平選手欠場・・・。代役でNHK杯の常連山本草太選手が入りました。女子はなかなか決まりませんでしたが河辺愛菜選手が入ります。男子は他に日本からは三浦佳生選手と宇野昌磨選手、海外勢ではヴィンセントジョウ選手やチャジュンファン選手などが出場します。

女子はトゥルソワ選手出場予定でしたが取り消し線がつきました・・・。大丈夫なんでしょうか?と心配な反面、ロシア選手権が本番なんだから休んでおいた方がいいって、とも思います。

日本から坂本花織選手に松生理乃選手、海外勢ではロシアのウサチョワ選手と韓国のユヨン選手にアリサリュウ選手などがいます。トゥルソワ選手の代替は入るかどうか? 日露の代表選手が欠場で少し寂しくなりますが、結果的に大混戦の優勝争いとなりそうです。これ、坂本花織選手の逆転ファイナルチャンスが来てるんでしょうか? 優勝すれば高確率でファイナル進出です。