18-19男子シングルショートプログラム

前回はトータルスコアについてみましたので、続いてはショートプログラムになります

 

対象とする大会はトータルスコアの時と同じです。

ショートプログラムのスコアはTSSの欄です。TESは技術点、PCSは演技構成点です。Deductionは減点。

 

  Event Name Nation TSS TES PCS Deduction
1 Rostelecom Cup Yuzuru HANYU JPN 110.53 62.44 48.09 0
2 World Championships Nathan CHEN USA 107.40 60.98 46.42 0
3 GP Helsinki Yuzuru HANYU JPN 106.69 59.09 47.60 0
4 Lombardia Trophy Shoma UNO JPN 104.15 57.65 46.50 0
5 World Team Trophy Nathan CHEN USA 101.95 54.69 47.26 0
6 World Team Trophy Vincent ZHOU USA 100.51 57.30 43.21 0
7 Europe Championships Mikhail KOLYADA RUS 100.49 54.05 46.44 0
8 Four Continents Vincent ZHOU USA 100.18 57.93 42.25 0
9 Autumn Classic Yuzuru HANYU JPN 97.74 52.34 45.40 0
10 Four Continents  Junhwan CHA KOR 97.33 54.52 42.81 0
11 GOLDEN SPIN Mikhail KOLYADA RUS 97.04 52.09 44.95 0
12 Ondrej Nepela Trophy Mikhail KOLYADA RUS 96.82 52.52 44.30 0
13 World Championships Jason BROWN USA 96.81 50.66 46.15 0
14 France de Patinage Jason BROWN USA 96.41 50.69 45.72 0
15 GOLDEN SPIN Jason BROWN USA 95.50 49.75 45.75 0
16 Skate Canada Keegan MESSING CAN 95.05 52.81 42.24 0
17 World Championships Yuzuru HANYU JPN 94.87 48.16 46.71 0
18 World Championships Vincent ZHOU USA 94.17 52.49 41.68 0
19 World Championships Matteo RIZZO ITA 93.37 52.41 40.96 0
20 GP Helsinki Michal BREZINA CZE 93.31 51.14 42.17 0
21 Grand Prix Final Nathan CHEN USA 92.99 48.78 44.21 0
22 World Team Trophy Shoma UNO JPN 92.78 47.67 45.11 0
23 NHK Trophy Shoma UNO JPN 92.49 48.91 44.58 1
24 Four Continents  Boyang JIN CHN 92.17 49.85 42.32 0
25 Europe Championships Alexander SAMARIN RUS 91.97 49.95 42.02 0
26 Europe Championships Javier FERNANDEZ ESP 91.84 45.20 46.64 0
27 Four Continents Shoma UNO JPN 91.76 46.94 44.82 0
28 UNIVERSIADE Maxim KOVTUN RUS 91.74 49.14 42.60 0
29 Grand Prix Final Shoma UNO JPN 91.67 46.88 44.79 0
30 World Championships Shoma UNO JPN 91.40 47.51 44.89 1
31 NHK Trophy Sergei VORONOV RUS 91.37 50.10 41.27 0
32 France de Patinage Alexander SAMARIN RUS 90.86 50.25 40.61 0
33 UNIVERSIADE Matteo RIZZO ITA 90.78 50.18 40.60 0
34 Nebelhorn Trophy Keegan MESSING CAN 90.63 49.03 41.60 0
35 Skate America Nathan CHEN USA 90.58 45.94 44.64 0
36 Autumn Classic Junhwan CHA KOR 90.56 52.21 38.35 0

90点以上のスコアを並べると15人で36例ありました。

減点有りで90点以上を出しているのはNHK杯の宇野選手のみです。上位選手は転倒しないか、転倒すると90点までは届かないか、という二パターンが主なようです。

また、ジュニアはいません。ジュニアの最高点は世界ジュニアでアメリカのプルキネン選手が出した82.41 ショートは4回転無しルールのジュニアで高得点を出すのは至難の業ですし、シニアと点差があるのは仕方ないのでしょう。

 

Event Name Nation TSS TES PCS
Rostelecom Cup Yuzuru HANYU JPN 110.53 62.44 48.09
World Championships Nathan CHEN USA 107.40 60.98 46.42

105点以上のスコアがあるのは二人で3回

110点越えは羽生選手のみでした。世界選手権では敗れましたが、ショートプログラムのベストスコアは羽生選手のロステレコム杯のものが残っています。技術点62.44 演技構成点48.09 いずれも全選手中ベストスコアです。この時は、全7要素の平均GOEが3.921 7つの要素に9人のジャッジが述べ63回GOEを付けるわけですが、+1以下がついたのは一つもなく、+2も一つだけ。残りの62件が+3以上という、ほとんど考えられないスコアになっていました。その結果が、ジャンプ構成が4S,3A,4T-3Tという、4回転の中では基礎点が低めで基礎点46.37にもかかわらず、全選手中トップの技術点になって要因となっています。羽生選手はグランプリヘルシンキでも106.69を出していて、ケガをする前のグランプリシリーズ2戦では2戦とも105点を超えるスコアを出していて、気持ちと体が整っているときはやっぱり強いなあ、と、世界選手権の負けを見た後からでも思います。

羽生選手は世界選手権の94.87が今シーズンのワーストスコアでした。オリンピック二連覇の選手を掴まえて、大きな大会に合わせる力がない、なんてことは言えるわけもありませんので、ケガからの調整が今一つだったのかなあ、と思われます。

ネイサンチェン選手は逆に世界選手権にしっかり合わせて107.40のスコアを出しました。世界選手権のジャンプ構成は3A,4Lz,4T-3Tで基礎点48.17 基礎点で1.80羽生選手より上でしたが、出来栄え差で羽生選手の方が上になっています。ネイサンチェン選手はグランプリシリーズはファイナル含めて3戦とも回転不足あるいは転倒がありしっかりした演技が出来ていません。3戦で一番良くてもファイナルの92.99でした。こういうのを見ていると、シーズン前半は調整段階であり、年明けに向けて調子を上げていく、という考え方ってありだよなあ、とあらためて思わされて李もします。

 

Event Name Nation TSS TES PCS
Lombardia Trophy Shoma UNO JPN 104.15 57.65 46.50
World Team Trophy Vincent ZHOU USA 100.51 57.30 43.21
Europe Championships Mikhail KOLYADA RUS 100.49 54.05 46.44

ショートプログラムで100点に乗せたのはほかに3人います。

宇野選手はシーズン初戦のロンバルディア杯で104.15 ただ、このスコアもベストな滑りなわけでもなく、ジャンプ構成が4F,4T-2T,3A コンビネーションの二つ目が2回転になりました。またステップのレベルが3 基礎点は43.60止まりです。基礎点が一番高かったのはスケートアメリカの45.60ですが、この時もステップレベル3スピンも一つレベル3、トリプルアクセル転倒と、不十分な出来でした。ロンバルディア杯以外の6戦は88.87から92.78の間で、悪い意味で安定していて、今シーズンは一度も満足いくショートプログラムを滑ることができなかったように見えます。

ヴィンセントジョー選手は100点台を2回、国別対抗戦と四大陸で出しました。年明け前、18年中のショートプログラムの成績はひどくて、4戦して最高が77.46 それが年明けてからは100点台二つと一番悪くて世界選手権の94.17です。四大陸選手権が一番ベストな構成で、4Lz-3T,4S,3Aで基礎点47.80 ただ、PCSのベストは国別対抗戦の43.21 個人戦では四大陸の42.25が最高と、上位選手が45点を軽く上回っていくのと比べてまだ差がありました。

コリヤダ選手もヨーロッパ選手権で100.49の100点越え。構成が4T-3T,3Lz,3Aと、四回転一本で基礎点42.00。四回転一本でも大きな試合で100点越えができることを示しました(ネイサンチェン選手も国別対抗戦で四回転1本で100点超えています)。大きな大会で今シーズン結果が出せなかったコリヤダ選手ですが、ヨーロッパ選手権ショートプログラムはすばらしかった。ただ、90点を超えたのがこれ以外ではチャレンジャーシリーズの2試合にとどまりました。

 

Event Name Nation TSS TES PCS
Four Continents  Junhwan CHA KOR 97.33 54.52 42.81
World Championships Jason BROWN USA 96.81 50.66 46.15
Skate Canada Keegan MESSING CAN 95.05 52.81 42.24

90点台後半のベストスコアを出したのは3人。

チャジュンファン選手は四大陸選手権で97.33のベストスコアを出しました。4S,3Lz-3Lo,3Aのジャンプ構成で基礎点42.90 この四大陸選手権ショートプログラムは全要素全ジャッジのGOE評価が+2以上、という素晴らしい滑り。ただ、PCSは42.81で上位選手と比べると見劣りします。PCSが改善されれば、ジャンプ構成はこのままでも100点に乗る水準まで来ています。

ジェイソンブラウン選手は90点台後半のスコアを今シーズンは3回だしました。ジャンプ構成は3F,3A,3Lz-3T 四回転無しで基礎点38.01 グランプリフランス杯では全7要素での全ジャッジの平均GOE3.905 全要素全ジャッジが+2以上を付け、+2も全63の判定のうち2つだけ、という高評価でした。完成度で勝負、というスタイルはここに極まれりという感じで、基礎点が38.01のところから、技術点50点越えを2試合ではたしています。演技構成点は45点前後で並んでいてベストは世界選手権の46.15 もう1,2点高められないこともないかと思いますが、そろそろ限界近いところに来ています。4回転無しでショートプログラム100点越え、というのはできるとしたらこの選手しかいないと思われますが、ここからさらに点を伸ばすのはかなり厳しいなあ、という印象です

キーガンメッシング選手は地元開催のスケートカナダで95.05のベストスコア。4T-3T,3A,3Lzという4回転1本構成で基礎点40.79  スピンステップでレベル4がそろっていないので、ジャンプこのままでももう少し基礎点を高めることは可能です。今シーズン躍進した選手ですが、不安定さは結構あって、ショート90点越えは2試合ある一方、70点台も3試合ありました。演技構成点は41~42点ほど。もう少し伸ばせる部分はあります。

 

Event Name Nation TSS TES PCS
World Championships Matteo RIZZO ITA 93.37 52.41 40.96
GP Helsinki Michal BREZINA CZE 93.31 51.14 42.17
Four Continents  Boyang JIN CHN 92.17 49.85 42.32
Europe Championships Alexander SAMARIN RUS 91.97 49.95 42.02
Europe Championships Javier FERNANDEZ ESP 91.84 45.20 46.64
UNIVERSIADE Maxim KOVTUN RUS 91.74 49.14 42.60
NHK Trophy Sergei VORONOV RUS 91.37 50.10 41.27

90点台前半のベストスコアは7人いました。この90~95点という範囲のスコアを宇野選手が今シーズン5試合で出しています。世界選手権前3強といわれた一角の宇野選手の今シーズンの標準的なスコアがこの辺りでしたので、この辺の点を出していけば、大きな大会でも、ショートプログラムを上位で折り返せる、というスコアではあります。実際、世界選手権の最終グループには91.40の宇野選手までが入りました。

この辺の選手も4回転無し、という構成はおらず、1本構成でうまくいくか2本構成で今一つ、というくらいのスコアがここに入ってきています。演技構成点は40点台前半が並んでいて、例外はフェルナンデス選手の46.64 ヨーロッパ選手権のスコアは4Sが回転不足、コンビネーション二つ目が2回転、3Aは失敗ジャンプという中でのこのスコア。滑り込めばまだまだ上位で、100点台の選手の中に入って世界選手権も表彰台争いというか優勝争いもできる選手なのだと思いますので、引退は残念でした。

 

90点以上のスコアを出したのは全部で15選手。

ロシア4人、米国3人、日本2人、韓国、カナダ、イタリア、チェコ、中国、スペインが各1人づつ。

回数で見ると米国10回、日本10回、ロシア7回、韓国2回、カナダ2回、イタリア2回、チェコ、中国、スペインが各1回。

 

日米露の強さが目立ちますが、ロシアは一人当たりの回数は少なめでした。

85点以上にまで広げると、国籍としては、ジョージア、フランス、イスラエルといったところが加わってきます。

 

女子と比べると男子は日露だけで寡占、というようなことはなく、ある程度の幅はありますが、それでも日米決戦感がいくらかありますかね。

ショートプログラムで100点台という点数が割と出てくるので、90点を切ってしまうとそこで試合終了、95点を切ると逆転はかなり苦しくなる、というくらいの感じでしょうか。技術点50点の演技構成点45点、というのが95点を出す一つの目安。技術点54点に演技構成点46点で100点到達。あるいは四回転二本完璧で技術点58点に演技構成点42点の合計100点、というのもあるよ、というのはヴィンセントジョー選手が見せてくれたりもしました。

技術点をさらに伸ばすには、4T-4Tというコンビネーションが入れば、四回転3本構成ということが可能になり、単独4Lzと1.1倍3Aと組み合わせれば、基礎点52.90という水準まで高められます。3A-4Tというコンビネーションが見られ始めましたが、4T-4Tというコンビネーションが見られる時代は来るでしょうか(現行ルールではショートプログラムでは入れられませんけど)。