日本中央競馬会2018年12月決算

以前に、スケート連盟の決算や財務状況を紹介し、ウインタースポーツの中では非常に裕福な団体である、というお話をしました。

その後、スケート連盟よりもう一桁上の資産を、日本相撲協会は持っていて、これもこれでかなり裕福な団体である、というお話をしました。

 

今回は、そんな相撲協会よりももう一桁、どころか二桁上の資産を持つ団体のお話です。

 

中央競馬会の決算は12月

昨年度の決算は3月の終わりくらいにはもう出てましたかね

 

まずは貸借対照表を見てみます

 

Ⅰ.流動資産 495,844,088,640 Ⅰ流動負債 62,512,202,297
1 現金・預金 99,538,993,015 1 未払金 10,685,444,488
2 有価証券 383,258,597,180 2 国庫納付金未払金 30,191,437,710
3 貯蔵品 755,219,606 3 払戻金等未払金 13,697,411,570
4 育成馬 618,291,872 4 未払税金 1,486,382,829
5 未収金 10,510,635,434 5 未払費用 2,426,883,217
6 前払費用 776,648,796 6 前受金 241,384,604
7 その他の流動資産 385,702,737 7 預り金 2,925,328,959
    8 前受収益 25,754,316
Ⅱ 固定資産 718,401,681,642 9 賞与引当金 454,174,604
(1)有形固定資産 504,166,914,668 10 事業構造改善引当金 378,000,000
1 建物 253,552,148,313    
2 構築物 43,909,960,883 固定負債 32,952,036,596
3 機械・装置 6,021,113,503 1 退職給付引当金 32,343,394,473
4 車両・運搬具 472,280,215 2 役員退職慰労引当金 57,623,793
5 工具・器具・備品 24,614,324,380 3 長期預り金 12,127,966
6 馬ひつ 955,250,773 4 事業構造改善引当金 121,790,000
7 馬場施設 21,405,016,516 5 特別修繕引当金 417,100,364
8 土地 137,657,720,002    
9 建設仮勘定 15,579,100,083 負債合計 95,464,238,893
(2)無形固定資産 27,280,640,562    
1 借地権 10,599,507,361 Ⅰ資本 1,116,329,761,535
2 電話加入権 170,958,000 (1)資本金 4,924,129,000
3 ソフトウェア 13,064,893,547 1 政府出資金 4,924,129,000
4 ソフトウェア仮勘定 3,445,281,654 (2)資本剰余金 6,075,658,643
(3)投資その他の資産 186,954,126,412 1資本剰余金 6,075,658,643
1 長期性預金 45,500,000,000 (3)利益剰余金 1,105,329,973,892
2 投資有価証券 129,125,971,025 1 損失てん補準備金 200,000,000
3 関係会社株式 502,600,001 2 特別積立金 1,049,661,232,649
4 建設協力金 1,698,000,000 3 繰越利益剰余金 55,468,741,243
5 敷金 4,859,038,709    
6 その他の資産 6,141,011,444 Ⅱ 評価・換算差額等 2,451,769,854
7 貸倒引当金 -872,494,767 1 その他有価証券評価差額金 2,451,769,854
       
    純資産合計 1,118,781,531,389
資産合計 1,214,245,770,282 負債・純資産合計 1,214,245,770,282

 

なんだかすごい桁の数字が並んでいます

資産合計は1.21兆円です

そう、中央競馬会の資産レベルは兆の桁になります

スケート連盟は数十億円レベル、相撲協会で数百億円レベルでしたが、中央競馬会は二桁も上の兆円レベルになります

それも、負債が極端に少なく資産が十分にある、という形でのこの規模です。夫妻は合計しても95億円ほど。それに対して資産が1.21兆円ですから、どれだけ潤沢に資産を抱えているのかと・・・

おおよそ日本人一人当たり1万円分にあたります

資本金は49億円ほどなのですが、利益剰余金が積みあがって積みあがって1.1兆円あるんですね。これがとにかく大きいです。すごいなあ。

流動負債が62億円台しかないのに、流動資産として有価証券を3,800億円余りももっている意味はないとおもうのですがどういう理由なんでしょうか。運用、なんていう危険な賭け事みたいなことに大事なお金を費やすことはできない、って考えでもあるんですかね、中央競馬会としては。投資その他の資産の項目に投資有価証券というのがありますので、法的に、短期流動資産としてしか有価証券を持つことはできないってことはなさそうなんですけど。

 

このため込んだ資産をどうするつもりなんでしょう? 株式会社なら、①株主に配当する、②設備投資などをして売り上げを増やすために力を費やす、➂従業員に還元する。あたりの選択になるのですが、特殊法人である中央競馬会に①はありません。②もどうなんでしょう? 事業拡大を目指す正当制がどの程度あるか。➂はまあ、あるにはありますが、1兆円使い切らないでしょう。2018年末時点で従業員数は1,763人。1兆円を全額従業員に還元するとしたら、一人当たり5億円を超えるというとてつもないことが起こります。ないですね。

そう考えると、①としての株主はいませんが、国の全額出資で作られていますので、出資者へ還元する、すなわち、国庫へ帰す、という形の使い方が妥当なのではないか、というように見えます。まあ、②を目指す手もあります。中央競馬会は売り上げ比例で国庫に納付する金額が決まっていますので、売り上げ増=国庫への納付金増、ということになるので、その形での国庫への還元、という手はあるのは確かです。

 

 

次は損益計算書を見てみます

 

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中央競馬会の収益の柱は、当然ながら勝ち馬投票券収入、すなわち馬券売っていくら、というところになります。これが収益の99%以上を占めるのですが、毎年2兆円を超える勝ち馬投票券収入があります。2018年の勝ち馬投票券収入は2兆8,191億円。富士フイルムやシャープの売り上げが2兆4,000億円、三菱自動車が2兆2,000億円ほど、というそういった大企業群よりもJRAの収益というのは大きなものなわけです。日本人一人当たり、毎年2万円以上お買い上げ、という計算になります。競馬に縁のない人、というのはかなりの数いるわけですから、馬券購入経験者に限ると一人当たりいくらになるのでしょうか。その年の馬券購入者が全人口の2割としても、一人当たり10万円を超えるわけで、

 

 

この勝ち馬投票券は、当たった人には払い戻しがあるわけですが、その金額はおおよそ75%となっています。この辺は割と有名。なので、収益の75%はほぼ自動的に払戻金に回ります。また、意外と知られていなかったりすることもあるようですが、10%は国庫納付金として固定です。100円買ったら10円は国庫に入る、ということです。税金が10%つくみたいなものね、と一瞬思うのですが、実際には10%ではないです。90円に税金10円が乗った100円の勝ち馬投票券を買う、という理解になるので、11.1%の税金が乗っているようなもの、という意味合いになります。消費税より高いわけです。これ、そのうち、消費税が上がっていって12%以上になっていったらどうするんですかね。

 

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そうやって勝ち馬投票券の収益に連動して国庫納付金の額も決まります。年々、勝ち馬投票券の収益が増えているわけですから国庫納付金も増えていて、2018年には2,800億円にのぼりました。結構な額が国に入っています。これが、国としての競馬の存在意義なわけです、実際的な。

 

 

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次に事業外収益を見てみます

利息収入だけで20億円前後が毎年入ってきます。全体の収益が2兆円台なので全然目立たない水準になってしまいますが、これだけでも結構な金額ですね。貸借対照表には、流動資産としての有価証券が3,833億円、固定資産扱いの投資有価証券が1,291億円、長期性預金が455億円ありますので、そのあたりからの利息が20億円前後ということになります。利率は結構低めな運用でしょうか。

 

 

 

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損益を見てみると、きちんと黒字が続いています。13年から17年は増益を続けていたのですが、18年は減益となりました。それでも500億円は超える水準です。まあ、売り上げに相当するものが2兆円台の後半までありますので、営業利益率は2%程度であり、収益性は高いとは言えないのですが、毎年これが余剰金として積みあがっていくと考えると、やはり大きな額ではあります

また、普通は当期純利益の前に法人税が入ってくるのですが、特殊法人である中央競馬会はそういった形になっていません。最終的な当期純利益を確定させた後、その2分の1の額が国庫に納められる、という形で決まっています。なので、実際に余剰金として積みあがるのは、当期純利益の額、2018年なら555億円の半分、ということになります。

損益計算書にはっきり乗っている国庫納付金と合わせると、2018年度に中央競馬会から国庫に納められた金額は3,000億円ほどになります。

 

営利目的ではなく、株主のチェックもなく、オーナーのチェックもない特殊法人で、運営規模が3兆円近い、というのはとてつもないことです。

そういう団体だと、社長、はいませんが、理事長など首脳陣の報酬はお手盛りで巨額にしてしまう、という心配がされますが、実際には、そこは情報公開されているのでそう簡単にはできません。

 

 

本俸(月額)

理事長

1,226,000円

副理事長

1,054,000円

常務理事

950,000円

理事

899,000円

常務監事

824,000円

 

この本俸に加えて各種手当がつくにしても、一般サラリーマンの普通の人たちと比べれば大きな金額ではありますが、3兆円企業の経営陣と比べたら大した額ではありません。

 

ただ、問題として、トップは長らく天下りが続いていた、というのがありました。中央競馬会の理事長には、農林水産省から天下ってくる、という歴史がありましたので、報酬はそれほど巨額でなくても問題ない、というか巨額にして目立つよりはほどほどで、というところもあったでしょう。ただ、その天下りトップの歴史は2000年代に終わり、最近は生え抜きトップになってきています。まあ、副理事以下には何人か農林水産省天下り組が残ってはいますけどね

 

 

というわけで、莫大な額の売り上げがあり、税金という形とは少し異なりますが、国庫への納付金も多額にあるのが日本中央競馬会です。そういった形の貢献の元になるのが勝ち馬投票券、ということであり、いわゆる「賭け事」の形になっているのが信条的にはすっきりしない部分はあるのですが、それでも、多額の借金のある国ですので、その財政を少しでも支えてもらえれるのはありがたいと思います。