前回女子シングルの感想を記しました。
というわけで今回は男子シングルになります。
優勝、宇野昌磨選手。
勝っちゃうんだ。というのはさすがに驚きました。
決して、すごくいい出来だったわけではないんですけどね。今シーズンは紆余曲折あって、まあ通過点の全日本は2位には入って世界選手権の出場権はちゃんととって、復活は年明けかな、くらいに思っていたのですけれど。小説ですか? くらいな今シーズン前半の展開でした。
ショートの衣装は、私は前の方が好きです。このプログラムは宇野選手の代表作になるような気がしていたので、ちゃんとこうやってノーミス演技が見られて、記録にも残ってよかったです。コンビネーションが4-3になればなおよかったですけど。全要素全ジャッジプラス評価。それも+2以上の評価。コンビネーションが4-3になれば110点が見えてきましたでしょうか。
ただ一人のショートフリーでステップレベル4を並べて、ショートのステップGOEは+4.000 ショートフリースピンもすべてレベル4 コーチって、必要なんだ
見ている方がそう思わされる今シーズン前半でした。
ランビエール先生ありがとうございます。
羽生選手は久しぶりに対日本人選手敗北。というか、現役選手で羽生選手に勝ったことあるのって、ネイサンチェン選手しかもうほとんどいなかったりしました。カッコつきで高橋大輔選手ってのもありますけど。
中一週挟んでの三連戦、というスケジュールが割と批判されていますけど、実際のところ、日本のトップ選手は結構それをこなしてきてるんですよねえ。NHK杯~グランプリファイナル~全日本選手権、というのはそのスケジュールになることが多いです。たまにNHK杯がグランプリ4戦目とかになるとこのスケジュールから外れるんですけど。実際、宮原知子選手は、そのスケジュールが3年続きましたけど、全日本は勝ち続けました(2~4連覇目)。羽生選手の場合は、年齢的なものなど他の要因もあるにはあるんでしょうけれど、それよりも、単に、慣れの問題が結構あったのではないかということを思いました。ここ数年、それほど試合数をこなしてないんですよね。そこが大きかったのではないかと思います。
ループ降りて、サルコウしっかり決めた時点で、ああさすがに勝つんだ、と思ったのですが、まさかのルッツ3回転を失敗するという、その辺から、あれ? あれ? あれれ? れれ? という感じで、羽生選手を見ていて、こんなにうまくいかないことってあるんだ、というのを見たのは何年ぶりでしょう。
今回の構成はオーソドックスなものだったでしょうか。グランプリファイナルのフリー、決められなかったのですが、トリプルアクセル-トリプルアクセルというシークエンスが最後に組まれていたので、一度見たいんですよね、試合でしっかり決まるそれ。構成上げないと、そのシークエンスは出現しないので、構成上げた上で最後までしっかり滑る、というかなり厳しいことが要求されてしまうのですが、見たいなあ、試合で。
あれ、四大陸出るの? と思いましたが、主要大会で四大陸だけ取ってないんでしたっけね。
鍵山選手の表彰台は、結構多くの人にとって予想された範疇にあったんじゃないかと思いました。プレビューの時に、四大陸はミニマムポイント取りに行く時間がないから無いですね、なんて書きましたが、それは外れで四大陸代表に。昨シーズン、チャレンジカップでミニマムスコアを確保していたようで、そこが抜け落ちてました。すみません。
鍵山選手のスケジュールも結構今シーズンきつい感じはあります。
ジュニアグランプリ1、中3週でジュニアグランプリ2、中1週で関東選手権、中2週東日本選手権、中2週全日本ジュニア、中2週ジュニアグランプリファイナル、中1週全日本選手権、中2週でユースオリンピック、中3週で四大陸選手権、中3週世界ジュニア
予定では10試合滑ることになります。ジュニアグランプリファイナル以降は、ジュニアルールとシニアルールが交互に入る。間1か月空く試合はなく、長くて中3週。関東選手権と東日本選手権は、鍵山選手にとっては調整レベルの試合かと思いますが、全日本ジュニア以降は、どの試合を見ても勝負の試合です。
ユースオリンピックがなければ、ここからはそれほどハードでもないのですが、これが入ることで常に臨戦態勢、みたいな時期が長く続いての世界ジュニアになっていきます。いい経験と言えばいい経験なのでしょうけれど、結構きつそうに見えます
今回は、高難度プログラムで入りましたが、スピンは六つすべてレベル4 ジャンプに意識が行きすぎず確実に点が取れていたのは素晴らしかったと思います。バランス型なので、四回転がもう一本増えれば、もうその時点で世界のトップと戦えそうな印象でした。
田中選手は4年ぶりに表彰台から落ちた形でした。プレビューではちゃんと述べませんでしたが、世界選手権の代表選考という点では、実は圧倒的に有利な位置にいました。代表選考のテーブルに上るためには、全日本で表彰台に上がればいいのですが、上がれなかった選手でも選ばれる条件はいくつかあり、それを満たしていたのは、羽生選手、宇野選手の他では、田中刑事選手と、ジュニアの佐藤駿選手だけでした。佐藤選手はジュニアなので、実質的には世界選手権の代表に選ばれる対象ではありません。そういった状況の中で、佐藤選手あるいは鍵山選手、といった強いジュニアがいますので、ほかのシニアの上位選手は表彰台に上らないと三枠目に入れないのに、田中選手は、自分が表彰台に乗れなくても、ジュニアの選手、あるいは出る気のない高橋大輔選手が表彰台に乗ってくれれば三枠目が確定する、といった状況での全日本でした。そして結果、その通りになる。まあ、四位に入って、ほかのシニア選手より上でしたから世界選手権の代表になって何の違和感もないのですが、これでフリーミスって10位くらいで代表になっちゃったらどうしよう、と思ってフリーは見てました。四回転二本降りた時点で、まあ、これで大丈夫かな、とは思いましたけれど。
ただ、今回の全日本の時点で、鍵山選手とフリーのPCSが3.6しか差がありませんでした。田中選手が著しい失敗をしたわけでもないのにその差ですので、鍵山選手がシニアに上がってPCSも高まってきた時点でそこは逆転してしまいそうに見えます。一方で技術点の優位性は今の時点で見られない。この状況だとちょっとこの先苦しいのかなあ、と思わざるを得ない部分はあります。
佐藤駿選手は5位 四回転を早い時点から飛べるようになってはいたのですが、ベストスコアは210点台に留まっていて、現時点では鍵山選手の方が一枚か二枚上かな、と思っていたのですが、ジュニアグランプリファイナルで四回転3本決めて優勝。今回はショートも入れて四回転3本でしたが、注目の四回転ルッツは残念転倒でした。ただ、やっぱり滑りの点では鍵山選手の方が上だな、と今回見ていて感じたのも事実です。PCSでだいぶ差が出る、というだけでなく、技術点の方でもスピンでレベル4が揃う鍵山選手に対し、レベル3が散見する佐藤選手。ジャンプのGOEで+3を超える数字をいくつも出してくる鍵山選手に対して、基本的に+2台までにとどまる佐藤選手。この辺の細かい差が鍵山選手の方が勝率高くなる要因な感じがします。多少ミスが出た時のベースが鍵山選手の方が高いんですね。
ただ、爆発力があるのは佐藤選手の魅力。ルッツ、降りたと思ったんですけどね。ロミオとジュリエットの衣装、結構好きです。テーマ的にはもう少し勇ましい系統のものを選ぶとさらに似合うのではないかと思うのですけれど。来シーズンどうだろう
スケジュール的にはユースオリンピックか四大陸か、どちらかは鍵山選手ではなくて佐藤駿選手に回した方がいいんですけど、ユースオリンピックは全日本ジュニア終わった時点で代表決めるしかなかった(全日本では直前過ぎる)。四大陸はミニマムスコアもってない佐藤駿選手には渡せない(ミニマムスコアを取りに行く時間的余裕はぎりぎりあるにはあるのだけど)。というわけでどちらもなし。まあ、しょうがないですかね。
世界ジュニアは鍵山選手と佐藤選手。枠三つとか、何の心配もなく取って帰ってきそうなので、二人表彰台というのを期待したいと思います。シーズンベストがだいぶ高いので、世界ジュニア表彰台で来シーズングランプリは確実に2枠になりそうですし、先々楽しみです。
友野選手は6位。ショート終わった時点で田中選手との8点弱の差はまだ何とかなるんじゃないかと思っていたんですが、表彰台必須だったので佐藤選手との10点近い差を逆転しないといけない。これは苦しいなあ、とは思ったのですが、演技終わった時点で、もしかしたらまだチャンス残るかも、と思ってました。ところが、佐藤選手の前に鍵山選手にあっさり上をいかれてしまい世界選手権が消え、まさか四大陸まで消えるとは・・・
宇野選手羽生選手、両方出るとは思わなかったんですよね四大陸。何なら両方出なくてもいいんじゃくらいな感じなんですけど。四大陸の使い方が最近男女とももったいない感があるのはどうにかならないものかなあ。
ステップ系要素の評価は高いんですけどねえ。コレオシークエンスは羽生高橋大輔宇野三選手に次ぐ四番目の評価。一方でスピンがいまいちなんですよねえ。レベル2とか2Vさらにはレベル1なんてのもありまして。ステップ見てるのは飽きないのですが・・・。
グランプリデビューNHK杯チゴイネルワイゼンから、世界選手権5位まで一気に駆け抜けた、あの勢いをもう一度、期待しております。四回転あと一本、4本決まれば260点くらいまではいくんだよなあ。
フリーで何とか7位まで上がった山本草太選手。四回転、なんですよね、結局問題は。今回クリーンに決まったのは四分の一。ショートフリー1本づつにしてクリーンに滑るなんてすれば250点くらいはすぐに出るんでしょうけどそれだとノーミスでも勝負できない、となるとやっぱり四本五本と入れる構成にチャレンジしないといけない。入れると確率下がって四大陸にも届かない。どうしたらいいんでしょう。シーズンベストもまだ23位に残ってますが、この後抜かれて25位以下に落ちる可能性は極めて高い。ランキングはまだ30位台。この後B級大会に出ても今シーズンはランキングポイントはもう増やせないのでランキングは上がらない。こうなると来シーズンもグランプリ1枠の可能性が高い。グランプリ1枠だとランキングが上がらない。世界ランキング制度の構造的な欠陥もあるような気もしますけど、どうにかならないものかなあ
滑りの美しい選手、という印象はかわらないのですけど、点にはあまり反映されないんですよね。PCSはあまり伸びない。表現、というより、滑りが美しい、という世界を作っている印象。ただ、ジャンプで失敗するとその印象も薄くなってしまう。表現、の場合はジャンプの失敗の印象を後から上書きできるんですけど、滑りの美しさは印象に対する訴えとしては柔らかいだけに弱い。そして、滑りが生きるステップシークエンスも、レベルが取れない。レベル4は取れたことないんじゃないでしょうか。
何かが惜しいんですよね。少なくともグランプリで2戦は見たいんだけどなあ。ショートのエデンの東は山本選手の滑りに合ったプログラムだと思います。オリンピックシーズンにフリーの信長協奏曲と合わせてもう一回やってくれないかなあ。
ショート5位でチャンスのある位置にいた島田高志郎選手は結局トータルでは10位でした。鍵山選手は第三グループの最後。最終グループの選手は6分間練習の準備でリンクサイドに集まっているので鍵山選手のスコアは全員聞いてます。鍵山選手の上まではいかないと世界選手権はない。上に出るためには177点が必要。という情報が揃った状態で6分間練習に入っていった島田選手。周りには羽生選手宇野選手田中刑事選手、オリンピアンたちがいる。というシチュエーションからの最終グループ1番滑走。ちょっと厳しい環境でしたかね。今シーズンが一番チャンスだったような気もするのですが、フリーの自己ベストがルール改正前までさかのぼっても140点台、トータルで220点台。現実的にはまだ代表を争う、というには実績的には薄かったでしょうか。
スピンはランビエール先生譲りなのかいいものを見せてくれるんですけどね。羽生選手宇野選手と同等とはいきませんが、その下の層の何人かの中には入る加点をもらっています。
鍵山選手佐藤駿選手は高1、山本草太選手で大学2年、友野一希選手は3年。島田選手は高3で、前後にトップを争う選手がいない世代です。中学時代は三宅星南選手とのライバル関係があったような記憶がありますが、今は少し差が付きました。世代トップとして上下の世界レベルの選手たちと争っていってくれるとこの先いいのですがどうでしょう?
高橋大輔選手、シングル最後の演技は12位でした。ショートプログラムは、エキシビジョン??? いやぁ、好きですけど、高橋選手のああいう演技。でも、試合の振付なのそれ? という感じで。技術点24.53は29人中25位・・・。4回転無しのジャンプ要素三つすべて回転不足、スピンレベル4無し、ステップレベル2 まあ、そうなりますね・・・。フリーもそこまでひどくはなかったですが、技術点は全体の21番目でした。それでもコレオシークエンスは全選手中最高点。ステップはフリーでは3人しかいなかったレベル4をとり加点も最高点。
まあ、点数がどうのこうの、という話じゃないですかね、もう、高橋選手は。生きる伝説がそこに滑っている、というそれだけでよいというか。フリーが終わった直後、スタンドに向けたカメラが写した宮原知子選手の視線、というのが高橋大輔選手の価値をすべて物語っていたように感じました。
アイスダンスに移って、アイスダンスも放映されるようになってくれることを期待しております。ランキングポイントゼロから始まりますが、グランプリシリーズ、NHK杯には地元枠で呼ばれちゃったりするんですかね。来シーズンいきなり世界選手権というのは普通に考えると厳しいと思われますが、四大陸のミニマムスコアくらいまでなら届かないこともないのではないかと思います。
今回はジュニアが躍進した大会でしたね。男女ともジュニアが表彰台に。女子は、シニアの自爆感がありましたが、男子はもう自力で上回っていったというように見えました。フリーの180.58というスコアは、羽生選手宇野選手とルール変更前の高橋大輔選手しか、今大会の出場選手では超えたことのないスコア。佐藤選手もジュニアグランプリファイナルと2戦続けてフリーの技術点90点越え。北京オリンピックシーズンには高校三年生になる二人。羽生選手宇野選手と合わせて、北京オリンピックはものすごい布陣になりそうだな、と思わされた全日本選手権でした。