イムウンス Eunsoo LIM 19-20

2003年2月26日生まれ

シニア2シーズン目

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シーズン獲得賞金:$2,000+2,000スイスフラン

世界ランキング:12位

シーズンランキング:7位

シーズンベストスコア 200.59(23位) 四大陸選手権

ショートプログラムシーズンベスト 68.40 四大陸選手権

フリーシーズンベスト 132.19 四大陸選手権

ショートプログラム楽曲: Somewhere in Time

フリープログラム楽曲: Sabrina

スピンレベル4率 32/36=88.9%

ステップレベル4率 2/12=16.7%

スピンオールレベル4 4/6

スピンステップオールレベル4 0/6

ジャンプ回転不足率  16/60=26.7%

ジャンプ回転不足なし試合 0/6

スピンステップオールレベル4ジャンプの回転不足もなしの試合 0/6

 

 ●イムウンス選手の19-20シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP TSS SP TES SP PCS FS TSS FS TES FS PCS
CS Autumn Classic 3 184.38 56.31 26.47 30.84 128.07 64.39 63.68
IC Shanghai Trophy 3 184.64 62.87 31.55 32.32 121.77 58.44 63.33
GP Skate America 5 184.50 63.96 31.99 31.97 120.54 58.66 61.88
CS Asian Open Figure 1 197.63 66.84 35.80 31.04 130.79 67.19 63.60
GP NHK Trophy 7 172.47 65.28 33.42 32.86 107.19 46.69 62.50
4CC Four Continents 8 200.59 68.40 34.94 33.46 132.19 65.77 67.42

昨シーズン、シニアデビューシーズンにして世界選手権で10位に入り、韓国に2枠を持ち帰ったイムウンス選手。

今シーズン序盤は、まずチャレンジャーシリーズのオータムクラシックに、上海での招待試合を二試合こなします。どちらも184点台と、それほど点数は伸びませんでした。

グランプリシリーズに入ってもスケートアメリカでまた184点台。3試合続けて1点以内に収まる、というのは珍しいケースです。

次に、グランプリ連戦ではなくて、間にもう一つちゃんレジャーシリーズを挟みました。昨シーズンにシニアデビュー戦として優勝したアジアンオープンフィギュア。ここで197点台まで伸ばして連覇を果たしました。

やはりしり上がりに調子を上げていくのかな? と思ったのですがNHK杯は崩れて172点台の7位。どうもケガの影響が出たようで、ショートはまずまずの出来で踏みとどまったのですがフリーでうまく滑れませんでした。

この後、リストにはありませんが韓国のナショナル選手権に出場し7位に終わります。結果的に、昨シーズンに自分で2枠に増やした世界選手権の代表になれず。四大陸だけは上位にジュニアが多かったことで枠が回ってきました。その地元韓国での四大陸選手権は200点に乗せての8位。これで二シーズン連続の200点ランカーとなります。万全の調子ではなさそうでしたが、それでも無難にできることをしっかりこなした、というように見えました。

 

 ●イムウンス選手の今シーズンの要素別得点

Grade Event Pl Total TES PCS Jump Spin Step
CS Autumn Classic 3 184.38 90.86 94.52 58.65 20.35 11.86
IC Shanghai Trophy 3 184.64 89.99 95.65 54.83 22.58 12.58
GP Skate America 5 184.50 90.65 93.85 54.91 23.74 12.00
CS Asian Open Figure 1 197.63 102.99 94.64 66.74 23.77 12.48
GP NHK Trophy 7 172.47 80.11 95.36 46.00 23.16 10.95
4CC Four Continents 8 200.59 100.71 100.88 64.00 23.60 13.11

要素別は、アジアンオープンフィギュアを除くと、TESよりPCSの方が高く出る構図になっています。PCSはいい時は100点に乗るくらいです。日本では樋口新葉選手、海外勢ではトゥルソワ選手のPCSがこれくらい、という水準です

スピンは23点台を出しています。まあまあ、という水準。ここも樋口選手と同じようなレベルです。

ステップが12点台が多いのは弱いかなという印象ですが、四大陸では13点台まで乗せてきました。

 

 ●イムウンス選手のスケート偏差値

Event Pl Total Jump Base Jump GOE Spin Step PCS
Autumn Classic 3 57.14 56.16 52.81 49.64 53.68 60.06
Shanghai Trophy 3 57.21 53.87 51.68 57.03 56.93 60.80
Skate America 5 57.17 53.17 53.53 60.87 54.31 59.62
Asian Open Figure 1 60.74 57.49 63.78 60.97 56.48 60.14
NHK Trophy 7 53.90 52.39 39.77 58.95 49.57 60.61
Four Continents 8 61.55 55.37 64.15 60.41 59.33 64.24

偏差値に直すとこうなるのですが、トータル200点まで乗せると、偏差値60台になってくる、というのが今シーズンの全体のレベルでした。

スピンは偏差値60程度なので、本人比ではやや得意側。ステップは一番いい時でも偏差値60まで届かず、おおよそ55前後ですので、やや弱い側でしょうか。

ジャンプはNHK杯のGOEが極端に悪くなっています。基礎点は全体的に50台で、それほど高いわけでもないです。アジアンオープンフィギュアや四大陸のように、ジャンプでしっかりGOEを稼ぐと200点まで持ってくることができる、というのが今シーズンのイムウンス選手の立ち位置でした。

 

 

イムウンススケート偏差値

 

レーダーチャートは、ちょっと特徴がつかみにくい感じです。

PCSとステップが四大陸だけはっきり高い、というのが少し目立つでしょうか。ジャンプの基礎点が偏差値60に達していないので、今シーズンはどうしても苦しい戦いが続いていたのかなという感じがします。

 

●シーズン最高のショートプログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
NHK Trophy 1 3Lz<+3T< 8.08   -2.36 5.72 -4.889
NHK Trophy 2 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.889
NHK Trophy 3 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.889
NHK Trophy 4 3F   5.30   1.74 7.04 3.333
NHK Trophy 5 2A   3.63 X 0.66 4.29 2.000
NHK Trophy 6 LSp4   2.70   0.77 3.47 2.778
NHK Trophy 7 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
NHK Trophy   TES   29.71   3.71 33.42  


 イムウンス選手のショートの最高基礎点は29.71と30点に届いていませんでした。NHK杯が最高基礎点でしたが、コンビネーションが二つとも回転不足となっています。昨シーズンと構成は変わっていないのですが、昨シーズンで来ていたことができなくなったことで基礎点が下がってきました。ケガと付き合いながらなんとかやってきた、という影響がはっきり点数に出ています。昨シーズンは同じ構成で32.03まで出せていました。

 

●シーズン最高のフリープログラム基礎点構成

Event   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Asian Open Figure 1 3Lz+3T< 9.26   0.00 9.26 0.000
Asian Open Figure 2 3Lo   4.90   1.08 5.98 2.286
Asian Open Figure 3 2A+3T< 6.66   0.00 6.66 0.000
Asian Open Figure 4 3F   5.30   0.53 5.83 1.000
Asian Open Figure 5 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.429
Asian Open Figure 6 3S   4.73 x 1.12 5.85 2.571
Asian Open Figure 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.17 10.30 2.143
Asian Open Figure 8 CCoSp4   3.50   0.77 4.27 2.143
Asian Open Figure 9 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.143
Asian Open Figure 10 2A   3.63 x -0.33 3.30 -0.857
Asian Open Figure 11 StSq3   3.30   0.86 4.16 2.714
Asian Open Figure 12 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.857
Asian Open Figure   TES   59.31   7.88 67.19  

フリーの最高基礎点も59.31ということで60点に届かず。セカンド3Tが二つとも回転不足ということでこうなっています。ショートもそうだったのですが、フリーも、最高基礎点の試合はスピンがすべてレベル4です。ケガの対応、ジャンプの調子に苦しみつつも、そういったところできっちりレベルを取っていくことがしっかりできた試合は、当たり前ですが、基礎点を何とか高めることができているようです。

二本飛んだジャンプはフリップとトーループ。コンビネーションの1.1倍化は3連続を組み込む、という形でした。

 

ちょうど200点付近の選手、ということを考えると、PCSでショートフリー合わせて100点(33+67程度)取って、技術点の基礎点をショートで30点、フリーで60点ほどまでもってきて、加点をショートフリー合わせて10点ほど取る、というのが200点到達の平均的アプローチになるんでしょうか。

 

●平均GOE+2.800以上

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 12 LSp4   2.70   0.97 3.67 3.571
Shanghai Trophy SP 6 StSq2   2.60   0.87 3.47 3.400
Four Continents SP 3 StSq3   3.30   1.10 4.40 3.375
NHK Trophy SP 4 3F   5.30   1.74 7.04 3.333
Four Continents SP 6 LSp4   2.70   0.90 3.60 3.250
Shanghai Trophy SP 7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.200
Autumn Classic FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
Skate America SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
Skate America SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.000
Skate America FS 12 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
Asian Open Figure SP 6 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
Four Continents FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
NHK Trophy SP 2 FCSp4   3.20   0.91 4.11 2.889
NHK Trophy SP 3 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.889
Four Continents SP 2 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.875
Four Continents SP 4 3F   5.30   1.50 6.80 2.875
Autumn Classic FS 9 ChSq1   3.00   1.40 4.40 2.857
Asian Open Figure SP 3 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.857
Asian Open Figure SP 5 2A   3.63 x 0.99 4.62 2.857
Asian Open Figure SP 7 CCoSp4   3.50   0.98 4.48 2.857
Asian Open Figure FS 12 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.857
Shanghai Trophy SP 3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 2.800
Shanghai Trophy FS 2 3Lo   4.90   1.47 6.37 2.800
Shanghai Trophy FS 12 LSp4   2.70   0.81 3.51 2.800

イムウンス選手の各要素で最高評価となったのはオータムクラシックのレイバックスピンでした。その下には、レベル2、レベル3ではありますがステップが並び、次に単独のトリプルフリップが続きます。どれかの要素に偏っているという感じはなく、満遍なくどの要素も入ってくるのかな、という風に見えます。ただ、ジャンプの中ではフリップが得意、スピンではレイバックスピンが得意、という風には見えるでしょうか。

 

●三連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic FS 4 3Lz+2T+2Lo   8.90   1.06 9.96 1.714
Shanghai Trophy FS 4 3Lz!<+2T+2Lo< 7.38   -1.58 5.80 -3.600
Asian Open Figure FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.17 10.30 2.143
Four Continents FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.97 10.10 1.875

三連続ジャンプは3Lz-2T-2Loの固定。6試合に出て4つしかない、ということは2試合は3連続を付けられなかった、ということになります。シーズン序盤は4番目の要素として入れていましたが、中盤から、1.1倍ボーナスタイムとなる後ろの方、7番目に移しています。

 

●セカンド三回転

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 1 3Lz+3T< 9.26   -0.12 9.14 -0.143
Autumn Classic FS 1 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
Shanghai Trophy SP 1 3Lz!+3T< 9.26   -2.95 6.31 -5.000
Shanghai Trophy FS 1 3Lz!+3T ! 10.10   0.59 10.69 0.800
Skate America FS 1 3Lz!+3T< 9.26   -1.69 7.57 -2.778
Asian Open Figure FS 1 3Lz+3T< 9.26   0.00 9.26 0.000
Asian Open Figure FS 3 2A+3T< 6.66   0.00 6.66 0.000
NHK Trophy SP 1 3Lz<+3T< 8.08   -2.36 5.72 -4.889
Four Continents FS 3 2A+3T<< <<  4.60   -1.65 2.95 -5.000

セカンド三回転の付け方は、ルッツ-トーループを付けたい、というのが基本線。2A-3Tというコンビネーションもシーズン半ばからフリー3番目の要素として入れてきました

ただ、コンビネーションの後ろの3Tの回転不足率が極めて高いです。回転がしっかり足りたのは9回のうち2回だけ。成功率は2割ちょっとと、かなり低くなっています。

昨シーズンは3Lz-3Tが10回飛んで、回転不足なし、GOEマイナスも1回だけだったところと比べると、今シーズンはだいぶ苦労した、という姿がうかがえます。

 

●ステップシークエンスとコレオシークエンス

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores  
Autumn Classic SP 6 StSq2   2.60   0.57 3.17 2.143
Autumn Classic FS 9 ChSq1   3.00   1.40 4.40 2.857
Autumn Classic FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000
Shanghai Trophy SP 6 StSq2   2.60   0.87 3.47 3.400
Shanghai Trophy FS 9 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.200
Shanghai Trophy FS 11 StSq4   3.90   1.04 4.94 2.600
Skate America SP 6 StSq2   2.60   0.71 3.31 2.778
Skate America FS 9 ChSq1   3.00   0.79 3.79 1.556
Skate America FS 11 StSq4   3.90   1.00 4.90 2.444
Asian Open Figure SP 3 StSq3   3.30   0.92 4.22 2.857
Asian Open Figure FS 9 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.143
Asian Open Figure FS 11 StSq3   3.30   0.86 4.16 2.714
NHK Trophy SP 3 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.889
NHK Trophy FS 9 ChSq1   3.00   -0.21 2.79 -0.556
NHK Trophy FS 11 StSq3   3.30   0.57 3.87 1.778
Four Continents SP 3 StSq3   3.30   1.10 4.40 3.375
Four Continents FS 9 ChSq1   3.00   1.42 4.42 2.750
Four Continents FS 11 StSq3   3.30   0.99 4.29 3.000

ステップはレベル3が標準なようです。レベル4が取れることはまれです。この辺は昨シーズンからあまり変わっていません。

コレオシークエンスは平均GOEが+2台であることが多いです。NHK杯ではマイナス評価がつくという珍しい光景があります。

 

 

昨シーズン、1枠だった韓国の世界選手権出場枠を2枠に戻した功労者です。キムヨナさんからスタートした韓国フィギュアの歴史、パクソヨンチェダビン時代でつないで、その後の期待を集めて昨シーズンシニアに上がりました。そのプレッシャーが昨シーズンはどうもものすごく大きかったようですが、実際にはイムウンス選手がそのプレッシャーを一人で感じることになるのは一シーズンのみ。今シーズンからは次世代の旗手たるユヨン選手がシニアに上がってきました。

今シーズンはそのプレッシャーよりも、むしろケガとの付き合いの方が大変そうでしたが、それでも最後には二シーズン連続の200点ランカーとなりました。トリプルアクセルを2本持つユヨン選手と戦っていくのはちょっと苦しそうですが、表現面では、実際に出たPCSこそ負けているものの、まだ一日の長があるようにも感じます。

なんだかんだで今シーズンもチャレンジャーシリーズでは一つ優勝、もう一つも表彰台。グランプリでもポイントを稼ぎ、四大陸にもしっかり出て8位入賞。世界ランキングは、ライバル?のマライアベル選手より二つ上の12位を保っていて、来シーズンのグランプリ2枠も何の問題もなく手に入りますし、世界選手権に出られれば、ショートプログラムの後半グループに入れる位置にいます。

 

韓国は十代半ばの選手層が厚いので、来シーズン、あるいはオリンピックの代表になっていくのも大変なのですが、まだ十分に、代表枠に入って来る力はあることを四大陸選手権では見せていました。

来シーズン、もしかしたら、オリンピックの出場枠3枠を争う韓国の、あるいはアメリカ、日本にとっても、この選手がキーマンになってくる可能性はあります。