幻冬舎文庫 文庫版 439ページ
先日引退した、元鹿島アントラーズの内田篤人さんの自伝? です
この文庫版は平成25年6月15日初版発行ですので、2013年のことですね
文庫になる前の元の方は2011年12月刊行とあります
15万部売れたというベストセラーの文庫版です
時期的には2011年12月というのは絶頂期ともいえる頃かと思います
内田選手の経歴を時系列で追っていくと
2006年高卒ルーキーとして鹿島アントラーズに入団 Jリーグデビュー
2007~9年 鹿島アントラーズJリーグ史上初の三連覇に貢献
2010年夏 ドイツ1部リーグ シャルケ04へ移籍
10-11 チャンピオンズリーグベスト4 DFBポカール優勝 42試合出場
11-12 ヨーロッパリーグベスト8 ブンデスリーガ3位 24試合出場
12-13 チャンピオンズリーグベスト16 ブンデスリーガ4位 30試合出場
13-14 チャンピオンズリーグベスト16 ブンデスリーガ3位 25試合出場
14-15 チャンピオンズリーグベスト16 ブンデスリーガ6位 26試合出場
15-16 16-17 ケガによりリーグ戦出場無し
17年夏 ドイツ2部リーグ ウニオンベルリンへ移籍
17-18 リーグ戦2試合出場
18年1月 鹿島アントラーズへ復帰
18年 9試合出場 ACL優勝 クラブワールドカップ4位
19年 試合出場無し
20年 引退
ヨーロッパで、特にチャンピオンズリーグで、ここまでコンスタントに活躍をした日本人選手はなかなかいません。ベスト4まで行って試合に出た、というのは内田選手だけなはずです(決勝でベンチ入りした、というのは他にいますけど)
ケガにより15年以降ふるいませんでしたが、絶頂期の実績は抜きんでたものでした
そんな絶頂期に出版された本です
そしてこの、自分が見たことしか信じない、というタイトル
ついでに、誰が見てもイケメン
これだけ揃ったら、偉そうにというか、オレサマ全開というか、そんな一冊になっててもおかしくなさそうなところなんですが、それがそうなっていない
謙虚、というのとはだいぶ違うのですが、地に足の着いた語りになっていて、かつ、誰かの口から出た言葉ではなく、本人の口から出た言葉でかいてあるんだな、というのが感じられます。
なるほど15万部売れたはずだ、といえるもの
文庫とはいえ439ページありますからかなりの分量です
きれいごとだけだと間違いなく飽きる分量なのですが、きれいごとは基本的に出てこなくて、生の声が感じられるので飽きない
サッカー選手としてうまくなるために何を考えているか? ではなく、生きていくうえで何を考えているか? というのが描かれています
長谷部選手の本がビジネス本化して人気だったりしましたが、これも、ビジネスマンが読んでもいいんじゃないかな
とも思いましたが、文庫版でも25歳、元のものは23歳の時点で書かれているこの本は、就活生向け推薦本としていいんじゃないか、というのをより、思いました
生きること、の中にサッカーをすること、がある
生きること、の中に働くこと がある
そんなつながり
そして、考えていることをしっかり言語化して語ることができる人なんだな、とも思いました
だからこそなんでしょうか、引退してすぐ、数週間しかたっていない時点でコーチ職を得ていたりする
タイトルは、文字通り本当に、見ないと信じない、ということではたぶんないんでしょうけれど、人の言ったことを鵜呑みにはせず、一度咀嚼して自分で考えて理解して納得したこと、しか信じない、という意味なんだろうな、と思いました
いわゆるヒーローインタビュー的なところでも、たぶん、通り一遍のありきたりのことしか言わないってことはなくて、自分の言いたいことを考えながら話すんだろうな
そのあたりが読んでいて伝わってきます
残念だったのは、本文中にも出てきますが、ケガをしても、基本的には「やれます」というスタイル、なところかなあ
結果的に、そのスタイルがたぶん、選手寿命を縮めてしまって、特に、20代後半のいい時期を棒に振ってしまった、というところにつながるんだろうと思います
もう少し、あと5年くらいはチャンピオンズリーグに出続けるチームにいて活躍できたんだろうな、なんてことを思うと残念でなりません
こんな友達欲しいな、と思いました