世界フィギュア21 振り返り3

さて、そろそろ本格的に数値編に入ります

まずは女子シングルの総合スコア編です

 

ショートプログラム

Pl

Name

Nation

TSS

TES

PCS

1

Anna SHCHERBAKOVA

FSR

81.00

43.86

37.14

2

Rika KIHIRA

JPN

79.08

43.68

35.40

3

Elizaveta TUKTAMYSHEVA

FSR

78.86

44.39

34.47

4

Karen CHEN

USA

74.40

40.88

33.52

5

Yelim KIM

KOR

73.63

40.07

33.56

6

Kaori SAKAMOTO

JPN

70.38

36.14

34.24

7

Bradie TENNELL

USA

69.87

35.70

34.17

8

Haein LEE

KOR

68.94

37.29

31.65

9

Madeline SCHIZAS

CAN

68.77

38.48

30.29

10

Loena HENDRICKX

BEL

67.28

36.62

31.66

11

Olga MIKUTINA

AUT

67.18

38.58

28.60

12

Alexandra TRUSOVA

FSR

64.82

30.34

34.48

13

Ekaterina RYABOVA

AZE

64.11

35.78

28.33

14

Jenni SAARINEN

FIN

63.54

34.52

29.02

15

Josefin TALJEGARD

SWE

61.58

32.98

28.60

16

Satoko MIYAHARA

JPN

59.99

27.34

33.65

 

宮原選手の16位まではざっとこんな感じでした。この辺はISUのスコア見ればいいだけですが、これをバブルチャートで表してみます

 

f:id:yumegenjitsu:20210404205716j:plain

 橙色:ロシア勢

黄色:日本

赤色:米国

黄緑:韓国

桃色:ルナ・ヘンドリックス

水色:オルガ・ミクティナ

 

二枠以上取った国と最終的にトップ10に入った選手を別色にしています。これは以下すべてのグラフで共通です

 

どうしても重なってしまうので、全体として割と見づらくなってしまうのは申し訳ありませんが、横軸にTES、縦軸にPCSを取ったバブルチャートです。バブルの大きさは一応合計スコアにしています

技術点ではほとんど差のなかった上位三選手ですがPCSで差がついてのシェルバコワ選手首位発進、という形でした。技術点トップはトリプルアクセルをきっちり決めたトゥクタミシェワ選手でした。

PCSは露日米韓の選手たちが高めに出ていて、そこから一線引かれて下に他の選手が続くといった並びです

宮原知子選手はPCSは全体7位。転倒があるとPCSも痛むのですがそれでもこちらのスコアはだいぶ高く残りました。TESが全体31位なので、トータルでは厳しいことになりましたけれど。

トゥルソワ選手は宮原選手が崩れたことで何とか第3グループに入り、逆転の表彰台につながった印象がありますが、その第3グループに何とか残ったのは、ジャンプで稼ぐだけでなくPCSが全体3位と高いスコアなことが上げられます。

 

●フリー

Pl

Name

Nation

TSS

TES

PCS

1

Alexandra TRUSOVA

FSR

152.38

88.04

66.34

2

Anna SHCHERBAKOVA

FSR

152.17

80.32

72.85

3

Elizaveta TUKTAMYSHEVA

FSR

141.60

73.52

69.08

4

Loena HENDRICKX

BEL

141.16

74.53

66.63

5

Kaori SAKAMOTO

JPN

137.42

69.72

67.70

6

Karen CHEN

USA

134.23

66.34

67.89

7

Olga MIKUTINA

AUT

131.59

70.34

61.25

8

Bradie TENNELL

USA

127.94

60.52

67.42

9

Rika KIHIRA

JPN

126.62

58.59

69.03

10

Ekaterina RYABOVA

AZE

125.35

68.70

56.65

11

Haein LEE

KOR

124.50

62.07

63.43

12

Eva-Lotta KIIBUS

EST

121.82

65.65

56.17

13

Yelim KIM

KOR

118.15

55.24

64.91

14

Madeline SCHIZAS

CAN

117.01

56.90

60.11

15

Lindsay van ZUNDERT

NED

116.78

64.74

52.04

19

Satoko MIYAHARA

JPN

112.31

51.04

63.27

 フリーは15位までと宮原知子選手を並べています。フリートップは僅差ですがトゥルソワ選手でした。

 

女子シングルフリーのTES/PCS

 フリーは技術点で差がみられて、トゥルソワ選手がダントツです。ただ、90点に達していないというスコアは、本人比では普通かそれ以下の水準でした。88.04というスコアは、紀平選手が19年NHK杯で出した87.17とあまり変わらず、それほどとてつもないスコアなわけでもなく、日本人選手でも太刀打ち可能な水準でした

シェルバコワ選手が技術点二番手。四回転は一本構成でそれも失敗していますので、構成としては実質的には四回転無しとさほど変わらないものでした。一方でPCSが頭一つ抜けてのトップなことで、フリーのトータルでもトゥルソワ選手と匹敵するスコアになっています。これも結果論ですが、日本人選手でもTES・PCS共に太刀打ち可能な水準でした。

技術点三番手は今回5位と躍進したベルギーのルナヘンドリックス選手でした。トリプルアクセル二本のトゥクタミシェワ選手を超える技術点をたたき出しています。

PCSはショートと似た形で、露日米韓の選手の下に線が一本引けそうなのですが、そのラインをルナヘンドリックス選手は超えていて、これも躍進の一つの理由というべきか結果と言うべきかわかりませんが、表れになっています。また、オーストリアのミクティナ選手は技術点5位で大躍進してPCSも実績比ではだいぶ伸ばしてきたのですが、露日米韓で引かれた一線は超えられず。実績なさ過ぎて、あまり点をもらえなかったかな、という感じも受けました

 

宮原選手がフリーではPCSも11位と振るわず。滑走順も早すぎましたし二転倒ではPCSも痛むしでしかたないでしょうか。そういう点では、滑走順がやはりはやめで、かつ、二転倒あったトゥルソワ選手はだいぶPCSもらっていたな、という印象になります。終盤はともかく、四回転を続けている間は準備動作割合がかなり高い印象もありますが、それでも全体8位のPCSを得ていてました

紀平選手はTES伸びず、というのは構成見ればわかりますが、それにしても50点台というのはシニアに上がって初めてでした。PCSでは全体3番に残ったとはいえ、50点台の技術点は全体15位。これでは勝負になりません。フリーは6分間練習の時点で、明らかに動きがおかしかったので、嫌な予感しかしなかったのですが、むしろ何とか7位に残って3枠取ってくれた、という感じもありました。時差ぼけで、という話があり、確かに女子はショートとフリーが全く違う時間帯にあり、かつ、フリーは日本時間早朝、ということで一番合わない時間ではありました。国際大会での活躍には時差ボケ対策が~ みたいな考え方もあるのでしょうが、来シーズンのメインは北京オリンピック。時差は一時間ですし、ショートフリー共に現地時間18時、日本時間19時スタートですので、紀平選手の滑走順は日本時間22時台の可能性が高い。割と合わせやすい時間かと思われます。なお、オリンピック前哨戦のグランプリファイナルは大阪開催予定ですので、これも時差調整不要です。

 

フリーはTESよりPCSの方が点が高い、という選手は基本的に失敗だったと考えてよいと思います。その観点で言うと、総合4位に入ったカレンチェン選手も失敗カテゴリーに含まれる。実際、ジャンプのミスは多かったですし。それでもショート上位で滑走順がPCSの出やすい順番だったこともあり際どく坂本選手、ヘンドリックス選手の上へ行き、紀平選手の大失敗によりかろうじてアメリカ3枠を確保しました。枠取り大会に大会連続の4位。枠取り請負人と化しています。

 

逆に坂本選手は成功とまではいいませんが、それでもPCSよりTESの方が高い領域に残っていたのですが、フリー5位の総合6位。PCSがいつものイメージより伸びませんでした。転倒などのPCSが痛む形でのミスはありませんでしたし、過去のシーズンでは海外の試合でもPCSが出ていて、国内番長感はなかった(TESは若干その気がありますが)のですが、今回は抑えられたなあ、という印象です

 

全体的に点が出にくい印象もありましたが、それ以上各選手の調子の悪さを感じました。長時間移動に時差、そして隔離。また、北米勢アジア勢は今シーズンの試合数が少ない。(

ロシア勢は国内試合が国際試合以上に厳しく、その他ヨーロッパ勢は、実は欧州圏のB級大会がそれなりに開催されていて出場していた選手がわりといました。) そんな関係のせいか、史上最高レベルの大会、というテレビ局のあおりとは程遠い試合結果になってしまっています。

 

●総合点との相関係数

 

SP TES

SP PCS

FS TES

FS PCS

相関係数

0.678

0.782

0.868

0.909

 

相関係数というのは、あるものとあるものが数字的に相関する度合いはどれくらいか? という指標です。完全に相関する場合は1,逆相関する場合は-1、全く無関係だと0となるものです。1に近いほど強い相関があります

総合点と、ショートフリーの技術点、演技構成点の相関を見ると、当たり前ですがすべてプラスの相関関係がありました。ショートよりフリーの方が相関が高い、というのも配点の割合がフリーの方が高いので自然なことかと思います。意外なのは、技術点と演技構成点では演技構成点の方が総合点との相関が強い、という結果がショートでもフリーでも出ているところです。

先に示した二つのバブルチャートを見ればわかりますが、ショートもフリーも選手間の差は演技構成点より技術点の方がはるかに大きいです。しかしながら、総合得点との相関は演技構成点の方が強い。

これは何を意味しているのでしょう? 「相関」係数なので、演技構成点の高い人が総合点が高くなるので演技構成点が重要! ということを言いきれるわけではなくて、総合点が高くなる選手は演技構成点が高く出るようになる、という方向からの見方もあるわけです。

ショートでもフリーでも、露日米韓の選手とそれ以外の選手の間で演技構成点は一本線が引ける、というのは、これまでの実績で基本的にまず線が引かれて、そこに今回の実績でのプラスマイナスが入って、極めていい出来だった選手がそのラインを超えていく。そんな構図がある、というようにも読み取れます