21-22 アンナシェルバコワ

2004年3月28日生まれ

シニア3シーズン目

シーズン獲得賞金:$52,000

世界ランキング:1位

シーズンランキング:1位

シーズンベストスコア 255.95(2位) オリンピック

ショートプログラムシーズンベスト 80.20 オリンピック

フリーシーズンベスト 175.75 オリンピック

ショートプログラム楽曲:Dangerous Affairs

フリープログラム楽曲:The Master and Margaritaより他

スピンレベル4率 36/36=100%

ステップレベル4率 12/12=100%

スピンオールレベル4 6/6

スピンステップオールレベル4  6/6

ジャンプ要素回転不足率 1/60=1.67%

ジャンプ回転不足なし 5/6

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 5/6

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Budapest Trophy 2 222.73 74.76 147.97
GP Grand Prix Torino 1 236.78 71.73 165.05
GP Internationaux de France 1 229.69 77.94 151.75
NC Russian Nationals 3 239.56 81.46 158.10
EC Europe Championships 2 237.42 69.05 168.37
OG Olympic Games 1 255.95 80.20 175.75

世界チャンピオンとして今シーズンに入ってきたシェルバコワ選手。だいぶ苦労も感じられるシーズンでした。

初戦はチャレンジャーシリーズでもなくB級大会で10月のブダペストトロフィー。この試合では4回転転倒の他、後半のジャンプも今一つきれいに決まらず140点台のスコアにとどまり、シニアデビューシーズンのフロミフ選手に逆転負けを喫します。222.73はロシアの代表争いの中ではあまり高くないスコアです。暗雲立ち込めます。

グランプリシリーズは3戦目のトリノから。結果的には2シーズンぶりに4回転を決めて圧勝でしたが、ショートではコンビネーションの2つ目が2回転になり3位スタートとなるなど、盤石さは見られません。一週おいてのフランス杯ではショート77.94とスコアを上げてきましたがフリーでは冒頭に入れようとした4回転ルッツと思われる要素が完全に抜けてLz表記の零点扱いとなります。次に4回転フリップを入れて以降ノーミスで立て直し優勝したもののスコアは229.69 また230点に届かないスコアとなりました。

まだノーミスが今シーズンないという状態でロシア選手権へ。有力5選手の争いというか、実質的には1枠ほぼ確定で2枠を4人で争うような状態になりました。ショートプログラムは81.46と80点台に乗せ2位に付けます。フリーは最後から2人目。ワリエワ選手を残す状態でトップに立つには167.20が必要、2位なら152.53でいいし、シニアで2番目なら142.95でいい、というシチュエーション。冒頭4回転フリップで転倒、その後はルッツループで多少よろめくくらいで大きなミスはありませんでしたが結果158.10 

この時点で2位、最終的に3位となり、まず、ヨーロッパ選手権の代表に選ばれました。

ヨーロッパ選手権がロシアの最終選考会の形。ショートでまさかのコンビネーション1つ目転倒。69.05の4位スタート。この時点でロシア国内では散々叩かれたようで、オリンピックの代表に選ばれるにはふさわしくないというような声も多かったようです。非常に追い込まれた状態でのフリー。決して確率の高くない4回転フリップ、冒頭完璧に決めると以降ノーミス。ここにきてパーソナルベストとなる168.37を出し、トータル237.42 結果的にはこのスコアで2位に入ります。その後も雑音はいくらか続いていたようでしたが、オリンピックの代表をしっかりつかみました。

オリンピックは個人戦のみの登場。世界チャンピオンとしての登場でしたが、違う話題が大きすぎて、雑音は大きかったものの、世界チャンピオンが集める注目とプレッシャーというもの本来と比べると薄かったかもしれません。

ショートプログラムは80.20と80点台に乗せて2位スタート。フリーは最後から2人目。この時点でトップに立つには171.54が必要であり、パーソナルベストを上回るスコアです。ここで冒頭から4回転フリップを2本入れてきます。フリップ2本は人生で決めたことがありませんでしたが、この勝負所でどちらもGOE+3以上の評価で決め、後半のルッツr-ぷ、さらに3連続もしっかりと決めると175.75 世界チャンピオンが人生最高の演技をオリンピックぴったり合わせてトップに立ちます。最終滑走結果待ちで順位確定。金メダルに輝きました。

ロシア国籍ですのでその後大会出場の機会はなくなり、自国のイベント大会に出場して、シーズン終了となります。

スピンステップレベル4率はシーズン通じて100%でした。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Budapest Trophy 2 222.73 115.29 108.44 75.98 -1.67 25.85 15.13
Grand Prix Torino 1 236.78 129.17 107.61 73.10 15.37 25.96 14.74
Internationaux de France 1 229.69 122.46 108.23 72.99 10.26 24.42 14.79
Russian Nationals 3 239.56 126.13 114.43 77.06 6.00 26.98 16.09
Europe Championships 2 237.42 127.89 110.53 71.67 12.60 27.54 16.08
Olympic Games 1 255.95 143.36 112.59 81.99 19.37 26.79 15.21

トータルスコアは最低で222.73 最高はオリンピックで255.95まで出ました。歴代2位とされているスコアです。

技術点は120点台が標準でオリンピックは突出して143.36まで出ました。PCSはオリンピックで112.59まで。5項目平均9点で108点、このスコアは平均9.4弱くらいあります。

ジャンプの基礎点は70点台ですが、オリンピックで81.99まで伸ばしました。80点台まで来ると4回転がないとちょっと届かない領域になります。70点台中盤くらいまでならトリプルアクセル組でも届きます。

ジャンプの加点は4試合で二桁。ここは強いです。

スピンはヨーロッパ選手権の27.54が最高 今シーズン2位です。ステップ系要素もヨーロッパ選手権が最高で16.08 これは全体3位にあたります。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Budapest Trophy 2 67.12 69.07 49.58 66.17 66.79 68.85
Grand Prix Torino 1 70.93 66.92 78.19 66.51 65.23 68.30
Internationaux de France 1 69.01 66.84 69.61 61.71 65.43 68.71
Russian Nationals 3 71.68 69.88 62.46 69.68 70.61 72.85
Europe Championships 2 71.10 65.85 73.54 71.43 70.57 70.25
Olympic Games 1 76.13 73.56 84.91 69.09 67.10 71.62

偏差値的にはトータルスコアは70前後でオリンピックは75を超えて76.13まで来ました。

ジャンプの基礎点は60台後半が標準でオリンピックで70台半ば近くまで出しています。加点に至ってはオリンピックで偏差値84.91 異常値レベルの高さです。

スピンステップはヨーロッパ選手権で偏差値70超え、PCSも70を超える水準まで来ていて、どれをとっても偏差値70を超える試合があるという極めて高い評価になっています。

21-22シーズン アンナシェルバコワ要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートはこうなっていて、やはりシェルバコワ選手と言えども悪い時はジャンプの加点のところで凹む形になります。それ以外のところでは割とバランスよくなっているようにも見えます。むしろヨーロッパ選手権のようにジャンプの基礎点が凹むという場合もあるようです。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○オリンピック ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.99 4.29 2.889
2 3F   5.30   1.89 7.19 3.556
3 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
4 3Lz+3T   11.11 x 1.85 12.96 3.111
5 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.556
7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
  TES   33.01   9.86 42.87  

ショートの最高基礎点は33.01 トリプルアクセル無し組の今シーズントップの基礎点でした。ルッツループ持ちのシェルバコワ選手はトーループをループに変えて33.78まで基礎点を上げることが可能です。トリプルアクセル無しの限界値になります。

トリプルアクセル組では最高基礎点は37.71 そこまで行かなくてもコンビネーション1.1倍にはしない37.23まではいます。そことの基礎点差は4.22 出来栄え差で普通の選手が相手なら追いつけますが、出来栄えもしっかり稼ぐ選手が相手だと追いつくのが厳しい基礎点差になってきます。

 

○オリンピック フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4F+3T   15.20   3.46 18.66 3.111
2 4F   11.00   3.77 14.77 3.333
3 2A   3.30   0.99 4.29 3.000
4 ChSq1   3.00   1.57 4.57 3.111
5 2A   3.30   1.04 4.34 3.111
6 FCSp4   3.20   0.96 4.16 3.000
7 3Lz+3Lo   11.88 x 1.94 13.82 3.333
8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.59 12.70 2.889
9 3Lz   6.49 x 1.85 8.34 3.111
10 StSq4   3.90   1.39 5.29 3.556
11 FCCoSp4   3.50   1.30 4.80 3.778
12 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
  TES   79.38   21.11 100.49  

フリーではオリンピックで79.38の基礎点でした。2回飛ぶジャンプが4回転のフリップとルッツ。セカンドループ付きで3連サルコウで、そのあたりを1.1倍に入れてと死角の無い構成です。トリプルアクセル2本組だとフリーの基礎点は70点前後までですから、ショートの基礎点差を考慮しても基礎点合計で上回れるのがこの構成です。一方、今シーズン最高基礎点は95.39というのがいて、そことの基礎点差がまだ16点ほどあります。4回転5本構成とはさすがに差が大きい。

4回転3本とトリプルアクセルで86.07の基礎点があって出来栄えも高い、という人もいました。基礎点差は6.69 ショートの差も含めると10点ほど差があり、本来だと少し苦しい差でした。

 

○平均GOE4.000以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Europe Championships FS 12 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
Olympic Games SP 5 CCoSp4   3.50   1.60 5.10 4.556
Europe Championships FS 10 StSq4   3.90   1.73 5.63 4.444
Russian Nationals FS 10 StSq4   3.90   1.67 5.57 4.333
Europe Championships SP 7 LSp4   2.70   1.20 3.90 4.333
Russian Nationals FS 12 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
Europe Championships SP 5 CCoSp4   3.50   1.50 5.00 4.222
Russian Nationals SP 5 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.222
Russian Nationals SP 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Europe Championships SP 6 StSq4   3.90   1.62 5.52 4.111
Russian Nationals FS 4 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.111
Europe Championships FS 11 FCCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.111
Russian Nationals SP 7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
Olympic Games SP 7 LSp4   2.70   1.12 3.82 4.111
Grand Prix Torino SP 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 4.000

評価の高い要素はスピン、次いでステップです。ジャンプは意外と平均GOE+4.000以上という評価のものがありませんでした。本質的には4回転の選手なわけではない、というのがこの辺に表れているように見えます。こういった各要素で高い評価を得る選手が4回転も跳ぶ。それもオリンピックでは2本決めた。そういう形で勝った、ということなのだろうと思います。

 

○4回転要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Budapest Trophy FS 1 4F!q ! 11.00   -5.50 5.50 -5.000
Grand Prix Torino FS 1 4F   11.00   2.99 13.99 2.778
Internationaux de France FS 2 4F   11.00   1.89 12.89 1.667
Russian Nationals FS 1 4F   11.00   -5.50 5.50 -4.778
Europe Championships FS 1 4F   11.00   3.14 14.14 2.778
Olympic Games FS 1 4F+3T   15.20   3.46 18.66 3.111
Olympic Games FS 2 4F   11.00   3.77 14.77 3.333

今シーズンは結局ルッツはなしでフリップだけ入りました。盤石な4回転というわけでもなかったですが大事なところでしっかり決めた形になりました。

 

○3回転-3回転ループ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Budapest Trophy SP 4 3Lzq+3Lo< 10.80 x -1.30 9.50 -2.286
Budapest Trophy FS 7 3Lz+3Loq q 11.88 x -0.24 11.64 -0.429
Grand Prix Torino FS 7 3Lz+3Lo   11.88 x 2.11 13.99 3.556
Internationaux de France FS 7 3Lz+3Lo   11.88 x 0.59 12.47 0.889
Russian Nationals SP 4 3Lz+3Lo   11.88 x 1.69 13.57 2.889
Russian Nationals FS 7 3Lz+3Lo   11.88 x -0.76 11.12 -1.222
Europe Championships FS 7 3Lz+3Lo   11.88 x 1.77 13.65 3.000
Olympic Games FS 7 3Lz+3Lo   11.88 x 1.94 13.82 3.333

シェルバコワ選手はルッツループが構成に入っています。初戦のショートは回転不足で減点、フリーはqで基礎点満額ですがGOEはマイナス。以降は回転は十分足りているという形でした。さすがにショートで入れるのはハイリスクとみたのかヨーロッパ選手権、オリンピックではフリーだけでしたが、そのフリーでは高い評価を得ていました。

 

○3回転-3回転トーループ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Grand Prix Torino FS 2 3F+3T   9.50   1.74 11.24 3.222
Internationaux de France SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.43 12.54 2.333
Internationaux de France FS 3 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.444
Russian Nationals FS 2 3F+3T   9.50   1.97 11.47 3.667
Europe Championships FS 2 3F+3T   9.50   1.82 11.32 3.444
Olympic Games SP 4 3Lz+3T   11.11 x 1.85 12.96 3.111

セカンドトーループも当然あります。こちらは全件成功で高確率でした。実際にはグランプリのトリノで2つ目が2回転になった、ということはありましたし、ヨーロッパ選手権では1つ目のジャンプで転倒したためセカンド何を付けるつもりかわからなかったもののコンビネーションとしては失敗、というのはありました。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Budapest Trophy FS 8 3Lz+1Eu+3Sq q 11.77 x 0.12 11.89 0.143
Grand Prix Torino FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.51 12.62 2.778
Internationaux de France FS 8 3F!+1Eu+3S ! 11.11 x 0.00 11.11 0.000
Russian Nationals FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.667
Europe Championships FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.778
Olympic Games FS 8 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.59 12.70 2.889

3連続ジャンプは3つ目サルコウで基礎点が高めのものになっています。6試合でマイナス判定なし。すべてしっかり決めることが出来ました。

 

○回転不足要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Budapest Trophy SP 4 3Lzq+3Lo< 10.80 x -1.30 9.50 -2.286

今シーズン回転不足で基礎点から減点されたのは6試合で1つだけでした。ルッツループの後ろのループが回転不足。すべてのジャンプの中で一番回転不足を取られやすい要素だろうと思われるものです。他の普通のジャンプは回転不足なし。高い安定感でした。

 

ロシア勢、書くかどうか迷ったのですが、ある程度書いておきます。

というわけで世界チャンピオンからオリンピックチャンピオンに進化したシェルバコワ選手です。4回転飛ぶけどジャンプだけの選手ではない、それ以外の要素も含めすべてをこなします、という選手がオリンピックを勝つには多分ふさわしい。という中で、しばらく4回転を飛べておらず、むしろジャンプではない方で稼ぐ選手になっていましたが、ヨーロッパ選手権からオリンピック、勝負所で4回転フリップを決めることで勝ち切りました。世界ジュニアは勝ってませんし、ヨーロッパ選手権とグランプリファイナルも獲ってませんが、世界選手権勝ち、オリンピック勝、ロシアナショナルもジュニア時代から3連覇あり、ということでもう獲るもの獲った、という立場になりました。

こんな国際情勢なので来シーズン、というのはないでしょうが、そうでなかったとしても来シーズンがあったかどうかわからないように感じます

お疲れさまでした