ジャパンオープン トリプルアクセル祭り

結局今年も日本勢だけで行われたジャパンオープン。ISUのイベントカレンダーからも外されてしまって、日本のローカル大会化してますが、チケット価格だけは据え置きだったりもしています。来シーズンからはちゃんと国際試合に戻れるのかどうか。

そんなジャパンオープンですが、今回は各選手が高難度ジャンプを投入する宣言をし、そして実際にそれを試みる試合になっていました。

 

○女子シングル

Pl Name Total TES PCS Deduction
1 Wakaba HIGUCHI 136.27 69.46 66.81 0.00
2 Rino MATSUIKE 135.12 71.32 63.80 0.00
3 Mana KAWABE 134.91 74.79 60.12 0.00
4 Kaori SAKAMOTO 133.26 65.04 69.22 1.00
5 Mai MIHARA 124.24 63.12 62.12 1.00
6 Satoko MIYAHARA 119.69 53.89 66.80 1.00

ジャパンオープンはフリーのみの試合なので、ショートとフリーの合計ではなくて、フリーの技術点と演技構成点を示す形にします。

スコア1位は樋口新葉選手でした。ただ、技術点は全体3位。PCSが全体2位とバランス型でトータルスコアが1位になった、という姿です。136.27は日本国内では上位のスコアではありますが、世界的には平凡に近くて、8位入賞ラインとかそのあたりを争う位置なようにも見えます。

130点台に僅差で4人並んでいますし、あまり順位は今の時点では関係ないですかね。

一応2位に入ったのが今年からシニアに上がった松生理乃選手でした。トリプルアクセルは先週の中部選手権に続いてダウングレード。回転不足はいいとしてもダウングレードだとスコアとしては最悪なので辞めた方がいいわけですが、ジャパンオープンはそんなの気にするような試合ではないでしょうきっと。

3番目に河辺愛菜選手がいます。こちらはトリプルアクセル成功。技術点トップ、演技構成点最下位、合わせると3位。演技構成点が60点にとどまると、代表争いとしては厳しいのですが、シーズン中盤に向けてもうひと伸びはあるでしょうきっと。パガニーニ選手の代わりにスケートカナダも決まったようなので、チャンスをものにしてほしいです。

坂本花織選手が久しぶりに紀平選手以外の日本勢の後塵を拝して4番目。この人はオリンピックが目標ではなくて、出てどこまで行けるか、という段階にいる選手なので、今の時点の出来は全然気にしてないでしょうか。みんなで高難度ジャンプ合戦してる中で中野チームはおとなしくトリプルまで構成してますが、ジュニアの頃からこの人がトリプルアクセルにチャレンジしてたらどうなってたかなあ、なんて考えてしまうことはあります。

三原舞依選手が5番目。ちょっと元気がない印象。三原舞依選手にはまずは、とにかく元気に滑ってください、という思いしかない。

宮原知子選手が6番目。トリプルアクセルダウングレード。気持ちはわかるんですけど、どうなんでしょうかね・・。3回転半というか3回転4分の1くらいを回れる力を付けて、3回転のジャンプの安定化、なんてのができるといいのですが。

 

トリプルアクセル

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Wakaba HIGUCHI 1 3A   8.00   2.40 10.40 3.167
Mana KAWABE 1 3A   8.00   0.20 8.20 0.167
Rino MATSUIKE 1 3A<< <<  3.30   -1.16 2.14 -3.167
Satoko MIYAHARA 2 3A<< <<  3.30   -1.65 1.65 -5.000

今回は中野チーム以外の4人がトリプルアクセルに挑みまして、成功2人、ダウングレード2人、という結果でした。四回転ではなくてトリプルアクセルが並ぶのが日本的。というか、先に四回転に行くロシアスタイルが本当は異質なんでしょうけど。

私が知る限りでは、トリプルアクセルを国際大会で初めて成功させた年齢が最も高いのは、長洲未来さんの24歳5か月、というのがあります。宮原知子選手でもまだそれより1年ほど若い。チャンスはあるとは思いますが、挑戦と博打は違う、というのもまたある。トリプルアクセルを決めても他が揃ってこないとフリーで130点台で終わってしまい、トータル210点台くらいまでで終わるので、アクセル無しの選手でも問題なく超えていける水準でしかなかったりする。いずれにしても各選手のいい演技というのが最終選考会である全日本選手権で見たいです。

 

樋口新葉選手の構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   2.40 10.40 3.167
2 3Lz+3T   10.10   1.77 11.87 2.833
3 3S   4.30   1.08 5.38 2.333
4 CCoSp3   3.00   0.60 3.60 2.000
5 2A   3.30   0.91 4.21 2.833
6 2Lz   2.31 X -0.37 1.94 -1.833
7 3Lo+2T   6.82 X 0.98 7.80 2.000
8 3F!+2T+2Lo ! 9.13 X -0.80 8.33 -1.333
9 FCSp4   3.20   0.40 3.60 1.000
10 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
11 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.833
12 FCCoSp3V   2.25   0.51 2.76 2.333
  TES   59.31   10.15 69.46  

今回は冒頭のトリプルアクセルを成功。+5を付けたジャッジもいますが、それは出しすぎだろうという気はします。いずれにしても全ジャッジプラス評価を出す成功ジャンプでした。

ただ、後半のルッツジャンプが2回転に。スピンでレベル4は1つ。そういった抜けもあって技術点が70点に届いていません。2回飛ぶジャンプはルッツとおそらくトーループなはずで、3Lz+3Tを2回という得意の構成が今回は後半ルッツが決まらずトーループリカバリーでループの後に2回転で付けた、という形になりました。

トリプルアクセル込みでノーミスまで行けると、技術点80点を少し超えるところまで行ける構成なのだと思います。なのでトータル150点まではある。ただ、そのノーミスが、トリプルアクセルの成功以上に確率が低そうなのが泣き所です。

 

○男子シングル

Pl Name Total TES PCS Deduction
1 Shoma UNO 181.21 93.07 89.14 1.00
2 Shun SATO 179.32 102.22 77.10 0.00
3 Keiji TANAKA 163.93 82.03 81.90 0.00
4 Sota YAMAMOTO 156.13 82.49 74.64 1.00
5 Kazuki TOMONO 147.44 69.16 79.28 1.00
6 Sena MIYAKE 126.46 53.58 73.88 1.00

男子シングルは宇野昌磨選手がトップスコアでした。181.92というのは本人比では平凡でしょうか。転倒あり、抜けて2回転あり、本人としては満足はいかないのでしょうけど、それでもこれくらいは出ますよ、と。

佐藤駿選手が技術点100点越えで2番目に入りました。PCSで10点以上の差がついているのが苦しいですが、4回転4本降りました。4本降りても180点に届かないのはちょっと残念なスコアですけど、シーズン中盤までに伸ばしていければ全日本で勝負になる位置にはいるようです。

田中刑事選手が3番目。平昌オリンピックの代表ですが、今のレベルだとフリーで160点台は代表争いには厳しいなあ・・・。

本草太選手は156.13で4位。4回転2本降りました。その代わりトリプルアクセルが一つ転倒。ノーミスで170点くらいの構成でしょうか

友野一希選手が5番目。150点に届かないとちょっと厳しいです。転倒は後半のトリプルルッツ。スピンでレベル4がなかったり、得点力に欠けました。

今シーズンからシニアに上がった三宅星南選手が6番目。四回転サルコウを1本はおりましたが他がまとまらず。スコア的にはちょっと寂しい出来でした。

 

○四回転要素

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
Shun SATO 1 4Lz   11.50   4.31 15.81 3.500
Shun SATO 5 4T   9.50   3.09 12.59 3.333
Shoma UNO 8 4T+2T   11.88 X 2.85 14.73 3.000
Shun SATO 3 4T+3T   13.70   2.61 16.31 2.833
Keiji TANAKA 2 4S   9.70   2.43 12.13 2.500
Sota YAMAMOTO 1 4S   9.70   1.46 11.16 1.833
Sota YAMAMOTO 2 4T   9.50   1.43 10.93 1.667
Shoma UNO 7 4F   12.10 X 1.38 13.48 1.333
Sena MIYAKE 2 4S+2T   11.00   0.00 11.00 0.000
Shoma UNO 3 4T   9.50   -0.71 8.79 -0.500
Kazuki TOMONO 3 4T   9.50   -0.71 8.79 -0.500
Kazuki TOMONO 1 4T+2T   10.80   -0.95 9.85 -0.833
Shun SATO 2 4F! ! 11.00   -1.65 9.35 -1.500
Shoma UNO 1 4Loq q 10.50   -5.25 5.25 -5.000
Sena MIYAKE 5 4S< < 7.76   -3.88 3.88 -5.000

四回転を含んだ要素をすべて上げています。最高評価は佐藤駿選手の四回転ルッツでした。2番目も佐藤駿選手で四回転トーループ。やはり四回転の申し子感はあります。今回はフリップもおりましたし、トゥ系のジャンプは強いです。

宇野昌磨選手はプラス評価は2つ。ループはq付かつ転倒でした。完成ならず。ただ、後半のコンビネーションでも+3を取るあたりはさすがです。

本草太選手が2種類でGOEプラス。2種類でプラスが取れるということは、ショートも2本飛べるしフリーは3本まで行ける、ということで、もう少し上のスコアまで期待できます。日本は男子のレベルが高すぎて、そのレベルでも代表が難しいのですが、グランプリ表彰台くらいまでは目指してほしいです

 

宇野昌磨選手の構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Loq q 10.50   -5.25 5.25 -5.000
2 2S   1.30   0.00 1.30 0.167
3 4T   9.50   -0.71 8.79 -0.500
4 3A   8.00   2.40 10.40 3.167
5 FCSp3   2.80   0.70 3.50 2.500
6 ChSq1   3.00   0.88 3.88 1.833
7 4F   12.10 X 1.38 13.48 1.333
8 4T+2T   11.88 X 2.85 14.73 3.000
9 3A+1Eu+3F   15.18 X 2.00 17.18 2.500
10 FCCoSp4   3.50   0.96 4.46 2.667
11 CCoSp4   3.50   1.14 4.64 3.167
12 StSq4   3.90   1.56 5.46 3.833
  TES   85.16   7.91 93.07  

4回転4種類5本+トリプルアクセル2回構成。ノーミスだとジャンプ要素7回すべてで10点を超える得点が得られる計算です。今回はサルコウが2回転になり、表記上の4回転は4本になりました。昨シーズンはなぜかトーループが決まらない、という病にかかっていて、フリップ2本にしちゃえばいいんじゃ、とか思ったりもしてましたが、2本にはしないまでもう後半に入れてきました。1.1倍のところにコンビネーションも突っ込んで荒稼ぎするのが宇野選手のスタイル。ループ転倒でもサルコウをしっかり降りれば技術点100点までは行きます。ループも決まれば110点。120点出してネイサンチェン選手と勝負するには・・、もう少しGOEが必要なようです。

 

○佐藤駿選手の構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Lz   11.50   4.31 15.81 3.500
2 4F! ! 11.00   -1.65 9.35 -1.500
3 4T+3T   13.70   2.61 16.31 2.833
4 FCCoSp3   3.00   0.68 3.68 2.167
5 4T   9.50   3.09 12.59 3.333
6 3A+1Eu+3S   14.08 X 1.80 15.88 2.167
7 FSSp3   2.60   0.59 3.19 2.333
8 3F! ! 5.83 X -1.59 4.24 -2.833
9 3A+2T   10.23 X -0.60 9.63 -1.000
10 StSq2   2.60   0.52 3.12 2.167
11 ChSq1   3.00   1.13 4.13 2.167
12 CCoSp4   3.50   0.79 4.29 2.167
  TES   90.54   11.68 102.22  

佐藤駿選手は4回転3種類4本。ルッツフリップトーループのトゥ系ジャンプで揃えています。2回飛ぶのは4回転トーループトリプルアクセル。かなり基礎点の高い構成です。

フリップに!が二つ。!はルッツにつくときもあるのですが、踏切ははっきりしない部分があるとされています。

技術点が100点突破。PCSがまだあまり出ていないのですが、このベースがあれば全日本は表彰台チャンスが普通にあると思います。前シーズンの世界選手権2,3,4位がオリンピック安泰ではないという国。なかなか恐ろしい世界です。

 

国際大会の次の予定は、来週チャレンジャーシリーズのフィンランディア杯があります。その次もう一週チャレンジャーシリーズのアジアンオープンフィギュアを挟んで、その次、いよいよグランプリシリーズが始まります。