21-22 樋口新葉

2001年1月2日生まれ

シニア6シーズン目

シーズン獲得賞金:$9,000

世界ランキング:11位

シーズンランキング:9位

シーズンベストスコア 214.44 (17位) 北京オリンピック

ショートプログラムシーズンベスト 79.73 オーストリア

フリーシーズンベスト 141.04 フランス杯

ショートプログラム楽曲:ユアソング

フリープログラム楽曲:ライオンキングより

スピンレベル4率 42/51=78.8% (国際大会:28/33=84.8%)

ステップレベル4率 13/17=76.5%(国際大会:9/11=81.8%)

スピンオールレベル4 2/7(国際大会:1/5)

スピンステップオールレベル4  2/7(国際大会:1/5)

ジャンプ要素回転不足率 9/83=10.8%(国際大会:8/53=15.1%)

ジャンプ回転不足なし 3/7(国際大会:2/5)

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 1/7(国際大会1/5)

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
DL げんさんサマーカップ 4 193.41 62.40 131.01
DL 東京夏季フィギュア 1 74.02 74.02  
Others Japan Open 1 136.27   136.27
GP Skate Canada 6 205.27 69.41 135.86
CS Cup of Austria 1 189.43 79.73 109.70
GP Internationaux de France 3 204.91 63.87 141.04
NC 全日本選手権 2 221.78 74.66 147.12
OG OlympicGames Team 2 74.73 74.73  
OG Olympic Games 5 214.44 73.51 140.93
WC World Championships 11 188.15 67.03 121.12

樋口新葉選手の今シーズンは8月のげんさんサマーカップから始まりました。日本の有力選手のほとんどが集まったこの試合で4位。日本で4番目ではオリンピックの代表にはなれません。あまりいい立ち上がりではありませんでした。8月にはもう一試合、東京夏季フィギュアでここはショートだけで74.02という高いスコアを出します。この試合はダブルアクセル構成。それでもそろえばこれだけのスコアが出ます。

10月に入って今度はフリーだけの試合でジャパンオープンに出場。トリプルアクセルをきれいに決めて136.27 トリプルアクセル入った割には点が出ない、といういいんだか悪いんだかみたいな試合。まだシーズン序盤ですからトリプルアクセルを下りたということの方が大事だったでしょうか。

10月後半からはグランプリシリーズが始まり本格的にシーズンが進んでいきます。スケートカナダはフリーでトリプルアクセルをまた決めましたがスコアはやはり135点台でトータルも205点ほど。6位に終わります。1試合、チャレンジャーシリーズのオーストリア杯を挟みました。ここでショートからトリプルアクセルを投入して79.73という極めて高いスコアを出してきました。ところがフリーが大崩れトータルスコアは180点台でシーズンワーストになります。なかなか2本そろいません。

翌週フランス杯ではロシア勢の一角を崩して3位表彰台。この試合もフリーでqマークながらもトリプルアクセルを下ります。トリプルアクセルの着氷率は高くなってきました。ただ、この時点でシーズンベストスコアは日本勢で5番目。代表争いという点では微妙なものがありました。

 

そして運命の全日本。ショートではダブルアクセル構成ながら74.66を出して2位スタート。普通に滑れば表彰台、というのが見えた状況でフリーの自分の滑走順を迎えますが、波が大きくてなかなかその普通に滑るが出来ないことが多い樋口選手。ライオンキングはキングか?都落ちか? 冒頭トリプルアクセル投入でGOEマイナスですが着氷、その後はコンビネーションで一つ回転不足がつきますが、課題のフリップも!でこらえ、大きなミスなく滑り切り147.12の高いスコアでこの時点トップ。最終的に2位表彰台でオリンピック代表を決めました。一番大事な試合でショートフリー2本そろえることが出来ました。

 

オリンピックは団体戦ショートプログラムに登場。メダル争いのカギになる選手かとも思われましたが、ROCに次ぐ2位で9ポイントを稼ぎ後の選手を非常に楽にさせる貢献をしました。

個人戦ではショートプログラムからトリプルアクセル投入し着氷。フリーのトリプルアクセルも着氷。オリンピック個人戦トリプルアクセルを2本決めた女子選手は浅田真央さん以来2人目です。

世界選手権は精彩を欠いて11位に終わりましたがオリンピックで団体戦のメダルを取り(まだ手元になさそうですが)、トリプルアクセル2本を決め、大事なところでは結果を出したシーズンとなったようです。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
げんさんサマーカップ 4 193.41 100.95 92.46 64.27 3.20 21.78 11.70
東京夏季フィギュア 1 74.02 41.04 32.98 19.23 4.05 12.43 5.33
Japan Open 1 136.27 69.46 66.81 43.96 5.97 9.96 9.57
Skate Canada 6 205.27 104.59 100.68 62.02 2.44 24.56 15.57
Cup of Austria 1 189.43 94.91 96.52 58.39 -0.41 23.54 13.39
Internationaux de France 3 204.91 105.33 99.58 65.65 2.48 23.43 13.77
全日本選手権 2 221.78 116.05 105.73 69.64 5.92 24.34 16.15
OlympicGames Team 2 74.73 40.54 34.19 19.23 3.98 11.98 5.35
Olympic Games 5 214.44 112.20 103.24 72.41 0.85 23.68 15.26
World Championships 11 188.15 92.37 97.78 60.96 -6.25 23.29 14.37

技術点は100点中盤くらいが標準でオリンピックでは110点台に乗せています。世界選手権がシーズンワーストの92.37 ケガもしていたようですし後講釈ですが休んだ方がよかったのかもしれません。

PCSはなかなか100点までもらえなかったですがオリンピックでは103.24まで出ました。5項目平均8.5をすこし超えるくらいのところまで来た形です。

ジャンプの基礎点は60点台前半から中盤が多かったのですが、オリンピックでは国内選手権をも超えて72.41まで出しました。ロシア勢以外では今シーズン3位の高い基礎点構成です。一方、ジャンプの加点は伸びていません。国際大会ではフランス杯の+2.48が最高。オリンピック団体戦のようにショートだけで+3.98確保したりは出来るのですが、ショートフリーどちらかでジャンプが崩れることが多く、合わせるとプラスマイナス0に近いところに収束してしまいます。

スピンはスケートカナダの24.56が最高。これは日本勢で4番目のスコアになります。

ステップ系要素はスケートカナダで15.57まで出ました。これは全体5位の高い評価です。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
げんさんサマーカップ 4 59.16 60.33 57.76 53.49 53.13 58.20
Skate Canada 6 62.38 58.65 56.48 62.15 68.54 63.68
Cup of Austria 1 58.08 55.94 51.70 58.97 59.86 60.90
Internationaux de France 3 62.28 61.36 56.55 58.63 61.37 62.94
全日本選手権 2 66.86 64.34 62.33 61.46 70.85 67.05
Olympic Games 5 64.87 66.41 53.81 59.41 67.30 65.39
World Championships 11 57.73 57.86 41.89 58.19 63.76 61.74

偏差値的にはトータルスコアは60前後、シーズンベストのオリンピックで64.87と60台半ばまで出しています。

ジャンプはオリンピックで60台後半まで出ますが、崩れるとオーストリア杯のように50台半ばまで落ち込みます。ジャンプの加点は偏差値50台。評価は高くありません。

スピンも偏差値50台が標準で60に乗せたのはスケートカナダくらい。ステップは偏差値60台後半まで出る高い評価を受けています。

PCSは60台半ばまで出るようになってきました。

21-22シーズン 樋口新葉要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートこういう形です。右下が凹みがち。下もあまり伸びずに左側が膨らむ形です。世界選手権が全体的に小さくなってしまっているのがよく見えます。ステップとPCSが高評価。ノービスの頃からジャンプのイメージが強く、今もトリプルアクセルに挑んでいく姿が印象的なのですが、能力的にはステップやPCSという魅せる項目の方が高く出ています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

オーストリア杯 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   2.40 10.40 3.000
2 3Lz+3T   10.10   1.42 11.52 2.286
3 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.286
4 3F   5.83 x 1.38 7.21 2.571
5 CCoSp4   3.50   0.91 4.41 2.429
6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.429
7 LSp4   2.70   0.81 3.51 3.000
  TES   37.23   9.02 46.25  

ショートプログラムはシーズンベストのオーストリア杯で37.23という基礎点を出しました。これより上は、コンビネーションを1.1倍のところに持ってくるしかありません。今シーズンこの上の基礎点を出したのは、ワリエワ、トゥルソワ、両選手だけです。

この構成でコンスタントにノーミスできるようになると強いです。

 

○フランス杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Aq q 8.00   -0.23 7.77 -0.333
2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
3 3S   4.30   0.92 5.22 2.222
4 CCoSp4   3.50   0.60 4.10 1.667
5 2A   3.30   0.75 4.05 2.333
6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
7 3Lo+2T   6.82 x 0.77 7.59 1.444
8 3Fe e 4.66 x -0.48 4.18 -1.111
9 FCSp3   2.80   0.48 3.28 1.667
10 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.111
11 ChSq1   3.00   1.36 4.36 2.778
12 FCCoSp4   3.50   0.95 4.45 2.556
  TES   66.42   7.38 73.80  

フリーの基礎点はフランス杯が最も高かったです。66.42はロシア勢以外だと今シーズン5番目になります。ここまでの基礎点を出すにはトリプルアクセル以上のジャンプが必須になっています。

冒頭にトリプルアクセルで2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。フリップのeとスピンレベル3で基礎点削られていますが、この構成でノーミスなら基礎点が1.57上がって67.99にまでなります。

 

○平均GOE3.200以上(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
全日本選手権 FS 10 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.444
全日本選手権 FS 11 ChSq1   3.00   2.07 5.07 4.111
Skate Canada FS 11 ChSq1   3.00   1.93 4.93 3.889
全日本選手権 SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.889
Skate Canada SP 6 StSq4   3.90   1.50 5.40 3.778
OlympicGames Team SP 6 StSq4   3.90   1.45 5.35 3.778
全日本選手権 SP 1 2A   3.30   1.23 4.53 3.667
Skate Canada SP 7 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.444
Skate Canada FS 10 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.444
Cup of Austria SP 6 StSq4   3.90   1.33 5.23 3.429
Skate Canada SP 5 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.222
Internationaux de France SP 6 StSq3   3.30   1.04 4.34 3.222
全日本選手権 SP 7 LSp4   2.70   0.85 3.55 3.222
OlympicGames Team SP 1 2A   3.30   1.04 4.34 3.222
OlympicGames Team SP 7 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.222
World Championships SP 5 CCoSp3   3.00   0.94 3.94 3.222
World Championships SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222

樋口選手の評価の高い要素はステップ系要素です。ステップあるいはコレオが評価上位を占めています。それ以外ではダブルアクセルとスピンがいくつかあります。

残念なのは上の方にオリンピックや世界選手権がないこと。オリンピックも団体戦はありますが個人戦で評価の高い要素がありませんでした。

 

トリプルアクセルを含む要素

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
げんさんサマーカップ FS 1 3A   8.00   -2.20 5.80 -2.75
Japan Open FS 1 3A   8.00   2.40 10.40 3.17
Skate Canada FS 1 3A   8.00   1.14 9.14 1.33
Cup of Austria SP 1 3A   8.00   2.40 10.40 3.00
Cup of Austria FS 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.00
Internationaux de France FS 1 3Aq q 8.00   -0.23 7.77 -0.33
全日本選手権 FS 1 3A   8.00   -1.60 6.40 -2.00
Olympic Games SP 1 3A   8.00   1.71 9.71 2.22
Olympic Games FS 1 3A   8.00   1.83 9.83 2.22
World Championships FS 1 3Aq q 8.00   -4.00 4.00 -5.00

トリプルアクセルに挑む選手が近年はたくさんいますが、樋口新葉選手はそのなかで成功率が高い選手です。今シーズン10回飛んで回転が足りずに基礎点が削られたのは1回だけです。転倒は2回。後の8回はGOEマイナスはあってもダブルアクセルでは取れない高い点数を確保しています。世界選手権ではケガもあったようでうまくいきませんでしたが、基本的に樋口選手にとってトリプルアクセルは計算できるジャンプになってきています。

 

○3回転-3回転を含む要素(国際大会+全日本選手権より)

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
Skate Canada SP 2 3Lzq+3Tq q 10.10   -1.43 8.67 -2.444
Skate Canada FS 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.17 9.93 -0.111
Cup of Austria SP 2 3Lz+3T   10.10   1.42 11.52 2.286
Cup of Austria FS 2 3Lz+3T< 9.26   -0.71 8.55 -1.286
Internationaux de France SP 2 3Lz+3Tq q 10.10   -0.34 9.76 -0.667
Internationaux de France FS 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.444
Internationaux de France FS 6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
全日本選手権 SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.333
全日本選手権 FS 2 3Lz+3T   10.10   1.69 11.79 2.778
全日本選手権 FS 6 3Lz+3T< 10.19 X -1.10 9.09 -1.778
OlympicGames Team SP 2 3Lz+3T   10.10   1.43 11.53 2.333
Olympic Games SP 2 3Lz+3T< 9.26   -0.51 8.75 -0.889
Olympic Games FS 2 3Lz+3T< 9.26   -2.95 6.31 -5.000
Olympic Games FS 6 3Lz+3Tq q 11.11 x -0.08 11.03 -0.222
World Championships SP 2 3Lz+3T   10.10   1.35 11.45 2.444
World Championships FS 2 3Lz+3T< 9.26   -0.17 9.09 -0.222
World Championships FS 6 3Lz+3T< 10.19 x -2.95 7.24 -5.000

3回転-3回転は樋口選手にとって従来得意なジャンプだったはずかと思います。これが今シーズン17回飛んでGOEマイナスが10回。セカンドジャンプの回転不足減点が6回あります。これはトリプルアクセルの確率より低いです。トリプルアクセルの練習に時間を取られているためなのか、意識がトリプルアクセルに行くからなのか。両方あるのかと思いますが、フリーの方が成功率低いので、冒頭のトリプルアクセルに行く意識の強さ、というのがどうしてもあるのかなあ、と思います。

トリプルアクセルと3-3が揃ったときが、樋口新葉トリプルアクセル完成の時、なのかもしれません。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
Skate Canada FS 8 3Fe+2T+2Lo e 7.96 x -0.73 7.23 -1.667
Internationaux de France FS 6 3Lz+3Tq+2T q 12.54 x -0.34 12.20 -0.444
全日本選手権 FS 7 3Lo+2T+2Lo   8.69 X 0.91 9.60 1.778
Olympic Games FS 7 3Lo+2T+2Lo   8.69 x 0.91 9.60 1.889

3連続ジャンプの出来も今一つでした。オーストリア杯、世界選手権では要素に3連続を入れることができませんでした。

シーズン序盤はフリップからの3連続にしていましたが、フリップ二!月期、スケートカナダではついにeがついたためか断念。フランス杯ではルッツからで3-3-2にしましたがこれは負荷が重いと判断したのかこの1回で終わります。全日本以降はループ起点の3連続にして確実性を高めていました。

 

 

今シーズンは念願のオリンピック出場を果たした樋口新葉選手。最終選考会の全日本ではショートフリー2本そろえた素晴らしい演技でした。ただ、ほかの試合ではショートフリーしっかりそろえることがなかなかできませんでした。シーズンベストがショート、フリー、トータルですべて違う試合になる、という選手は割と少数です。このあたりに不安定さが出ていたように感じます。

ショートはノーミスで79点台まで出ました。大きな大会ならPCSましで80点には乗ったでしょう。ここにフリーノーミスで150点まで出せて230点、というのは見えているのですが、実際のシーズンベストは214点台。結局シーズン終わっての国際大会のスコアでは日本勢の中でも4番目で終わっています。来シーズン、また代表としてチャンピオンシップに出られる保証はありません。

今シーズンは大事な全日本で結果を出し、夢のオリンピックでトリプルアクセル2本を決めるという結果を出しました。不安定だけど大事な試合に合わせて目標は達成できる。オリンピックがシーズンベストな選手は4人しかおらず、その4人の一人が樋口新葉選手です。来シーズンはそれが世界選手権で、トリプルアクセルに他の要素も全部そろうと・・・、世界を獲るチャンスがあるのかもしれません。