全日本ジュニア 四回転で逆転優勝

今年の全日本ジュニアは男女ともショートでトップスリーにもいなかった選手がフリーで逆転優勝を果たす、という展開になりました。

 

○女子シングル 上位12人

Pl Name 所属 Total SP FS
1 島田麻央 木下アカデミー 188.51 61.76 126.75
2 住吉りをん 駒場学園高校 180.25 65.34 114.91
3 千葉百音 東北高校 175.41 58.97 116.44
4 吉田陽菜 木下アカデミー 172.55 62.48 110.07
5 田中梓沙 木下アカデミー 171.62 62.56 109.06
6 柴山歩 木下アカデミー 166.68 60.17 106.51
7 中井亜美 MFアカデミー 165.76 56.78 108.98
8 櫛田育良 木下アカデミー 165.09 57.35 107.74
9 大門桜子 木下アカデミー 160.47 59.95 100.52
10 髙木謠 MFアカデミー 158.58 55.84 102.74
11 和田薫 グランプリ東海クラブ 156.77 52.89 103.88
12 奥野友莉菜 明治神宮外苑FSC 152.86 58.02 94.84

優勝はノービスからの推薦出場の島田麻央選手でした。ショート4位からの逆転優勝。ノービスB、ノービスA、ジュニアの三カテゴリー制覇は女子では浅田真央さん以来2人目です。ノービスからの推薦出場でのジュニア制覇は初。荒川静香さんがノービス年齢でジュニアに優勝したとのことですが、当時は全日本ノービスというカテゴリーはありませんでした。

2位はショート1位からの住吉りをん選手。数点差で四回転の島田麻央選手やトリプルアクセル2本を持つ吉田陽菜選手を従える形でのショート首位はプレッシャーもあったかと思います。最終滑走で出てきてノーミスなら勝ち、という状況でしたが残念ながら届きませんでした。

3位には千葉百音選手。ショート7位で第三グループからフリー2位のスコアで表彰台に乗ってきました。

4位に昨年2位の吉田陽菜選手。ノービスB、ノービスA、ジュニアの三カテゴリー制覇がかかった試合でしたが、その肩書は島田麻央選手に持っていかれてしまいました。フリーを迎えた時点で吉田陽菜選手もやはりノーミスなら後の二人も届かないところまで点が出せて勝ち、というシチュエーションだったのですがトリプルアクセルが入ったのは1本のみで、後半のジャンプもクリーンに決まらず4位にとどまりました。昨年は189.49でしたので、その出来で勝てたのですけどね。残念でした。

5位6位も木下アカデミー勢が続きます。そして7位の中井亜美選手までが全日本の出場権を得るはずです。櫛田育良選手は7位との点差0.67ですが全日本の出場権は回ってこないことになります。昨年の全日本ボーダーラインは152.47でしたから、そこから一気に高い位置に上がりました。

優勝がノービスの選手なので、規定からすると世界ジュニアの代表の内定者が今大会ではなし、ということになります。また、今大会で優勝すればジュニアグランプリファイナルのワイルドカード回って来るんじゃ、なんてことも以前に記していますが、そこは今大会より前に東西の選手権でジュニアで最高スコアを出していた住吉りをん選手に渡っていました。

結局、ジュニアから全日本に進む6選手で、世界ジュニアの代表争いはそのまま続くことになるかと思います。

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T   9.50   1.90 11.40 2.000
2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.000
3 3F   5.30   0.85 6.15 1.571
4 3Lo   4.90   0.59 5.49 1.286
5 CCoSp4   3.50   0.84 4.34 2.143
6 2A+1Eu+3S   8.91 X 0.86 9.77 2.000
7 2A+3T   8.25 X 0.76 9.01 1.714
8 FSSp4   3.00   0.42 3.42 1.286
9 3Lz   6.49 X 1.30 7.79 2.286
10 StSq3   3.30   0.46 3.76 1.429
11 LSp4   2.70   0.92 3.62 3.571
  TES   65.95   10.08 76.03  

冒頭の四回転トーループはGOE+2での成功。これで3試合連続成功です。それを含め全要素全ジャッジでマイナス評価はありませんでした。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。スピンはすべてレベル4 ショートでレベル2だったステップはレベル3を取りました。

四回転2本目を入れるのが次の目標なようですが、その場合2回飛ぶジャンプを減らさないといけないのでおそらく3Tが2Tになります。そうすると基礎点の増加は3点程度ということになります。シニア構成でコレオがつくと仮定すると、その時点で技術点が85点程度まで出ることが想定されます。そこまで出せれば今シーズンで言えばトゥクタミシェワ選手を超えてフロミフ選手くらいの出来になります。今のシェルバコワ選手の領域、さらにはアカチエワ選手らと争うには四回転2本を入れた上で、今より各要素の質を上げることまで必要になってきます。シニアで戦うのは3年後ですが、まだ道のりは長いです。

 

○女子シングル トリプルアクセル以上のジャンプ要素

Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
島田麻央 1 4T   9.50   1.90 11.40 2.000
吉田陽菜 2 3A   8.00   1.28 9.28 1.571
中井亜美 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
高橋萌 1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000

トリプルアクセル以上のジャンプが要素として入っていたのは4人。

言わずと知れた島田麻央選手の四回転トーループ。見事に決まりました。吉田陽菜選手は一本成功。成功したのはここまでです。トリプルアクセルはやはり難しい。

それでも日本女子にとっては四回転よりトリプルアクセルなようなわけですが、島田麻央選手はトリプルアクセルはどうするんでしょうか。

 

○女子シングルの要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 島田麻央 188.51 75.64 73.16 10.10 22.73 6.88
2 住吉りをん 180.25 87.52 59.77 1.23 23.15 8.58
3 千葉百音 175.41 78.92 64.71 4.79 20.33 6.66
4 吉田陽菜 172.55 78.12 64.14 1.32 21.76 7.21
5 田中梓沙 171.62 82.20 59.72 -0.58 21.77 8.51
6 柴山歩 166.68 73.36 65.58 1.17 21.69 5.88
7 中井亜美 165.76 69.20 69.16 0.00 21.37 7.03
8 櫛田育良 165.09 70.32 64.98 1.70 21.37 6.72
9 大門桜子 160.47 75.56 56.74 -0.20 22.32 7.05
10 髙木謠 158.58 67.28 63.01 1.33 20.16 6.80
11 和田薫 156.77 65.60 63.86 -2.55 23.12 6.74
12 奥野友莉菜 152.86 75.52 56.14 -6.04 21.93 8.31

ショートフリーを合計して各要素のスコアを見ています。

PCSは住吉りをん選手がダントツのトップでした。さすがの18歳。島田麻央選手は5番目です。ノービスとしてはなかなか出ないスコアではありますが、グランプリレベルは100点超えてきますので25点足りない。シニアとの差とも言えますし、そこだけで25点~30点伸びしろがある、とも言えます。

ジャンプの基礎点は当然のように島田麻央選手がトップです。73.16はフランス杯のシェルバコワ選手を超えます。面白いのは2番手が中井亜美選手で69.16あります回転不足ですがトリプルアクセルが要素に入っているというのもありますが、フリーではセカンド2回転がなく三連続で3Sが入ったりと高い基礎点構成となっていました。一方で2位に入った住吉りをん選手はジャンプの基礎点が伸びていません。フリー最後のジャンプだけで三連続が入らなかったこと含め5.17ほど基礎点を損していて、その辺が痛かったです。吉田陽菜選手もトリプルアクセルがあった割に伸びていませんが、一つ一回転半になったのが痛かったです。そこでトリプルアクセルを飛べていれば6.90基礎点が上がるはずで、島田麻央選手とそれほど遜色のない基礎点になっていました。

ジャンプのGOEも島田麻央選手がトップ。四回転が入るだけでなく出来栄えの良さが光ります。フリーで追い上げた千葉百音選手が2番目。この辺が表彰台に乗った鍵になっていました。

スピンは住吉りをん選手がトップ。着実に点を稼いでいます。同じようにステップも住吉選手がトップでした。PCS、スピン、ステップで稼ぐという一つのスタイルを築いています。

 

○男子シングル 上位12人

Pl Name 所属 Total SP FS
1 三浦佳生 目黒日本大学高等学校 229.28 64.00 165.28
2 壷井達也 神戸大学 227.60 81.05 146.55
3 吉岡希 西宮甲英高等学院 191.80 68.55 123.25
4 片伊勢武 神戸クラブ 188.37 67.99 120.38
5 大島光翔 明治大学 183.86 65.31 118.55
6 中村俊介 木下アカデミー 180.13 67.42 112.71
7 森本涼雅 木下アカデミー 172.23 65.46 106.77
8 菊地竜生 目黒日本大学高等学校 172.03 59.42 112.61
9 松岡隼矢 沖学園 170.33 63.00 107.33
10 門脇慧丞 法政大学 169.53 56.88 112.65
11 田内誠悟 名東FSC 166.21 56.73 109.48
12 高橋星名 京都宇治FSC 163.16 53.45 109.71

三浦佳生選手初優勝。ショートではジャンプのミスで7位スタートからの逆転優勝でした。フリーも転倒ありますのでノーミスではなく、ノーミスなら170点台後半までは出るわけですが、それでもなんでもこれで世界ジュニア内定です。鍵山優真選手も佐藤駿選手も手に入れられなかったタイトルを得るための挑戦権は確保しました。

2位は壷井達也選手。パーソナルベスト相当のスコアを出したのですが届かず。四回転、クリーンに決めていれば優勝でした。ここで勝てればジュニアグランプリファイナルのワイルドカードも、なんて記事を書きましたが、現実にはこの大会より前に、昨シーズン全日本ジュニアで優勝しながら世界ジュニアが中止になって出られなかった本田ルーカス剛史選手にその椅子は渡っていました。ただ、やはり三浦選手と二人、今のジュニアの中では抜けていますので、世界ジュニアの代表に選出されるのはケガさえなければ確実かと思われます。

三位は吉岡希選手が入りました。表彰台ラインが200点を超えなかったのは残念な感じがしますが、吉岡希選手自身にとってはパーソナルベスト相当のスコアになるはずです。3枠目がジュニア勢にちゃんと回って来るのか、ジュニア年齢のシニアに回っていくのか不透明な部分がありますが、こっちへよこせ、とアピールできる全日本選手権になるといいなと思います。

 

○三浦佳生選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   3.20 11.20 4.000
2 4S   9.70   3.49 13.19 3.714
3 4T+3T   13.70   3.42 17.12 3.571
4 FCSp4   3.20   0.77 3.97 2.286
5 3A+2T   9.30   1.60 10.90 2.143
6 4T< 8.36 X -3.80 4.56 -5.000
7 2A+1Eu+3F   10.01 X 1.38 11.39 2.571
8 CSSp3   2.60   0.73 3.33 2.714
9 StSq3   3.30   0.99 4.29 2.857
10 3Lo   5.39 X 1.08 6.47 2.286
11 CCoSp3   3.00   1.26 4.26 4.286
  TES   76.56   14.12 90.68  

四回転2種類3本構成。冒頭はトリプルアクセルだったりしますが平均GOE+4.000というすごい加点が入りました。そのあとの4種類二本もGOE平均が3.5以上。すごい評価です。2本目の四回転トーループは回転不足の転倒となりましたが、それ以外の要素はすべて平均GOEが+2.000以上という高い評価を受けました。スピンのレベル4が1つだけというようなところが課題な選手ではありますが、それでも技術点90点までは来ました。

ジャンプの構成が安定していない選手なのですが、四回転トーループをきっちり決め、ルッツを構成に戻してのノーミスなら技術点100点が見える、と言うとことまで来ています

 

○男子シングル 要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 三浦佳生 229.28 110.25 79.86 10.22 21.57 8.38
2 壷井達也 227.60 104.80 84.36 9.18 22.03 7.23
3 吉岡希 191.80 87.85 75.18 5.34 17.04 6.39
4 片伊勢武 188.37 98.55 61.15 -1.40 22.89 8.18
5 大島光翔 183.86 95.80 69.67 -7.71 18.64 7.46
6 中村俊介 180.13 90.05 66.12 -1.71 19.69 5.98
7 森本涼雅 172.23 89.20 60.44 -1.45 20.11 5.93
8 菊地竜生 172.03 86.40 66.13 -5.28 17.95 6.83
9 松岡隼矢 170.33 88.60 50.97 2.97 20.56 7.23
10 門脇慧丞 169.53 90.20 50.20 1.56 19.65 8.92
11 田内誠悟 166.21 78.80 59.77 0.76 21.11 5.77
12 高橋星名 163.16 79.25 59.20 -0.57 20.23 5.05

要素別のスコアを見ると意外な事実が浮かび上がってきます。四回転で勝ったみたいなことになっている三浦佳生選手ですが、実際にはジャンプで得たスコアは壷井達也選手に負けていました。ショートでの大きなミスをフリーでだいぶ取り戻したけれど、それでもジャンプの基礎点は壺井選手の方が高く、GOEでいくらか差は詰めたもののジャンプの合計点は壺井選手が上です。スピンも壺井選手が上。結局勝った要因はPCSで5点以上上回ったところにあった、という意外な姿でした。

 

世界ジュニアの代表争いは、女子でイレギュラーなことが起きたため、結局この時点で男子で優勝の三浦佳生選手しか決まっていません。女子も男子もあと2枠づつ。どちらも場合によってはシニアカテゴリーからの出戻りがありえます。男子は2番手と3番手の点差が離れている。女子はトップでも180点前後まででロシアだけでなく米韓にも200点超えがいる中でやや苦しい。こういった状況なので、シニア組でオリンピックや世界選手権に届かなかった選手が回ってくる可能性がかなりあるようにも見えるのですが、果たしてどうなるでしょうか?