まずは女子シングル。スコアの詳細を追うのは次回以降として今回は感想的なものになります。
○女子シングル最終結果
Pl | Name | 所属 | Total | SP | FS |
1 | 坂 本 花 織 | シスメックス | 234.06 | 79.23 | 154.83 |
2 | 樋 口 新 葉 | 明治大学/ノエビア | 221.78 | 74.66 | 147.12 |
3 | 河 辺 愛 菜 | 木下アカデミー | 209.65 | 74.27 | 135.38 |
4 | 三 原 舞 依 | シスメックス | 206.86 | 73.66 | 133.20 |
5 | 宮 原 知 子 | 木下グループ | 206.51 | 73.76 | 132.75 |
6 | 渡 辺 倫 果 | 法政大学 | 199.15 | 65.07 | 134.08 |
7 | 松 生 理 乃 | 中京大中京高校 | 198.77 | 72.31 | 126.46 |
8 | 住 吉 りをん | 駒場学園高校 | 189.16 | 67.39 | 121.77 |
9 | 吉 田 陽 菜 | 木下アカデミー | 187.44 | 61.35 | 126.09 |
10 | 柴 山 歩 | 木下アカデミー | 186.12 | 62.48 | 123.64 |
11 | 千 葉 百 音 | 東北高校 | 184.30 | 64.41 | 119.89 |
12 | 横 井 ゆは菜 | 中京大学 | 183.84 | 59.84 | 124.00 |
13 | 山 下 真 瑚 | 中京大学 | 179.61 | 61.84 | 117.77 |
14 | 荒 木 菜 那 | 中京大学 | 174.25 | 57.11 | 117.14 |
15 | 佐 藤 伊 吹 | 明治大学 | 171.86 | 59.38 | 112.48 |
16 | 松 原 星 | 明治大学 | 170.73 | 59.13 | 111.60 |
17 | 竹 野 比 奈 | 福岡大学 | 169.57 | 59.33 | 110.24 |
18 | 田 中 梓 沙 | 木下アカデミー | 168.45 | 63.92 | 104.53 |
19 | 大 庭 雅 | 東海東京FH | 164.96 | 55.69 | 109.27 |
20 | 籠 谷 歩 未 | 同志社大学 | 158.39 | 55.80 | 102.59 |
21 | 本 田 真 凜 | JAL | 156.53 | 55.73 | 100.80 |
22 | 浦 松 千 聖 | 中京大学 | 152.86 | 58.41 | 94.45 |
23 | 白 岩 優 奈 | 関西大学 | 145.89 | 56.93 | 88.96 |
24 | 竹 野 仁 奈 | 筑紫女学園大学 | 141.84 | 58.36 | 83.48 |
25 | 野 口 望々花 | 関西学院大学 | 55.36 | 55.36 | |
26 | 三 宅 咲 綺 | 岡山理科大学 | 53.50 | 53.50 | |
27 | 中 井 亜 美 | MFアカデミー | 52.65 | 52.65 | |
28 | 森 下 実 咲 | 関西大学 | 48.37 | 48.37 | |
29 | 新田谷 凜 | 中京大学 | 47.21 | 47.21 | |
30 | 青 木 祐 奈 | 日本大学 | 46.90 | 46.90 |
坂本花織選手圧勝。全日本2勝目。ショートプログラムが圧巻でした。強かった。フリーもシーズン当初はマトリックスの方がよかったな、オリンピックなんだしわかりやすくうけがいいプログラムにすればいいものを、と思っていましたが今回の完成形を見るとそんなこともなく、あれはあれこれはこれでやはり素晴らしいものでした。高難度ジャンプ抜きの世界最高傑作となってきている感じがします。いうなれば全盛期のメドベージェワ選手と勝負できる、というような存在になってきたのかな、と思いました。
樋口新葉選手、ついにショートフリー2本そろいました。2本そろうとこれくらいまで出ます、というスコアです。演技終了直後にガッツポーズが入るのは個人的には誰であろうとあまり好きではなくて、振付の完了とそのあと少し間をおいてからそういうのはしてほしいのですが、ライオンキングならそこまで含めて振り付けという感じでありでしたかね.(ロミオとジュリエットなんかだったら絶対だめですが)。ライオンキングという選曲もあっていたように感じます。
2位だとオリンピック団体戦メンバーも回ってくるはずです。女子シングルフリーは最後から2番目なので大勢は決している状態で回って来る可能性も高いですが、確実にカナダおよび中国かイタリアあたりの選手の上に出られるとよいなと思います。今回の勝因はトリプルアクセルではなくてジャンプの抜けがなかったことだと思いますが、本番もこの感じで行っていただけるとよいなと思います。
河辺愛菜選手3位表彰台。私は驚いたのですが、言われてみれば、4年前の坂本花織選手と似たようなコースではありました。シーズン前はちょっと圏外か候補選手としてぎりぎり扱ってもらえるか、くらいの位置にいて、グランプリ初戦はスコアが伸びず。しかし2戦目、同じ試合に日本のエースがいて優勝しているので少し目立ち切れなかったものの2位表彰台。シーズンベストも上位に上がってきての全日本というコース。4年前の坂本選手との違いは世界ジュニアで結果を出していないこと。逆にトリプルアクセルを持っていること、という強さの方もあります。本人は10点くらい間違ってるんじゃないかとか言ってましたが、昨シーズンの全日本でも200点は出してます。表彰台に乗ったのは驚きでしたがスコア的には驚くようなスコアでもなかったと思います。
三原舞依選手が4位。うーん、残念。たぶんノーミスで210点台後半。三原選手が基準になって、樋口選手ノーミスで超えられるか? 宮原選手もジャンプいくつ決まるか? で3人の勝負、となると思っていたのですが、200点台半ばに終わりました。アクセルのミスもあったのですが、それ以外ももう少し点が出ると思っていたのですが、案外伸びなかったなあ。四大陸選手権、オリンピック直前のメンバーなら優勝チャンスが普通にあるはずなので、勝っていただければと思います。
宮原知子選手が5位。連続オリンピックならず。回転不足が並ぶのは通常運転ですが、それ以外も全体的にフリーはちょっと印象が薄かったかなという感じがしました。昨年のトスカのインパクトと比べると弱い。それでも生き残るという芽が見えていたのですがルッツ転倒。難しいものですね。回転が足りるジャンプさえできれば今でも220点台の力なわけで。どのジャンプがではなくてすべてのジャンプがというところが、逆に、ちょっとの修正、ちょっとの改善でそこまで出来るのではないかとただの素人から見ると感じてしまうのですけれど。残念でした。なんだか過去の人扱いされていることもありますが、今シーズンのISUシーズンベスト3位は宮原知子選手です。
6位に渡辺倫果選手。本来ならユニバーシアードに出ていて全日本にはいなかったはずの選手。めぐりあわせでユニバーシアード中止になった結果全日本大躍進。フリーは圧巻でした。カルミナブラーナ。迫力ありました。四大陸選手権くらい出してあげたい気はしますが、ミニマムスコアもってないですね。どう考えても大会までにミニマムスコアを取りに行く時間もない(該当する試合もない)。と思っていたらまさかの世界ジュニア。言われてみれば確かにまだ大学1年生なので世界ジュニアへ出られます。ただ、世界ジュニアにしてもミニマムスコアは持っていないはずなので、1月か2月頭にB級大会にジュニアカテゴリーで派遣かと思われます。渡航して帰国して、コロナ大丈夫かなコロナ。本人にとっても、あとに続くジュニア勢にとっても先につながる非常に重要な大会になる世界ジュニア。トリプルアクセル跳んでの200点突破をお願いします。
松生理乃選手は7位。ショートは70点に乗せて史上初のフリー最終グループは全員70点台以上を演出しました。フリーは冒頭二つのジャンプで転倒。どうなることかと思いましたがその後はまずまずまとめて7位には残りました。本人の頭にあったかどうかはわかりませんが、中盤以降まとめたことでオリンピックは遠くても、なんとか四大陸が回ってきたのだろうと思います。むしろ世界ジュニアかと思っていたのですが、まあ四大陸なら四大陸でよいのだろうと思います。ピンクの衣装の似合う彼女に月光はどうかと思っていたのですが、案外いいな月光。
住吉りをん選手が8位。四回転トーループ決まらず、回転不足になりました。世界ジュニアのかかった大事な試合、安全策もあり得たのですが、そういった大事な試合で挑んでいき、かつ、失敗してもそれでもしっかりジュニア最高位は確保する。非常に有意義なチャレンジだったんだろうと思います。島田麻央選手登場前に、全日本選手権に初めて四回転トーループという足跡を付けました。これまでは失敗も含めても誰も4Tという記号を全日本選手権に付けた女子選手はいないはずです。世界ジュニアで決められるかどうか。世界ジュニア、来シーズン3枠というのは厳しいと思いますが、できればジュニアグランプリシリーズを7試合に2人づつ出せるという上位3か国に、韓国かアメリカを上回って入ってきてほしいです。
9位に吉田陽菜選手。ショートフリーのトリプルアクセル、どちらも着氷したもののGOEはマイナス。ケガがあったようで万全ではない中何とか180点台後半まで。ただ、残念ながら世界ジュニアには届きませんでした。濱田先生が世界ジュニアへ行かないのすごく久しぶりだと思います。来シーズンどうするんだろう。9位だからシニアに上がればチャレンジャーシリーズくらいはもらえそう。ただ、ランキングポイントないのでグランプリはまずない。ジュニアでもう1年やってジュニアグランプリに出た方がその先にはつなげやすいですが濱田組はさっさとシニアに上がるというのが従来からの基本線にも見える。世界ジュニアでジュニアグランプリ枠を日本がいくつ取って来るか次第で決まるのかもしれせん。惜しかったです。
10位に13歳柴山歩選手が入ってきました。新人賞。全日本ジュニアからジュニア内での順位も上げてきています。周りと比べるとまだまだ完全に子供感を発していますがフリーの技術点はオリンピック代表になった河辺愛菜選手を上回りました。トリプルアクセル入ってくれば面白いのですがジュニアのうちに完成してくれるでしょうか。とりあえず2月の国際大会、出してもらえるかなあ。
全日本ジュニア3位の千葉百音選手は世界ジュニアに届かず11位でした。柴山選手じゃないですが、デビューシーズンは子供感満載だったのですが高校生になってだいぶ大人感が出てきたかなと思いました。ジュニアで今回は4番目。住吉選手まで4.86差。コレオで転倒してなければもしかしてギリギリ住吉選手の上まで行ったという線もあったんでしょうか。残念。千葉選手の世代はジュニアグランプリへ2シーズン出られない状態で国際経験が積めていない。B級大会への派遣は千葉選手含め、厚めにお願いしたいです。
グランプリ経験組の横井ゆは菜選手、山下真瑚選手12位、13位。二人とも過去最低順位になります。二人とも国際大会の200点経験者。復活してほしいんだけどなあ。横井選手は引退しそうな雰囲気までありましたが、今回の演技見る限りはそれはなしってことで大丈夫かなあ。スコアはともかくクイーンメドレー良かったし。
西日本勢は苦戦した選手が多かったでしょうか。そんな中で荒木菜那選手は14位まで入ってきて、竹野比奈選手は17位、ベテランの今大会最年長大庭雅選手が18位に中野組の籠谷選手が20位。来シーズンは西日本の枠は狭まる計算にたぶんなります。
スピンの竹野姉妹。姉妹でショートフリー合計12回のスピンオールレベル4 さすがです。比奈選手は引退予定。国際舞台で見てみたい選手だったんですけどねえ。その最後の大会で姉妹でフリーまで進んだのは良かったと思います。姉妹同時フリー進出は村主姉妹、浅田姉妹、村元姉妹に次ぐ今世紀4組目ですかね。
東日本勢では佐藤伊吹選手が15位、松原星選手が16位と入ってきました。佐藤伊吹選手は東日本6位。本来なら全日本の出場権を得られていないのですがユニバーシアード代表者は枠外扱いだったため、足された枠に入った選手。それがこの本大会では15位に躍進しました。東日本の枠取りに大貢献。日本女子の中堅層の厚さの象徴みたいな流れでした。
ノービスからジュニアの時代に頂点を極めていた大学2年生世代が苦戦しています。本田真凜選手21位、白岩優奈選手24位、青木祐奈選手30位。本田真凜選手はなんだかんだと実はしぶとく勝ち抜いていく選手で、国際大会でもしぶとくポイントを取っていたので今日現在でも松生理乃選手より世界ランクが上だったりするのですが、今回も逆転で全日本の出場権を掴み、ギリギリでフリーに進出してきました。たぶんいい演技をするだけなら三回転3種類5本とダブルアクセルで構成した方がいいのだと思いますが、今シーズン一度もまともに飛べていないフリップをそれも2本も入れたあたりが何とか点を取っていきたいという意志は感じました。技術的には依然と比べると何とも言い難いですが、ふりーのLoversは、やっぱりこういうのは似合うんだよなあ、と感じさせられました。コロナでJALは経営難なわけですが、そっちの面は結構心配です。
白岩優奈選手も4年前は代表争いの一角にいました。6年前はちょうど今回の柴山歩選手のような立ち位置で出てきて5位にも入った選手。ここ数年元気ないんですよねえ・・・。今回もさえない表情が見ていて苦しくなります。
青木祐奈選手は14年全日本ノービスA優勝。伝家の宝刀ルッツループ、なかなか決まらないですねえ。都築先生を全日本に連れてこられるのは青木祐奈選手だけなので、何とか頑張ってもらえたらなあ・・。
引退表明の新田谷凜選手は29位でフリーに進めませんでした。国際大会で見たい選手だったのですがシニアに上がってからはチャレンジャーシリーズ1試合に出たくらいでしたかね。ユニバーシアードでトゥクタミシェワ選手に勝って銀メダルというハイライトはありましたが、ISUの大会ではグランプリ、四大陸などには届きませんでした。今回は、ちょっと調子悪すぎましたかね。だからといってもう一度引退撤回ということもないのだろうと思います。残念でしたが、お疲れさまでした。大学出たらほぼ引退、フィギュアスケート界の課題だなあ・・・。
今回の全日本、本当に残念なのは紀平梨花選手と川畑和愛選手。ケガと、交通事故。交通事故ってなかなかひどい話ですね。中堅選手が全日本を欠場すると、翌シーズン以降の国際舞台への接続がいきなり厳しくなるのどうにかならないかなあ、と思います。
昔と比べると全体が底上げされたなあ、というのを本当に強く感じる女子シングルでした。3-3降りて55点出してもフリー進めないなんて、大変な時代になったものです。