全日本選手権21 女子レビュー3

全日本選手権21 女子レビュー3

 

女子シングルのレビューも3回目。今回は各要素を見ていくことになります。

 

○フリー進出24人のショートフリー合わせた要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 坂  本  花  織 234.06 111.05 65.27 16.76 25.26 15.72
2 樋  口  新  葉 221.78 105.73 69.64 5.92 24.34 16.15
3 河  辺  愛  菜 209.65 95.34 74.79 3.99 21.77 13.76
4 三  原  舞  依 206.86 99.31 59.90 7.46 24.89 15.30
5 宮  原  知  子 206.51 107.09 61.78 -2.20 24.86 15.98
6 渡  辺  倫  果 199.15 86.27 69.16 7.21 22.97 13.54
7 松  生  理  乃 198.77 94.20 63.98 4.23 25.23 13.13
8 住  吉  りをん 189.16 89.09 68.93 -5.78 23.57 14.35
9 吉  田  陽  菜 187.44 82.38 75.68 -3.94 21.73 12.59
10 柴  山      歩 186.12 77.44 65.60 8.83 23.06 11.19
11 千  葉  百  音 184.30 81.93 63.21 7.47 22.39 10.30
12 横  井  ゆは菜 183.84 86.61 60.95 4.77 21.19 11.32
13 山  下  真  瑚 179.61 87.91 63.67 -2.82 19.86 11.99
14 荒  木  菜  那 174.25 79.47 54.43 7.17 22.31 10.87
15 佐  藤  伊  吹 171.86 77.85 56.55 2.54 22.05 12.87
16 松  原      星 170.73 73.79 59.38 3.39 22.16 12.01
17 竹  野  比  奈 169.57 77.97 53.45 0.77 23.91 13.47
18 田  中  梓  沙 168.45 84.03 55.38 -5.02 21.35 13.71
19 大  庭      雅 164.96 78.94 54.00 -0.25 19.89 12.38
20 籠  谷  歩  未 158.39 70.70 57.78 -0.32 21.51 9.72
21 本  田  真  凜 156.53 83.22 38.51 3.07 19.72 13.01
22 浦  松  千  聖 152.86 75.10 53.04 -6.13 20.18 10.67
23 白  岩  優  奈 145.89 82.09 44.44 -6.19 18.32 10.23
24 竹  野  仁  奈 141.84 70.90 43.72 -3.27 22.10 10.39

女子はフリー進出24人並べてみます。

PCSは坂本選手が110点超え。国際大会でこの水準まで出したことはありませんが、日本ではトップのPCSを叩きだすというのは同様です。それに次ぐのが宮原知子選手、樋口新葉選手、というのも国際大会同様。三原舞依選手は100点に届かず。河辺選手は90点台半ばで松生選手が前半。結局上位6人のPCSの序列は全日本でも国際大会とかわりませんでした。

中位以下では住吉りをん選手がグランプリ経験者の山下真瑚選手や横井ゆは菜選手より高いPCSをもらっています。柴山選手はPCSが極端に低い。PCSで100点もらえるようになればトータル210点程度まで出る計算です。吉田陽菜選手、千葉百音選手含め、このあたりのジュニア陣はPCSで100点もらえる選手になれば200点までは出ます。

中位以下では田中梓沙選手が80点を超えてそれなりのPCS。また本田真凜選手、白岩優奈選手といったグランプリ経験組もさすがに近い順位の選手と比べて高いPCSを得ています。

 

ジャンプの基礎点トップはジュニアの吉田陽菜選手でした。河辺愛菜選手が2番目。この二人がショートフリーでトリプルアクセルを合わせて2本入れる選手です。ジャンプの基礎点が75点前後というのはロシア選手権のフロミフ選手並みです。

70点を超えたのはこの二人までで、次いで69点台に樋口新葉選手と渡邊倫果選手。この二人はフリーでトリプルアクセルを決めました。ちなみにフリーの技術点は渡辺倫果選手が75.73とわずかに0.02ですが樋口新葉選手を上回り全体2位になっています。その次が68点台を出した住吉りをん選手で、回転不足ながら4回転が入っている選手です。この領域まで出すにはトリプルアクセル以上のジャンプが必須です。

その下、一般ジャンプ陣とでも言いましょうか、高難度ジャンプ無し組では柴山歩選手が65.60で一番高い基礎点です。柴山選手のフリー技術点は71.57で河辺愛菜選手をも上回って全体4位でした。

坂本花織選手はジャンプの基礎点は全体6番目。回転不足も抜けもなく、高難度ジャンプ無しの中で出来るだけのことをミスなくした結果がこのスコアになっています。

上位陣では三原舞依選手が60点を割って全体13位。フリーのアクセルが1回転半になって以降の構成でだいぶ基礎点から損した形です。

 

ジャンプのGOEは坂本花織選手が群を抜いて稼ぎました。ただ一人二桁、それも10点台後半まで稼いでいます。これくらい稼がないと高難度ジャンプ無しで230点には届きません。

ジャンプの加点2位は柴山歩選手でした。次いで千葉百音選手。このあたりはジュニアらしい点の取り方です。その次が三原舞依選手でした。安定した滑りを見せることができる選手。そこがこのGOEには出ているのですが、アクセルミス以降が非常に残念でした。逆に中位上位では宮原知子選手、住吉りをん選手、吉田陽菜選手といったあたりはGOEマイナスでした。宮原選手はとにかくここが弱点、あとの二人は高難度ジャンプのリスクにより生じたものと言ってよいと思います。

 

スピンは坂本花織選手が最高点。松生理乃選手がそれに続きます。25点台はこの二人まで。24点台後半まで出したのが三原舞依選手と宮原知子選手。宮原選手は一つレベル3になったのが響いていてスピンのGOEはトップでした。上位では河辺愛菜選手はここが弱点。スピンオールレベル4ながら加点が伸びずに他の上位選手と差がついています。

中位以下では竹野比奈選手が23.91で全体の6番目。さすがのスピン好きを公言する竹野選手、最後の全日本でもいいスピンを見せてくれました。ジュニア組では住吉選手と柴山選手が23点台まで出しています。

 

ステップ系要素は樋口新葉選手がただ一人16点台でトップでした。宮原選手、坂本選手が続きます。世界でもステップの評価が高い3人です。唯一、ワリエワ選手とも勝負になる要素です(それでも今シーズンの最高点はワリエワ選手ですが)。河辺選手と松生選手は13点台で少し差があります。

ジュニア勢では住吉理をん選手が14点台で全体4番目です。中位以下ではやはりジュニアの田中梓沙選手が13.71まで出していて河辺選手に次いで全体7番目。竹野比奈選手や本田真凜選手も13点台で上位の若手に近いスコアを出しています。千葉百音選手や柴山歩選手は10点台11点台でステップは弱点になっていて、柴山選手は住吉選手との点差はまさにステップ系要素の点差だったりしました。

 

○今大会のトリプルアクセル以上の高難度ジャンプ

  Name   Elements    Base   GOE Scores  
FS 河辺愛菜 1 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
SP 河辺愛菜 1 3A   8.00   0.91 8.91 1.111
FS 渡辺倫果 1 3A   8.00   0.69 8.69 0.889
FS 樋口新葉 1 3A   8.00   -1.60 6.40 -2.000
FS 吉田陽菜 1 3A   8.00   -1.71 6.29 -2.111
SP 吉田陽菜 1 3A   8.00   -2.17 5.83 -2.667
FS 住吉りをん 1 4T< < 7.60   -3.80 3.80 -5.000

今大会では4回転トーループ全日本選手権に初お目見えしました。挑んだのは住吉りをん選手。残念ながら回転不足の転倒に終わりましたが、一つ歴史に名を刻んだ形になります。

トリプルアクセルに挑んだのは4人で6回。河辺愛菜選手はショートフリーで2回飛んで2回ともプラス評価の成功ジャンプを決め、これがオリンピック出場権を得る原動力となりました。吉田陽菜選手もショートフリー2回飛んでいますがこちらは両方ともGOEがマイナス。ただししっかり着氷しているのでダブルアクセルの代替としては十分です。

フリーで一回飛んだのが渡辺倫果選手と樋口新葉選手。渡辺倫果選手はトリプルアクセル初成功なはずです。そのままの勢いで総合6位に駆け上がりました。樋口新葉選手は着氷しましたがGOEはマイナスです。

今大会は高難度ジャンプは全員が冒頭で挑みました。これが2つ目以降の要素にコンビネーションで入ってくるようになると、もう一段階レベルが上がることになると思います。

 

全体的にレベルが上がってるなあ、と感じさせられる試合でした。ロシアのトップ層にはさすがにかないませんが、それ以外の国には負けないスコアを上の方は出していますし、中堅層も確実に底上げされています。そこに高難度ジャンプも何人もの選手が入れてくるようになってきています。

オリンピック代表争いだけでなく、全日本に出ること、フリーに進むこと、上位に入って強化選手に指定されること、それぞれのハードルがどんどん上がってきています。選手たちにとって大変な時代になりました。

ここに紀平梨花選手がいれば完璧だったのですが、けがで欠場。ケガのリスク、というのも高まっているんだろうな、と思います。

次はオリンピック、という選手だけでなく、四大陸選手権の選手もいれば、インカレ、インターハイが次の試合、という選手もいます。年が明けてシーズン後半、それぞれの選手のそれぞれの立ち位置での健闘を祈ります。