ヨーロッパ選手権22 男子もロシア

前回の女子シングルに続いて男子シングルのレビューです。

 

○男子シングル フリー進出24選手

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mark KONDRATIUK RUS 286.56 99.06 187.50
2 Daniel GRASSL ITA 274.48 91.75 182.73
3 Deniss VASILJEVS LAT 272.08 90.24 181.84
4 Andrei MOZALEV RUS 265.69 99.76 165.93
5 Evgeni SEMENENKO RUS 260.00 99.04 160.96
6 Morisi KVITELASHVILI GEO 253.91 92.76 161.15
7 Kevin AYMOZ FRA 252.21 80.39 171.82
8 Vladimir LITVINTSEV AZE 244.70 83.46 161.24
9 Gabriele FRANGIPANI ITA 238.95 81.79 157.16
10 Michal BREZINA CZE 238.38 71.60 166.78
11 Lukas BRITSCHGI SUI 218.91 72.96 145.95
12 Ivan SHMURATKO UKR 214.57 82.13 132.44
13 Nikita STAROSTIN GER 214.40 72.12 142.28
14 Arlet LEVANDI EST 208.52 70.04 138.48
15 Nikolaj MEMOLA ITA 206.53 73.98 132.55
16 Paul FENTZ GER 206.06 76.76 129.30
17 Maurizio ZANDRON AUT 193.91 70.75 123.16
18 Kornel WITKOWSKI POL 193.29 66.26 127.03
19 Valtter VIRTANEN FIN 190.97 67.34 123.63
20 Davide LEWTON BRAIN MON 190.67 67.31 123.36
21 Konstantin MILYUKOV BLR 182.59 69.10 113.49
22 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 178.67 66.20 112.47
23 Burak DEMIRBOGA TUR 168.03 67.30 100.73
24 Slavik HAYRAPETYAN ARM 167.84 67.75 100.09

優勝はロシアのコンドラチュク選手。ロシア選手権優勝の勢いそのままにヨーロッパ選手権まで勝ってしまいました。これまでの国際大会でのパーソナルベストは250.08 今シーズンに入る前はISU公認の試合に出たこともなく、地元勢優先だった昨シーズンのロステレコム杯にすら出場出来ていなかった18歳がいきなり優勝してしまいました。大変驚きです。

2位にはイタリアのグラスル選手。ショート5位からの逆転表彰台でした。前回の20年は4位だったところから今回は表彰台に上ってきました。今シーズンはグランプリシリーズでも初表彰台があり上り調子です。

3位にはラトビアのデニスバシリエフス選手が入って来ました。もう22歳になったんですね。表彰台の3人の中ではこれでも最年長です。ヨーロッパ選手権は早くも6回目。年齢制限クリア後フル出場でついにチャンピオンシップの表彰台にたどり着きました。

4位にロシアのモザレフ選手。ショートを首位で折り返しましたがフリーで伸びず4位に終わりました。

5位に同じくロシアのセメネンコ選手。コリヤダ選手の欠場で急遽補欠繰上りでの出場となりました。ロシア勢の中で3番手。ロシア選手権では4位。オリンピック代表選考、厳しくなったんでしょうか。

6位にはジョージアのクビテラシビリ選手が入りました。前回大会3位でしたが今回は6位に終わりました。エテリ組による男女同時制覇はならず。

ケビンエイモズ選手が7位。あまり伸びてきていませんが252.21はシーズンベスト。オリンピックに向けて調子を上げつつはあるでしょうか。

チェコのベテラン31歳のブレジナ選手は10位に終わりました。ヨーロッパ選手権は14回連続14回目の出場。年齢制限クリア後皆勤なはずです。オリンピックも4回目の出場が内定済み。どうもこれが最後なようですが、オリンピックでの健闘も期待したいです。

 

○総合上位6選手のショートプログラム

  Mark KONDRATIUK Daniel GRASSL Deniss VASILJEVS Andrei MOZALEV Evgeni SEMENENKO Morisi KVITELASHVILI
1 4T 4Lz! 3F! 4T+3T 4T+3T 4S+3T
2 3A 3Lz!+3T 3A 4S 4S 3A<
3 CSSp4 FSSp4 CCSp4 FCSp4 CCoSp4 FCSp4
4 4S+3T 3A FSSp4 3A 3A 4T
5 StSq4 StSq3 3Lz+3T CSSp4 CSSp4 StSq4
6 FCSp3 CCSp4 CCoSp4 StSq4 StSq3 CSSp4
7 CCoSp4 CCoSp4 StSq4 CCoSp4 FCSp4 CCoSp3
Base 45.99 43.40 38.01 45.80 45.20 43.85
GOE 10.60 6.42 8.73 10.93 11.13 7.27
PCS 42.47 41.93 43.50 43.03 42.71 41.64
Total 99.06 91.75 90.24 99.76 99.04 92.76

上位6人では4回転2本が2人。ロシア勢とクビテラシビリ選手が2本。ここに載らない選手では失敗していましたがケビンエイモズ選手も2本構成でした。4回転2本の3人は45点台の基礎点。セメネンコ選手はステップレベル3な分低く、コンドラチュク選手はスピンレベル3で低くなる分をコンビネーションが1.1倍なことで補いました。

グラスル選手は4回転1本でルッツが入っています。バシリエフス選手は4回転無し。4回転が入らないと基礎点は40点を割り込みます。

GOEで10点以上稼いだのはロシアの3人。基礎点高くGOEも稼いだことで3人そろって99点台という高いスコアでショートプログラムを折り返しました。

PCSトップはバシリエフス選手でした。基礎点低めですがPCSの方で稼いだという姿。男子も女子もショートプログラムの構成はジャンプ2本飛んでスピンを挟んで1.1倍ジャンプそして一番最後はスピンが来る、と判で押したように順番決まっているのですが、バシリエフス選手はジャンプ2つまでは同じですが、スピンは2つ入れてから最後のジャンプが入り、ステップも一番最後の要素に持ってくる、という構成で他の選手との違いを出しています。

 

○総合上位6選手のフリーの構成

  Mark KONDRATIUK Daniel GRASSL Deniss VASILJEVS Andrei MOZALEV Evgeni SEMENENKO Morisi KVITELASHVILI
1 4T 4Lz 4Sq 4T+3T 4T+1Eu+3S 4S
2 3A 4F 3A+2T 3S<< 2S 3A+3T
3 3A+2Tq 4Lo+1Eu+3S 3A 3Lo 4T 4T+2T
4 3Lo 3A 3Lo 3Aq+2T 3F+2T 3Lo
5 FCSp3 CSSp4 StSq4 FCSp4 CCoSp4 FCSp4
6 4S+1Eu+3S 3Lz!+3T FSSp4 ChSq1 3A+2T StSq2
7 4S 3F+3T 3F!+3T 4T 3Aq 2T
8 3Lz+3T 3Lz! 3Lz+1Eu+3S 3A< StSq4 3F+1Eu+3S
9 CSSp4 FCCoSp4 3Lz 3Lz+1Eu+3S* ChSq1 4Tq+2T*+REP
10 StSq3 StSq4 ChSq1 StSq4 3Lo FCCoSp3
11 CCoSp4 ChSq1 CCoSp4 CSSp4 CSSp3 ChSq1
12 ChSq1 CCoSp4 FCCoSp4 CCoSp4 FCSp4 CCoSp4
Base 85.03 90.75 77.51 70.33 72.32 72.76
GOE 12.45 9.56 15.61 7.82 3.20 4.73
PCS 90.02 82.42 88.72 87.78 85.44 84.66
Total 187.50 182.73 181.84 165.93 160.96 161.15

4回転が4本構成に入ったのは結局コンドラチュク選手のみでした。グラスル選手はいつものルッツフリップループという3本構成、クビテラシビリ選手はサルコウ1本にトーループを飛びなおし含めて2本の合計3本、セメネンコ選手はトーループ2本にサルコウ1本のつまりが抜けて結局2本、モザレフ選手も同じでトーループ2本にサルコウは決まらずの2本です。そしてバシリエフス選手がqマーク付きながらもサルコウ1本決めてきました。

基礎点は4回転は3本ながら難しい方3種類で、セカンド3回転も2本使える形で組んだグラスル選手が90.75まであってトップです。4回転4本のコンドラチュク選手は85.03で2番目。その次は下位の選手で70点台後半まで出した選手が2人いるのですが、全体5番目にバシリエフス選手が来ます。4回転は1本でしたが全体をミスなく滑ったことで、2本3本入っている選手よりも高い基礎点構成となりました。

ということでGOEはバシリエフス選手が上位選手の中では一番稼いでいます。ただ、全選手トップは総合では10位に終わったブレジナ選手でした。4回転が結局はいらなかったので基礎点は低くなりましたが全要素プラス評価の素晴らしい滑りで下。

PCSは優勝したコンドラチュク選手がトップでバシリエフス選手が2位、モザレフ選手が3位でした。

 

○フリー進出24選手の要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mark KONDRATIUK RUS 286.56 132.49 102.22 14.86 22.75 14.24
2 Daniel GRASSL ITA 274.48 124.35 104.25 7.82 24.96 13.10
3 Deniss VASILJEVS LAT 272.08 132.22 85.02 13.07 26.46 15.31
4 Andrei MOZALEV RUS 265.69 130.81 85.93 9.66 24.78 14.51
5 Evgeni SEMENENKO RUS 260.00 128.15 88.32 5.68 23.83 14.02
6 Morisi KVITELASHVILI GEO 253.91 126.30 88.21 4.86 23.08 12.46
7 Kevin AYMOZ FRA 252.21 128.20 88.90 -3.98 24.78 15.31
8 Vladimir LITVINTSEV AZE 244.70 117.32 91.75 3.50 20.69 12.44
9 Gabriele FRANGIPANI ITA 238.95 113.50 92.83 0.11 21.34 12.17
10 Michal BREZINA CZE 238.38 122.55 80.15 2.43 21.55 13.70
11 Lukas BRITSCHGI SUI 218.91 109.60 89.09 -14.15 21.00 13.37
12 Ivan SHMURATKO UKR 214.57 113.21 70.46 -5.24 24.45 12.69
13 Nikita STAROSTIN GER 214.40 107.69 73.33 0.73 22.39 11.26
14 Arlet LEVANDI EST 208.52 108.54 65.65 -2.46 23.55 14.24
15 Nikolaj MEMOLA ITA 206.53 105.07 70.62 -1.94 21.86 10.92
16 Paul FENTZ GER 206.06 108.84 73.44 -4.43 19.69 10.52
17 Maurizio ZANDRON AUT 193.91 104.95 69.84 -11.36 18.58 12.90
18 Kornel WITKOWSKI POL 193.29 96.85 72.01 -4.40 18.74 11.09
19 Valtter VIRTANEN FIN 190.97 102.42 61.31 -4.44 20.53 13.15
20 Davide LEWTON BRAIN MON 190.67 98.34 59.44 -1.49 22.44 11.94
21 Konstantin MILYUKOV BLR 182.59 100.59 73.43 -15.54 17.33 9.78
22 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 178.67 94.84 63.03 -5.33 17.34 10.79
23 Burak DEMIRBOGA TUR 168.03 93.69 49.21 -2.11 17.33 9.91
24 Slavik HAYRAPETYAN ARM 167.84 98.68 52.23 -8.29 18.32 8.90

トータルの要素別を見てみます。PCSはコンドラチュク選手がトップで132.49 平均9.00で135点ですので、平均は8点台にとどまったことになります。バシリエフス選手、モザレフ選手も130点台までは出してきました。グラスル選手はPCSが弱点なようで全体7番目でした。

ジャンプの基礎点はグラスル選手がトップ。100点に乗せたのはコンドラチュク選手と二人でした。バシリエフス選手は85点台で全体の10番目です。

ジャンプで加点を稼いだのはコンドラチュク選手でした。バシリエフス選手も二桁の加点を得ています。バシリエフス選手はジャンプの基礎点は10位ですが、ジャンプで得た得点としては3位にまで上がります。

スピンのトップはバシリエフス選手。ただ一人26点台です。今シーズン国際大会で26点台を出したシニアの男子はジェイソンブラウン選手、ミハイルコリヤダ選手に次いで3人目です。グラスル選手はスピンが得意な印象はありませんが24.96で全体2位のスコア。モザレフ選手とケビンエイモズ選手が24.78で並んで3番目でした。

ステップ系要素もバシリエフス選手が15.31でトップ。ケビンエイモズ選手も並んで15.31でした。

 

ヨーロッパ選手権は前回の表彰台ラインは246.71と250点を割っていました。表彰台ラインが272.08と270点を超えてくるのは初めてのことです。北米アジアが強いのでオリンピックや世界選手権で、フェルナンデス選手以降はなかなかヨーロッパ勢が表彰台に絡めなくなってきているのですが、270点を超えてくれば入賞争いくらいまでは十分入ってきます。

また、男子シングルはオリンピックでは団体戦の鍵になる種目かと思っています。近い力を持った選手が多い。ロシア、イタリア、ジョージア、中国、カナダあたりは順位がどう変わるかわからない。今回ヨーロッパ勢がそれなりの力をしっかり見せたことで、その色合いははっきり強くなったように感じます。

四大陸選手権と違い、ケガ欠場以外は各国フルメンバーを送り込んできた印象のヨーロッパ選手権北京オリンピック団体戦まで3週間ほどという時期でしたが、もう一度調整しなおしてきて、オリンピックではもう一段上の領域を見せてもらえたらと楽しみにしています。