世界選手権22 男子シングルプレビュー

前回の女子に引き続いて男子のプレビューです。男子は女子よりもメンバーの直前変更が多い印象です。ロシアの影響度が一番小さい種目ではあったのですが、もっと大きな影響力を持つ選手たちが離脱してしまいました。まあ、それはそれで、オリンピックシーズンの世界選手権なんてそんなもの、という範疇のような感じはします

なお、以下で見ていくスコアはクープドプランタンのショートプログラムまで加味したものです。フリーは加味されていません。時間的な問題によるものです

 

○今シーズンの戦績

Name   Season best 2nd best Worst National
Yuma KAGIYAMA JPN 310.05 286.41 277.78 292.41
Vincent ZHOU USA 295.56 288.26 260.69 290.16
Shoma UNO JPN 293.00 290.15 270.68 295.82
Junhwan CHA KOR 282.38 273.22 214.24 283.31
Daniel GRASSL ITA 278.07 274.48 221.43 273.96
Deniss VASILJEVS LAT 272.08 254.48 217.68  
Kazuki TOMONO JPN 268.99 264.19 245.11 263.67
Morisi KVITELASHVILI GEO 268.62 266.33 226.61  
Keegan MESSING CAN 265.61 255.07 238.34 258.03
Ilia MALININ USA 260.69 245.35 214.64 302.48
Matteo RIZZO ITA 255.84 250.47 234.40 262.98
Kevin AYMOZ FRA 254.80 252.21 228.08 277.64
Roman SADOVSKY CAN 253.80 217.73 207.62 247.60
Adam SIAO HIM FA FRA 250.15 243.78 217.52 257.68
Vladimir LITVINTSEV AZE 244.70 239.19 218.80  
Mihhail SELEVKO EST 241.52 221.11 195.79 183.17
Camden PULKINEN USA 237.97 208.99 179.50 260.41
Mikhail SHAIDOROV KAZ 234.67 207.03 187.07  
Sihyeong LEE KOR 229.14 223.18 209.64 240.84
Ivan SHMURATKO UKR 223.29 214.57 190.83 229.25
Mark GORODNITSKY ISR 222.32 204.62 166.09  
Maurizio ZANDRON AUT 220.81 219.97 184.73 214.78
Nikolaj MAJOROV SWE 220.78 198.74 188.83  
Lukas BRITSCHGI SUI 218.91 218.56 211.09 240.41
Donovan CARRILLO MEX 218.13 208.41 170.08  
Nikita STAROSTIN GER 214.40 208.96 180.44 178.94
Vladimir SAMOILOV POL 211.57 190.35 190.35 187.54
Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 210.36 187.72 178.46 215.98
Adam HAGARA SVK 210.10 208.31 162.41 180.91
Burak DEMIRBOGA TUR 203.28 194.49 168.03 235.33
Graham NEWBERRY GBR 202.34 193.52 182.33 212.52
Aleksandr VLASENKO HUN 200.76 178.48 143.82 160.98

シーズンベスト1位は鍵山優真選手になっています。ここ2年、シニアに上がってからの国際大会で負けた相手はネイサンチェン選手だけ。シニア本格参戦前に出た4大陸選手権でも負けた相手は羽生結弦選手とジェイソンブラウン選手の2人。というわけで、シニアの国際大会で負けたことのある相手が今大会には誰もいない、ということになります。当たり前の大本命です。

オリンピック個人戦をコロナ欠場したヴィンセントジョウ選手がシーズンベスト2番手。オリンピックのリベンジというかコロナへのリベンジをしたいという立ち位置。出来不出来の差が大きい選手ですが世界選手権に合わせてこられれば戴冠できるチャンスも十分ありそうです。

宇野選手が3番手。セカンドベストはトップです。安定感があるというより一定程度ミスが出てこれくらいのスコアになる、という今シーズンなようです。構成的には上位のミスを待たずとも自分のミスを減らせば自力で頂点に立つチャンスはありそうですが果たしてどうなるか?

チャジュンファン選手とグラスル選手がオリンピックのパーソナルベストでそれぞれシーズンベスト4位5位にいます。まだ300点を出すのは構成的に厳しそうですが、それぞれノーミスならもう少しスコアを出すことは出来ます。表彰台争いに絡んでいくことが出来そうな位置です。

その下がバシリエフス選手。ヨーロッパ選手権3位のスコアがシーズンベスト。世界選手権の最高位は4年前の6位です。最高位更新のチャンスかもしれません。

友野一希選手はシーズンベスト7位です。惜しくも勝ち切れなかった四大陸がシーズンベスト。上位3人がベストスコアで見ると強いので表彰台争いは厳しいは厳しいのですが、代役男としてはこのシチュエーションは強いはず。

その下の260点台の3人。クビテラシビリ選手はどっぷりモスクワに漬かってると思うのですがコーチ連れでこの試合に出てくるかどうか。メッシング選手はオリンピック団体戦に出られず個人戦は直前乗り込みで11位に終わっていますが世界選手権を万全な状態で迎えられているかどうか。アメリカのマリニン選手はナショナル選手権で300点を出していますが国際大会ではここまで。世界ジュニアの優勝候補ですがその前に、アメリカ3枠確保の大役を背負うことになりました。

 

ショートプログラム シーズンベスト上位20人

Name   Season best 2nd best Worst National
Yuma KAGIYAMA JPN 108.12 100.64 80.53 95.15
Shoma UNO JPN 105.90 105.46 89.07 101.88
Vincent ZHOU USA 102.53 99.51 97.35 112.78
Junhwan CHA KOR 99.51 98.96 74.47 98.31
Morisi KVITELASHVILI GEO 97.98 95.37 58.53  
Kazuki TOMONO JPN 97.10 95.81 77.76 87.79
Daniel GRASSL ITA 95.67 91.75 70.88 96.66
Keegan MESSING CAN 93.28 93.24 85.03 84.38
Kevin AYMOZ FRA 93.00 80.39 58.14 86.57
Deniss VASILJEVS LAT 90.24 89.76 84.46  
Adam SIAO HIM FA FRA 89.23 86.74 67.60 95.31
Matteo RIZZO ITA 88.63 84.78 62.57 88.08
Roman SADOVSKY CAN 84.59 76.10 62.77 77.17
Ilia MALININ USA 84.55 81.31 67.58 103.46
Vladimir LITVINTSEV AZE 84.15 83.46 80.54  
Camden PULKINEN USA 83.47 75.51 55.53 90.16
Mihhail SELEVKO EST 82.61 79.86 62.16 69.68
Ivan SHMURATKO UKR 82.13 78.11 64.27 82.18
Nikolaj MAJOROV SWE 81.48 78.54 67.02  
Sihyeong LEE KOR 79.95 79.13 65.69 73.68

100点を今シーズン持っているのは3人。トータルのシーズンベスト上位の3人です。鍵山選手宇野選手はセカンドベストも100点台。普通にやれば100点に乗るという位置にいます。3人とも100点に乗せてのフリー勝負というのが一番ありそうな展開でしょうか。

チャジュンファン選手はまだ100点に乗っていないですがそれに近いスコアを何度も出してきています。そろそろ出るか、好調をキープできずに崩れるか。クビテラシビリ選手もショートは結構点が出てきますしそろそろ届きそうにも感じますが崩れる時の崩れ方がひどいのですが、今回はどっちに出るか。

友野選手がその下。90点台中盤から後半までは出せてきている。表彰台を狙うには100点まで欲しいです。上位陣の中ではPCSが伸びていないのですが、ここの評価が上がってきてノーミスすれば100点はあるかもしれません。

グラスル選手はショートの4回転はルッツ1本。このルッツの出来でスコアがほぼ決まりそうな感じがします。ここでGOE+4級の出来なら100点が見えてくる

その下にメッシング選手、エイモズ選手、バシリエフス選手、表現型で評価の高い見ごたえある演技をする選手たちがいます。最終グループ入りできるかどうか、少なくとも第3グループに入って生放映されるところにいてほしい選手たちです。

 

○フリー シーズンベスト上位15人

Name   Season best 2nd best Worst National
Yuma KAGIYAMA JPN 208.94 201.93 179.98 197.26
Vincent ZHOU USA 198.13 186.88 161.18 177.38
Shoma UNO JPN 187.57 187.10 181.21 193.94
Daniel GRASSL ITA 187.43 182.73 150.55 177.30
Junhwan CHA KOR 182.87 174.26 139.77 185.00
Deniss VASILJEVS LAT 181.84 167.41 132.93  
Matteo RIZZO ITA 176.18 173.02 158.90 174.90
Ilia MALININ USA 176.14 164.04 134.57 199.02
Keegan MESSING CAN 172.37 168.03 145.06 173.65
Kazuki TOMONO JPN 171.89 168.38 147.44 175.88
Kevin AYMOZ FRA 171.82 164.10 159.07 191.07
Morisi KVITELASHVILI GEO 170.96 170.64 159.66  
Roman SADOVSKY CAN 169.21 144.79 122.60 170.43
Adam SIAO HIM FA FRA 163.41 158.82 149.92 162.37
Mihhail SELEVKO EST 161.66 138.50 121.28 113.49

フリーは鍵山選手がただ一人200点台のシーズンベストです。オリンピックの団体戦個人戦と続けて200点台。3戦連続200点を出せると18歳で戴冠する姿が見られそうです。

ヴィンセントジョウ選手いい時と悪い時の差が激しい。<とqが多い選手なのでジャンプの回転がどうか、テクニカルコントローラーとの相性がどうか。これでスコアがだいぶ変わりそうです。

宇野選手のシーズンベストは180点台。ワーストでも180点台。シーズンワーストはトップですが、今シーズンまだノーミスがない。オリンピックの心残りはボレロでステファンコーチによかったよと言ってもらえるような演技が出来なかったこと、というようなことをおっしゃっていましたが、今シーズンフリーのノーミスはなし。4回転5本プログラムでなかなかノーミスが出ない、ある種トゥルソワ選手のようなことになっているわけですが、私も見たいですパーフェクトボレロ

180点台はあと三人。オリンピックでいい演技をしたチャジュンファン選手にグラスル選手、ヨーロッパ選手権表彰台のバシリエフス選手。3人ともノーミスすれば190点までは見えています。

170点台の5人は、爆発力ありそうなのは全米選手権で200点スコアを出したマリニン選手。国際大会でどこまでできるでしょうか。アメリカ3枠確保が本人の未来も切り拓くわけで、それが懸かるフリーになるかと思います。

 

○上位6選手のフリーシーズンベスト時の構成

  Yuma KAGIYAMA Vincent ZHOU Shoma UNO Junhwan CHA Daniel GRASSL Deniss VASILJEVS
1 4S 4Lz 4Lo 4T< 4Lz! 4Sq
2 4Lo 4F! 4S 4S 4F 3A+2T
3 4T 4Sq 4T+2T 3Lz+3Lo 4Lo+1Eu+3S 3A
4 3A+3T 4Tq 3A FCSp4 3A 3Lo
5 CSSp4 ChSq1 FCSp4 StSq4 CSSp4 StSq4
6 StSq3 4Sq+3T ChSq1 3A+2T 3Lz+3T FSSp4
7 4T+1Eu+3S 3A+1Eu+3S 2F 3A 3F+3T< 3F!+3T
8 3F+3Lo FCSp4 4T 3Lz+1Eu+3S 3Lz 3Lz+1Eu+3S
9 3A CSSp3 3A+1Eu+3F 3F FCCoSp4 3Lz
10 ChSq1 3A+2T FCCoSp4 ChSq1 StSq4 ChSq1
11 CCoSp4 StSq4 CCoSp4V CSSp4 ChSq1 CCoSp4
12 FCCoSp4 CCoSp4 StSq3 CCoSp3 CCoSp4 FCCoSp4
Base 93.95 97.50 82.24 79.90 89.83 77.51
GOE 22.55 12.69 14.75 13.69 13.52 15.61
PCS 92.44 87.94 90.58 90.28 84.08 88.72
Total 208.94 198.13 187.57 182.87 187.43 181.84

基礎点が高いのはヴィンセントジョウ選手。宇野選手も同じ4回転5本構成なのですが、宇野選手はどうしても抜けが出て基礎点満額が得られません。鍵山選手は4回転4本にセカンドループ付きで4クワッド6トリプル。5クワッド4トリプルのジョウ選手とさほど遜色ない基礎点に出来ているうえで完成度勝負で上回るという構成です。

宇野選手は冒頭のループは今シーズン意外と成功率は高いのですが、2つ目のサルコウが5回飛んで2本しか決まっていません。フリップはショートも合わせて10回飛んで6回成功。サルコウとフリップが鍵でしょうか

チャジュンファン選手は4回転2本、チームブライアンの難度を上げるのではなく得意なところで点を取って勝っていくスタイル。トーループの3回転が入れば2クワッド付きの8トリプルという構成になるはずで伸びしろはまだあります。

グラスル選手はルッツフリップループの3種類を飛ぶわけですが、4回転5種類コンプリートに一番近い位置にいるんじゃ、と思ったりします。基礎点はノーミスなら90点まで来ます。

バシリエフス選手は冒頭の4回転サルコウが下りられるかどうか。これが決まれば上位進出が見えてきます。

 

○7-12番手の選手のフリーシーズンベスト時構成

  Kazuki TOMONO Morisi KVITELASHVILI Keegan MESSING Ilia MALININ Matteo RIZZO Kevin AYMOZ
1 4T+2T 4S+2T 4T+2T 4Lz< 4T+3T 4T
2 4S 3A 3T 4T 3Lo 4T+2T
3 4T 4T+3T 3A+1Eu+2S 3A 4T 3A+2T
4 3Lo 3Lo 3Lo 4S 3F 3Lo
5 StSq2 FCSp4 FSSp2 FCCoSp4 CCoSp4 CCSp4
6 FSSp4 StSq4 StSq2 StSq4 ChSq1 3A
7 3A+1Eu+3S 4T 3A 4Tq+1Eu+3S 3A+1Eu+3S 3Lz
8 3A 3F+1Eu+3S 3Lz+3T 3F+3T 3Lz+2Lo 3F!+1Eu+3S
9 3F+2T 3F FCCoSp4 3Lz+3Lo 3A ChSq1
10 FCCoSp3 FCCoSp3 3F FSSp4 CCSp3 FSSp3
11 CCoSp4 ChSq1 ChSq1 ChSq1 StSq3 CCoSp4
12 ChSq1 CCoSp4 CCoSp4 CCoSp4 FSSp4 StSq4
Base 80.14 81.59 70.34 91.36 80.24 77.10
GOE 7.33 6.03 13.79 8.48 14.02 8.78
PCS 85.42 84.34 88.24 77.30 81.92 85.94
Total 171.89 170.96 172.37 176.14 176.18 171.82

この領域の選手たちは4回転は2本が多いです。マリニン選手だけルッツ込みの3種類になっています。マリニン選手はジュニアと見られていてPCSが伸びておらず、4回転1本多くてようやく他と並ぶ、くらいの扱いになります

友野選手は今シーズン国際大会ではトーループは12本飛んで11回は着氷までしていますがサルコウは8回飛んでちゃんと4回転で着氷したのは5回。トーループの方が鍵になりそうです。またセカンド3回転が今一つ入ってこないのですがそれが入るかどうかもポイントになります。

メッシング選手、リッツォ選手、エイモズ選手、このあたりは4回転トーループ2本をしっかり決められるかどうか。また、出来栄え勝負ながら意外とスピンステップでレベル4を取れていないことが多いので、そのあたりのレベルをどれだけ取れるかも勝負になってきそうです。

 

ネイサンチェン選手、羽生結弦選手の欠場により、誰が勝っても初優勝という形になりました。男子は女子と違って連覇が普通にあり選手生命も長いので新たな優勝者が出てもそのまま次の世代へとは簡単にはいかないですが、新たに戴冠するのは誰でしょう?

日本勢は実は7大会連続で銀メダルを確保しているという不思議構図がありまして、羽入7宇選手が優勝しても、ほかの選手が2位には入るという、層の厚さを見せています。今回はその羽生選手抜きですが、それでも、また2位も確保するかも、という構図も見えます。

日本の男子は優勝すれば日本勢では3人目の世界チャンピオンになります。

男子シングルは24日ショートプログラム、26日フリーというスケジュールになります