北京オリンピック 男子シングルレビュー3

北京オリンピックの男子シングルの振り返り3回目です。これで最後になります。

 

○要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 CHEN Nathan 332.60 145.21 115.13 31.15 24.81 16.30
2 KAGIYAMA Yuma 310.05 141.15 103.65 23.52 26.58 15.15
3 UNO Shoma 293.00 138.71 104.93 7.61 26.60 16.15
4 HANYU Yuzuru 283.21 137.52 96.40 9.52 25.38 16.39
5 CHA Junhwan 282.38 135.49 93.10 13.10 25.59 16.10
6 BROWN Jason 281.24 143.63 74.46 17.77 28.29 17.09
7 GRASSL Daniel 278.07 126.02 103.33 9.57 24.98 14.17
8 SEMENENKO Evgeni 274.13 124.09 99.97 12.99 23.30 13.78
9 JIN Boyang 270.43 121.58 101.15 10.58 23.12 14.00
10 KVITELASHVILI Morisi 268.62 127.01 93.91 9.59 24.68 13.43
11 MESSING Keegan 265.61 132.18 83.63 15.39 23.06 11.35
12 AYMOZ Kevin 254.80 129.27 79.20 8.34 23.82 15.17
13 VASILJEVS Deniss 252.71 125.88 79.89 8.00 24.90 15.04
14 SIAO HIM FA Adam 250.15 123.18 94.93 -2.40 22.48 13.96
15 KONDRATIUK Mark 248.82 124.59 89.07 -1.57 23.37 14.36
16 RIZZO Matteo 247.53 124.90 77.81 8.79 22.88 14.15
17 KERRY Brendan 244.80 115.36 84.63 9.25 22.20 13.36
18 LITVINTSEV Vladimir 239.19 111.29 91.75 4.62 20.14 11.39
19 MOZALEV Andrei 233.33 120.09 89.93 -7.26 20.87 12.70
20 MILYUKOV Konstantin 222.22 108.95 82.22 3.25 18.16 9.64
21 MAJOROV Nikolaj 220.78 111.96 71.31 2.75 22.04 12.72
22 CARRILLO Donovan 218.13 109.49 82.70 -8.67 22.65 12.96
23 BRITSCHGI Lukas 212.58 108.10 72.84 -3.30 21.70 13.24
24 SHMURATKO Ivan 205.76 108.51 73.26 -6.13 21.70 9.42

フリー進出24選手のショートフリーを合わせた要素別のスコアを見てみます。

PCSのネイサンチェン選手と鍵山選手の差は4.06 それほど決定的な差はありません。もう上限が近いので鍵山選手もきっちりPCS出していけばここで大差がついてそもそも勝ち目がない、ということもないと思います。羽生選手とは7.69と結構な差がつきましたが、この辺は転倒の影響はどうしても出ています。

ジャンプの基礎点はネイサンチェン選手が抜けていて2位の宇野選手とも10点以上の差があります。ここをもう少し詰めたい。100点超えが5人いてだいぶレベルは上がってきました。

ジャンプの加点を30点以上稼いだネイサンチェン選手。鍵山選手でも23.52なのでここで差がつきました。加点3位はジェイソンブラウン選手、4位はキーガンメッシング選手。4回転無くても加点は稼げます。

スピンはジェイソンブラウン選手の28.29がトップ。男子の28点台は初だと思います。鍵山選手宇野選手が2位3位で26点台。羽生選手はVもあって基礎点満額取れず25点台でした。

ステップ系要素はジェイソンブラウン選手が17.09でトップ。満点が17.20ですが、それに極めて近いところまで来ました。2位が羽生選手、このあたりはさすがです。16点台にはやはり定評のある選手が並びます。鍵山選手はケビンエイモズ選手やバシリエフス選手といった表現型で定評のある選手と並ぶ15点台。ショートのレベルの取りこぼしが効いてますが、この辺で20代のオリンピック2回目の選手たちとの差が少し出ていました。

 

以下、個別の要素を見ます

 

○4回転アクセル

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS HANYU Yuzuru 1 4A< < 10.00   -5.00 5.00 -5.000

4回転アクセルに挑んだのは当然ただ一人、羽生結弦選手。回転不足、という単語はイメージよくないですかね、アンダーローテーションと言いましょうか、回転は足りていないとされましたが、ダウングレードではなく4回転アクセルベースのジャンプと認識されました。見た瞬間は回転足りてるんじゃない! qだよq! くらいに思いましたが、そこまでは認めてもらえませんでした。

当たり前ですがオリンピック史上初の4回転アクセルの文字。国際大会としてはダウングレードの4A<<は以前あったのですが、4A<は初となります。

 

○4回転ルッツ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP CHEN Nathan 4 4Lz+3T   17.27 x 3.94 21.21 3.333
SP JIN Boyang 1 4Lz+3T   15.70   3.12 18.82 2.778
FS CHEN Nathan 5 4Lz   11.50   4.93 16.43 4.333
FS JIN Boyang 1 4Lz   11.50   4.11 15.61 3.556
FS GRASSL Daniel 1 4Lz! ! 11.50   0.82 12.32 0.778
SP GRASSL Daniel 1 4Lz!q ! 11.50   -1.64 9.86 -1.444

4回転ルッツは結局今回は3人。全員着氷してます。4回転ルッツと言えばボーヤンジン選手というのが私のイメージなのですが、今回はショートフリーで決めてくれました。

ネイサンチェン選手は評価も高いです。グラスル選手はショートもフリーも!付き。この辺の精度が上がってくると表彰台争いまで行ける選手になって来るのだろうと思われます。

 

○4回転フリップ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS CHEN Nathan 1 4F+3T   15.20   4.40 19.60 4.000
SP CHEN Nathan 1 4F   11.00   4.40 15.40 4.111
FS CHEN Nathan 2 4F   11.00   4.24 15.24 3.889
SP UNO Shoma 1 4F   11.00   3.77 14.77 3.444
FS GRASSL Daniel 2 4F   11.00   2.67 13.67 2.444
FS UNO Shoma 3 4F   11.00   -5.34 5.66 -4.778

フリップも3人。元祖4回転フリップは宇野昌磨選手。フリーは残念でした。ネイサンチェン選手はショートフリーで3本成功。評価も極めて高くさすがです。

 

○4回転ループ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS GRASSL Daniel 3 4Lo+1Eu+3S   15.30   1.80 17.10 1.778
FS UNO Shoma 1 4Lo   10.50   3.45 13.95 3.333
FS KAGIYAMA Yuma 2 4Loq q 10.50   -4.65 5.85 -4.333

4回転ループも3人。元祖4回転ループの羽生結弦選手は今回跳びませんでした。最高評価は宇野選手。フリー冒頭これが決まって、さあ5本決めよう、という流れだったのですが・・。

鍵山選手は団体戦で決めたのですが個人戦ではしっかり決めることができませんでした。

 

○平均GOEが+4.000以上の4回転サルコウトーループ

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP HANYU Yuzuru 2 4T+3T   13.70   4.07 17.77 4.222
SP KAGIYAMA Yuma 2 4T+3T   13.70   3.94 17.64 4.111
FS KAGIYAMA Yuma 1 4S   9.70   4.43 14.13 4.556
SP KAGIYAMA Yuma 1 4S   9.70   4.02 13.72 4.222
FS KAGIYAMA Yuma 3 4T   9.50   3.80 13.30 4.111

サルコウトーループを飛ぶ選手はたくさんいますので評価が高いものだけ出します。

並べてみたら、平均GOE+4.000以上は鍵山選手と羽生選手だけでした。鍵山選手はショートフリーで4本も入っています。非常に評価が高い。決めたジャンプの評価の高さが2位まで押し上げた要因です。ここにルッツまで入って4回転が5本+セカンドループという構成が完成すれば。そこまで行けるでしょうか。

 

○平均GOEが+3.000以上のトリプルアクセル

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
FS KAGIYAMA Yuma 4 3A+2T   9.30   2.74 12.04 3.444
SP UNO Shoma 4 3A   8.80 x 3.20 12.00 4.000
FS HANYU Yuzuru 9 3A   8.80 x 3.20 12.00 3.889
FS HANYU Yuzuru 3 3A+2T   9.30   2.40 11.70 3.000
SP KAGIYAMA Yuma 4 3A   8.80 x 2.86 11.66 3.667
FS AYMOZ Kevin 6 3A   8.80 x 2.74 11.54 3.444
SP HANYU Yuzuru 4 3A   8.80 x 2.63 11.43 3.444
SP AYMOZ Kevin 4 3A   8.80 x 2.63 11.43 3.222
FS MESSING Keegan 7 3A   8.80 x 2.51 11.31 3.222
FS UNO Shoma 4 3A   8.00   2.63 10.63 3.444
FS BROWN Jason 3 3A   8.00   2.51 10.51 3.222
SP MESSING Keegan 2 3A   8.00   2.40 10.40 3.000

トリプルアクセルはもっと評価の高いものがあるかと思ったのですが、+4以上は1つしかなかったので+3.000以上で並べました。要素順が後ろの方に来ることが多いため、意外と高い評価が得られていないようです。

最高評価はショートの宇野選手が+4.000です。ここはそれ以外も日本人選手が多いです。羽生選手は3つすべて、鍵山選手宇野選手は2つづつここに入ってきています。アクセルは王様のジャンプとは、羽生選手の言葉というかその恩師である都築先生の言葉なようですが、アクセルは女子も含めて日本人のジャンプという感じがあります。

 

○平均GOEが+4.500を超える要素

  Name   Elements    BaseValue   GOE Scores  
SP CHEN Nathan 5 StSq4   3.90   1.95 5.85 4.889
SP BROWN Jason 5 StSq4   3.90   1.95 5.85 4.889
FS BROWN Jason 8 ChSq1   3.00   2.50 5.50 4.889
FS BROWN Jason 12 CCSp4   3.20   1.60 4.80 4.889
FS BROWN Jason 11 StSq4   3.90   1.84 5.74 4.667
SP UNO Shoma 6 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
SP BROWN Jason 7 CCSp4   3.20   1.46 4.66 4.556
SP HANYU Yuzuru 6 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
FS KAGIYAMA Yuma 1 4S   9.70   4.43 14.13 4.556
FS UNO Shoma 12 StSq4   3.90   1.78 5.68 4.556
FS CHA Junhwan 10 ChSq1   3.00   2.29 5.29 4.556

これはジャンプに限らず平均GOEが+4.500以上の評価のものを並べました。

全ジャッジ+5の満点の要素はありませんでしたが、1人以外全員+5でスコアとしては満点になる平均GOE4.889は4つありました。ネイサンチェン選手のショートのステップとあとはジェイソンブラウン選手が3つ。ブラウン選手はステップにコレオにスピンです。それ以外も4.5以上でジェイソンブラウン選手は5つあります。

他には宇野選手のショートフリーのステップで1つづつ、羽生選手のショートのステップ、チャジュンファン選手のコレオとステップ系要素で高い評価を得やすい傾向があるようです。

そんな中で、鍵山選手の4回転サルコウというのが異彩を放っています。今シーズンの4回転サルコウとして最高評価ですし、+4を超える4回転サルコウは男子では今シーズン鍵山選手のものだけです。(ワリエワ・トゥルソワってのがありますが・・・)

 

ネイサンチェン選手の強さというのが目立ちましたが、一方でジェイソンブラウン選手のすばらしさもよく見えるオリンピックでした。どちらもアメリカ選手なわけですが、それぞれ方向性が異なりながらも素晴らしいものでした。

そして日本人選手3人。おそらく、それぞれが本当にしたいことは結果的には完成しなかったのだろうと思います。でも、なんなんでしょう。それぞれがそれぞれに、ある種の満足感というか達成感というか、そういったものを感じているように見えました。報われない努力という言葉もありましたが、それはそれとして、やるだけやった感が見えた選手もいます。

 

男子は不幸にしてコロナ陽性で欠場の選手が出ました。一方で幸いにしてコロナではない陽性は出ず、しっかりと試合の決着がつきました。勝ち負けつきましたし、満足いく結果に全員がなったわけではない。それでもこれからもスケート人生が続いていく。あるいはここで終わる選手もいるかと思いますが、人生は続いていきます。

オリンピックは最大のイベントな一方で、一つの節目でもありました。選手たちのこれからの競技生活、これからの人生が幸多きものであることを願います