男子が先に終わりまして、女子シングルに移っていくわけですが・・・。
女子は前代未聞の事態が生じていて、世界が大混乱に陥った今もはや忘れられかけてますが、いまだに順位も確定していなかったりします。メダリスト未確定という事態は避けられましたが、試合全体を通じていやーな空気が流れてしまっていたことはどうしても否めません。
ホントはその辺に突っ込んでいった方がいいのかもしれませんが、今回は、その辺はそんなに深くは突っ込まずに、普通に感想を記していこうと思います。数値編は次回以降になります。
○女子シングル 滑走終了時スコア
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | SHCHERBAKOVA Anna | ROC | 255.95 | 80.20 | 175.75 |
2 | TRUSOVA Alexandra | ROC | 251.73 | 74.60 | 177.13 |
3 | SAKAMOTO Kaori | JPN | 233.13 | 79.84 | 153.29 |
4 | VALIEVA Kamila | ROC | 224.09 | 82.16 | 141.93 |
5 | HIGUCHI Wakaba | JPN | 214.44 | 73.51 | 140.93 |
6 | YOU Young | KOR | 213.09 | 70.34 | 142.75 |
7 | LIU Alysa | USA | 208.95 | 69.50 | 139.45 |
8 | HENDRICKX Loena | BEL | 206.79 | 70.09 | 136.70 |
9 | KIM Yelim | KOR | 202.63 | 67.78 | 134.85 |
10 | BELL Mariah | USA | 202.30 | 65.38 | 136.92 |
11 | GUBANOVA Anastasiia | GEO | 200.98 | 65.40 | 135.58 |
12 | KURAKOVA Ekaterina | POL | 185.84 | 59.08 | 126.76 |
13 | SAFONOVA Viktoriia | BLR | 184.83 | 61.46 | 123.37 |
14 | MIKUTINA Olga | AUT | 182.20 | 61.14 | 121.06 |
15 | RYABOVA Ekaterina | AZE | 179.97 | 61.82 | 118.15 |
16 | CHEN Karen | USA | 179.93 | 64.11 | 115.82 |
17 | SCHOTT Nicole | GER | 177.65 | 63.13 | 114.52 |
18 | van ZUNDERT Lindsay | NED | 175.81 | 59.24 | 116.57 |
19 | SCHIZAS Madeline | CAN | 175.56 | 60.53 | 115.03 |
20 | BREZINOVA Eliska | CZE | 175.41 | 64.31 | 111.10 |
21 | KIIBUS Eva-Lotta | EST | 171.75 | 59.55 | 112.20 |
22 | PAGANINI Alexia | SUI | 168.91 | 61.06 | 107.85 |
23 | KAWABE Mana | JPN | 166.73 | 62.69 | 104.04 |
24 | FEIGIN Alexandra | BUL | 159.31 | 59.16 | 100.15 |
25 | SAARINEN Jenni | FIN | 153.04 | 56.97 | 96.07 |
26 | TALJEGARD Josefin | SWE | 54.51 | 54.51 | |
27 | ZHU Yi | CHN | 53.44 | 53.44 | |
28 | McKAY Natasha | GBR | 52.54 | 52.54 | |
29 | CRAINE Kailani | AUS | 49.93 | 49.93 | |
30 | SHABOTOVA Anastasiia | UKR | 48.68 | 48.68 |
優勝はシェルバコワ選手。255.95はパーソナルベストであり、世界歴代2位扱いのスコア。なんかいろいろなものの陰に隠れてしまって目立ってませんでしたが、昨シーズンの世界チャンピオンはこの人。代表に選ばれるまでにあれこれありましたが結果的には強かったのね、という結末でした。調子はそれほど良くなさそうとの事前情報もありましたが本番では4回転2本決めてきました。国際大会で4回転を2本決めたのは19年のスケートアメリカ以来で2年4か月ぶり。よく本番に合わせてきたなと思います。結果的にそれが入らなければトゥルソワ選手に負けてました。どんな精神性してるんでしょう。まあ、ヨーロッパ選手権ではプレッシャーにつぶされそうになりかけていたので、その経験が生きたのでしょうか。そう考えると熾烈な代表争いというのはこういうところに生きるのかもしれません。
トゥルソワ選手が2位。なんで私だけ金メダル持ってないの!!! うーん、そうだよね、団体戦出してあげなよ、と思いました。今回はいろいろと、子供だから許されるみたいな発言もあったようですが、2004年6月生まれの17歳。日本で言えば高校2年生相当。ママと犬と3週間会っていないのが泣き怒りの本当の理由なのだとすると、そろそろどうなんだ? という年齢ではありますが、外野として遠くから見ているだけなら楽しく見ていられます。勝ちにこだわるならフリーの4回転5本はともかく、ショートのトリプルアクセルは無い方がいいと思うのですが、その辺の計算はしないんでしょうかね。結果的に滑走順の関係もあって、オリンピック個人戦での女子の4回転初成功者であり、サルコウ、フリップ、ルッツの3種類のジャンプで初のGOEプラス評価を受けた選手になりました。いやあ、いろいろと問題はあるとは思いますが、4回転5本はすごいですよ。ホント。特に今回やたらテクニカルコントローラーが厳しかった中で回転不足判定がなし(qは1つありましたが)。4回転5本がダウングレードも回転不足もなくすべて認定されたのは本人としても初です。それをオリンピックに合わせてきました。
坂本花織選手が3位に入りました。10代が強い、若い選手が強い、とずっと言われていますが、3位表彰台まではずっと20代の選手がオリンピックでも入ってきていたりします。4年前はオズモンドさん、その前はコストナーさん、バンクーバーもロシェットさんでトリノはスルツカヤさんです。10代にやられっぱなしなわけではない。強心臓なのは本田真凜さん、ザギトワさんと200点台連発された直後の最終滑走で滑ってノーミスで表彰台に乗った17年世界ジュニアのあたりから思ってましたが、今回も強かった。何か貫禄が出てきた感じがします。生きざまが滑りに表れるようになってきた。そんな感じもします。
ショートもフリーも冒頭はダブルアクセル。あれ見るたびにトリプルアクセル跳べるんじゃ・・、と思うのですが、難しいのかなあ。難しいんだろうなあ。この先は4回転の練習もしていくとのことで、4回転ループなんて言葉も出ていました。フリー最後のループの美しさを見ているとループで4回転行けるのかも確かに、と思ったりもしますが、難しいのかなあ。難しいんだろうなあ。ループは女子だと唯一まだ成功者のいない空白地帯です。技術サイドでも世界初をお待ちしております。そもそも技術高いので、演技だけって選手じゃないですけどね。
スコア4番目にはワリエワ選手でした。見ていて痛々しかった。何も書きたくないです。
5番目には樋口新葉選手。トリプルアクセル2本成功。やっぱりトリプルアクセルは日本のジャンプだ。オリンピックの個人戦で2本決めたのは浅田真央さん以来2人目です。ワリエワ問題、坂本さんのメダル、といったあたりでやや影が薄くなりがちでしたが、トリプルアクセル2本決めたのはそれだけですごいこと。なので逆説的に他の要素が少し残念だった感じはありました。まだもうひと伸び行ける。ノーミス230点が現実的なラインとして近づいてきた感じがします。今回フリーはライオンキング。昔からジャンプが得意で今の売りはトリプルアクセルで、技術面にフォーカスされがちだけど実際にはプログラム構成、曲の選び方とかそういった方で印象に残るものを作る選手。コンビネーション転倒が痛かったけどライオンキングよかったなあ。世界選手権4年ぶりの表彰台あるか。
ユヨン選手が6番目。ロシアに対抗するのは日本や日本ゆかりの方ばかりですかな感じになってます。今シーズンあまり調子が上がってない感じがありましたけど、オリンピックにはまあまあ合わせてきたでしょうか。ショートのトリプルアクセルはダウングレードですか。厳しいなあ。フリーもqでいいんじゃくらいな回転不足で基礎点削られ。4位まではあったんだけどな、と思いました。まさかの濱田組エース状態。キスアンドクライ濱田先生ですか。トリプルアクセル跳ぶにはそこにいるのが一番いい気は確かにします。こうやって外国人選手が日本の先生のところに来るようになるってのは、本格的に日本がフィギュア強国になってきてるんだなあ、という感じを受ける出来事でもあります。
アリサリュウ選手が7番目でした。ショートのジプシーダンス、本人の持つ雰囲気によくあっていていいと思うのですが、スコア伸びませんでした。フリーのトリプルアクセルはダウングレード。厳しいなあ今回。ジュニアに上がった時にはワリエワ選手のライバル的な位置にいました。ようやく来たよアメリカからロシアに対抗できる選手、と思ったのですがシニアに上がっての今は、力なりに入賞ラインに入ってきましたというこの立ち位置。正直なところ、ちょっと残念な感じがしてましたシーズン前半には。4回転もトリプルアクセルも跳べなくなっちゃったんだなあ、ということが。それが、今回のワリエワ事件で少し考えが変わりました。このアリサリュウ選手の姿が健全で、これでいいんだな、と。本人のキャラクターも相まって、ものすごく健全な感じが出ている。アメリカは、タラリピンスキーさん、サラヒューズさんとオリンピック金メダリストを続けて排出していたころは、女子は短命という問題があって、シニアの年齢制限を作るきっかけになった国ですが、2010年代になってからは割と選手寿命が延びています。まあ、ゴールドさんの問題や、エドモンズさんも消えちゃったとかありますが、ワグナーさん、長洲未来さん、20台半ばまでは続けましたし、テネル選手、マライアベル選手といった20代に入ってから頭角を現してきた選手もいます。アリサリュウ選手も少なくともあと2回、できれば3回、オリンピックに出てくるあるいは選考会で勝負するくらいの位置にまでは留まる感じで、健全な姿で続けて行ってもらえたらなと思います。そうすれば再び、体が落ち着いたところでトリプルアクセルや4回転を取り戻す日が来るのではないか。そんなことを思いました。
ヘンドリックス選手が8番目。もうちょっと点を出せるかなとも期待していましたが、ここまでかあ。ショートフリーノーミスをいつも並べる、という領域にまでは達していないので仕方ないとは思うのですが、ちょっと残念だったかなあ。雰囲気のある選手、きれいとか美しいといいよりかっこいいという表現の方が似つかわしい感じがしています。どこかでヨーロッパ選手権の表彰台に乗れるといいですね。
キムイェリム選手は9番目で現時点では入賞ラインに届かず。フリーはトゥーランドット。四大陸の時は氷りついたまま終わっちゃったとか思いましたが、今回はちゃんと終盤に氷解してくれた感じがしました。いい演技だったと思います。今回韓国勢は6番目と9番目ですが、これが5位と8位だと3枠になるわけですね。世界選手権どうなるか?
マライアベル選手は10番目でした。初のオリンピック入賞ラインに届かず。素晴らしいハレルヤなのですが、いかんせん構成がどうしても弱いです。上位に絡むにはちょっと厳しい。ショートの3回転-3回転も転倒でしたし。でもそんなこと、本人にとっては小さなことだったのかもしれません。団体戦から楽しそうだったなあ。団体戦出してあげてメダルを取ってもらいたかったですが、ショートフリーの交換券は2枚。試合の早い男子とアイスダンスで使ってしまったのでマライアベル選手までメダルは回ってこず。残念でした。それはそれとして、アメリカはスコアとしては7番目と10番目。6位と9位だと枠が2つになるのですが・・・。世界選手権、どうでしょう?
ジョージア国籍のグバノワ選手が11番目に入ってきました。力なりに200点到達。ショートフリー通じて見た目ノーミス。Qが3つついたのでそれらはGOEマイナスになりましたが、見た目ではqはあまりわからないので印象としては非常にいい演技になりました。今シーズンからジョージアへ移籍。17年のジュニアグランプリファイナルではロシア国籍として出て、坂本花織選手、紀平梨花選手の上の2位に入った選手。なんというか、ちょっと複雑な気分にもなります。19歳になりました。20歳過ぎても国際大会に出てくるには、ロシアではない国の所属になるしかないんでしょうか。
12番目以下は少しスコアが離れるのですが、クラコワ選手がこの次にいます。グバノワ選手と同じ元ロシアの選手。ザギトワさんと同い年。このあたりの10位前後のところに元ロシア国籍選手が並んできています。13番目のベラルーシ代表サフォノワ選手も同様です。みんな18歳19歳です。順位としては離れますが30番目のウクライナ代表シャボトワ選手もロシア出身でこちらは16歳。卓球中国状態。ロシア勢と対抗する一番手が日本というのまで同じ構図。いまのところはまだすべてロシアから見て隣国に収まっていますが、この先もっと広がっていくんでしょうか。
団体戦をフルで滑ったカレンチェン選手、マデリンシザース選手、二人は個人戦では思うような結果を残すことができませんでした。シザース選手は団体戦非常によかったのでこれは個人戦も台風の目になるか、入賞ラインくらいまで来るか、と思ったのですが、流石に4本そろえるのは厳しかったでしょうか。カレンチェン選手は団体戦から厳しかったですが、それでも銀以上のメダルは手に入るのでそれは良かったかな。ジャンプでミスがあってもあのスパイラルはやはり素晴らしいなあ。二人とも世界選手権でのリベンジを期待しましょうか。
河辺愛菜選手は23位に終わりました。ちょっと厳しいオリンピックだったでしょうか。日本選手団の中でメダルを確保できなかったのは羽生結弦選手と河辺愛菜選手の二人だけ。他は皆さん少なくともメダル入れの容器までは受け取って帰ってきました。羽生選手はもうメダルがどうこうという選手ではないですから、こうやって見ると、河辺選手だけ厳しかったなあ。ショートの四季より冬、あの終わり方好きなんですけどね。ローリーニコルさんは雪の女王をイメージしたとのことですが、その辺はなんというか、エルサではなくアナな感じで風格はまだないのですが、それはそれで似合っているプログラムだと思います。オリンピック失敗した選手の世界選手権リベンジ率は結構高いと思うので、トリプルアクセル2本決めていただければと思います。
今回はこれくらいで。次回以降数値編です。