クープドプランタン 調整試合と海外初遠征と

3月18日から日本から派遣のB級大会第3弾、クープドプランタンがルクセンブルクにて行われました。世界ジュニアの調整の選手と今シーズンの締めくくりの選手と、といったところだったのですが、飛行機飛んでから来週世界選手権よろしくね、と状況が一転した友野一希選手がそのまま移動せずにこの試合にも出ていました。ただ、この大会の主役はそういったシニアカテゴリーの試合に出た選手たちよりも、国際大会初遠征だった13歳の中井亜美選手だったように感じました。

 

○女子シングルシニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Rinka WATANABE JPN 190.84 64.07 126.77
2 Rion SUMIYOSHI JPN 178.02 61.47 116.55
3 Jocelyn HONG NZL 154.55 53.50 101.05
4 Maia MAZZARA FRA 150.21 51.80 98.41
5 Jade HOVINE BEL 150.19 47.72 102.47
6 Elzbieta GABRYSZAK POL 135.19 46.17 89.02
7 Sophia MAAROUF FRA 123.36 47.06 76.30
8 Frida BERGE NOR 108.80 40.08 68.72
9 Frederique KONING NED 87.49 28.59 58.90
10 Cheyenne KNOESTER NED 71.45 22.28 49.17

日本からは世界ジュニアを控えた二人が出場。世界ジュニアへの調整だけを考えるならジュニアカテゴリーに出た方がよかったのかと思いますが、ジュニアでは世界ランキングポイントが得られません。来シーズン以降を考えるとここで世界ランクのポイントを得ることと、シニアの各種ミニマムポイントを得ておくことが得策だったということだと思います。二人ともグランプリシリーズを狙う立ち位置になってきてますし、ロシアの18枠が消えると実際にこの二人にもチャンスがありそうですし。

渡辺倫果選手がシニアの国際大会初優勝。ジュニアカテゴリーでは3年前のこの大会で勝っていて、シニアに上がって帰ってきたという形です。ライブストリーム、最終滑走で滑り終わった後は製氷中のリンクが映されて、おいおいキスアンドクライを映してくれ、という感じだったのですが、スコアが出てようやく映ると、うんうん、まずまずね、いぇーい、みたいなピースマークで、大喜びではないけどそれなりに嬉しそう、という姿でした。250ポイント確保。世界ランキング136位にまず名前を登場させました。日本の19歳はまだまだこれからです。

住吉りをん選手は2位。2シーズン前のジュニアグランプリ以来の国際試合でしょうか。今回の出来は今一つだったと思います。4回転も不発。やりたかったことは多分ほとんど出来ていません。世界ジュニアまではあと3週間。調子が上がってくるとよいですが。今季のジュニアグランプリシリーズ、ロシア以外で180点を超えたのは韓国の3人、アメリカの2人、ベルギーの1人で合計6人。世界ジュニア来年3枠を得るにはこういった選手との戦いになりますので180点は欲しいということになると思います。

 

○渡辺倫果選手のショートプログラム構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A< 6.40   -2.99 3.41 -4.600
2 3Lzq+3T q 10.10   -1.18 8.92 -1.600
3 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
4 3Lo   5.39 x 1.14 6.53 2.400
5 FCSp4   3.20   0.43 3.63 1.400
6 StSq4   3.90   1.04 4.94 2.800
7 LSp4   2.70   0.54 3.24 2.200
  TES   35.19   -0.32 34.87  

シニアルールなのでショートから投入したトリプルアクセル。今回は回転不足となりました。転倒はしていないのでダブルアクセル比でそれほど著しくスコアでは劣っていません。

出来ればその次のコンビネーションジャンプで加点が得られるとよかったのだろうと思います。世界ジュニアでは強制的にダブルアクセルになりますが、コンビネーションをしっかり飛べれば60点台後半が出せてフリー最終グループに入れそうに見えます

 

○渡辺倫果選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A< 6.40   -3.20 3.20 -5.000
2 3Lo+3T< 8.26   -1.96 6.30 -3.800
3 3Lz   5.90   1.18 7.08 2.000
4 FCSp4   3.20   0.53 3.73 1.600
5 3Lo   4.90   0.98 5.88 1.800
6 LSp4   2.70   0.54 3.24 2.000
7 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.000
8 2A+1Eu+3S   8.91 x 0.86 9.77 1.800
9 3Lz+2T   7.92 x 0.39 8.31 0.800
10 3F   5.83 x 0.53 6.36 1.000
11 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.200
12 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.600
  TES   64.42   2.95 67.37  

フリーのトリプルアクセルも回転不足。こちらは転倒になりスコアが痛みました。ただ、トリプルアクセルは決まればボーナスというくらいなもので、それよりも次のコンビネーションが回転不足のステップアウトになったあたりが痛かったように感じます。力的にはやはりノーミス出来れば200点というくらいの位置、というのがこの試合でも感じられました。スピンステップオールレベル4 ショートフリーどちらもオールレベル4 ですから、こういったところできっちり点が取れるのはよかったと思います。ステップ評価高かったです。画質悪いライブストリームでもかっこよかったです、確かに。

 

○住吉りをん選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T<< <<  4.20   -2.10 2.10 -5.000
2 3Lz+3T< 9.26   -0.79 8.47 -1.200
3 3F   5.30   1.06 6.36 2.000
4 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.200
5 1Lo   0.50   -0.20 0.30 -3.400
6 FCCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.800
7 StSq4   3.90   1.04 4.94 2.600
8 2A+3T   8.25 x 1.26 9.51 2.800
9 3F+2T+2Lo< 8.76 x -0.71 8.05 -1.200
10 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.800
11 3S<< <<  1.43 x -0.65 0.78 -4.800
12 LSp4   2.70   0.90 3.60 3.400
  TES   54.30   2.71 57.01  

冒頭4回転トーループはダウングレードの転倒となりました。評価的には最悪ですがこういう試合で挑戦するのは正しい姿勢だと思います。問題はそのあと。コンビネーション含め回転不足が3つ、抜けて1回転になったのが1つ。しっかり決まったジャンプは2つだけでした。そんな試合でしたがスピンステップオールレベル4 ショートもステップ転倒してましたがレベルはちゃんとすべて4 一見ボロボロでも170点台後半までは出せているのはそのあたりできっちり取りこぼしていないことによるのだろうと思います。世界ジュニアでジャンプもはまれば上位進出のチャンスはありそうです。

 

○男子シングル シニア

Pl Name Nation Total SP FS
1 Kazuki TOMONO JPN 228.00 77.76 150.24
2 Tatsuya TSUBOI JPN 225.64 77.35 148.29
3 Landry LE MAY FRA 205.84 72.98 132.86
4 Michael NEUMAN SVK 148.59 53.53 95.06
5 Joshua ROLS FRA 140.17 53.24 86.93
6 Lotfi SEREIR GER 138.46 50.03 88.43
7 Xan ROLS FRA 137.56 53.29 84.27
8 Iker OYARZABAL ESP 135.18 49.30 85.88

男子シングルはシーズン最後の国際大会、のつもりで飛んできて現地に入ってから、来週本番の調整試合ね、という状態になった友野一希選手が優勝。スコア的には平凡でしたが優勝は優勝です。この250ポイントで世界ランクを12位まで上げました。抜いた選手がロシアと中国なので、余り世界選手権滑走順には影響なさそうではありますけれど。

壷井達也選手が2位。こちらも225ポイントを確保して世界ランキングに復帰しました。121位。男子の19歳は日本に限らずどこの世界でもまだまだこれからです。世界ジュニア次第でグランプリ枠を取れる可能性もあるでしょうか

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4T+2T   10.80   2.53 13.33 2.600
2 4Sq q 9.70   -2.26 7.44 -2.400
3 4T   9.50   -4.75 4.75 -5.000
4 3Lo   4.90   -2.45 2.45 -5.000
5 StSq3   3.30   0.77 4.07 2.200
6 FSSp4   3.00   0.40 3.40 1.200
7 3A+1Eu+2S   10.78 x 1.60 12.38 1.800
8 3Aq q 8.80 x -2.40 6.40 -2.800
9 3F+2T   7.26 x 0.35 7.61 0.800
10 FCCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.800
11 CCoSp3   3.00   0.50 3.50 1.800
12 ChSq1   3.00   1.50 4.50 2.800
  TES   77.54   -3.28 74.26  

4回転3本構成。2つ目のトーループが転倒となりました。それはまだしも次の3回転のループでも転倒。セカンド3回転が入らず3連続ジャンプも最後のサルコウが2回転になっています。キスアンドクライでの本人の表情は、ひどく落ち込むという感じでもなく、いやーひどかったなあ、といった雰囲気。完全に練習モードだったでしょうか。それにしてもショートもフリーもうまくいきませんでした。本番は次週です。

 

○壷井達也選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 4Sq q 9.70   -4.85 4.85 -4.800
2 3A+2T   9.30   1.33 10.63 1.400
3 3A   8.00   1.60 9.60 2.000
4 CSSp4   3.00   0.20 3.20 0.800
5 3Lo   4.90   1.31 6.21 2.600
6 ChSq1   3.00   1.17 4.17 2.200
7 3F+3T   10.45 x 0.35 10.80 0.800
8 3Lz!+1Eu+3S ! 11.77 x -0.20 11.57 -0.600
9 3F   5.83 x -0.88 4.95 -1.600
10 FCCoSp4   3.50   0.23 3.73 0.800
11 StSq4   3.90   0.39 4.29 1.000
12 CCoSp4   3.50   0.47 3.97 1.200
  TES   76.85   1.12 77.97  

冒頭4回転サルコウはステップアウト。それでも転倒はせずに抑えました。以降はトリプルアクセル2本、セカンド3回転2本、3連続もしっかり3つ目を3回転にと無難にまとめました。フリーはスピンステップオールレベル4 4回転を決めたババリアンオープンよりもシニアルールにも関わらずスコアを落としていますが、それでも世界ジュニアに向けてはまずまずのスコアかと思います。今シーズンジュニアカテゴリーでフリー150点を超えているのはロシア勢除くとアメリカのマリニン選手と壺井選手のみ。日本のライバルたちとの勝負に勝てれば表彰台が見える位置にいる、というのはこの試合の結果からも変わっていないように見えます。

 

○女子シングルジュニア 上位10人

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ami NAKAI JPN 182.41 55.73 126.68
2 Nina PINZARRONE BEL 162.41 56.64 105.77
3 Vivien PAPP HUN 132.95 49.28 83.67
4 Rosa REPONEN FIN 131.38 41.18 90.20
5 Sara FRANZI SUI 126.09 47.53 78.56
6 Arabella SEAR-WATKINS GBR 122.61 42.86 79.75
7 Oda Tonnesen HAVGAR NOR 107.99 37.72 70.27
8 Ida VAMNES NOR 106.42 34.66 71.76
9 Peppi VALLENIUS FIN 101.30 37.57 63.73
10 Ysaline HIBON LUX 96.23 34.96 61.27

日本勢の中で一番満足いく滑りができた選手はここにいました。中井亜美選手、涙の国際大会初遠征初優勝。泣くのかよ、みたいなコーチのリアクションも含め微笑ましかったです。フリーは126.68という素晴らしいスコアでした。今シーズンのジュニアカテゴリーではロシア勢を除くとこれより上のスコアをだしているのはアメリカのレビト選手と吉田陽菜選手しかいません。冒頭、トリプルアクセルをきれいに決めました。日本国内の試合でも決めたことはないはずですが、それを国際大会で決めてきました。国内の試合より国外の試合に強い選手、というのが時折いますが中井選手もそうなっていくのでしょうか。今シーズンは木下アカデミー勢に押され、今一つ満足いく結果は出ていなかったように見えますが、最後に国際大会で結果を出しました。来シーズンも年齢的に確率100%でジュニアに残る中井亜美選手。ジュニアグランプリシリーズが大変楽しみになりました。

 

○中井亜美選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores  
1 3A   8.00   1.33 9.33 1.600
2 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 2.200
3 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.000
4 2A+3T   7.50   1.12 8.62 2.600
5 FSSp3   2.60   0.69 3.29 2.200
6 3F!+1Eu+3S ! 11.11 x 0.00 11.11 0.000
7 2A   3.63 x 0.66 4.29 1.800
8 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
9 3Lz   6.49 x 1.38 7.87 2.400
10 CCoSp4   3.50   0.93 4.43 2.400
11 LSp4   2.70   0.54 3.24 2.000
  TES   64.43   9.98 74.41  

冒頭トリプルアクセル 平均GOE+1.600 文句なしのトリプルアクセルです。ライブストリーミング、映像ちょっと遠いので、え? 3回回ったよね? 回ったよね? トリプルアクセルだよね? みたいな状態でしたが、間違いなくトリプルアクセルでした。濱田組でもなく、名古屋勢でもなく、神宮でもなく、女子のトリプルアクセルが新たな拠点でまた跳ばれました。トリプルアクセルは日本のジャンプ。各拠点で飛ぶ選手がいると、それを常に目にする周りの選手が続きやすくなります。

もう一つ驚きはステップレベル4 ジ13歳でステップレベル4取れる選手はなかなかいません。国内の試合でもステップはレベル2あるいは3だったはずなのですが、国際大会で初めてレベル4をもらっています。GOEも+3がつきました。

 

クープドプランタンでは当然男子もジュニアがありましたし、アドバンスドノービスも男女でありましたが、日本からの派遣はありませんでしたし海外勢でも目立ったスコアが出ていませんでしたのでここでは取り上げないでおきます。

 

さて、この後は世界選手権です。友野一希選手まさかの連戦。その後2週おいて世界ジュニアが4月13日から行われますが、その前に日本勢からは4月6日からイタリアで行われるエーニャスプリングトロフィーに派遣があります。シニアには三宅星南選手と吉田陽菜選手に千葉百音選手、ジュニアに片伊勢武選手と吉岡希選手に田中梓沙選手、そしてアドバンスドノービスに島田麻央選手が出場します。島田麻央国際舞台デビュー戦になります。