シーズン最後の大舞台、世界選手権がやってきました。今回は世界ジュニアが後という変則日程ですが、シニアの大きな試合はこれが最後です。
今回からその世界選手権を振り返っていきます。まずは女子シングルで初回はざっと感想です。数値編は次回以降になります
○女子シングル 総合結果
Pl | Name | Nation | Total | SP | FS |
1 | Kaori SAKAMOTO | JPN | 236.09 | 80.32 | 155.77 |
2 | Loena HENDRICKX | BEL | 217.70 | 75.00 | 142.70 |
3 | Alysa LIU | USA | 211.19 | 71.91 | 139.28 |
4 | Mariah BELL | USA | 208.66 | 72.55 | 136.11 |
5 | Young YOU | KOR | 204.91 | 72.08 | 132.83 |
6 | Anastasiia GUBANOVA | GEO | 196.61 | 62.59 | 134.02 |
7 | Haein LEE | KOR | 196.55 | 64.16 | 132.39 |
8 | Karen CHEN | USA | 192.51 | 66.16 | 126.35 |
9 | Ekaterina RYABOVA | AZE | 188.50 | 65.52 | 122.98 |
10 | Nicole SCHOTT | GER | 188.42 | 67.77 | 120.65 |
11 | Wakaba HIGUCHI | JPN | 188.15 | 67.03 | 121.12 |
12 | Madeline SCHIZAS | CAN | 188.14 | 64.20 | 123.94 |
13 | Ekaterina KURAKOVA | POL | 186.43 | 61.92 | 124.51 |
14 | Olga MIKUTINA | AUT | 182.98 | 62.14 | 120.84 |
15 | Mana KAWABE | JPN | 182.44 | 63.68 | 118.76 |
16 | Niina PETROKINA | EST | 176.60 | 60.24 | 116.36 |
17 | Lindsay van ZUNDERT | NED | 171.39 | 58.49 | 112.90 |
18 | Julia SAUTER | ROU | 170.31 | 58.07 | 112.24 |
19 | Alexia PAGANINI | SUI | 170.02 | 63.09 | 106.93 |
20 | Lara Naki GUTMANN | ITA | 164.39 | 57.92 | 106.47 |
21 | Josefin TALJEGARD | SWE | 163.24 | 57.52 | 105.72 |
22 | Kailani CRAINE | AUS | 161.75 | 56.64 | 105.11 |
23 | Natasha McKAY | GBR | 159.27 | 55.71 | 103.56 |
24 | Dasa GRM | SLO | 147.12 | 55.82 | 91.30 |
25 | Jenni SAARINEN | FIN | 55.30 | 55.30 | |
26 | Tzu-Han TING | TPE | 55.24 | 55.24 | |
27 | Eliska BREZINOVA | CZE | 55.07 | 55.07 | |
28 | Alexandra FEIGIN | BUL | 55.01 | 55.01 | |
29 | Lea SERNA | FRA | 54.30 | 54.30 | |
30 | Marilena KITROMILIS | CYP | 53.32 | 53.32 | |
31 | Julia LANG | HUN | 47.93 | 47.93 | |
32 | Stefanie PESENDORFER | AUT | 47.23 | 47.23 | |
33 | Anete LACE | LAT | 44.60 | 44.60 |
今回は試合展開を追って滑走順に見てみましょうか。
河辺選手はショートでトリプルアクセルを回避して12位で折り返し。河辺選手の場合、大崩れするとショート落ちがあり得るので調子が上がっていない場合はトリプルアクセル回避も仕方ないんだろうなと思います。フリーはトリプルアクセルはアンダーローテーション、その後もqあり!ありでジャンプがきっちり決まりませんでしたが、何とか踏みとどまっての118.76 ミラクルはおきませんでした。海外の試合で結果が出せるとよいのですが、なかなか厳しいですねえ。
続いてイ・ヘイン選手。来年の自分のためにも韓国3枠が欲しい、ユヨン選手の力を考えると8位にまで上がれば行けそう、という位置。見た目ノーミス。これは3枠確定か、と思ったのですがq4つにeあり。加点が伸びずにこの時点で2位。この時点で1位のグバノワ選手の上まで行っておきたかったところでしたが0.06足りませんでした。この辺はもうジャッジ運でしかありません。本人もスコア見て、まずい、という表情。しかし、結果的には7位に残りました。本人もだいぶ厳しくもらいましたが、全体的にテクニカルコントローラーのジャンプ判定の厳しさで196点台でも3枠獲得に貢献出来ました。世界ジュニア予定がなくなって世界選手権になり、滑った直後は納得いかなさそうでしたが、結果的には良かったんだろうと思います。
続いてカナダのシーザス選手。パーソナルベストは200点に届いていないけど、オリンピックの団体戦のショートとフリーの合計なら200点超えてます、という選手。ここでトップに立てばカナダ来年2枠確定、ターゲットスコアは132.42。シーズンベストは132.04 難しいところでしたが、序盤固かったですねえ。そこで開き直ったのか中盤以降は立て直しましたけど。結果的に188.14で3位。この時点で苦しいですが最終的にもそのままで12位でした。188点台に4人いて10位までは0.28差。これもジャッジ運でしかないですが、ステップレベル2がせめて3を取れていれば10位には入れるスコアでした。ただ、カナダの中では力は抜けているので、本人の来シーズンにはあまり影響しないように思います。
続いてリャボワ選手。一時期プルシェンコさんのところにいて拠点はモスクワだったと思いますが、国籍はアゼルバイジャン。こういう選手にとっても難しい大会だったと思います。滑り自体はミスはほとんどなく終盤まで行くのですが、加点がなかなか伸びてこない。そして最後のルッツが抜け。本人としてもうすこし点が欲しかったのでしょうか、滑り終わった時点で3位。涙が見えましたがどういう感情の涙だったのでしょう。
6分間練習入りの紹介で、間違えて4番目に挨拶しようとしてリャボワ選手の邪魔をしてしまったカレンチェン選手が続いて登場。カメラマンも騙されてました。今シーズンはジャンプに苦しんでいて今回も結局うまくいきませんでした。フリップでステップアウトは織り込み済みだと思いますが次にサルコウでうまくいかないのは予想外でした。というか本来ここはループが来るところでしたが今回はループなし構成にしました。そう来たか、という感じでしたが、構成の変更は実らず。それでも高い演技構成点とスピンステップで着実に稼いで190点台には乗せてこの時点で3位には来ます。これでアメリカ3枠はほぼ問題なさそうという状態を作りました。楽曲と本人の雰囲気があっていると思うので、ノーミスのフリーを見たかったのですが、今シーズンはうまくいきませんでした、残念。
第3グループ最後が樋口新葉選手。3位と5.52差、2位とは7.97差。トリプルアクセル込みのノーミスなら2位まではチャンスあるという位置でしたが、今回はジャンプがいろいろと決まりませんでした。ステップ、コレオと続く終盤の滑りは素晴らしかったのですが、ジャンプが決まらないと点はどうしても伸びない。本調子ではなかったですかね。ケガ情報もありましたし。得点が出て残り6人で5位。あれ? 3枠危ない? リャボワ選手に0.35差で負けたのがちょっと痛い。坂本選手が3位まで落ちると危ないことになってきました。逆にこの時点で2位にイ・ヘイン選手が残っているのでユヨン選手は5位を守ればよくスコア的には余裕が出てきています。韓国アメリカが先に3枠安泰状態で最終グループを迎えて、むしろ日本の方が危ないかもという、意外な展開になりました。
最終グループは、まさかのニコルショット選手から。ドイツ代表。カタリナビットさんの国。さすがに現役時代はしりませんが。落ち着いたいい演技だったと思います。ただ、やはり上位で戦うには武器が少なかったかなあという印象で、力なりにいい演技で力なりに納得いく点数がでましたが、それでもこの時点で5位、最終的に10位に終わりました。あれ、ドイツ2枠。
ここから5人が表彰台争い。出てきたのはアリサリュウ選手。アメリカ3枠確保には、まだもう一人この後にいるので、この時点で4位でもよくてターゲットスコアは112.60 これはもう全く問題ないスコアなので何のプレッシャーにもならなくて、表彰台争いに自分の力をどれだけ出せるかという局面。冒頭トリプルアクセル、降りた! qかな? どうかな? と思いましたが結局アンダーローテーションでした。厳しいなあ。コンビネーション3つを後半に詰め込む勝ちに来た構成。そのうち一つは回転足りてないなあというのは見えましたが、そのあとの3連は美しい。全体的にいい滑りでした。PCS66点台は渋いなあ。もうちょっと出してほしい感じがしました。211.19でトップに。頂点はちょっと厳しいですが表彰台に残れるかどうか。アメリカ3枠はここで問題なく確定。
次にユヨン選手が出てきました。韓国3枠のターゲットスコアはこの時点で119.97になっています。もう問題ないでしょう、ということで後は自分の表彰台争いだけ考えればいい状態。冒頭トリプルアクセルは明らかな回転不足。そのあともジャンプ決まらなかったなあ。この時点で2位。204.91では表彰台は厳しいか。大魚を逸したかなあ。韓国3枠は確保。
3枠確定済みで自分のことだけ考えればいい形でマライアベル選手登場。セカンド3回転無くてもノーミスなら技術点70点は出るし、残り3人でPCSも十分出せる絶好の位置。25歳。初のチャンピオンシップメダルチャンス。ターゲットスコア138.65でメダル確定。いい滑り出しだったんですが、最後のルッツからのジャンプ2つが痛かった。3連続入り加点もしっかり取れれば技術点70点には乗っていたところ。208.66でこの時点2位。2.53ポイント届かず。画面に映る上位選手席。アリサリュウ選手とユヨン選手、近い位置に座っていて、でも反応薄く。メダル確定でもうちょっと反応あってもよさそうでしたけど。でも座り方はそれまで何か話していた感じはありました。
続いて包帯巻き巻きのヘンドリックス選手。力を発揮できればトップに来られますがケガの状態はどうなのか? 冒頭コンビネーション回転微妙。後半ルッツも微妙。足は持つか? 持つのか? 最後まで。ほぼノーミス。PCSも9点平均乗って142.70のトータル217.70でトップ。力はあるけど2本そろわないことが結構ある選手だったのですが今回はそろいました。ケガで目標は10位といっていたくらいの状態でしたがそれが逆に良かったのでしょうか。
最終滑走坂本花織。3枠確保には130.88 普通に滑れば問題ないけど大崩れするとなくはないスコア。優勝のターゲットは137.39 これもしっかり滑れば問題ない。
冒頭ダブルアクセル、いつものように大きい。次のルッツ、ルッツ、これ課題。今回は大丈夫そう。これで大崩れはなさそうなので3枠確保は問題なさそう。結果的には!はついてましたけど。後半のコンビネーション。成功率は高いけどやはり心配な3-3が決まって、これで勝かな、と思いました。そのあとの3連続、オーケー、オーケー。これで優勝確定。あとは155点へ、技術点80点へ。ステップ、スピン、コレオ、そして世界一のトリプルループ。ちょっと疲れてるか? それでも最後のスピンまでしっかり滑って文句なし優勝。後はスコア。戻ってくるときにリンクで何か拾っていましたね。途中から気になっていたらしいですけど。誰が落とした何だったんだろう? スコア待ち、スコアが出る。喜ぶ中野先生の横で坂本選手は指で3を出し何かを確認。スコアそのものや自分が優勝したかどうかの前に、3枠確保できたかどうか? そちらを心配する心理が先に来るんですね。その辺に人柄が出ていたように感じます。
最終スコアは155.77が入って236.09 昨シーズンのシェルバコワ選手の優勝スコアを超えました。19年のザギトワさんの237.50には届かず。それでも2位に18.39ポイントの大差を付けました。
20年前のスケートと評した人もいましたが、ザギトワ選手、メドベージェワ選手の全盛期といい勝負、どっちが勝つか? くらいの力だと思います。そして、世界選手権という大会で見ると、まだザギトワさんの237.50を誰も超えていない。世界選手権ではまだ4回転を飛んで優勝した、という選手はいません。昨年のシェルバコワ選手は4回転は転倒でした。
236.09という優勝スコアは誰も文句言えないものだと思います。
一方で、全体のレベルがどうだったか? と問われると、そこは確かに、ちょっと物足りなかった感はありました。その辺はロシアどうこうというより、オリンピックシーズンの世界選手権、というのがこういうもの、ということなんじゃないかと感じています。女子ではオリンピックと世界選手権を同じシーズンに勝った選手は21世紀に入ってからは皆無です。両方で結果を出すのは難しい。4年前のザギトワさんでさえ、最大のライバルメドベージェワさんが欠場したにもかかわらずフリーで崩れて5位に終わりました。トップ選手に限らず、人生最大の舞台に立った1か月後にもう一度最高の成果を出せと言われてもなかなかつらいのは確かだと思います。そんな中でトリプルアクセルに4人の選手が挑み、枠取りにそれぞれ力を注ぎました。
本当にいろいろなことがあったシーズンでした。明らかにない方がいいことがいろいろとありましたが、それでも何とかシーズン最後の大きな大会は終わりました、一部、世界ジュニア兼任の選手もいますが、ほとんどの選手はこれでお疲れさまでした