世界選手権22 男子シングル 感想

男子シングルも決着しました。表彰台独占はならずの金銀2つのメダル。男子はここのところ表彰台2人が続いていますね。昨シーズンの世界選手権から今シーズンも四大陸、オリンピック、そして世界選手権。オリンピックシーズンの世界選手権、二大巨頭は欠場でしたが、それでも見ごたえはたっぷりありました

男子シングルもまずは全体の感想を見ていきます。

 

○男子シングル 総合結果

Pl Name Nation Total SP FS
1 Shoma UNO JPN 312.48 109.63 202.85
2 Yuma KAGIYAMA JPN 297.60 105.69 191.91
3 Vincent ZHOU USA 277.38 95.84 181.54
4 Morisi KVITELASHVILI GEO 272.03 92.61 179.42
5 Camden PULKINEN USA 271.69 89.50 182.19
6 Kazuki TOMONO JPN 269.37 101.12 168.25
7 Daniel GRASSL ITA 266.66 97.62 169.04
8 Adam SIAO HIM FA FRA 266.12 90.97 175.15
9 Ilia MALININ USA 263.79 100.16 163.63
10 Matteo RIZZO ITA 255.75 91.67 164.08
11 Kevin AYMOZ FRA 245.46 85.26 160.20
12 Roman SADOVSKY CAN 245.36 80.54 164.82
13 Deniss VASILJEVS LAT 243.00 90.95 152.05
14 Keegan MESSING CAN 235.03 91.18 143.85
15 Mihhail SELEVKO EST 234.72 78.85 155.87
16 Vladimir LITVINTSEV AZE 233.62 85.83 147.79
17 Maurizio ZANDRON AUT 228.27 83.10 145.17
18 Sihyeong LEE KOR 224.05 85.34 138.71
19 Nikolaj MAJOROV SWE 216.45 79.36 137.09
20 Graham NEWBERRY GBR 210.40 74.92 135.48
21 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 208.95 71.42 137.53
22 Nikita STAROSTIN GER 205.72 73.79 131.93
23 Ivan SHMURATKO UKR 196.65 73.99 122.66
WD Junhwan CHA KOR 82.43 82.43  
25 Mark GORODNITSKY ISR 69.70 69.70  
26 Adam HAGARA SVK 60.92 60.92  
27 Vladimir SAMOILOV POL 60.71 60.71  
28 Burak DEMIRBOGA TUR 52.86 52.86  
29 Aleksandr VLASENKO HUN 51.10 51.10  

今回は女子同様試合展開を追って滑走順に見ていきます。

 

ショートプログラムは100点台が4人。ヴィンセントジョウ選手はqと<でジャンプの加点が伸びずに6位スタート。見た目よかったんですけどね。地元のエイモズ選手はアクセル零点で15位。これはむしろアクセル零点でよく15位に踏みとどまったとみた方がよかったでしょうか。オリンピック5位のチャジュンファン選手はジャンプが決まらず17位。このままフリーは棄権します。状態がよくなかったですかね。フリー進出ラインは71.42でした。上位はロシア中国がいなくても男子はそれほど強烈な影響はないですが、フリー進出ラインは明らかに下がります。

 

フリーは前半グループではサドフスキー選手が気を吐きました。オリンピックは辛い戦いになってしまっていて世界選手権もショートは良くなかったですがフリーは7位でトータル12位まで上げてきました。フリーも伸びずに結果的に16位以下で終わっていれば、カナダは来年1枠になっていたはずですので、このフリーの逆襲は大変大きな価値がありました。逆に言うと、サドフスキー選手がここまで伸びてきたのでメッシング選手は4回転ルッツをプログラムに入れる、というような無茶を出来たのかもしれません。

 

後半グループに入って最初はアメリカのプルキネン選手。代打の代打。国際大会の実績は非常に薄いという立場。はっきり言えばだれもほとんど期待していなかったと思います。それが4回転2本、トリプルアクセル、後半にもトリプルアクセル、ジャンプを次々に決め技術点97.61 PCSはそれほどもらえませんでしたがそれでも180点台に乗せて大幅パーソナルベスト更新の271.69 圧倒的な首位にこの時点で立ちました。アメリカはジョウ選手もマリニン選手も大崩れがある選手なので、3枠があまり安泰ではまだなかったのですが、このプルキネン選手の大躍進で一気に楽になった形です。この滑り、結果的にフリーでは全体3位になりました。シーズンベスト154.90からここまで一気に上げることができるものなのですね。

次はバシリエフス選手。宇野選手の同門。4回転決まらないなあ。後のジャンプも<とqが並んで点が伸びません。仕方ないのですけど残念。何とか4回転を飛べるように、というよりは最終完成形はジェイソンブラウン選手みたいになっていくことなのかなあ、と思います。

残り10人、ここで地元フランス、アダムシャオヒムファ選手。まだこの時点でフランスは2枠が確保できない可能性がわずかですが残っていました。系統的にはエイモズ選手と同じ、表現で魅せる型。それが今回は4回転2本にトリプルアクセル、すべて加点付きの成功。後半ルッツは残念でしたがステップはレベル4の+4.000、そのまま続けてコレオも+3.667 会場とテレビの前を大いに沸かせてくれました。ノーミスならトップまで行きそうでしたがルッツ分届かずこの時点で2位。フランス2枠確保。3枠は無いな、というのでほぼ確定です。来年あたりヨーロッパ選手権勝つかも、という勢いでした。

 

続いてキーガンメッシング選手。この時点でサドフスキー選手が4位。残りのカナダ以外の選手は8人なので12位が確保され、メッシング選手は滑り切れば2枠が確定するという状況。従って自分のことだけ考えて演技構成を組むことができます。そのあたりの表れが冒頭の4回転ルッツ初挑戦だったかと思います。それも含め4回転3本はすべて決まらず。全体的に今一つでしたかね。終盤コレオはさすがでした。イーグルからのハイドロブレーディング。あれは何度も見てもいいなあ。コレオは+4.111ついて全体2位でした。

 

第3グループ5番滑走でマッテオリッツォ選手。イタリアは3枠取るにはかなり頑張らないといけなくてこの時点でトップには出たいところ。一方2枠ならまあ間違いないでしょうという状況です。今回は4回転が決まらず。こういう表現系の選手は、結局冒頭の4回転決まるかどうかですべて決まってしまうのが何だか残念なのですけど、しかたないんでしょうねえ。

 

残り7人、ここでジョージアのクビテラシビリ選手。モスクワどっぷり系の非ロシア国籍選手。大丈夫かなあ。と思っていましたがほぼノーミス。2回飛ぶジャンプが4回転トーループだけなのですが、トリプルアクセル2回の構成に出来ていれば表彰台までありました。セカンド3回転2回でノーミスでもよかった。あと一歩。エキシビジョンどうするんだろ? グバノワ選手あたりにジャスミンは頼むんでしょうか。この先の身の振り方も難しいところですかね。

 

最終グループに入る前の時点でトップはクビテラシビリ選手で272.03 残りの選手の力を考えるとこのスコアで表彰台に乗るのはちょっと厳しそうかな、という印象でした。という流れでアメリカのヴィンセントジョウ選手が出てきます。残りがアメリカ以外は4人でプルキネン選手がこの時点2位なので、自分が滑って3位以内ならアメリカ3枠確定。3枠ターゲットスコアは170.29 ちゃんと滑れば問題ないけど大崩れがある選手。トップに出るには176.20が必要。でも表彰台には190点くらい欲しいなあ、という状態を6分間練習も挟むのでおそらくだいたい頭に嫌でも入れられた状態で入っていったと思います。

4回転を5本入れるかと思っていましたが今回は4本にしてました。ルッツ、サルコウ成功。次のトリプルアクセルが手をつきましたが後のジャンプは無難にこなしていきました。見た目上出来で表彰台まで行きそう、でも、この選手はスロー見てテクニカルコントローラーの判定が全部出てスコア見ないと分からないんだよなあ・・・、と思って待っていましたが案の定q2つと<2つでフリースコアは181.54止まり。この時点でトップに立ちアメリカ3枠は確定ですが、表彰台はどうか? 難しいところ。

 

最終グループ2番滑走でイタリアのグラスル選手。イタリア2枠は確定済み。3枠には少なくともこの時点でトップに立ち表彰台が必要という情勢。3枠をどうとか計算するより、ベストの演技をして表彰台を目指すというある種シンプルな状況ではありました。ルッツ、フリップ、ループ、基礎点高い方から3種類の4回転。結果的に、ルッツは転倒で、q,<,qと並んでスコアは伸びませんでした。十分チャンスあったのですけどねえ。この時点で3位。最終的には7位でした。オリンピックを再現できれば表彰台だったのですが残念でした。

 

ここでショート4位。期待の新星マリニン選手。ルッツ付きで4回転4種類で基礎点高いのでノーミスなら表彰台というのが見えている状況でした。ルッツ、トーループトリプルアクセルまで完璧。これは行ったか? 頂点もあるか? とまで思った次のタノサルコウが痛そうな転倒。そこから後半乱れて立て直しが効きませんでした。フリー163.63のトータル263.79でこの時点6位。やはりノーミスは難しいです。まだ17歳。まずは次の世界ジュニアに期待です。

 

残り3人日本勢。友野選手から。首位に立つターゲットスコアは177.29 パーソナルベストを超えるスコアですが、ノーミスなら問題なく届きますし、ミス1つくらいでも行ける水準です。しかしジャンプがきっちり決まりませんでした。2つ目のサルコウが転倒。他もクリーンに決まらず。回転足りずに基礎点から削られたのは3連のサルコウだけ。スピンステップはすべてレベル4なので、獲るべきところはきっちりとったので大崩れせずに上位には残ったのですが、惜しかったなあ、という印象が残りました。最後のこれは5を5人がつけての平均GOE+4.444 全選手中トップ。ラ・ラ・ランド友野一希のプログラムです、という印象を世界に残したのではないかと思います。

この時点で4位。表彰台はなくなりました。結果的に表彰台ラインとは8.01の差。4回転サルコウを成功させてGOE+2.5くらいもらっていれば表彰台でした、という結果。惜しかったなあ。

 

鍵山優真選手登場。グラディエーター。冒頭サルコウ完璧。平均GOE+4.222 結局今シーズン4回転サルコウで平均GOEを+4以上もらったのは鍵山選手だけです。これで今シーズン4回目。そんな美サルコウの後のループは両足。ここまでは織り込み済みだったでしょうか、しかし後半が伸びず。セカンドループはいらず2回転のトーループに。とっさに回転減らすはわかるのですが、とっさにループからトーループに変えるなんてできるものなんですね。むしろそれが驚き。そして最後のアクセルが1回転。技術点は100点に乗らずフリースコア191.91 トータル297.60はこの時点で首位ですが300点に乗せられませんでした。

 

優勝スコアが300点に乗らなかったのはルールもだいぶ今と違う2015年が最後です。最終滑走は宇野昌磨選手。優勝へのターゲットスコアは187.98 普通に滑れば問題ないスコアですが4回転5本プログラムは難しく、普通が出来ないこともある。シーズンベストは187.57でわずかにターゲットスコアに届いていない。ショートは良かった。調子も良い。さあどうなる?

冒頭から安定してました。4回転ループは一人が+5を付ける平均GOE+3.889 今シーズンの全選手の4回転ループの中で最高スコア。サルコウもきれいに決めました。次のトーループはセカンドジャンプが2回転に。トリプルアクセルはきれいに決めて後半へ。4回転フリップが平均GOE+3.667ついて宇野選手の今シーズン最高のフリップになりました。この時点で優勝はほぼ見えたのですが、次のトーループが回転不足でコンビネーション付かず。3連続は最後が1回転に。しかしそれでも、それぞれ着氷したことで優勝はほぼ確定です。残りスピンステップ。最後のステップは6人が+5を付ける高評価で今シーズンのボレロを締めました。技術点107.71 フリースコア202.85で200点到達、トータル312.48で優勝となりました。パーフェクトからは3回転2本分足りないですからノーミスならトータル320点までは見えていることになります。GOEも考えると325点くらいまであるのかな。

これまで世界選手権では2位2回4位2回 オリンピックは2位1回3位1回 グランプリファイナル2位2回3位2回。惜しいところで勝ち切れないことが多かったのですが、ついに、シニアのチャンピオンシップ初優勝です。

 

男子はロシアと中国がいても表彰台争いにはそれほど大きな影響はなかったような感じがします。表彰台ラインが結局270点台だったので、ボーヤンジン選手やロシアの誰かなら絡んでくることは出来たかもしれないので、そういう意味では多少の影響はありましたが、290点後半の2位のラインまではちょっと届かないでしょう。

結局なんだかんだで表彰台は予想されていた実績のあるメンバーが上がりました。強い人は結局強い。そんな感想にもなる試合でした。