23-24 アンバーグレン

1999年10月28日生まれ

シニア8シーズン目

シーズン獲得賞金:$11,000

世界ランキング:12位

シーズンランキング:13位

シーズンベストスコア 189.63(28位) Skate America

ショートプログラムシーズンベスト 71.45 Skate America

フリーシーズンベスト 133.78 Grand Prix Espoo

スピンレベル4率 25/30 = 83.3%(国際大会:19/24 = 79.2%)

ステップレベル4率 4/10 = 40.0%(国際大会:2/8 = 25.0%)

スピンオールレベル4 1/5(国際大会:0/4)

スピンステップオールレベル4 1/5(国際大会:0/4)

ジャンプ回転不足率 5/50 = 10.0%(国際大会:5/40 = 12.5%)

ジャンプ回転不足なし 2/5(国際大会:1/4)

スピンステップオールレベル4ジャンプ回転不足なし 1/5(国際大会:0/4)

 

○23-24シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
GP Skate America 5 189.63 71.45 118.18
GP Grand Prix Espoo 3 185.39 51.61 133.78
CS Golden Spin 2 177.51 63.09 114.42
NC US Championships 1 210.46 74.98 135.48
WC World Championships 10 186.53 64.53 122.00

グレン選手は昨季グランプリシリーズで初めて表彰台に乗り、ナショナルでも3位表彰台。初の世界選手権出場を果たしました。

今期はシーズン序盤はケガの影響もあって試合には出場せず、グランプリシリーズからの登場となりました。初戦は地元スケートアメリカ。国として地元というだけでなく開催地としてダラスが地元という試合です。ショートプログラムは素晴らしい出来。全要素全ジャッジプラス評価。パーソナルベスト更新の71.45で2位に付けました。フリーは冒頭でトリプルアクセル投入。国際大会で跳び続けて2年余り。地元の試合でついに着氷。平均GOE+2.444の高評価を得ます。これは表彰台は確実、逆転優勝も、と思われたのですが、後半崩れてしまいました。ルッツ、フリップと続けて2転倒。さらにループが1回転に。1.1倍ジャンプが壊滅して、結局118.18 トータル189.63で5位に終わりました。

 

次戦は5戦目のエスポー。坂本選手とキムチェヨン選手がシードでいて、住吉選手がファイナルを賭けて出てくる試合です。このショートプログラム、冒頭のフリップが2回転になって零点。後半ループがアンダーローテーションでセカンドは2回転ということでスコア伸びずに51.61 3位まで14.58差と壊滅的な出来で11位スタートとなります。失うものの無いフリー。ここでも飛んだアクセルは一回転半に。逆襲もならずか、と思われたのですが、ここからジャンプを次々と決めて行って全要素全ジャッジプラス評価。パーソナルベストとなる133.78まで出してトータル185.39 残り10人いたのですが次々と順位を上げて行って、まさかの大逆転3位表彰台。これで2期連続でグランプリシリーズの表彰台に上がることとなりました。

 

グランプリファイナルに出るつもりがあったのかどうか、その真裏にあるチャレンジャーシリーズのゴールデンスピンにエントリーしていました。ファイナルに届いても届かなくても12月に1試合こなすというスケジュール設定です。この試合もフリーのトリプルアクセルはGOE±0ではありますがしっかり降りました。ただ、後半3つのジャンプが壊滅するというスケートアメリカと同じ流れでトータル177.51の2位となっています。

 

1月に全米選手権へ。世界選手権の代表権が懸かった試合です。ショートプログラムは18人中の17番滑走で登場。ここでなんと、全要素全ジャッジプラス2以上という驚きの出来で74.98を出します。最終滑走のレビト選手が上へ行きましたが0.40差の2位。3位とは7.57差。大崩れしなければ2枠ある世界選手権の切符は取れそうだけど、結構大崩れするんだよな・・・というフリー。17番滑走で出てきます。最初の鍵はトリプルアクセル。平均GOE+2.556という完璧なトリプルアクセルを着氷。これが入れば前半は大丈夫。次の問題は後半の3つのジャンプ。これはここでもうまくいかずループは決まりましたが3連続入らず最後のフリップは1回転。それでもアクセル成功が大きく135.48を出してトータル210.46 首位に立って最終滑走を待ちます。最後のレビト選手が伸びず、全米初優勝を果たしました。当然、世界選手権の切符を獲得です。

 

世界選手権は2年連続の出場。自身の上位進出とアメリカ3枠を確保したい、という2つの目標がある試合です。35人出場の22番滑走。コンビネーションとダブルアクセルは良かったのですが後半のループで転倒。64.53で9位スタートとなります。レビト選手が2位につけていることもあるので、しっかり滑れば3枠は見えている。でも大崩れすることもある。そんなフリーは16番滑走です。注目のトリプルアクセルはまたも大成功の平均GOE+2.000 ただ4つ目のサルコウが2回転になります。問題の後半。やはりルッツが1回転になり、次のループはアンダーローテーション。最後のフリップはなんとかqですが、結局リカバリーが無くまた3連続が付かず。フリーは122.00 トータル186.53で8人残して4位。微妙な順位でしたが、最終的には10位に入ります。レビト選手が2位表彰台でしたので、アメリカ来期3枠も確保。代表として枠取りに貢献し、自身も一定の結果を残しました。

 

○要素別スコア

Event Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Skate America 189.63 95.85 95.78 56.59 2.56 22.24 14.46
Grand Prix Espoo 185.39 93.31 92.08 52.91 6.23 21.72 12.45
Golden Spin 177.51 84.98 92.53 45.97 5.47 21.68 11.86
US Championships 210.46 104.96 105.50 54.44 11.65 23.83 15.04
World Championships 186.53 89.85 97.68 52.91 2.92 21.98 12.04

トータルスコアはゴールデンスピンの170点台もありますが、多くは180点台です。ナショナルだけ210点に達しました。

技術点も90点前後が標準でナショナルだけ100点超え。まあ、全米GOEはちょっと・・・、という部分はあるにはありますが、優勝は見事でした。

PCSも国際大会は90点台が標準で全米だけ105点まで出ています。世界選手権で97.68 これは8点平均を少し上回る水準です。この97.68で今期全選手中10位、ISU公認で9位にあたります。トリプルアクセル持ちだけどPCSの方が点が出るという選手です。

ジャンプの基礎点が50点台にとどまっています。トリプルアクセルがあるけど基礎点が伸びないという不思議構図。加点の方はマイナスは無く、全米の二桁はちょっと特殊ですが、グランプリシリーズでも6.23まで出しています。この6.23は今期全選手中16位。ISU公認で見ると12位です。

スピンは21点台が多く、スケートアメリカで22点台、全米で23点台、それほど伸びていません。

ステップ系要素は全米は15点台ありますがその他は11点12点台がありつつスケートアメリカは14点台あります。ステップレベル4率が低いので、しっかりレベル取れた時は高い点になる、という構図のようです。

 

○要素別偏差値

Event Total J Base J GOE Spin Step PCS
Skate America 61.45 55.58 60.86 57.98 66.23 63.31
Grand Prix Espoo 59.89 51.65 68.38 55.89 56.37 60.26
Golden Spin 56.98 44.23 66.82 55.73 53.48 60.63
US Championships 69.12 53.28 79.49 64.40 69.07 71.32
World Championships 60.31 51.65 61.60 56.94 54.36 64.88

トータルスコアは60前後の偏差値になります。全米選手権は70近くになりました。

ジャンプの基礎点は50前後と普通扱いの偏差値です。加点の方はすべて60以上。60台後半が国際大会でも出せて、全米は80近いことになっています。

スピンは国際大会では50台中盤から後半程度。ステップ系要素はいい時は60台後半が出ますが、50台中盤程度が普通です。

PCSは60台前半で全米だけ傾向が違いました。

トリプルアクセルあるけど基礎点で稼いでいるわけでもない点の取り方です。

 

アンバーグレン選手の要素別偏差値レーダーチャート23-24

レーダーチャートは右上が凹むという、高難度ジャンプを構成に持っている選手には見えない形です。坂本花織選手と形が似ていますが坂本選手より右上の凹み方が極端です。

 

●シーズン最高の基礎点構成

スケートアメリカ ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3T   9.50   1.67 11.17 3.111
2 CCoSp4   3.50   1.00 4.50 2.778
3 2A   3.30   0.90 4.20 2.667
4 3Lo   5.39 x 1.40 6.79 2.889
5 FSSp4   3.00   0.81 3.81 2.778
6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
7 LSp4   2.70   0.66 3.36 2.333
  TES   31.29   7.61 38.90  

ショートプログラムは31.29が最高基礎点でした。フリップからのコンビネーションで単独ジャンプはループを1.1倍で跳びます。スピンステップオールレベル4で31.29になりました。

ショートはルッツなし構成です。ルッツとループは1.1倍すると1.10基礎点が違います。これを結構な違いと見るか、出来栄え差で追いつける問題ない差と見るか。現状のグレン選手のルッツだと、ちょっとショートプログラムに入れずらいだろうなあ、とは思います。

むしろ、今シーズンのトリプルアクセルの確率からすると、ショートからトリプルアクセルという選択肢もあるかもしれません。それが出来ればルッツなしなどものともしない高基礎点、35.99が出せます。

 

○グランプリエスポー フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 1A   1.10   0.06 1.16 0.556
2 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.111
3 3Lo+2T   6.20   0.77 6.97 1.667
4 3S   4.30   0.86 5.16 2.000
5 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
6 StSq3   3.30   0.85 4.15 2.556
7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 1.35 12.90 2.333
8 3Lo   5.39 x 1.40 6.79 2.889
9 3F   5.83 x 1.21 7.04 2.222
10 ChSq1   3.00   1.43 4.43 2.889
11 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.556
12 LSp4   2.70   0.69 3.39 2.556
  TES   59.37   11.26 70.63  

フリーの最高基礎点は59.37でした。トリプルアクセルが不発でシングルアクセルになった試合です。2回飛ぶジャンプはフリップとループ。セカンド3回転あり、シークエンスのアクセルありで7トリプル。ステップレベル3なのでこれをレベル4に出来れば59.97までは来ます。あとは、アクセルがダブルなら62.17 しっかりトリプルアクセルに出来れば66.87の基礎点になります。

この構成から基礎点を上げていく、というよりこの構成を特に後半のジャンプをしっかり滑れるようになる、というのが目指す先になるかと思います。

 

○平均GOE3.000以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US Championships FS 10 ChSq1   3.00   1.79 4.79 3.667
US Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.82 11.32 3.444
US Championships SP 2 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
US Championships FS 11 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
Golden Spin SP 4 3Lo   5.39 x 1.57 6.96 3.286
US Championships SP 3 2A   3.30   1.08 4.38 3.222
World Championships SP 6 StSq3   3.30   1.08 4.38 3.222
US Championships FS 2 3F+3T   9.50   1.74 11.24 3.222
US Championships SP 6 StSq4   3.90   1.28 5.18 3.222
US Championships FS 8 3Lo   5.39 x 1.54 6.93 3.111
US Championships SP 4 3Lo   5.39 x 1.47 6.86 3.111
Skate America SP 1 3F+3T   9.50   1.67 11.17 3.111
US Championships SP 5 FSSp4   3.00   0.90 3.90 3.000
US Championships FS 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000
Skate America SP 6 StSq4   3.90   1.17 5.07 3.000

グレン選手は平均GOE+3以上の要素がコンスタントに出てきているように見えますが、ほとんど全米選手権だったりします。全米GOEルール・・・。

国際大会ではゴールデンスピントリプルループが+3.286ありました。これは今期の全トリプルループの中で2位の高評価です。全米のトリプルループも高評価ですし、ここには乗ってきませんが、+2台後半も連発しています。世界選手権ではショートで転倒、フリーでアンダーローテーションとなぜかひどい出来でしたが、決まれば高い評価を受ける要素です。

 

トリプルアクセル

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate America FS 1 3A   8.00   1.94 9.94 2.444
Golden Spin FS 1 3A   8.00   0.00 8.00 0.000
US Championships FS 1 3A   8.00   2.06 10.06 2.556
World Championships FS 1 3A   8.00   1.60 9.60 2.000

今期、国際大会でトリプルアクセルをGOE0以上で決めた選手は5選手います。スケートアメリカの+2.444は今期の全トリプルアクセルの中で2位の評価となります。また、±0以上の成功が3回あったのはグレン選手ただ1人です。島田選手は降りているのですが意外とGOEマイナスになることが多く、プラス付いたのは2回だけでした。回数ベースで見る今期のトリプルアクセル女王はアンバーグレン選手でした。

 

○3回転-3回転

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate America SP 1 3F+3T   9.50   1.67 11.17 3.111
Skate America FS 2 3F+3T   9.50   1.51 11.01 2.889
Grand Prix Espoo FS 2 3F+3T   9.50   1.14 10.64 2.111
Golden Spin SP 1 3F+3T   9.50   1.48 10.98 2.714
Golden Spin FS 2 3F+3T   9.50   0.74 10.24 1.286
US Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.82 11.32 3.444
US Championships FS 2 3F+3T   9.50   1.74 11.24 3.222
World Championships SP 1 3F+3T   9.50   1.29 10.79 2.222
World Championships FS 2 3F+3T   9.50   1.51 11.01 2.889

グレン選手はフリップからの3-3をショートフリー共に1度づつ飛びます。

今期要素として入ったのは9回あって、その9回すべてがGOEプラスの成功です。唯一、エスポーでのショートはフリップが2回転になってコンビネーションになりませんでした。

それでも3-3の成功率9割は驚異的です。

スケートアメリカのショートでもらった+3.111は今期の全選手のセカンド3回転の中で5位の評価、3回転-3回転の中では4位、3F+3Tとしては2位です。2連続のコンビネーションは素晴らしかったです。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Grand Prix Espoo FS 7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 1.35 12.90 2.333

今季5試合の中で3連続ジャンプが入ったのは1度だけでした。どうにも3連続が入らないというのはグレン選手の弱点であり、トリプルアクセルあるのに基礎点が伸びない原因です。この3連続が入ったエスポーの試合だけ、トリプルアクセルが飛べませんでした。

 

○ルッツを含む要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Skate America FS 7 3Lz< F 5.19 x -2.36 2.83 -5.000
Grand Prix Espoo FS 7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 x 1.35 12.90 2.333
Golden Spin FS 7 1Lz   0.66 x -0.05 0.61 -0.714
US Championships FS 7 2Lz   2.31 x -0.06 2.25 -0.222
World Championships FS 7 1Lz   0.66 x -0.04 0.62 -0.778

3連続が入らない要因とも言えるのが、このルッツジャンプの苦手さです。ルッツはショートでは飛ばず、フリーで1回だけ飛ぶ要素ですが、予定構成としてはルッツからの3連続で入っています。これが転倒したり抜けたりすることでコンビネーションになりません。最後の要素ではないので、あとからコンビネーションはリカバリーすればいいとも思うのですがそれもない。むしろルッツが苦手なので、最初から別のジャンプで3連続にすればいいようにも思うのですが、どうなんでしょうか。昨季も8試合で1度だけで、結局入ったのはループからの3連続だったので、ルッツからでなくても3連続は入らないかもしれませんが、でも、それなら、なんで2連続の3-3はあんなに上手なのだろう? という不思議さはあります。ルッツ、3連続、他のジャンプも後半決まらない傾向があるのですが、その辺全部ジャンプがどうこうではなくて、体力の問題なのでしょうか?

いずれにしても、3連続が入るようになるだけで、3点程度スコアが上がりますので、今後の明らかな伸び代ということになるかと思います。

 

今期は全米選手権をついに制しました。99年10月生まれ。スケート年齢的にはヘンドリックス選手、坂本花織選手と同じ年になります。女子のフィギュア界ではなかなかのベテランの方の選手。今期、トリプルアクセルという武器をほぼ完成させました。アメリカ勢ではハーディングさん含めると4人目の成功者になります。これまでのISU公認試合でのトリプルアクセル成功の最年長は浅田真央さんの25歳2か月というのがありますが、来年の世界選手権、あるいは4大陸選手権でも、決めることができればそれを上回る記録となります。アクセルだけの選手ではなく、来期はオリンピックの枠取りも掛ってきますし、そういった意味でも結果が欲しいシーズン。ベテランですがもう1段階上へ行くことができるか?

坂本選手、ヘンドリックス選手と、24歳25歳で表彰台を占めるような姿をグランプリシリーズで見てみたいようにも思います。