ジュニアグランプリファイナル23 逆転勝ち

グランプリファイナルと同時開催でジュニアグランプリファイナルも行われました。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Mao SHIMADA JPN 206.33 68.27 138.06
2 Jia SHIN KOR 200.75 69.08 131.67
3 Rena UEZONO JPN 196.46 67.87 128.59
4 Yuseong KIM KOR 190.48 62.71 127.77
5 Ami NAKAI JPN 187.04 65.04 122.00
6 Minsol KWON KOR 183.06 62.12 120.94

島田麻央選手2連覇。ジュニアグランプリファイナルを2勝した選手は過去にいましたが、2連覇は初になります。来期も問答無用でジュニアに固定というルールになっていますので、史上初の3連覇がかかることになります。

2位にはシンジア選手が2年連続で入りました。島田選手は昨年から0.79だけスコアを上げていて、シンジア選手も昨年から0.43スコアを上げたということで、1位2位はほぼ昨年と変わらない結果になりました。今期は3試合滑って最低が200.74の最高が201.33 非常に安定した結果となっています。

今期からジュニアに上がった上薗恋奈選手が3位表彰台を確保です。ショートフリーほぼミスが無いと言える演技でパーソナルベストも更新です。

4位には韓国のキムユソン選手。ダブルアクセルのように見えるトリプルアクセルをクリーンに決めてショートの5位から1つ順位を上げてきました。フリーの技術点は全体2位。ルッツのe癖が取れるか、PCSが伸ばせるようになっていけば世界ジュニアの表彰台も見えてきそうに感じます。曲と合わずに音鳴っているのに演技終わってしまうあたりの感覚がPCSが伸びないところに通じるような気もするので、そのあたりまで気を配っていただけたらと思います。

体調が心配された中井亜美選手は5位でした。これだけのスコアが出ているので悲惨な体調ではなかったのだろうと思われますが、中井亜美比で見れば大したスコアでもないし大した順位でもない、ということで、残念感もあります。体調面、心理面、いろいろと難しい状況での試合だったのではないかと思われますが、ちゃんと滑ればやっぱり点は出る選手なのね、というのは見せてもらえたように感じます。

2年連続出場のクォンミンソル選手は6位。昨季のファイナルからスコアは8点近く上げましたが順位は1つ下がりました。昨季は世界ジュニアも出ていましたが、韓国ジュニアのレベルは高く代表争いは激烈。今期も代表を掴むのはなかなか大変ですが、雰囲気と裏腹にしぶとく生き残ってくるタイプにも思えますので、世界ジュニアの日韓決戦にも参加してくることを期待したいと思います

 

○島田麻央選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A   8.00   1.60 9.60 2.000
2 4T   9.50   2.17 11.67 2.222
3 3Lz<+3T 8.92   -0.47 8.45 -1.000
4 FCCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.444
5 3F+2A+SEQ   8.60   1.06 9.66 2.111
6 3S+3Tq+2T q 10.78 x -0.68 10.10 -1.556
7 1Lo   0.55 x -0.01 0.54 -0.222
8 ChSq1   3.00   1.07 4.07 2.111
9 3Lz   6.49 x 1.60 8.09 2.667
10 CCoSp4   3.50   1.45 4.95 4.222
11 LSp4   2.70   0.89 3.59 3.333
  TES   65.54   9.58 75.12  

ついに、トリプルアクセルと4回転を同時成功。驚いていたら、成功率100%の3-3でミスが出るという。実は今回の6選手のうち、フリーでGOEが3つマイナスなのは単独で最多でした。トリプルアクセルと4回転決めたのに、ミスの数が最多になるという意外な姿を見せていました。序盤2つでの集中力の消費量が大きすぎたでしょうか。ジャンプだけでなくスピンの加点もいつもより少なめでしたし、コレオの加点も本人比国際大会ワーストです。今回はジャッジが厳しかったというよりは本人の消耗が中盤以降少しづつ出ていたような印象でした。というわけで印象ほど技術点は伸びていないです。

2シーズンジュニア全勝継続中。周りから見ると基礎点差あるし力の差あるし楽勝でしょ、と見えなくもないですが、本人からするとトリプルアクセルと4回転を両方失敗すると結構危険な水準になるというのは心理的にはプレッシャー強いのではないかとも思われます。2つ失敗しても他の選手のノーミスといい勝負と言われても、その2つが4回転とトリプルアクセルなわけで。それらのどちらかは成功しないと危ないというのはなかなか大変です。

どこまで連勝を伸ばすか? 全日本はシニアの試合なのでカウント外。意外と国内ジュニア戦で全中あたりも強敵がいます。上薗選手結構危険です。世界ジュニアは当然シンジア選手ら韓国勢がいる。簡単に見えて簡単ではないジュニアの連勝記録の継続。世界ジュニア2連覇はラジオノワさんトゥルソワさんとかつて2人いますが、3人目となることができるでしょうか? その前にユースオリンピックが1つ大きな試合として入ってきます。

 

○上薗恋奈選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   1.26 11.36 2.111
2 3Lo   4.90   0.98 5.88 2.111
3 3F!+2T ! 6.60   0.15 6.75 0.333
4 3S   4.30   0.98 5.28 2.333
5 FSSp4   3.00   0.73 3.73 2.333
6 3Lz   6.49 x 1.52 8.01 2.556
7 3F   5.83 x 0.83 6.66 1.444
8 2A+2A+2T+SEQ   8.69 x 0.66 9.35 2.111
9 LSp3   2.40   0.51 2.91 2.111
10 ChSq1   3.00   1.29 4.29 2.667
11 CCoSp4   3.50   0.90 4.40 2.444
  TES   58.81   9.81 68.62  

ほぼノーミス。フリップの!が残念でしたがこれはもう癖になっているので珍しくでは無く特に国内戦では頻発している事象です。フリーもパーソナルベスト更新。128.59まで来ましたので、単純計算シニアルールでステップ足せば130点に乗りますし、トータル200点も見えます。全日本表彰台の可能性まで出てきました。

今季序盤は最初の要素で3連続を付けていましたが、全日本ジュニアから3つ目の2Tを最後の要素へ付けるようになっていました。0.13ですが基礎点上がるというのと、3-3の負担が少し軽くなるというところはあるかもしれません。また、2回飛ぶジャンプがルッツとフリップになってきています。このあたりでも以前と比べてすこし構成が上がっています。

レイバックスピンがレベル3でした。これを4に出来れば59.11まで基礎点が上がります。ただ、実はスピンの中でレイバックスピンのレベル4率が最近低くなっています。ショートはともかくフリーは違うスピンを入れる選択肢もあるかもしれません。

全要素プラス評価でした。ただ、+3以上の評価は無し。ショートも同様でした。高難度ジャンプが構成に入ってきていませんので、これより上にスコアを上げていくには1つ1つの要素の出来栄えを上げていくことが求められます。

ここで表彰台にも乗りましたし、世界ジュニアの代表選考では大きく優位に立っています。全日本ジュニアで2位になれなかったこと以外は、各選考項目で島田選手以外では最高の評価になります。全日本で大崩れしない限り世界ジュニア代表に選ばれていくものと思われます。

 

○中井亜美選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3A F 8.00   -4.00 4.00 -5.000
2 3Lo+2A+SEQ   8.20   0.98 9.18 2.111
3 3Lz+3T   10.10   1.18 11.28 1.889
4 3Lo   4.90   1.05 5.95 2.222
5 CCoSp4   3.50   0.70 4.20 2.000
6 3F!+1Eu+2S ! 7.81 x -0.23 7.58 -0.444
7 2A   3.63 x 0.33 3.96 1.000
8 3Lz   6.49 x 1.18 7.67 2.000
9 FSSp4   3.00   0.81 3.81 2.667
10 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.333
11 LSp4   2.70   0.50 3.20 1.889
  TES   61.33   3.71 65.04  

中井亜美選手は冒頭のトリプルアクセルは転倒。ただ、回転は十分という認定で4.00の得点をもらっていますので大きな痛手でもないです。もったいなかったのは3連続で3つ目が2回転になったことでしょうか。腰痛に悩まされていましたが、フリーの基礎点としては今季最高にこの試合でなりました。

2回飛ぶジャンプはルッツとループです。サルコウが3回転で入れば基礎点64.63まで出ます。島田選手と勝負するにはそこまで出したい。ただ、今回は状態考えれば上出来だったかもしれません。

全日本ジュニアでまさかの10位で全日本無し。実は全日本ジュニアではなくて、昨季の全日本で、最後のダブルアクセル跳び忘れが無ければ表彰台に立てていて、全日本ジュニアで体調不良だろうとなんだろうとシード持っていて今季の全日本に出られて、ここまでの戦績考えれば高確率で世界ジュニアに出られたはず、と考えると結構もったいない失敗だったことに1年経ってから思い起こされる結果になりました。枠が8つあるのだから8番目まで全日本に出せばいいのに、と私はいまだに引きずっていますが、本人は今季はこのジュニアグランプリファイナルで終わり、と気持ちは切り替わっているようです。全中など試合はまだあるかと思いますが、大事な試合という意味では来年夏のジュニアグランプリまでしばらく空きます。4回転の習得に意欲を見せる、などという話もありますが、半年以上の十分な時間が使えるというのはあまりないですので、次のオリンピックを狙う、ということを考えると実はちょうどよかったということになる可能性もあるかもしれません。そういえば紀平梨花選手もジュニア1年目にケガもあって全日本ジュニアで大失敗して全日本に出られなかった、なんてこともありました。競技人生に絶望的なマイナスを負わないで、大きなくやしさを得た、というのは先々に貴重な財産となるのかもしれません。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Mao SHIMADA JPN 206.33 94.00 72.13 5.98 25.19 9.03
2 Jia SHIN KOR 200.75 94.16 67.15 6.10 23.77 9.57
3 Rena UEZONO JPN 196.46 89.05 66.20 9.69 22.49 9.03
4 Yuseong KIM KOR 190.48 83.25 70.92 4.88 22.99 8.44
5 Ami NAKAI JPN 187.04 87.59 68.42 2.18 22.45 7.40
6 Minsol KWON KOR 183.06 84.57 63.04 4.48 22.58 8.39

PCSが今回はシンジア選手が島田麻央選手を上回りました。上薗選手が3番目です。昨季も出場していた4選手はすべて昨年のPCSを上回っています。キムユソン選手はPCSは6番目、技術点ではシンジア選手より上でした。

ジャンプの基礎点は島田麻央選手が1位ですが、本人比ではそれほど高くもないです。ループの抜け1回転というのが響いています。キムユソン選手が2番目、中井亜美選手が3番目、大技あると上に来る、という形になりました。

ジャンプの加点の方は上薗選手が1位でした。島田選手はここが3番目。大技2本決めましたが、全体的な出来は本人比でいつもと比べてそれほど良かったわけでもないというような滑りでした。6人全員がジャンプのGOE合計がプラス。さすがのレベルの高い試合でした。

スピンは島田選手がやはり1位ですが、26点台も普通に出す選手が25.19はむしろいつもよりは低めです。シンジア選手が23点台、他は22点台でした。中井選手、上薗選手はこのあたりももう少し島田選手との差を詰めていきたいところでしょうか。

ステップ系要素はシンジア選手が1位。上薗選手と島田選手が揃って2番目でこの3人が9点に達しています。6人中4人がショートのステップレベル4 さすがの出来でした。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Rio NAKATA JPN 227.77 67.71 160.06
2 Hyungyeom KIM KOR 223.61 77.01 146.60
3 Adam HAGARA SVK 213.26 71.43 141.83
4 Juheon LIM KOR 209.99 73.72 136.27
5 Francois PITOT FRA 197.31 64.87 132.44
6 Daniel MARTYNOV USA 183.47 66.23 117.24

中田璃士選手の逆転優勝。ショートで10点ほどの差からの逆転というのはポッシブルなミッションの範囲内とは思ってはいたものの、本当に逆転するとは驚きでした。中庭先生があんなに喜んでいるのは初めて見たような気がします。中庭先生も初のビッグタイトルおめでとうございました。

2位には韓国のキムヒョンギョム選手が入りました。4回転転倒したものの、ミスをしたという印象の演技ではなかったのですが届きませんでした。来期はシニアに上がっていくか、なんなら今期の世界選手権あたりも出てくる可能性がありますが、シーズン後半どうでしょうか。

スロバキアのハガラ選手が3位。こちらはまずまずきっちり滑って表彰台です。スロバキア男子のジュニアグランプリファイナルの表彰台は初です。今期もおそらく世界ジュニア、世界選手権の2本立てで来ると思われますが、シーズン後半どこまで上げてくるでしょうか。

イムジュホン選手が4位。今期良く決まっていたトリプルアクセルがショートフリー3本とも決まらず。ショートのスコアから逆転優勝もある位置でしたが逆に表彰台に届かない結果となってしまいました。

フランスのピトー選手が5位。ちょっと今回は全体的にまとまらない演技になってしまったかと思います。トリプルアクセルが1本は入りましたが、ショートフリー通じてセカンド3回転が入らないなど、ファイナルで勝負するには苦しい展開になりました。

アメリカのマルティノフ選手が6位です。今回はショートでアクセル抜け零点、フリーで3転倒と振るわずシーズンワーストどころかコロナ以降ワーストと大崩れ。残念な試合になってしまいました。

 

○中田璃士選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T   9.50   3.12 12.62 3.333
2 3A+3T   12.20   2.17 14.37 2.667
3 FCSp4   3.20   0.50 3.70 1.556
4 3A   8.00   1.94 9.94 2.556
5 3Lo+2A+SEQ   8.20   1.12 9.32 2.333
6 3F+1Eu+3S   11.11 x 1.44 12.55 2.556
7 3Lo   5.39 x 1.12 6.51 2.222
8 CSSp3   2.60   0.26 2.86 1.000
9 ChSq1   3.00   1.21 4.21 2.444
10 2A   3.63 x 0.61 4.24 1.778
11 CCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
  TES   70.33   14.34 84.67  

全要素プラス評価のノーミス。スピンレベル3は1つあります。基礎点70.33は過去最高です。2回飛ぶジャンプはトリプルアクセルトリプルループ。ルッツなし構成を組んでいます。さすがに強制単独ルッツのショートは3回転を入れていますが!が付いていました。フリーでは今季ルッツを入れていません。将来考えると入れた方がいいようにも感じますが、4回転とトリプルアクセルの入ったフリーでこれ以上消耗する要素はいれたくないというところでしょうか。今期はショートで強制ルッツなので練習もしなくなる、ということは無いでしょうから、まあこれはこれでいいのかもしれません。

4回転トーループは今季から入れているジャンプですが、国内外の7試合で6回成功、残りの1回もGOEマイナスなだけで転倒も無ければ回転不足も取られていません。おそらく全日本のシニアルールではショートから入れていくのではないかと思われます。全日本はショートの強制ルッツも無いですし、のびのび滑って上位でフリーを迎える可能性もありそうです。世界ジュニアの代表には決まっていませんが、この優勝でかなり高確率でその椅子に座れる状態を築き上げたと思われます。

 

○ショートフリー合わせた要素別のスコア

Pl Name Nation Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 Rio NAKATA JPN 227.77 110.81 82.02 7.23 20.49 8.22
2 Hyungyeom KIM KOR 223.61 108.34 85.38 -1.71 23.60 9.00
3 Adam HAGARA SVK 213.26 102.33 80.00 3.02 20.66 7.25
4 Juheon LIM KOR 209.99 106.94 74.97 -3.84 23.10 8.82
5 Francois PITOT FRA 197.31 103.83 73.89 -6.24 19.30 7.53
6 Daniel MARTYNOV USA 183.47 98.47 69.53 -9.55 19.90 8.12

PCSは中田選手が1位です。割と年齢と比例することが多いPCSですがジュニア2年目の中田選手が1位になって来るという形になりました。

ジャンプの基礎点はキムヒョンギョム選手が85点台まで出しました。中田選手は4回転あるもののルッツなしなどもあって基礎点は1位にはなっていません。一方でジャンプの加点は中田選手が1位でした。

スピンは韓国勢2人が23点台を出しています。中田選手はジュニアグランプリ2戦では21点台を出していましたが今回は20点台にとどまりました。

ステップ系要素はキムヒョンギョム選手が9点に乗せました。韓国勢2人とマルティノフ選手はステップレベル4でした。

 

女子は順当、男子は予想外というかそもそも予想不可能な中での優勝となりました。どちらもジュニア2シーズン目。ミラノには間に合わない世代です。女子はともかく男子で、ミラノに間に合わない世代の中田選手がミラノチャンスがある世代を薙ぎ倒してしまいました。

女子は全員来シーズンもジュニアという異常事態。シニアよりもメンバーが固定されるというおかしな状態になってしまっています。今期は次は世界ジュニアまで飛ばずに、ユースオリンピックで一部のメンバーは再戦です。島田選手としては獲れていない唯一のジュニアのタイトルをユースオリンピックで取りに行く形です。それまで獲ってしまったらもうジュニアでやることないのですが・・・。

まずはそれぞれナショナルでシニア勢と戦ってから、ユースオリンピックへ、あるいは世界ジュニアへと続いていきます。