21-22 マライアベル

1996年4月18日生まれ

シニア8シーズン目

シーズン獲得賞金:$22,000

世界ランキング:13位

シーズンランキング:10位

シーズンベストスコア 210.35 (23位) ロステレコム杯

ショートプログラムシーズンベスト 72.55 世界選手権

フリーシーズンベスト 140.98 ロステレコム杯

ショートプログラム楽曲:River Flows in You

フリープログラム楽曲:Hallelujah

スピンレベル4率 32/36=88.9%

ステップレベル4率 6/12=50.0%

スピンオールレベル4 4/6

スピンステップオールレベル4  2/6

ジャンプ要素回転不足率 2/60=3.33%

ジャンプ回転不足なし 4/6

スピンステップオールレベル4 ジャンプ回転不足なし 2/6

 

○21-22シーズンの戦績

Grade Event Pl Total SP FS
IC Cranberry Cup 3 179.42 67.07 112.35
GP Internationaux de France 6 190.79 60.81 129.98
GP Rostelecom Cup 4 210.35 69.37 140.98
NC US Championships 1 216.25 75.55 140.70
OG Olympic Games 10 202.30 65.38 136.92
WC World Championships 4 208.66 72.55 136.11

マライアベル選手のシーズン初戦は8月のクランベリーカップでした。179.42 いたって平凡なスコア。過去何シーズンも見たことのないようなスコア。3枠が見込まれるアメリカとはいえ、有力4選手がいる状態でこれは大丈夫なのか??? というシーズン立ち上がりでした。

2戦目は11月まで飛んでのグランプリシリーズ2試合。フランス杯は190.79 まだ心配なスコア。これがロステレコム杯で210.35と210点台にまで乗せて、この時点でアメリカ勢シーズンベスト2位になります。これで代表争い勝負になるな、というのを感じられる出来でした。

そして1月、全米選手権。結果的に、ブレイディテネル選手がけがで欠場したため、代表争いとしてはだいぶ余裕のある状態でしたが、それはそれとしてナショナル選手権は重いし重要。というこの試合で216.25 25歳にしてナショナル初優勝を果たしました。

オリンピックでは団体戦の時期から北京入りし、チームに帯同してキスアンドクライにも顔を出していました。結果的には出場無し。全米チャンピオン出さないんだ、という意外感はありましたが、本人は常に楽しそうに見えた25歳にして掴んだ初オリンピックです。

個人戦ではショート、コンビネーションで転倒があり11位スタート。フリーは盛り返しますが最終的に10位で終わりました。

シーズン最後の世界選手権。今回は数多い表彰台チャンスのある選手としての試合でもありました。ショートはシーズンベストの72.55で3位で折り返します。フリーもノーミスなら表彰台が見える、というところでしたが、3連続が入らず最後のルッツもステップアウト、この2つが痛くて、最終結果は4位。過去最高位ではありますが惜しかったなあ、という感想にもなる順位でした。

 

○要素別スコア

Event Pl Total TES PCS J Base J GOE Spin Step
Cranberry Cup 3 179.42 87.26 92.16 55.58 -4.75 24.07 12.36
Internationaux de France 6 190.79 96.45 95.34 59.31 2.21 22.25 12.68
Rostelecom Cup 4 210.35 107.61 102.74 59.31 8.65 24.65 15.00
US Championships 1 216.25 111.85 104.40 62.11 9.38 25.37 14.99
Olympic Games 10 202.30 101.68 101.62 61.37 1.42 24.78 14.11
World Championships 4 208.66 104.95 103.71 60.24 4.40 25.32 14.99

技術点は100点台、PCSも100点台と割とTESとPCSが拮抗している選手です。

ジャンプの基礎点はシーズン後半は60点台に乗ってきています。ジャンプの加点の方はロステレコム杯で8.65まで出しました。オリンピックや世界選手権では一桁前半にとどまっています

スピンはいい時は25点台まで乗せてきます。ステップはロステレコム杯の15.00が最高。

こうして並べると、オリンピックの時に各要素が前後の試合と比べて伸びなかったな、というのが見えて、そのあたりは残念でした。

 

○要素別偏差値

Event Pl Total J Base J GOE Spin Step PCS
Cranberry Cup 3 55.37 53.84 44.41 60.62 55.76 58.00
Internationaux de France 6 58.45 56.62 56.10 54.96 57.03 60.12
Rostelecom Cup 4 63.76 56.62 66.91 62.43 66.27 65.05
US Championships 1 65.36 58.71 68.13 64.67 66.23 66.16
Olympic Games 10 61.57 58.16 54.77 62.83 62.73 64.30
World Championships 4 63.30 57.32 59.77 64.52 66.23 65.70

偏差値で見ると、トータルスコアは60代前半くらいあります。ジャンプの基礎点は50代後半。ジャンプの加点はいいとき悪い時の差があり、いい時は偏差値60台後半まで出せています。スピンは60台前半、ステップは60台中盤をコンスタントに出してきます。

 

21-22シーズン マライアベル要素別偏差値レーダーチャート

レーダーチャートではこうなって、右側が伸びない形です。ジャンプでは稼げずステップやPCSが強い、という形です。ジャンプは出来が良ければ加点はだいぶ稼げるのですが、基礎点はどうしても少し弱い、という形になっています。

 

●シーズン最高の基礎点構成

○世界選手権 ショートプログラムの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+3Tq q 9.50   -0.30 9.20 -0.556
2 2A   3.30   0.90 4.20 2.778
3 FSSp4   3.00   0.90 3.90 2.889
4 3Lz   6.49 x 1.26 7.75 2.111
5 StSq4   3.90   1.34 5.24 3.333
6 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
7 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.333
  TES   32.39   6.28 38.67  

世界選手権では32.39の基礎点でした。3-3ありでルッツフリップトーループを飛ぶ。トリプルアクセル無しでは十分高い方の基礎点です。コンビネーションを1.1倍に持ってくれば32.75まで基礎点を上げることができます。スピンの組み合わせが少し弱くて、基礎点3.5 3.0 2.7になっていますが、ルール上、3.5 3.2 2.7が可能で、このあたりで0.2ほど上位の他の選手と比べてマックスが低くなる構成でもあります。

 

ロステレコム杯 フリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F+2A+SEQ   6.88   1.36 8.24 2.556
2 3Lo   4.90   1.26 6.16 2.556
3 CCoSp4   3.50   1.15 4.65 3.333
4 3S   4.30   -0.49 3.81 -1.111
5 2A   3.30   0.47 3.77 1.444
6 StSq4   3.90   1.23 5.13 3.111
7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.98 10.11 1.889
8 3Lz+2T   7.92 x 0.84 8.76 1.444
9 FCCoSp4   3.50   0.85 4.35 2.444
10 3Lz   6.49 x 1.52 8.01 2.556
11 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.556
  TES   59.52   12.03 71.55  

フリーの最高基礎点はロステレコム杯の59.52 オリンピックでも同じ59.52ですが、スコアはロステレコム杯の方が上でした。

マライアベル選手はフリーでは3回転-3回転がありません。セカンド3回転がない。冒頭ジャンプはダブルアクセル入りのシークエンスです。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップで基礎点高いものが選ばれています。

こうやって見るとトーループが余っているので、単独ダブルアクセルの代わりに単独トリプルトーループを入れれば基礎点が0.9上がって60点台に乗ります。それをしないのは、本当はコンビネーションでトーループを入れたい意志があったのでしょうか? 2シーズン前までは普通にセカンド3回転を飛んでいました。昨シーズンあたりからそれが入らなくなってきています。ショートでは入れるけれどフリーでは入らないセカンド3回転。入れることができれば基礎点が3点前後上がるわけですが、そのリスクを背負うよりは出来栄えで3点分稼ぐ方が確率高い、という見立てなのでしょうか。

回転不足率が極めて低いあたりがマライアベル選手の強みとしてあります。それをベースによい出来栄えで滑る、という戦略なようでした。

 

○平均GOE3.400以上

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
US Championships SP 5 StSq4   3.90   1.56 5.46 4.000
US Championships FS 11 ChSq1   3.00   2.00 5.00 4.000
US Championships SP 6 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
US Championships SP 7 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
World Championships FS 3 CCoSp4   3.50   1.40 4.90 3.889
World Championships FS 12 LSp4   2.70   1.04 3.74 3.889
US Championships FS 3 CCoSp4   3.50   1.35 4.85 3.778
Cranberry Cup SP 3 FSSp4   3.00   1.20 4.20 3.600
Cranberry Cup SP 5 CCoSp3   3.00   1.10 4.10 3.600
Cranberry Cup FS 12 LSp4   2.70   0.99 3.69 3.600
Rostelecom Cup FS 11 ChSq1   3.00   1.86 4.86 3.556
Rostelecom Cup FS 12 LSp4   2.70   1.00 3.70 3.556
US Championships FS 6 StSq3   3.30   1.23 4.53 3.556
Olympic Games FS 12 LSp4   2.70   0.96 3.66 3.556
World Championships SP 6 CCoSp4   3.50   1.25 4.75 3.556
Internationaux de France FS 12 LSp4   2.70   0.93 3.63 3.444
Olympic Games SP 6 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Olympic Games FS 3 CCoSp4   3.50   1.20 4.70 3.444
Cranberry Cup SP 7 LSp4   2.70   0.90 3.60 3.400
Cranberry Cup FS 6 CCoSp4   3.50   1.28 4.78 3.400

マライアベル選手の評価の高い要素はスピンです。上記表ではステップも見かけますが、ほとんど全米選手権での高評価なもので、国際大会で高い評価を受けているのはスピンになっています。

 

○3回転-3回転の要素

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Cranberry Cup SP 2 3Fq+3T   9.50   -0.88 8.62 -1.400
Internationaux de France SP 2 3F+3T<< <<  6.60   -2.65 3.95 -5.000
US Championships SP 1 3F+3T   9.50   0.83 10.33 1.333
Olympic Games SP 1 3F+3T< 8.66   -2.65 6.01 -5.000
World Championships SP 1 3F+3Tq q 9.50   -0.30 9.20 -0.556

フリーでは入れていない3回転-3回転ですが、ショートではフリップ起点の3-3を常時入れていました。このコンビネーションで回転不足が出てしまっている現実があります。オリンピックの転倒含め成功率は低かったです。もしかしたらショートから3-2にした方が安定して高いスコアが出せていた可能性もありますが、世界選手権ではわずかなGOEマイナスに抑えていてセカンド2回転では届かない点を得ています。一つは賭け要素を入れて上位をうかがっていたという感じがあります。

 

○3連続ジャンプ

Event     Elements    Base   GOE Scores AvGOE
Internationaux de France FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.61 9.74 1.111
Rostelecom Cup FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 0.98 10.11 1.889
US Championships FS 7 3F+2T+2Lo   9.13 x 1.21 10.34 2.222
Olympic Games FS 8 3Lz+2T+2Lo   9.79 x -0.34 9.45 -0.667

3連続ジャンプは1.1倍に入れていますが2回転2つを付ける比較的難易度抑え目なものです。世界選手権では3つ目を付けられず3連続が入りませんでした。

 

今シーズンは全米選手権初優勝。あきらめなければ夢はかなう、とのコメントを残していますが、長い道のりでした。特に昨シーズンから今シーズンの前半はスコアが伸びず。昨シーズンは全米選手権5位で今シーズン序盤も170点台から190点あたりのスコアになっていたので、これは危ないかな、という風に失礼ながら見ていました。

あきらめなければ夢はかなう。ジュニアグランプリシリーズに出場したのも17歳になってから、という選手です。世界ジュニアの出場経験はありません。18歳でのシニアデビュー時はグランプリの枠をもらえず。19歳のシニア2シーズン目でも地元枠のスケートアメリカのみ。ただ、このスケートアメリカで2位表彰台に乗ったことにより、世界の上位で戦うことができる選手になりました。ロシアならすでに引退している年齢です。そこからさらに5シーズンを経て全米チャンピオンになりオリンピック出場。オリンピックでは団体戦に出してあげたかったです。全米チャンピオンをなんで出さないかなあ。

フリーで3回転-3回転が無かったり、ジャンプの技術が他のトップ選手と比べて落ちる状態になってきているのは事実だと思います。それでも、ルッツフリップ2本入りでスピンステップも高いレベルで滑るフリー演技はさすがで他の上位選手に見劣りするものではないです。転倒があってもいいイメージが残るハレルヤ素晴らしい。

来シーズンはどうするのでしょう? 4年後を目指すと29歳になります。近年では29歳で2回目のオリンピックと言うと鈴木明子さんがいます。アメリカは適度なレベルの競争の国。まだまだトップでやれると思いますが、去就に注目されます。