USインターナショナル 4回転アクセル

ショート終わった時点では、これはちょっと拍子抜けな試合かな、と思ったのでしたがとんでもない。ついに、それも、あっさりと、出てしまいました4回転アクセル。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Ilia MALININ USA 257.28 71.84 185.44
2 Kevin AYMOZ FRA 236.17 83.52 152.65
3 Camden PULKINEN USA 219.49 77.44 142.05
4 Mark GORODNITSKY ISR 218.83 77.65 141.18
5 Jimmy MA USA 216.76 69.88 146.88
6 Stephen GOGOLEV CAN 208.43 72.89 135.54
7 Arlet LEVANDI EST 202.29 70.02 132.27
8 Donovan CARRILLO MEX 181.44 68.10 113.34
9 Eric SJOBERG USA 179.09 47.49 131.60
10 Wesley CHIU CAN 171.69 55.14 116.55
  Daniel GRASSL ITA 73.69 73.69  

優勝スコアは平凡な257.28でした。ただ、この中身はとんでもない。4回転アクセルが飛び出しました。詳細は後で取り上げます。

マリニン選手、ショートは2転倒のひどい出来だったのですがフリーで逆転優勝です。まだまだ不安定で全米選手権のように2本そろえて300点というのをコンスタントに出すことは出来ないようですが、結果的には圧勝でした。

2位にはケビンエイモズ選手。ジャンプ決まらず技術点伸びませんでしたがPCSはショートもフリーもトップです。フリーはグラディエーター。最近だと鍵山優真選手がやってましたが、むしろ坂本花織選手のものに方向性は近い感じでした。

3位にプルキネン選手。世界選手権で5位に入っての翌シーズン。ちょっとスコア伸びなかったでしょうか。フリーは4回転決まらず。今シーズンはグランプリ2戦にシード扱いで出てきますので、調子を上げていってほしいところです。

 

○イリアマリニン選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4A   12.50   1.00 13.50 0.857
2 4T   9.50   2.85 12.35 3.000
3 4Lz F 11.50   -5.75 5.75 -5.000
4 4S   9.70   0.97 10.67 1.000
5 CCSp3   2.80   0.56 3.36 2.000
6 StSq3   3.30   0.40 3.70 1.143
7 4Lz+1Eu+3S   17.93 x -0.46 17.47 -0.286
8 3F+3T   10.45 x 1.17 11.62 2.143
9 3Lz+3A+SEQ   15.29 x 1.92 17.21 2.571
10 FSSp4   3.00   0.60 3.60 2.000
11 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.286
12 CCoSp4   3.50   1.26 4.76 3.571
  TES   102.47   6.22 108.69  

出ました4回転アクセル。回転十分、平均GOEプラスの成功ジャンプとなりました。世界初成功。USインターナショナルはチャレンジャーシリーズの1試合であり、ISU公式戦であってISU公認となります。技術的には飛べることを証明しましたし、たとえ練習でも飛べればすごいわけですが、今回はプレッシャーがほとんどない試合。あとはプレッシャーがかかる大事な試合で跳べるかどうかで、これが得点源として価値のある計算のできるジャンプかどうかが変わってきます。それにしても高いジャンプでした。練習で決めていたことは知っていましたが、ショートの出来がひどかったので今回は無しかな、と思いましたが、逆に失うものはない試合とばかりに入れてきて一発成功して見せました。驚きました。

その他の構成もいろいろとおかしい・・・。2回飛ぶジャンプは4回転ルッツです。4回転はアクセル含めて5本。この構成でコンビネーションは1.1倍にすべて詰め込みました。シークエンストリプルアクセルもいます。

基礎点102.47は18-19シーズン以降の要素数12になってからの最高基礎点です。まあ今シーズンからルール変わってはいますがとんでもない構成であることは間違いないです。

そんな基礎点ですが、スピンステップで取りこぼしがあって、すべてレベル4ならさらに1.0基礎点が上がります。

2回飛ぶジャンプが1つ余っているので構成上げることが出来なくもないです。今回の滑りを見ると3Lz+3A+3Aのシークエンスが可能に見えます。今の4Lzからの3連続を4Lz+2Tに替えてそのシークエンスを持ってくると4.95基礎点を上げられます。シークエンスに3A2つはきついなら1つを2Aにして4Lzの後ろを3Tにしたとすると、それでも2.97基礎点を上げられます。マリニン選手は昨シーズンセカンド3回転ループを構成に入れていました。そこまで使うと1.1倍に4Lz+3T 3F+3Lo 3Lz+3A+3A という異次元構成があり得て、ここまで行くと基礎点を8.91上げることが出来て、ノーミスで基礎点112.38という異世界まで行きます。

ただ、実は世界ジュニアで出したパーソナルベストをこのフリーは超えていません。ルッツ転倒が響いています。また、難しい技発表会な雰囲気もあり、演技構成点が伸びていないのですが、これも伸びてくると手の付けられないことになってきます。今シーズン中にそこまで行けるかどうか。

マリニン選手はグランプリ2戦、初戦のスケートアメリカでは鍵山選手と対戦、最終6戦目のフランスでは佐藤駿選手、クビテラシビリ選手、ケビンエイモズ選手らと争います。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Yelim KIM KOR 190.64 58.32 132.32
2 Young YOU KOR 183.40 63.19 120.21
3 Mana KAWABE JPN 180.11 62.68 117.43
4 Audrey SHIN USA 176.44 61.16 115.28
5 Sonja HILMER USA 174.46 57.93 116.53
6 Jocelyn HONG NZL 162.54 60.76 101.78
7 Jill HEINER USA 142.53 47.41 95.12
8 Alessia TORNAGHI ITA 133.48 49.06 84.42
9 Marilena KITROMILIS CYP 129.64 52.55 77.09
10 Eliska BREZINOVA CZE 129.15 43.03 86.12
11 Sofia Lexi Jacqueline FRANK PHI 115.89 37.62 78.27
12 Victoria ALCANTARA AUS 108.84 41.25 67.59
13 Andrea MONTESINOS CANTU MEX 103.29 39.86 63.43

女子もスコアはあまり伸びませんでした。

優勝は韓国のキムイェリム選手。パーソナルベストは今年の4大陸選手権の209.91

それが今回は190点にとどまりました。ショートの出遅れが響いています。3枠になった世界選手権の韓国の代表有力候補ではありますが、きわどい位置の選手でもあります。

2位にはユヨン選手。フリーで入れたトリプルアクセルはステップアウトもなく着氷しましたがダウングレード判定となりました。ショートでダウングレード1つ、フリーはダウングレード1つに回転不足3つ。なかなか苦しい試合でした。昨シーズンも序盤は180点台並べてましたし、大事な試合に合わせればいいという立場なので、9月はこんなものなのかもしれません。ただ、トリプルアクセルをGOEプラスで最後に決めたのは20年のNHK杯フリーなのでもう2年近く前になります。そのあたりが心配です。紀平梨花選手とぶつかるグランプリシリーズ2戦目のスケートカナダでどこまで合わせてくるでしょうか。

河辺愛菜選手は3位でした。180.11というスコアは本人比でもいまいちです。今シーズンから樋口美穂子先生のところへ移籍。これまではなんならオリンピックの代表に決まった日時点でも自分が飛べない難しいジャンプを飛ぶ後輩がいます、自分と同等くらいは周りにたくさんいます、という環境だったところから、自分だけとびぬけたエース格です、むしろ他に生徒あまりいないかも、私が明らかに中心です、みたいなところに移った形です。これで先生と合わないと大変なんだろうと思いますが、映像見る限りではいい関係を今のところ築けているように見えます。河辺選手にとって今シーズンは全然勝負のシーズンではありません。4年後に向けての立て直し積みなおしのシーズン。少し格は違いますが、バンクーバー後の浅田真央さんのように、すぐに結果を求めないシーズンでもあると思うので、この試合の点数という部分はあまり気にしても仕方ないし、本人サイド特に樋口先生もあまり気にしていないのかな、とも感じました。

 

○河辺愛菜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A   3.30   0.79 4.09 2.286
2 3Lz+3T+2T   11.40   1.18 12.58 1.857
3 2A   3.30   0.66 3.96 2.143
4 3Fe< 3.18   -1.46 1.72 -4.571
5 StSq3   3.30   0.73 4.03 2.143
6 3Lz<+3T< 8.89 x -1.98 6.91 -4.143
7 FCSp4   3.20   0.38 3.58 1.286
8 ChSq1   3.00   1.10 4.10 2.000
9 2Lo   1.87 x -0.51 1.36 -3.000
10 3S+2T   6.16 x 0.52 6.68 1.143
11 CCoSp4   3.50   0.63 4.13 1.429
12 SSp4   2.50   0.65 3.15 2.429
  TES   53.60   2.69 56.29  

トリプルアクセル無し構成で今シーズンここまで来ている河辺選手です。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループ。1つ目のコンビネーションで3連続はしっかり決めました。2つ目のコンビネーションは2つとも回転不足。フリップも回転不足で合計3つの回転不足があり、単独ループは2回転。さすがにここまでなると基礎点はだいぶ削られて53.60となりました。

単独のダブルアクセルを2つ置いてあるのはこの辺にトリプルアクセルを組み込んでいこうという意志でしょうか。1つではなくて2つあるところに意味があるのかもしれません。

ここには出ていないのですが、ちょっとオリンピアンとしてはPCSが渋かったなあという印象でもありました。まあ、よく考えてみると旧ルールだったからオリンピックに出られましたが、現行の17歳で開幕を迎えるシーズンにシニアになれるルールだと今シーズンがシニアデビュー相当なわけです。PCSもこれから伸びてくるでしょうか。

河辺選手のグランプリシリーズは3戦目のフランスからになります。今回優勝したキムイェリム選手の他、優勝候補にベルギーのヘンドリックス選手がいて日本からは同い年松生理乃選手と、年上だけど今シーズンシニアデビューの住吉りをん選手がいます。調子が上がれば表彰台争いの一角かと思われますがどうでしょうか。

 

 

平日開催という珍しいチャレンジャーシリーズでしたが、チャレンジャーシリーズ2戦目は週末のロンバルディア杯です。日本からは女子は坂本花織選手に樋口新葉選手というオリンピックメダリストたちと渡辺倫果選手の3人派遣、男子は島田高志郎選手が派遣というかスイスから移動な感じで参加します。