ネーベルホルン杯 亀の甲より年の劫

チャレンジャーシリーズの3戦目、ネーベルホルン杯。オリンピックシーズンはこれまでオリンピック予選になっている試合でしたが、そうではないシーズンは普通のチャレンジャーシリーズです。日本からの派遣も少なく、ここ2試合と比べると少しインパクトに欠ける試合ではありました。

 

○男子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Keegan MESSING CAN 245.74 74.85 170.89
2 Sihyeong LEE KOR 235.71 86.78 148.93
3 Roman SADOVSKY CAN 222.74 89.57 133.17
4 Kazuki TOMONO JPN 210.77 64.97 145.80
5 Tomas-Llorenc GUARINO SABATE ESP 209.34 71.10 138.24
6 Jari KESSLER CRO 197.99 72.97 125.02
7 Ivan SHMURATKO UKR 194.90 69.89 125.01
8 Liam KAPEIKIS USA 191.72 67.48 124.24
9 Nikita STAROSTIN GER 184.96 61.91 123.05
10 Mihhail SELEVKO EST 183.09 67.28 115.81
10 Younghyun CHA KOR 183.09 53.94 129.15
12 Valtter VIRTANEN FIN 178.28 69.34 108.94
13 Makar SUNTSEV FIN 176.09 60.43 115.66
14 Kornel WITKOWSKI POL 162.86 66.33 96.53
15 Andrii KOKURA UKR 156.84 53.59 103.25

優勝は30歳のキーガンメッシング選手でした。4年ぶり2度目のネーベルホルン杯優勝。チャレンジャーシリーズは通算3勝目です。245.74というスコアは本人比で大したスコアではないですし、ショート出遅れてからのフリーの逆転優勝とはいえノーミスなわけでもなかったですし、本人が心の底からうれしいかどうかはわかりませんが、オリンピックを30歳で終えて、次のシーズンもチャレンジャーシリーズからしっかり出てきたことが視聴者としてはうれしいところでした。グランプリシリーズは2戦目のスケートカナダと最終6戦目のフィンランドにエントリーです。4年ぶりのファイナル進出の可能性もあるメンバーな感じもありました。

2位には韓国のイシヒョン選手が入りました。こちらはパーソナルベストでチャレンジャーシリーズ初の表彰台です。韓国の2番手。昨シーズンはオリンピック、世界選手権と出場しました。今シーズンどこまで行けるか? というのが問われるところでまずは一つの結果を出しました。グランプリシリーズはフランスのみエントリー。来シーズンに2枠もらえるような演技が出来るでしょうか

3位はカナダのサドフスキー選手。ショート首位だったのですがフリーは伸びませんでした。ショートの89.57はお祭り試合の21年ワールドチームトロフィーの89.61というパーソナルベストに匹敵するスコアだったのですがフリーは厳しい滑りになりました。グランプリシリーズは初戦のスケートアメリカと4戦目のイギリスにエントリーです。

日本からシングルには唯一出場の友野一希選手が4位でした。ショートは・・・、64.97というちょっと信じられないようなスコアでした。フリーで順位を上げていますが、そこは周りとのそもそもの地力の差があるからで、巻き返したというほどの出来でもないです。ちょっと心配になる出来。ただ、友野選手もこれまでの戦績を見ても、8月9月はなかなかひどい、というのはありがちで、昨シーズンも近畿選手権でトータル201.24 フリーは125.34という、この先大丈夫ですか??? みたいなところから四大陸2位、世界選手権6位まで行ってますので、今シーズンも調整力を信じて待ちましょうか。グランプリシリーズは3戦目のフランスと5戦目のNHK杯。シード選手扱いですしファイナル進出もあり得るメンバーなのですが、そこまでに調子が戻るかどうか。

 

友野一希選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 4T+2T   10.80   -2.09 8.71 -2.286
2 4S< F 7.76   -3.88 3.88 -5.000
3 4Tq F 9.50   -4.75 4.75 -5.000
4 3Lo   4.90   -0.29 4.61 -0.571
5 CSSp4   3.00   0.54 3.54 1.857
6 FCSp4   3.20   0.58 3.78 1.714
7 StSq2   2.60   0.73 3.33 2.714
8 3A   8.80 x -1.44 7.36 -1.857
9 3F+2T   7.26 x 0.85 8.11 1.571
10 3A+1Eu+2S   10.78 x 1.28 12.06 1.429
11 ChSq1   3.00   1.70 4.70 3.429
12 CCoSp3   3.00   0.72 3.72 2.429
  TES   74.60   -6.05 68.55  

ジャンプ構成は基本的に昨シーズンと変わってなさそうです。4回転は2種類3本。2回飛ぶジャンプは4回転トーループトリプルアクセルです。冒頭3つで4回転をこなし、単独ループが4つ目にきて、1.1倍にトリプルアクセル2本とコンビネーション2つが入ります。ルッツが余っているのですが昨シーズンのジャパンオープンを最後にフリップに入れ替えています。元々!頻発でしたし苦手なのでしょうきっと。

セカンド3回転なし。完成形では冒頭のコンビネーションに3回転がついているというのが昨シーズンの形でした。3連続も当然完成形では3つ目は3回転です。男子のこの領域の選手はダブルアクセルが余るので2Tを付けるより2Aを付けることで基礎点が2.0ないしは1.1倍のところで2.2あがるのですが、まだその構成は組めていません。

ジャンプミスがかさんでいてショートフリー合わせてジャンプのGOEが-21.53でした。なかなかひどい・・。昨シーズン通じてこれより悪いジャンプのGOEスコアは全選手で3例しかありませんでした。もうこれより出来の悪い試合、というのはなかなか作れませんので、あとは上がるだけだと思います。

 

○女子シングル

Pl Name Nation Total SP FS
1 Loena HENDRICKX BEL 208.05 76.19 131.86
2 Seoyeong WI KOR 193.25 61.31 131.94
3 Eva-Lotta KIIBUS EST 165.21 50.94 114.27
4 Tzu-Han TING TPE 162.42 49.92 112.50
5 Madeline SCHIZAS CAN 160.71 64.99 95.72
6 Starr ANDREWS USA 156.60 53.31 103.29
7 Olga MIKUTINA AUT 155.53 58.31 97.22
8 Lindsay van ZUNDERT NED 154.31 53.11 101.20
8 Stefanie PESENDORFER AUT 154.31 52.78 101.53
10 Linnea CEDER FIN 152.81 57.43 95.38
11 Niina PETROKINA EST 152.00 47.34 104.66
12 Gracie GOLD USA 138.89 45.08 93.81
13 Anastasia GOZHVA UKR 129.31 37.67 91.64
14 Livia KAISER SUI 128.34 47.21 81.13
15 Yae-Mia NEIRA CHI 104.93 36.39 68.54
  Ahsun YUN KOR 56.94 56.94  
  Kristina ISAEV GER 49.73 49.73  

優勝はベルギーのヘンドリックス選手。本命が順当に勝つという試合でした。ショートは圧巻。すごいなピンクの衣装。2度目の76点台で抜け出します。フリーも前半素晴らしかったのですが1.1倍ボーナスタイムに入って崩れました。結果的には本人比では平凡レベルですがそれでも208.05で圧勝でした。チャレンジャーシリーズはこれで2勝目になります。まだ優勝経験のないグランプリシリーズは3戦目のフランスと6戦目フィンランドにエントリー。順当にいけばファイナルが見えてきます。

2位には韓国のウィソヨン選手が入りました。昨シーズン世界ジュニア5位から今シーズン本格的にシニアに上がる17歳。ショートは出遅れたのですがフリーでパーソナルベストを出して2位に入ってきました。韓国は190点台の選手が多数いて、世界選手権3枠の争いが激烈なのですがその候補の一人になります。グランプリシリーズは1戦、NHK杯にエントリーです。

3位はエストニアエヴァロッタキーブス選手。表彰台には乗りましたが本人比でもスコアは平凡でしょうか。ヨーロッパ勢では数少ない200点を超えるパーソナルベストを持っているのですが今回はスコア伸びませんでした。グランプリシリーズは6戦目のフィンランドのみの予定でしたが、欠場者が出たNHK杯に追加エントリーがあって2戦になりました

そして、この試合ではグレイシーゴールド選手が久しぶりに、アメリカ国外の試合に参戦してきました。スコアは138.89と伸ばせませんでしたが本当に久しぶりにここまで戻ってきてくれてうれしいです。グランプリシリーズ、スケートアメリカに期待です。

 

○ルナヘンドリックス選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 2A+1Eu+3S   8.10   1.03 9.13 2.429
2 2A   3.30   0.66 3.96 2.143
3 3Lz! ! 5.90   0.83 6.73 1.143
4 3F   5.30   1.59 6.89 3.143
5 CCoSp4   3.50   1.26 4.76 3.571
6 ChSq1   3.00   1.30 4.30 2.714
7 3Lz!<<+REP <<  1.62 x -1.05 0.57 -5.000
8 3F+3T< 9.53 x -1.17 8.36 -2.143
9 2Lz+2T   3.74 x 0.17 3.91 0.857
10 FCCoSp4   3.50   0.98 4.48 2.714
11 StSq4   3.90   1.48 5.38 3.571
12 LSp4   2.70   1.13 3.83 4.286
  TES   54.09   8.21 62.30  

ヘンドリックス選手のフリーの構成には大変苦心した跡が見られます。2回飛ぶジャンプはルッツとフリップ。ルッツはダウングレードのリピートになってしまっていますが、本来はここにセカンド3Tが付くはずだったのでしょう。そして最後のジャンプにダブルルッツがいます。これ、トリプルにしたら3回目のトリプルルッツになりますので、最初からダブルのつもりで跳んだはずです。なぜここにダブルルッツが来るかと言うと、どうしてもトリプルループを飛びたくないからだと思われます。1.1倍のところに入れると仮定してトリプルループは回転足りていればGOE-5の時にダブルルッツのGOE+3と同じ点数になるわけで、転倒さえしなければトリプルループの方が分がよさそうなのですが、それでもダブルルッツを入れてくる。よほどループが苦手なのだな、というのが見て取れます。ただ、これも、トリプルサルコウを3連続の3つ目に入れるのをあきらめれば単独ジャンプとして使えるのですが、それもしていない。3連続でサルコウを使うのではなく+2T+2Tに出来ればいいのですが、これは2Tが3回になって使えない。その回避に多くの選手は+2T+2Loにするのですが、2回転であってもループはおそらく入れたくないのでしょう。3連のサルコウを2回転にして1.1倍に3回転サルコウを持ってきても今回の構成より基礎点は下がる。その結果がダブルルッツ。

3連続に2Loを入れる構成は昨シーズンもありましたしできると思うのですが、そんなに入れたくないんでしょうか。なお、トリプルループはヘンドリックス選手は記録のある国際大会では生涯で一度も成功していません。試みたのさえ昨シーズンのロステレコム杯ただ一度であり、その時はアンダーローテーションでした。

 

チャレンジャーシリーズは次週は4戦目でオンドレイネペラ杯になります。日本からの派遣はありません。