全日本ノービス 10歳のファイブトリプル

未来を背負うノービス勢の全国大会、全日本ノービスが開催されました。今シーズンのノービスAの選手たちは次の次、2030年のオリンピックの時にはシニアに上がる権利のある世代、ノービスBの2シーズン目の選手も同じですが、ノービスBに今シーズンから上がった選手は、2030年のオリンピックも年齢制限で出られず、最短で2034年がオリンピックチャンスになるという、遠い未来を背負う選手たちになります。

 

○女子シングル ノービスA(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 上  薗  恋  奈 LYS 99.73 55.65 44.08
2 岡  万佑子 ROYCE' F・S・C 83.96 44.60 39.36
3 宮  本  琉  花 白鳥T・FSC 83.28 42.35 40.93
4 河  野  莉々愛 木下アカデミー 83.00 41.83 41.17
5 吉  田      菫 倉敷FSC 82.81 41.05 42.26
6 大  竹  沙  歩 MFアカデミー 82.42 39.27 43.15
7 岡  田  芽  依 ポラリス中部FSC 81.68 39.67 42.51
8 川  勝  玲  奈 木下アカデミー 77.09 38.83 38.26
9 鈴  木  華  乃 木下アカデミー 76.70 38.48 38.72
10 松  浪  ひかり 関西大学KFSC 75.97 41.93 34.04
11 北  谷  美  結 京都宇治FSC 73.91 38.98 34.93
12 前  田  悠  名 東京女子学院 70.66 33.52 37.14

優勝はLYS所属の上薗恋奈選手でした。樋口先生のLYS 初の全国制覇になります。昨シーズンまでグランプリ東海でしたから所属変わったけれど先生変わっていないという形です。99.73はパーソナルベストですがわずかに100点に届きませんでした。昨年18位だった全日本ジュニアで上位進出を目指すことになります。

表彰台争いは僅差。2位~6位まで1.54差の僅差。7位まででも2.28差。それぞれが、あのスピンのレベルが、あの回転不足が、あのエッジのエラーが、という学びを得る試合だったのかもしれません。わずかな差で表彰台を、わずかな差で全日本ジュニアの推薦枠を確保したり逃したりという形になっています。

面白いのは2位から6位までPCSの方は少しづつ上がっているあたりも目につきました。

 

○上薗恋奈選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3Tq q 10.10   -0.39 9.71 -0.800
2 3Lo   4.90   0.49 5.39 0.800
3 2A+3T+2T   8.80   0.42 9.22 1.000
4 3F   5.30   0.53 5.83 1.000
5 FSSp3   2.60   0.52 3.12 1.800
6 3Lz   6.49 X 0.59 7.08 1.200
7 3S   4.73 X 0.72 5.45 1.600
8 LSp3   2.40   0.16 2.56 0.600
9 StSq2   2.60   0.61 3.21 2.200
10 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.600
  TES   51.42   4.23 55.65  

ノービスAは要素が10個。ジャンプ要素は6つでコンビネーションは2つまでです。2回飛ぶジャンプはルッツとトーループが入って3回転は5種類7本。基本的なジャンプはほぼ完成しています。スピンやステップでもう少しレベルが獲れていれば100点到達でした。練習ではトリプルアクセルを回転不足で降りているという上薗選手。全日本ジュニアで1つ増えるジャンプ要素ではトリプルアクセルを入れてくる、という可能性もあるかもしれません。

 

○男子シングル ノービスA(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 高  橋  星  名 木下アカデミー 104.35 51.23 54.12
2 西  野  太  翔 神奈川FSC 101.94 46.65 55.79
3 花  井  広  人 邦和みなとスケート部 96.60 44.94 51.66
4 堀  野  伊  織 八戸FSC 91.99 40.94 51.05
5 岡  崎  隼  士 倉敷FSC 82.89 35.11 48.28
6 森  遼  人 アクアリンクちばSC 77.30 34.24 43.56
7 向  野      慶 神戸ポートアイランドクラブ 76.03 34.08 42.45
8 馬  場  清  輝 山陽学園 74.94 31.08 43.86
9 當  利  優  真 熊本バンビーニクラブ 70.88 30.35 40.53
10 松  本  悠  輝 スペリオール愛知FSC 66.13 26.13 40.50
11 河  本  英  士 仙台FSC 65.93 27.64 38.29
12 佐  野  海  音 滋賀ドリームFSC 65.50 28.27 37.73

男子のノービスAは木下アカデミーの高橋星名選手が勝ちました。昨年の3位から2つ順位を上げて表彰台の頂点に立っています。2転倒が痛くスコアは伸ばせませんでしたがなんとか優勝です。

2位が西野太翔選手。こちらは2年連続の2位。これは悔しい2位かと思います。高橋選手の二人後、チャンスあるという認識で出てきたでしょうか? 3連続での転倒が痛く、優勝には届きませんでした。

3位の花井広人選手は昨年の17位からジャンプアップ。96.60は大幅なパーソナルベストでもありますし、こちらはうれしい3位表彰台となりました。

 

○上位4選手の要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 高  橋  星  名 104.35 54.12 40.74 -2.71 10.08 3.12
2 西  野  太  翔 101.94 55.79 37.44 -4.20 10.20 3.21
3 花  井  広  人 96.60 51.66 33.37 -1.90 10.35 3.12
4 堀  野  伊  織 91.99 51.05 27.84 1.27 8.42 3.41

上位4選手は点の取り方がそれぞれだいぶ異なっていました。

ジャンプの基礎点トップは優勝した高橋選手ですが、加点はまだ2回転が目立った総合スコアでは4位だった堀野選手でした。スピンは3位の花井選手がトップでステップはこれも4位の堀野選手がトップです。2位に入った西野選手はPCSが全体トップでした。

結果的に順位は付いていますが、今の時点では全体的にまわりを凌駕した選手というのはいない、というのが出ているのかと思われます。

 

○女子シングル ノービスB(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 金  沢  純  禾 木下アカデミー 86.24 49.50 36.74
2 花  井  咲  良 邦和みなとスケート部 70.97 37.60 33.37
3 星  碧  波 グランプリ東海クラブ 67.77 29.96 37.81
4 森  岡      凛 LYS 64.92 32.88 32.04
5 一貫田  紗  生 関空スケート 64.24 31.32 32.92
6 宮  岡      光 ひょうご西宮FSC 60.91 27.32 33.59
7 能  登  咲  空 ひょうご西宮FSC 60.83 28.87 32.46
8 森  成  美 埼玉アイスアリーナFC 60.82 26.54 34.28
9 山  田      怜 埼玉アイスアリーナFC 58.31 26.93 31.38
10 松  浦  杏  奈 埼玉アイスアリーナFC 58.19 27.72 30.47
11 榎  本  ミ  ク 名東FSC 57.87 26.96 30.91
12 野  田  めぐみ 明治神宮外苑FSC 57.76 27.08 30.68

木下アカデミーの金沢純禾選手が圧倒的なスコアで優勝しました。元々は札幌で練習していた金沢選手。10歳にして早くも凱旋試合みたいなことになっていて、そこでしっかり優勝。86.24は19年の島田麻央選手88.50に近い水準のスコアです。当時と比べるといくらか点を出しやすいルールに変わっていますが技術点だけなら上回りました。2012年2月28日生まれの10歳、小学校5年生。現行ルールであれば2030年のオリンピックシーズンにシニアに上がることができるということで、島田麻央選手の強力なライバルになる可能性があります。

3位の星碧波選手はPCSは優勝した金沢選手を上回っています。技術点は伸ばせなかったのですが、このPCSで稼いで3位表彰台に乗ってきています。

 

○金沢純禾選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz   5.90   0.39 6.29 0.800
2 FSSp4   3.00   0.30 3.30 1.200
3 2A+3T   7.50   0.70 8.20 1.800
4 3Lo   4.90   0.33 5.23 0.600
5 CCoSp4   3.50   0.82 4.32 2.600
6 ChSq1   3.00   0.33 3.33 0.600
7 3F   5.30   0.53 5.83 1.000
8 3S+2A+2T+SEQ   8.90   0.86 9.76 1.800
9 LSp4   2.70   0.54 3.24 2.000
  TES   44.70   4.80 49.50  

全要素プラス評価になりました。それも3回転ジャンプが5本入っています。これはノービスBとしては驚異的な構成です。島田麻央選手の時でも3回転5本入りましたがフリップがeで基礎点からマイナスされていました。ノービスBで3回転を5本、ファイブトリプルをGOEプラスで成功させたのは、確認できた範囲では2012年の近畿選手権での本田真凜選手以来となります。ただ本田選手はトーループ2本構成でループが入っていませんでした。金沢選手は5種類5本ですべての種類の3回転を入れています。3回転5種類コンプリートをノービスBで成し遂げたのは確認できた範囲では初です。

また、スピンも3つともレベル4 でした。これは本人初。いつもどれかを取りこぼすという形だったのですが今回は3つそろいました。

結果として技術点49.50はノービスAでも2番目に相当するスコア。ジャンプ要素が1つ増えるノービスAではさらに点が伸びていく計算です。

 

○男子シングル ノービスB(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 吉  野  咲太朗 西武東伏見FSC 75.18 31.59 43.59
2 日  髙  晴  久 MFアカデミー 67.04 24.32 42.72
3 山  本  航  成 西武東伏見FSC 66.98 25.05 41.93
4 デイリー スカイラー海聖 神戸クラブ 65.13 25.16 39.97
5 秋  元  聖  輝 飯塚フィギュアクラブ 62.68 25.15 38.03
6 上  田  将  生 仙台泉F.S.C. 61.43 23.37 38.56
7 佐久間      陸 エンジェルFSC 60.00 24.64 36.36
8 河  合  悠  立 名東FSC 59.89 24.02 36.37
9 原  大  翔 神戸クラブ 58.57 23.86 34.71
10 三  浦  琉  生 グランプリ東海クラブ 58.52 20.27 38.25
11 高          旭 アクアリンクちばSC 57.52 21.72 35.80
12 阿  部  快  斗 八戸FSC 56.28 19.85 36.93

男子のノービスBは木下アカデミーやLYSといった近年できたクラブではなく、伝統の東伏見の吉野咲太朗選手が優勝しました。ただ一人70点台の実績もあり順当勝ちといったところです。75.18は本人として過去最高スコアです。1人だけ3回転が構成に入っていて、レベルの違いを見せつけていました。

 

 

ノービスAの上位4人は全日本ジュニアへ推薦で出場出来ることが見込まれています(今シーズンは女子は4人ですが男子は3人になりました)。昨年はノービスからの推薦出場で島田麻央選手が全日本ジュニアを優勝しました。そこまでの跳びぬけて結果はなかなか出るものでもないですが、ジュニア勢に一泡吹かせるような活躍も期待したいと思います。