全日本ノービス ミラノの次、ミラノの次の次へ

今シーズン最初の全日本。全日本ノービス選手権が開催されました。

 

○女子シングル ノービスA(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 金  沢  純  禾 木下アカデミー 100.45 57.05 43.40
2 河  野  莉々愛 木下アカデミー 96.74 53.64 43.60
3 大  竹  沙  歩 MFアカデミー 91.94 45.71 46.73
4 松  浪  ひかり 関空スケート 91.85 54.89 36.96
5 川  勝  玲  奈 木下アカデミー 91.37 49.58 42.29
6 吉  田      菫 蒼明学院中等部 88.22 45.53 42.69
7 花  井  咲  良 邦和みなとスケート部 86.24 46.90 39.84
8 榎  本  ミ  ク 名東FSC 78.44 40.94 38.50
9 能  登  咲  空 神戸クラブ 72.01 35.79 36.72
10 一貫田  紗  生 関空スケート 69.60 34.04 36.06
11 野  田  めぐみ 明治神宮外苑FSC 69.09 33.55 36.04
12 茂  優  碧 MFアカデミー 66.95 32.23 34.72

女子ノービスAの優勝は、1年目の金沢純禾選手となりました。際どく100点に到達。ノービスカテゴリーの試合としては自己最高スコア更新での優勝となります。

2位には昨季の4位から2つ順位を上げた河野莉々愛選手が入りました。昨季は全日本ジュニアで12位。木下トロフィーでは167.01も出していますし、全日本ジュニアでどこまで上位を脅かせるか楽しみです。

3位表彰台には東から、MFアカデミーの大竹沙歩選手が入ってきました。昨季は6位。東京選手権ではミスが目立っての71.32でしたが、そこから大きくスコアを伸ばして自己最高点で1点差以内で3人並んだ表彰台争いを制しました。

4位松浪ひかり選手が入りました。91.85は自身初の90点台。表彰台も大事ですが全日本ノービスは4位も大事。この4位までが全日本ジュニアへ推薦選手として出場できます。

近畿選手権で98.02を出していた川勝玲奈選手は残念ながら5位。近畿選手権の時はサルコウ2本構成だったところから、ルッツ2本へ構成を上げていたのですが、このルッツが単独で2本になってしまったことが結局響きました。4位と0.48差、表彰台と0.57差。際どい勝負でしたが5位は全日本ジュニアへ進めません。

 

○金沢純禾選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Lz+3T   10.10   0.79 10.89 1.600
2 2A   3.30   0.22 3.52 0.800
3 3Lo   4.90   0.65 5.55 1.400
4 LSp4   2.70   0.27 2.97 1.200
5 3F   5.30   0.53 5.83 1.000
6 FSSp4   3.00   0.40 3.40 1.200
7 3Lz+2A+2T+SEQ   11.55 X 0.00 11.55 0.000
8 3S   4.73 X 0.57 5.30 1.200
9 StSq3   3.30   0.66 3.96 2.000
10 CCoSp4   3.50   0.58 4.08 1.800
  TES   52.38   4.67 57.05  

ノービスAは要素が10個。ジャンプ要素は6つでコンビネーションは2つまでです。今回は2回飛ぶジャンプはルッツのみとなりました。3連続に3回転トーループ付けたいのかと思われます。結果的にマイナス要素は無くスピンすべてレベル4で滑り切りました。

100点には乗りましたが、ノービスA100点くらいまでは毎年1人2人出てきます。ノービスA1年目で100点というのは、なかなか難しい。まず、そこにたどり着きました。

これまでまだトリプルアクセル以上の高難度ジャンプはありません。次はトリプルアクセルが目標な模様。島田麻央選手はノービスA2年目の段階で4回転を決め、トリプルアクセルも国際大会で決めてきています。

まずは、全日本ジュニアでどれくらいの演技が出来て、どれくらいの順位に入って来るか? さすがに今のジュニアのレベルを見ると表彰台は厳しそうではありますが、全日本進出8枠の内側に入ってかき回すくらいの姿は見たいです。

 

○ノービスA女子シングルの上位12名の要素別のスコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 金  沢  純  禾 100.45 43.40 39.88 2.76 10.45 3.96
2 河  野  莉々愛 96.74 43.60 41.48 -1.20 9.98 3.38
3 大  竹  沙  歩 91.94 46.73 35.80 -5.36 10.87 4.40
4 松  浪  ひかり 91.85 36.96 40.48 1.07 10.74 2.60
5 川  勝  玲  奈 91.37 42.29 36.58 -2.23 11.27 3.96
6 吉  田      菫 88.22 42.69 32.61 -2.12 10.86 4.18
7 花  井  咲  良 86.24 39.84 36.02 -1.57 9.42 3.03
8 榎  本  ミ  ク 78.44 38.50 33.13 -2.83 8.66 1.98
9 能  登  咲  空 72.01 36.72 27.23 -3.12 8.99 2.69
10 一貫田  紗  生 69.60 36.06 23.78 -1.18 8.58 2.86
11 野  田  めぐみ 69.09 36.04 27.19 -4.73 9.29 1.80
12 茂  優  碧 66.95 34.72 21.49 0.15 7.99 2.60

優勝したのは金沢選手ですが、PCSは3位でした。MFアカデミーの大竹選手がPCS1位です。松波選手とは10点近い差があり、平均6点近いこの高いPCSで表彰台を手に入れました。

ジャンプの基礎点は河野選手が1位で松波選手が2位です。金沢選手は3番目。河野選手は回転不足が1つ付いたものの、全選手中ただ1人セカンド3回転2本の7トリプル構成で高い基礎点でした。松波選手は1.1倍ルッツが2本あっての高い基礎点です。

ジャンプのGOEがプラスなのは上位では金沢選手と松波選手の2人。大竹選手はq3つに!1つに転倒1つとGOEは大きくマイナス。qを解消できる滑りが出来れば100点が近づきます。

スピンは11点台を出した川勝選手が1位。シニアのグランプリ級の選手でもフリーのスピンで11点に欠ける選手は多くいますので、このあたりはもう日本のトップクラスと並びます。10点台も4人いました。

ステップは大竹選手がレベル3で平均GOE+3.400というシニア顔負けの評価を受けています。レベル3くらいまでは出す選手がいますが、GOEで+3を超えるステップをノービスがするというのは驚異的です。島田麻央選手でも+3に達するステップはノービス時代に出せたことはありませんでした。

 

○男子シングル ノービスA(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 岡  崎  隼  士 蒼明学院中等部 106.73 49.59 57.14
2 吉  野  咲太朗 西武東伏見FSC 95.33 40.12 55.21
3 松  本  悠  輝 LYS 90.11 43.69 46.92
4 大  林  理  人 KOSE新横浜プリンスFSC 83.04 36.66 46.88
5 山  本  航  成 西武東伏見FSC 80.49 29.43 51.06
6 佐  野  海  音 滋賀ドリームFSC 80.18 34.89 45.79
7 高  橋      健 埼玉アイスアリーナFC 78.46 32.14 46.32
8 道  免  優  斗 ROYCE' F・S・C 78.20 36.00 42.20
9 河  本  英  士 仙台FSC 75.75 34.88 41.37
10 加  来  翔  映 福岡フィギュアアカデミー 71.44 27.48 44.96
11 谷          圭 岡山FSC 70.81 29.68 41.63
12 吉  岡  陽  稀 飯塚フィギュアクラブ 68.69 30.93 37.76

男子のノービスAは岡崎隼士選手が初の100点超えで優勝しました。昨季5位からうれしい表彰台の頂点です。今期は全日本ジュニアに出る気満々だったのか、すでにジュニアカテゴリーの試合を2試合経験しており、全岡山選手権では171.22を出しています。今大会はサルコウでアンダーローテーションは付きましたが、3回転5種類6本入る構成で他を圧倒していました。全日本ジュニアもフリー後半グループで上位進出が見込まれます。

2位には昨季の全日本ノービスBのチャンピオン、吉野咲太朗選手が入りました。95.33は自己最高スコア。今期は3試合続けて自己最高点を更新してきています。

3位は昨季10位だった松本悠輝選手が入りました。ノービスBの時代は帯広にいたようですが、ノービスAに上がった昨季に名古屋に出てきて、今期からLYSへ移籍したようです。90.11は自己最高スコアです。中部選手権で決めたトリプルルッツが今回は転倒に終わったのですが、3回転フリップを!つきながらも初着氷。スピンでレベル4を3つ並べて表彰台。全日本ジュニア進出となります。

男子は上位3人が全日本ジュニアの推薦をもらいました。

 

○岡崎隼士選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3Loq q 4.90   -0.49 4.41 -1.000
2 3Lz!+2A+2T+SEQ ! 10.50   -0.20 10.30 -0.400
3 3F   5.30   0.53 5.83 1.000
4 FSSp4   3.00   0.70 3.70 2.400
5 CCSp4   3.20   0.53 3.73 1.600
6 2A+3T   7.50   -0.98 6.52 -2.200
7 3S< 3.78 X -0.69 3.09 -1.800
8 3T   4.62 X 0.84 5.46 1.800
9 CCoSp2   2.50   0.50 3.00 1.800
10 StSq2   2.60   0.95 3.55 3.600
  TES   47.90   1.69 49.59  

3回転5種類6本。サルコウはアンダーローテーションが付きました。まだ全体的に不安定で回転が3回転しっかりできるかはどのジャンプでも課題になっているのですが、今大会はアンダーローテーションは1つで済みました

今回は構成的に不要なので入れていませんが、全岡山選手権はジュニアカテゴリーの試合でショートのコンビネーションを3T+3Tと3-3をqですが降りています。ノービスのうちに3-3まで入るようになってきていますので、来期はジュニアグランプリシリーズの派遣はおそらくあるでしょう。まずは今季、全日本ジュニアでどこまで行けるか楽しみな選手です。

 

○女子シングル ノービスB(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 宮  﨑  花  凜 MFアカデミー 82.16 41.71 40.95
2 矢  島  凜  果 グランプリ東海クラブ 70.16 33.66 36.50
3 森  成  美 埼玉アイスアリーナFC 69.64 33.14 36.50
4 竹  島  花  英 LYS 68.37 32.10 36.27
5 木  原  永  稀 邦和SC 59.86 27.66 32.70
6 河  合  心々渚 グランプリ東海クラブ 59.69 27.68 32.01
7 久保村  真夕子 京都アクアリーナSC 56.26 26.34 30.92
8 梶  原      穂 宮城FSC 54.64 25.70 28.94
9 片  山  姫  和 京都アクアリーナSC 53.81 26.68 27.13
10 宇佐美  麻  帆 LYS 53.63 24.71 28.92
11 五  箇  心乙祈 明治神宮外苑FSC 53.58 23.15 30.93
12 日  置  優  花 名東FSC 53.11 24.85 28.26

今シーズンのノービスBはミラノの次のオリンピックである2030年でも年齢制限で出られない世代です。2034年を目指した、まだ10年以上先を見ながらの戦いになります。

優勝は昨季13位だった宮﨑花凜選手。構成にはループ以外の3回転4種5本を入れていましたが、ルッツはe付の転倒となりました。フリップが今大会で初めて<もqもつかない回転十分のジャンプが、GOEはマイナスながらも飛べました。ノービスAに上がる時点では3回転5種類揃ってきそうです。

2位に矢島凜果選手は昨季15位からのジャンプアップ。初の70点超えです。まだ3回転は入ってきませんが、ダブルアクセルを2本決めています。

3位の森成美選手も自己最高スコアです。3回転のトーループを冒頭で着氷。ダブルアクセルはもう3連続のシークエンスの真ん中に入れるくらいに普通に飛べるジャンプになってきています。

 

○宮﨑花凜選手のフリーの構成

  Elements    BaseValue   GOE Scores AvGOE
1 3F   5.30   -1.59 3.71 -3.000
2 3Lzeq e  F 4.72   -2.36 2.36 -5.000
3 2A+3T+2T   8.80   0.84 9.64 2.200
4 FSSp2   2.30   0.84 3.14 3.600
5 ChSq1   3.00   1.00 4.00 2.400
6 3S+2A+SEQ   7.60   0.57 8.17 1.400
7 CCoSp3   3.00   0.60 3.60 2.200
8 3T   4.20   0.42 4.62 1.000
9 LSp2   1.90   0.57 2.47 2.800
  TES   40.82   0.89 41.71  

ノービスBですが3回転が4種類5本入っています。3回転ルッツは8月の東京夏季フィギュアから入れていて、<が2回続いていましたが今回はqまで来ました、ただしe付。3回転フリップは4月の有望新人発掘で初めて入れてダウングレード。その後、ダウングレードにアンダーローテーションにqを経て今回初めてマーク無しの回転十分という形になりました。残る3回転はループだけなのですが、2回転のループもほとんど入れていないので、ループジャンプが苦手な可能性はあります。どこかのヘンドリックス選手のような。

スピンが今回レベル4 無しでしたが、ノービスB1年目のころからレベル4はよく出していました。平均GOEは3つとも+2を超えていますし、本来はもう少しスピンで点を取る力はありそうです。

ノービスBの時点でルッツフリップが入ってきていて80点台を出せていると、来期はノービスA1年目でも上位で争えて、全日本ジュニアの出場権を争うところまで行けそうに感じます。

 

○男子シングル ノービスB(上位12名)

Pl Name Nation Total FS TES FS PCS
1 日  髙  晴  久 MFアカデミー 80.39 31.31 49.08
2 木  村  碧  一 埼玉アイスアリーナFC 71.66 30.03 41.63
3 佐久間      陸 福岡フィギュアアカデミー 70.42 28.69 42.73
4 デイリー スカイラー海聖 神戸クラブ 69.04 28.75 40.79
5 河  合  悠  立 名東FSC 68.67 24.47 44.70
6 原  大  翔 神戸クラブ 68.25 27.49 40.76
7 神  野  琉  衣 名古屋FSC 62.44 24.15 38.29
8 中  條  幹  太 神奈川FSC 59.64 23.31 36.33
9 三  田  夏  輝 邦和SC 56.36 24.13 32.73
10 木  村  勇  翔 グランプリ東海クラブ 54.14 20.50 34.14
11 武  正  侑  駕 明治神宮外苑FSC 52.38 17.38 35.00
12 宮  瀬  獅  世 京都宇治FSC 52.14 20.94 32.20

ノービスB男子は日髙晴久選手が優勝です。ノービスBは男女ともMFアカデミーが勝ちました。昨季は全日本ノービス2位。2年連続表彰台。初の80点到達です。3回転のサルコウはダウングレードになりましたが、シークエンス含めてダブルアクセル2本をしっかり決めました。

木村碧一選手が2位。昨季の19位から大躍進です。関東選手権で決めていた3回転トーループは決まりませんでしたがダブルアクセル2本やスピンレベル4が2つなどで点を稼ぎました。

佐久間陸選手が3位。昨季は7位でした。ダブルアクセルは2本とも決まらなかったのですが平均GOE-1.2ながらも3回転のサルコウを初着氷。初めて公式戦で3回転ジャンプを基礎点満額もらいました。

 

○男子シングル ノービスBの上位12選手要素別スコア

Pl Name Total PCS J Base J GOE Spin Step
1 日  髙  晴  久 80.39 49.08 16.10 -0.19 11.07 4.33
2 木  村  碧  一 71.66 41.63 16.50 -0.63 10.83 3.33
3 佐久間      陸 70.42 42.73 18.44 -4.04 10.79 3.50
4 デイリー スカイラー海聖 69.04 40.79 19.90 -3.98 9.33 3.50
5 河  合  悠  立 68.67 44.70 11.24 -1.51 10.74 4.00
6 原  大  翔 68.25 40.76 15.68 -1.59 10.07 3.33
7 神  野  琉  衣 62.44 38.29 13.22 -0.87 7.97 3.83
8 中  條  幹  太 59.64 36.33 11.60 -0.97 9.01 3.67
9 三  田  夏  輝 56.36 32.73 15.50 -2.57 7.70 3.50
10 木  村  勇  翔 54.14 34.14 12.50 -2.82 7.32 3.50
11 武  正  侑  駕 52.38 35.00 7.46 -1.16 7.91 3.17
12 宮  瀬  獅  世 52.14 32.20 13.24 -1.97 6.67 3.00

1位と2位はPCSで大きな差が出ました。TESの方は1.28の差しかありません。

ジャンプの基礎点はデイリー スカイラー海聖選手が1位です。しかしながらGOEのマイナスが大きく点が稼げませんでした。

スピンは10点以上出した選手が5人います。優勝した日高選手は11.07 スピンはトップ選手と普通にノービスBでもスコアを比べられますが、同じころ行われていたスケートアメリカの男子シングルフリーで、11.07より高いスコアなのは12人中6人だけでした。日本人選手3名はすべてこれを下回っていたり・・・。というわけで、スピンのレベルが高いノービスB男子です。

ノービスBのステップ系要素はコレオシークエンスですが、日高選手は平均GOE+2.600という高い評価を受けていました。

 

今期のノービスAの選手たちは、2030年オリンピックの出場可能性がある下限の年齢の選手たちです。島田麻央選手や中田璃士選手といったところを、下から突き上げる可能性のある選手たちです。女子は4人、男子は3人が全日本ジュニアの推薦券を得ました。ノービスから2段階特進はないので、全日本ジュニアで8位以内に入っても全日本には出られないのですが、本当なら出る力あるんですよ、という顔をして、上位に割って入っていく姿を楽しみにしたいと思います。