イリアマリニン選手が4回転アクセルを成功させました。これで4回転が6種類そろったことになります。5回転、なんて声も聞かれるようになりましたが、5回転はまだ基礎点が定まっていません。ルール上存在しないことになっています。では、ルール上ではどこまで点を出せるのか? 理論上の最高得点は何点なのか? 今回はそれを見ていきます。
すべて男子シングルのルールとします。なお、コンビネーションの2つ目にルッツを飛ぶ、というようなトリッキーな構成は含めないこととします。
○ショートプログラムの最高基礎点?
Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||
1 | 3A | 8.00 | 4.00 | 12.00 | ||
2 | 4Lz | 11.50 | 5.75 | 17.25 | ||
3 | FCSp4 | 3.20 | 1.60 | 4.80 | ||
4 | CCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
5 | 4A+3Lo | 19.14 | X | 6.25 | 25.39 | |
6 | StSq4 | 3.90 | 1.95 | 5.85 | ||
7 | CSSp4 | 3.00 | 1.50 | 4.50 | ||
TES | 52.24 | 22.80 | 75.04 |
ショートプログラムではダブルアクセルかトリプルアクセルが必須ですので単独のトリプルアクセルがまず入ります。4回転アクセルを単独では入れられません。ではショートで4回転アクセルは使えないかと言うとそうではないです。女子のジュニア、あるいは女子の昔のシニアではショートの単独アクセルはダブルアクセルが必須でした。それでも浅田真央さんや最近ではアリサリュウさんもジュニアカテゴリーでトリプルアクセルを構成に入れていました。トリプルアクセルも3回転ジャンプの1種として数えることが出来てコンビネーションに使えます。同じように4回転アクセルも4回転ジャンプの1種として数えることが出来てコンビネーションに使えるわけです。
コンビネーションは4回転-3回転までです。4回転-4回転はルールから外れるので使えません。セカンドジャンプは3回転ループが1番基礎点が高くなります。残りの単独ジャンプは4回転ルッツです。1.1倍に入れるのはコンビネーションが当然1番よい。スピンステップの位置はどこでもいいですが、ショートの場合はスピンも組み合わせの制限により合計で基礎点9.70までです。
これらを合計すると基礎点52.24のGOE満点で技術点75.04が満点でPCSも満点取ると125.04まで出ることになります。
○フリーの最高基礎点
Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||
1 | 3F | 5.30 | 2.65 | 7.95 | ||
2 | 3Lz | 5.90 | 2.95 | 8.85 | ||
3 | 3A | 8.00 | 4.00 | 12.00 | ||
4 | 4S | 9.70 | 4.85 | 14.55 | ||
5 | CCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.95 | 5.85 | ||
7 | 4Lz+4T | 23.10 | X | 5.75 | 28.85 | |
8 | 4F+4Lo | 23.65 | X | 5.50 | 29.15 | |
9 | 4A+4A+3A | 36.30 | X | 6.25 | 42.55 | |
10 | ChSq1 | 3.00 | 2.50 | 5.50 | ||
11 | FCSp4 | 3.20 | 1.60 | 4.80 | ||
12 | FCCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
TES | 129.05 | 41.50 | 170.55 |
フリーの最高基礎点の構成はこうなりました。2回飛ぶジャンプは4回転アクセルとトリプルアクセル。4回転は2回飛べるのは1種類だけなのでこうなります。そして、1.1倍にコンビネーションを全部入れ、シークエンスでアクセルをつぎ込みます。トリプルアクセルが1本余るのでそれは外に出して単独にします。残りのコンビネーションは、セカンドジャンプにトーループとループで4回転を入れます。4回転アクセルの次はセカンド4回転がチャレンジとして試みられる時代がくるでしょうか。そして残りのジャンプを基礎点が高い順に単独ジャンプで入れていきます。
スピンはフリーの場合は合計基礎点10.20まで入ります。ステップで3.9にコレオの3.0も足されます。
これにより合計基礎点は129.05となり、この構成の満点は170.55になります。
この構成が基礎点で最も高くなるものと考えられますが、満点が最も高くなるものではありません。この構成は単独の3回転ルッツやフリップがあるため、GOEがやや稼ぎにくくなる形です。GOEを高く稼げる形に組み替えます。
○組み替え1
Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||
1 | 3Lz | 5.90 | 2.95 | 8.85 | ||
2 | 4Lo | 10.50 | 5.25 | 15.75 | ||
3 | 4S | 9.70 | 4.85 | 14.55 | ||
4 | 4F | 11.00 | 5.50 | 16.50 | ||
5 | CCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.95 | 5.85 | ||
7 | 4Lz+4T | 23.10 | X | 5.75 | 28.85 | |
8 | 4A+3Lo | 19.14 | X | 6.25 | 25.39 | |
9 | 4A+3A+3A | 31.35 | X | 6.25 | 37.60 | |
10 | ChSq1 | 3.00 | 2.50 | 5.50 | ||
11 | FCSp4 | 3.20 | 1.60 | 4.80 | ||
12 | FCCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
TES | 127.79 | 46.35 | 174.14 |
まず、4回転アクセルをシークエンスで入れるのはGOE考えるともったいないためばらします。次に、セカンド4回転ループはやはりGOE考えると4回転同士のコンビネーションにするのはもったいないのでそれを外してそこは3回転のループにしています。この組み換えで基礎点は1.26下がるのですが稼げるGOEが4.85増えるので満点は174.14まで上がります。
それならセカンド4Tを外して3Tにして3Lzのところに4Tにした方が満点上がるか? とも思うのですが、実際にはそのパターンでは基礎点125.62の満点GOE48.15になって、合計173.77となり、満点は低下します。ただ、GOEは上がっているわけです。上記の構成から基礎点をあまり下げずに満点GOEを48.15にする方法はないでしょうか?
○組み換え2 最高得点?
Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||
1 | 4Lz | 11.50 | 5.75 | 17.25 | ||
2 | 4T | 9.50 | 4.75 | 14.25 | ||
3 | 4S | 9.70 | 4.85 | 14.55 | ||
4 | 4F | 11.00 | 5.50 | 16.50 | ||
5 | CCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.95 | 5.85 | ||
7 | 3Lz+4Lo | 18.04 | X | 5.25 | 23.29 | |
8 | 4A+3Lo | 19.14 | X | 6.25 | 25.39 | |
9 | 4A+3A+3A | 31.35 | X | 6.25 | 37.60 | |
10 | ChSq1 | 3.00 | 2.50 | 5.50 | ||
11 | FCSp4 | 3.20 | 1.60 | 4.80 | ||
12 | FCCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
TES | 127.33 | 48.15 | 175.48 |
多少不自然な部分もあるのですが、単独3Lzを消す組み換えをします。4Tの方を動かすのではなく、4Lzの方を外に出し、3Lzをコンビネーションに持ってきてセカンドに4Tを付ける。この入れ替えで基礎点は127.23に低下しますが、満点GOEが48.15になって合計175.38となります。それならとさらに4Tと4Loを入れ替えることで1.1倍の基礎点を上げられるので基礎点が127.33になり満点GOEが48.15と変わらず、合計175.48となります。
3Lz+4Loがやや不自然にも見えますが、逆足ジャンプや逆回転などでセカンドにルッツを入れるようなトリッキーなものを除外すると、これが最高得点の構成になると思います。
この構成でフリーはPCS満点100点を加えると275.48になり、ショートフリー合計で400.52となり400点に到達することになります。現行ルールで人間に課せられた理論上の最高点は400点まであるようです。
セカンド4回転に無理がある? 現状ではそんな気もします。なので、セカンド4回転抜きでも考えてみましょう。
○セカンド4回転抜きの最高得点構成
Elements | BaseValue | GOE | Scores | |||
1 | 4F | 11.00 | 5.50 | 16.50 | ||
2 | 4Lo | 10.50 | 5.25 | 15.75 | ||
3 | 4S | 9.70 | 4.85 | 14.55 | ||
4 | 4T | 9.50 | 4.75 | 14.25 | ||
5 | CCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
6 | StSq4 | 3.90 | 1.95 | 5.85 | ||
7 | 4Lz+3T | 17.27 | X | 5.75 | 23.02 | |
8 | 4A+3Lo | 19.14 | X | 6.25 | 25.39 | |
9 | 4A+3A+3A | 31.35 | X | 6.25 | 37.60 | |
10 | ChSq1 | 3.00 | 2.50 | 5.50 | ||
11 | FCSp4 | 3.20 | 1.60 | 4.80 | ||
12 | FCCoSp4 | 3.50 | 1.75 | 5.25 | ||
TES | 125.56 | 48.15 | 173.71 |
セカンド4回転抜きでもここまで出ます。セブンクワッドで一つ目のジャンプはすべて4回転とし、シークエンスはトリプルアクセル2本、コンビネーションはトーループとループをそれぞれ使い、すべて1.1倍に入れる。これで基礎点125.56の満点GOEが48.15で合計173.71まであります。PCSの100点を加えて273.71 ショートの125.04を加えるとトータル398.75になります。
セカンド4回転入りと比べると1.77しか上限が変わりません。これだとセカンド4回転を習得しようというドライビングフォースは働かないですね。
先日のUSインターナショナルで4回転アクセルを飛んだ時のマリニン選手の基礎点は102.47でした。レベルの取りこぼしがあったのですべてレベル4なら103.47です。理論上の最高基礎点128.75まではあと25点ほどあります。トータルスコアの過去最高は335.30というネイサンチェン選手のものがあり、理論上の最高得点にはまだ65点ほどあります。
男子はルール変更だけでなく世代交代も北京オリンピック後に起きた感じですが、次のルール改正までに理論上の最高得点にすこしでも近づいていけるでしょうか?